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【発明の名称】 ハイブリッド車の制御装置
【発明者】 【氏名】瀧澤 一晃
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】福嶋 達也
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】窪寺 雅雄
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】藤岡 征人
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】北村 克弘
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】別個の始動モータを備えることなく、極低速領域を含む広範な車速領域において、エンジン始動を可能にしつつ、エンジンストールによる車両停止や、予期せぬ駆動力の低下などの不都合の発生を防止する。

【解決手段】モータ4の出力軸4aを変速機5の入力軸5aに接続し、エンジン3の出力軸3aと変速機5の入力軸5aとを第1クラッチ8を介して接続し、変速機5の入力軸5aと駆動輪6とを第2クラッチ9を介して接続し、エンジン3とモータ4により駆動輪6を駆動するハイブリッド車2の制御装置であって、モータ4により駆動輪6を駆動している状態からエンジン3を始動する際に、変速機5の入力軸5aの回転数が、エンジン3を始動するために必要な回転数を下回っている場合には、第2クラッチ9を半クラッチ状態としつつ第1クラッチ8を繋ぐよう制御するハイブリッド車2の制御装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 モータの出力軸を変速機の入力軸に接続し、エンジンの出力軸と変速機の入力軸とを第1クラッチを介して接続し、変速機の入力軸と駆動輪とを第2クラッチを介して接続し、エンジンとモータにより駆動輪を駆動するハイブリッド車の制御装置であって、モータにより駆動輪を駆動している状態からエンジンを始動する際に、変速機の入力軸の回転数が、エンジンを始動するために必要な回転数を下回っている場合には、第2クラッチを半クラッチ状態としつつ第1クラッチを繋ぐよう制御するハイブリッド車の制御装置。
【請求項2】 モータの出力軸を変速機の入力軸に接続し、エンジンの出力軸と変速機の入力軸とを第1クラッチを介して接続し、変速機の入力軸と駆動輪とを第2クラッチを介して接続し、エンジンとモータにより駆動輪を駆動するハイブリッド車の制御装置であって、モータにより駆動輪を駆動している状態からエンジンを始動する際に、変速機の入力軸の回転数が、エンジンを始動するために必要な回転数を下回っている場合には、バッテリの残容量が所定値以下になったときにのみ、第2クラッチを半クラッチ状態としつつ第1クラッチを繋ぐよう制御するハイブリッド車の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジンおよびモータを駆動源として使用するハイブリッド車の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ハイブリッド車は、軽負荷領域ではエンジンを停止して、バッテリを用いてモータを駆動することにより走行する。バッテリには、回生時や、高負荷領域におけるエンジン駆動時に発電した電力が蓄えられている。これにより、燃費を向上させることができる。
【0003】この燃費向上効果を最大限に発揮させるためには、車両の走行状態の如何に関わらず、運転者からの高負荷要求に対して、エンジンを任意に始動させることができることが望ましい。すなわち、例えば、モータによる高速走行中のみならず、モータによる低速走行中においても、アクセルペダルが踏み込まれることによる運転者からの高負荷要求に対して、即座にエンジンを始動できることが望ましい。
【0004】従来、上述した要求に応えるために、エンジン始動用の小型モータを、走行用のモータとは別個に設ける方法が採用されている。この方法によれば、走行状態の如何に関わらず、すなわち、走行用のモータの動作状態を変更することなく、小型モータの作動によってエンジンを始動することができる。
【0005】しかしながら、モータは非常に高価であり、このようにエンジンの始動のためだけに作動する小型モータを追加することは、製品コストを増大させることになるので望ましくない。そこで、例えば、特開昭60−55803号公報に開示されているように、走行用のモータによる走行中に、その走行用モータまたは車軸の回転力を用いてエンジンを始動する方法が考案されている。
