| 【発明の名称】 |
車両の走行制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】近藤 敏之 【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内
【氏名】沢田 護 【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内
【氏名】片岡 資章 【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内
|
| 【要約】 |
【課題】運転者による車両の運転を代行・支援する走行制御装置において、車両の挙動を運転者の好みに応じてより細かく制御できるようにする。
【解決手段】車両の挙動,走行環境,運転操作を表す走行データと目標加減速度算出用データとを用いて、車両の目標加減速度Goを設定することにより、自車両を先行車両に自動追従させる走行制御装置において、運転者の操作に基づく車両走行時に、複数の走行データを所定回数サンプリングし、そのサンプリングした走行データを重回帰分析することにより運転者の好みを表す好みデータ(重回帰係数)を求め、この重回帰係数により目標加減速度算出用データを更新する。この結果、自動追従制御実行時の車両の挙動を、運転者の好みに応じて制御することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両走行時に、制御対象を運転者の運転操作によらず自動制御することにより、運転者による車両の運転を代行・支援する車両の走行制御装置であって、車両走行時の車両の挙動、若しくは、該挙動に加えて運転者の運転操作及び車両の走行環境の少なくとも一つを含む、3種類以上の走行データを検出する検出手段と、当該走行制御装置による前記制御対象の非制御時に、前記検出手段にて検出される全走行データをサンプリングするサンプリング手段と、該サンプリング手段にてサンプリングされた走行データの内、車両の挙動を表す走行データの一つを目的変数、他の走行データを説明変数、とする重回帰分析を行うことにより、車両走行時の運転者の複数の好みを数値化する数値化手段と、当該走行制御装置による前記制御対象の制御時に、前記検出手段にて検出される走行データの内、前記目的変数である車両の挙動を除く走行データと、前記数値化手段にて数値化された好みデータとに基づき、前記目的変数である車両の挙動を制御目標として算出する制御目標算出手段と、車両走行時の車両の挙動が前記制御目標算出手段にて算出された制御目標となるように前記制御対象を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする車両の走行制御装置。 【請求項2】 運転者による車両の運転を代行・支援する他の走行制御装置の動作状態を監視し、該他の走行制御装置の動作中は、前記サンプリング手段の動作を禁止する第1のサンプリング禁止手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両の走行制御装置。 【請求項3】 前記検出手段にて検出される走行データの変化から、車両が走行安全上不適当な走行状態にあるか否かを判定し、車両が走行安全上不適当な走行状態である場合に、前記サンプリング手段の動作を禁止する第2のサンプリング禁止手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の走行制御装置。 【請求項4】 前記サンプリング手段にてサンプリングされた走行データの内、前記目的変数となる車両の挙動と他の走行データとの単相関係数を夫々算出する相関係数算出手段を備え、前記数値化手段は、前記相関係数算出手段にて算出された単相関係数の絶対値が所定値以上となる走行データを説明変数として前記重回帰分析を行うことにより、車両走行時の運転者の好みを数値化することを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載の車両の走行制御装置。 【請求項5】 前記検出手段にて検出される走行データの少なくとも一つを用いて、車両の走行領域が予め複数に分割された走行領域の何れに属するかを判定する領域判定手段を備え、前記サンプリング手段は、前記領域判定手段にて判定された走行領域毎に前記走行データをサンプリングし、前記数値化手段は、前記サンプリング手段にてサンプリングされた各走行領域毎の走行データを用いて、各走行領域毎に車両走行時の運転者の好みを数値化し、前記制御目標算出手段は、前記数値化手段にて数値化された各走行領域毎の好みデータの内、前記領域判定手段にて判定された現在の走行領域に対応した好みデータを用いて、前記制御目標を算出することを特徴とする請求項1〜請求項4何れか記載の車両の走行制御装置。 【請求項6】 当該走行制御装置による前記制御対象の制御時に、運転者の操作に基づき制御が中断される頻度を監視し、該頻度が多い時には、前記好みデータを初期値に戻す初期化手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項5何れか記載の車両の走行制御装置。 【請求項7】 前記検出手段は、前記走行データとして、少なくとも、自車両の前後方向の加減速度、自車両と先行車両との相対車速、及び、自車両と先行車両との車間距離と目標車間距離との偏差である車間距離偏差を検出し、前記数値化手段は、前記検出手段にて検出された走行データの内、自車両の前後方向の加減速度を目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、車両が先行車両に追従して走行する際の運転者の好みを数値化し、前記制御目標算出手段は、該数値化手段にて数