【0006】この方法は、モータの出力軸とエンジンのクランク軸との間に第1のクラッチを配置する一方、モータの出力軸と車軸との間に第2のクラッチを配置しておき、第2のクラッチのみを完全に繋いだモータのみによる走行中に、第1のクラッチを完全に繋ぐことにより、モータまたは車軸の回転力をエンジンのクランク軸に伝達してエンジンを始動する方法である。これによれば、エンジンの始動に走行用モータを利用するので、別個のモータを設置する必要がなく、コストの増加をより少なくすることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の方法では、以下の問題点があった。すなわち、モータの出力軸とエンジンのクランク軸との間の第1のクラッチを完全に繋ぐ従来の方法では、モータの出力軸および車軸の回転数に対して、エンジンのクランク軸の回転数が一意に規定される。その結果、車速が低い領域では、モータの出力軸または車軸の回転数が低いので、第1のクラッチを繋いだとしても、エンジンを始動するために必要なクランク軸の回転数を得ることができないという問題がある。
【0008】このため、このような低車速領域において、バッテリの残容量が低下した場合や急加速要求がなされた場合等には、エンジンを始動しようとしても十分な負圧が得られず、エンジンがストール状態となって停止する等の不都合の発生が考えられる。上述した従来の方法において、エンジンのストール状態を回避するために、第2のクラッチを切ることにより、エンジンと車軸とを切り離して自由走行状態とし、モータの回転数を高めてエンジンを始動することも可能である。しかしながら、このような方法による場合には、例えば、上り坂を走行している場合等には、必要な駆動力を得られないなどの不都合が考えられる。
【0009】この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、別個の始動モータを備えることなく、極低速領域を含む広範な車速領域において、任意にエンジン始動を可能にするとともに、エンジンストールによる車両停止や、予期せぬ駆動力の低下などの不都合の発生を防止することができるハイブリッド車の制御装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提案している。請求項1に係る発明は、モータの出力軸を変速機の入力軸に接続し、エンジンの出力軸と変速機の入力軸とを第1クラッチを介して接続し、変速機の入力軸と駆動輪とを第2クラッチを介して接続し、エンジンとモータにより駆動輪を駆動するハイブリッド車の制御装置であって、モータにより駆動輪を駆動している状態からエンジンを始動する際に、変速機の入力軸の回転数が、エンジンを始動するために必要な回転数を下回っている場合には、第2クラッチを半クラッチ状態としつつ第1クラッチを繋ぐよう制御するハイブリッド車の制御装置を提案している。
【0011】この発明に係るハイブリッド車の制御装置によれば、モータにより駆動輪を駆動する場合には、第2クラッチを繋いでモータからの回転力を変速機を介して駆動輪に伝達する。この状態において、例えば、急加速要求等のようにモータのみによっては満たされない高負荷要求がなされた場合には、エンジンを始動することが要求されるが、その場合には、変速機の入力軸の回転数がエンジンを始動するために必要な回転数を下回っているか否かが判断される。
【0012】判断の結果、変速機の入力軸の回転数がエンジンを始動するのに必要な回転数を上回っている場合には、第1クラッチを繋ぐことにより、変速機の入力軸の回転力によってエンジンを始動する。また、変速機の入力軸の回転数がエンジンを始動するのに必要な回転数を下回っている場合には、第2クラッチを半クラッチ状態とする。これにより、モータの回転力の一部を第2クラッチを介して駆動輪に伝達して走行状態を維持つつ、駆動輪の回転とは切り離して、モータの回転数を上昇させ、変速機の入力軸の回転数を上昇させることが可能となる。
【0013】そして、この状態で、第1クラッチを繋いで、エンジンの出力軸と変速機の入力軸とを連結することにより、エンジンを始動するために必要な回転数より高い回転数でエンジンの出力軸を回転させることができる。これにより、エンジンがストール状態となることが防止され、スムーズなエンジンの始動と、急加速要求に対する迅速な応答を図ることが可能となる。
【0014】請求項2に係る発明は、モータの出力軸を変速機の入力軸に接続し、エンジンの出力軸と変速機の入力軸とを第1クラッチを介して接続し、変速機の入力軸と駆動輪とを第2クラッチを介して接続し、エンジンとモータにより駆動輪を駆動するハイブリッド車の制御装置であって、モータにより駆動輪を駆動している状態からエンジンを始動する際に、変速機の入力軸の回転数が、エンジンを始動するために必要な回転数を下回っている場合には、バッテリの残容量が所定値以下になったときにのみ、第2クラッチを半クラッチ状態としつつ第1クラッチを繋ぐよう制御するハイブリッド車の制御装置を提案している。
【0015】この発明によれば、変速機の入力軸の回転数が、エンジンを始動するために必要な回転数を下回っている場合であっても、バッテリの残容量が十分にあるときには、エンジン始動を行わないので、モータのみによる走行が続けられ、燃費の向上を図ることが可能となる。バッテリの残容量が少なくなったときには、エンジンを始動させる。この場合において、請求項1と同様の方法でエンジンを始動することにより、エンジンをストール状態とすることなく始動することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッド車の制御装置について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る制御装置1は、図2に示されるように、エンジン制御ユニットECUにより構成されるが、この制御装置1を説明する前に、この制御装置1が適用されるハイブリッド車2について説明する。
【0017】図1は、この発明の制御装置1が適用されるハイブリッド車2の一例を示す模式図である。このハイブリッド車2は、エンジン3とモータ4と変速機5と駆動輪6とを有するものとして示されている。
【0018】モータ4の出力軸4aは、例えば、ギヤ列7を介して変速機5の入力軸5aに連結されている。エンジン3の出力軸3aは、第1クラッチ8を介して変速機5の入力軸5aに連結されている。変速機5の出力軸5bは駆動輪6に連結されている。変速機5の入力軸5aと変速機5の出力軸5bとの間には第2クラッチ9が配置されている。第2クラッチ9は、車速に応じて選択された変速比を実現するように、変速機5内の各変速ギヤ10を変速機5の入力軸5aに選択的に連結または分離することができるようになっている。図1では、変速機5として、5速オートマチック変速機を例示している。
【0019】モータ4の出力軸4aには回転数センサ11が取り付けられている。また、変速機5の出力軸5bには、車速センサ12が取り付けられている。上述したように、モータ4の出力軸4aは変速機5の入力軸5aに、ギヤ列7を介して連結されているので、回転数センサ11によるモータ4の出力軸4aの回転数の検出は、変速機5の入力軸5aの回転数の検出と等価である。また、変速機5の出力軸5bは、ギヤ13およびディファレンシャルギヤ14を介して駆動輪6に連結されているので、車速センサ12による変速機5の出力軸5bの回転数の検出は、駆動輪6の回転数の検出、ひいては車速の検出と等価である。
【0020】本実施形態に係るハイブリッド車2の制御装置1は、図2に示されるように、入力として、バッテリの残容量信号、回転センサ11からの回転数信号、車速センサ12からの車速信号、アクセル開度信号、変速機5のシフトポジション信号等を受ける。また、制御装置1からの出力としては、モータ4のトルク指令信号、エンジン3のトルク指令信号、第1クラッチ8の油圧指令信号、第2クラッチ9の油圧指令信号等が出力される。
【0021】制御装置1の内部には、図示しない記憶部が設けられ、エンジン3の始動に必要な変速機5の入力軸5aの回転数が記憶されている。そして、本実施形態に係るハイブリッド車2の制御装置1は、モータ4のみにより駆動輪6を駆動する際には、第1クラッチ8を切って第2クラッチ9を繋ぐように構成されている。このとき、第2クラッチ9に供給する油圧指令信号は、該第2クラッチ9を完全に繋ぐような油圧を発生させる信号である。これにより、モータ4の回転力が、第1クラッチ8および変速機5を介して駆動輪6に伝達される。
【0022】また、上述したモータ4のみによる走行状態からエンジン3を始動する際に、回転センサ11から受けた回転数信号から変速機5の入力軸5aの回転数を算出し、該変速機5の入力軸5aの回転数が、記憶部に記憶されている、エンジン3を始動するために必要な回転数を上回っている場合には、そのまま第1クラッチ8を繋ぐように構成されている。このとき、第1クラッチ8に供給する油圧指令信号は、第1クラッチ8を完全に繋ぐような油圧を発生させる信号である。これにより、モータ4の回転力または駆動輪6から変速機5を介して伝達された回転力が第2クラッチ9および第1クラッチ8を介してエンジン3の出力軸3aに伝達される。そして、これに合わせて、エンジン3に対してトルク指令を出力することにより、エンジン3が始動させられる。
【0023】一方、本実施形態に係る制御装置1は、変速機5の入力軸5aの回転数が、エンジン3を始動するために必要な回転数を下回っている場合には、第2クラッチ9を半クラッチ状態としつつ第1クラッチ8を繋ぐよう制御するように構成されている。すなわち、第2クラッチ9に供給する油圧指令信号は、該第2クラッチ9を完全に繋ぐための油圧よりも低い油圧を発生させる信号であり、この油圧指令信号を受けた第2クラッチ9は、変速機5の入力軸5aと変速ギヤ10との間を滑らせることにより、モータ4の回転力の一部を変速ギヤ10に伝達しつつ、変速機5の入力軸5aの回転数を高めることが可能となる。
【0024】そして、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数を上回った時点で、第1クラッチ8に、該第1クラッチ8を完全に繋ぐための油圧を供給することにより、変速機5の入力軸5aの回転力をエンジン3の出力軸3aに伝達し、エンジン3を始動することが可能となる。
【0025】この場合に、モータ4から変速機5を介した駆動輪6への回転力の伝達が完全に失われないので、いわゆるトルク抜けの発生を防止することができ、例えば、上り坂を走行中に駆動力が低下する等の不都合の発生を回避することができる。そして、走行用のモータ4によってエンジン3を始動することができるので、エンジン3の始動用に別個のモータを配置する必要がなく、コストを低減することができる。
【0026】図3は、上述した本実施形態に係るハイブリッド車2の制御装置1の動作を説明するためのフローチャートである。まず、アクセル開度信号が増加する等の運転者からの高負荷要求が発生すると、ステップ1において、モータ4のみによる走行状態であるか否かが判断される。その結果、モータ4のみによる走行状態ではない場合には、現在の走行状態が維持される(ステップ4)。
【0027】また、モータ4のみによる走行状態である場合には、ステップ2において、アクセル開度信号等の高負荷要求が、モータ4のみによって賄うことができるものであるか否かが判断される。モータ4のみによって賄うことができる程度の高負荷要求である場合には、原則としてモータ4のみによる走行状態が継続される(ステップ4)。しかしながら、この場合においては、バッテリの残容量が十分であるか否かが判断される(ステップ3)。
【0028】ステップ2において、運転者からの高負荷要求がモータ4のみによって賄うことができないほど大きいと判断された場合には、変速機5の入力軸5aの回転数が、エンジン3を始動するために必要な回転数以上であるか否かが判断される(ステップ5)。変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数以上である場合には、第1クラッチ8に、該第1クラッチ8を完全に繋ぐ油圧指令信号が供給される(ステップ8)。これにより、エンジン3が始動され、エンジン3およびモータ4による走行状態またはエンジン3のみによる走行状態に移行する(ステップ9)。
【0029】変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数以下である場合には、第2クラッチ9に、該第2クラッチ9を半クラッチ状態に繋ぐ油圧指令信号が供給される(ステップ6)。そして、その状態でモータトルク指令信号が増大させられて、変速機5の入力軸5aの回転数が上昇させられる(ステップ7)。
【0030】このようにして、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために十分な回転数に達したならば、第1クラッチ8に、該第1クラッチ8を完全に繋ぐ油圧指令信号を供給する(ステップ8)。これにより、エンジン3が始動される(ステップ9)。また、ステップ3において、バッテリの残容量が十分ではないと判断されたときにも、エンジン3を始動するために、ステップ5に進行する。
【0031】このように、本実施形態に係るハイブリッド車2の制御装置1によれば、モータ4のみによる走行状態において、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数を下回っている場合においてもエンジン3を始動することができる。この場合に、走行用に使用するモータ4によりエンジン3を始動するので、始動モータが不要であり、コストを低減することができる。また、エンジン3の始動に際してモータ4から駆動輪6への回転力が失われることがないので、トルク抜けによる不具合の発生を防止することができる。
【0032】さらに、バッテリの残容量が、モータ4のみによる走行や急加速のためには、十分ではない場合においても、エンジン3を始動することができるので、エンジン3による発電等によりバッテリの残容量を回復することが可能となる。また、車速が低い領域においても、エンジン3の始動を確実に行うので、燃料が残っているのに、バッテリの残容量不足により走行できない状態の発生を防止することができる。
【0033】次に、この発明の第2の実施形態に係るハイブリッド車2の制御装置1’について、図4を参照して以下に説明する。本実施形態に係る制御装置1’は、運転者からの高負荷要求があったときに、即座にエンジン3を始動するモードに移行するのではなく、変速機5の入力軸5aの回転数が、エンジン3を始動するために必要な回転数を上回っている場合にのみ、エンジン3を始動し、下回っている場合には、一旦バッテリの残容量を確認する点において、第1の実施形態に係る制御装置1と相違している。
【0034】すなわち、図4に示すように、ステップ2において、運転者の高負荷要求がモータ4のみによって賄うことができるか否かが判定され、賄うことができないと判定された場合には、ステップ5において、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数を上回っているか否かを判断する。そして、上回っている場合には、ステップ8に進んで、第1クラッチ8を完全に繋いでエンジン3を始動する。一方、下回っている場合には、バッテリの残容量を確認する(ステップ3)。
【0035】バッテリの残容量が高負荷要求を満たすために十分である場合には、モータ4のみによる走行を継続する(ステップ4)。バッテリの残容量が高負荷要求を満たすために十分ではない場合には、ステップ5’に進み、第1の実施形態と同様に、変速機5の入力軸5aの回転数に応じて異なる形態でエンジン3の始動が行われる。
【0036】このように構成することにより、運転者からの高負荷要求がモータ4のみによって賄うことができないほど大きなものであっても、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数を下回っているときは、バッテリの残容量が足りなくならない限り、モータ4のみによる走行が継続されるので、モータ4のみによる最大限の加速が行われ、バッテリを有効利用して、燃費の向上を図ることが可能となる。そして、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数を上回ったときには、第2クラッチ9を完全に繋いだまま、第1クラッチ8を繋ぐことにより、エンジン3を始動することができる。したがって、第2クラッチ9の損耗を低減することもできる。
【0037】また、バッテリの残容量が足りなくなったときには、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数を下回っている場合においても、第2クラッチ9を滑らせることにより確実にエンジン3を始動することができるので、エンジン3によりバッテリの充電が可能になる。したがって、燃料が残っている状態で、バッテリの残容量低下による走行不能な状態が発生することを未然に防止することができる。
【0038】なお、上記各実施形態に係る制御装置1,1’では、変速機5の入力軸5aの回転数がエンジン3を始動するために必要な回転数に達しているか否かを判断した。変速機5の入力軸5aは、変速機5内に配置されており、その回転数は直接検出することが困難であるので、モータ4の出力軸4aに取り付けた回転センサ11による検出値から算出することにした。これに代えて、変速機5の出力軸5bに配置した車速センサ12により検出した車速に基づいて算出することにしても良い。もちろん、変速機5の入力軸5aの回転数を直接検出することにしてもよい。
【0039】また、変速機5の入力軸5aの回転数によって、エンジン3の始動が可能か否かを判断することに代えて、シフトポジションに対応してエンジン3を始動可能な車速を複数記憶しておき、実際の車速がエンジン3を始動可能な車速か否かを判断することにしてもよい。
【0040】また、変速機5の入力軸5aの回転数に応じて、第2クラッチ9に供給する油圧指令信号を2段階に切り換えることにしたが、これに代えて、3段階以上または無段階に変更することにしてもよい。これにより、エンジン3の始動に際して、運転者に与えられる急激な加減速感を緩和し、スムーズなエンジン3の始動を行うことが可能となる。また、変速機5として、5速オートマチック変速機を例示したが、これに限定されるものではなく、他のオートマチック変速機、あるいは、無断変速機に適用することも可能である。
【0041】さらに、上記各実施形態では、変速機5の入力軸5aと変速機5の各変速ギヤ10とを選択的に連結する複数(図1では5個)の第2クラッチ9を設け、各第2クラッチ9を滑らせることにしたが、これに代えて、変速機5の出力軸5bにさらに1個のクラッチを設け、変速機5の入力軸5aと各変速ギヤ10との間のクラッチを完全に繋ぎ、この出力軸5bのクラッチを半クラッチ状態とすることにしてもよい。このようにすることにより、クラッチの油圧制御を簡易にすることができる。
【0042】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明は以下の効果を奏する。請求項1に係る発明によれば、変速機の入力軸の回転数がエンジンを始動するために必要な回転数よりも低い場合であっても、走行用のモータを使用してエンジンを始動することができるので、エンジンの始動用の別個のモータを備える必要がなく、ハイブリッド車を低コストに構成することができる。また、低速走行中にエンジンを始動する高負荷要求が行われても、エンジンを始動することができるので、エンジンがストール状態となって、車両が停止する等の不具合の発生を防止することができる。また、低速走行中におけるエンジンの始動に際して、モータから駆動輪への回転力の伝達が失われないので、トルク抜けや、登坂時の必要な駆動力の低下などの不具合の発生をも防止することができるという効果を奏する。
【0043】また、請求項2に係る発明によれば、変速機の入力軸の回転数がエンジンの始動のために必要な回転数を下回るような低速走行中において、バッテリの残容量に余裕がある場合には、エンジンを始動することなく、モータのみによる走行を継続し、バッテリの残容量が足りなくなってきたときにのみエンジンを始動するので、バッテリを効率よく使用して、燃費の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0044】さらに、車速に関わらず、バッテリの残容量が不足してきたときは、エンジンを始動するので、エンジンによる発電によってバッテリを回復し、走行不能となることを防止することができる。特に、変速機の入力軸の回転数が、エンジンを始動するために必要な回転数を下回っている低速走行中においても、エンジンをストール状態に陥らせることなく始動することができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年1月22日(2002.1.22)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外5名)
【公開番号】 特開2003−212003(P2003−212003A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−13157(P2002−13157)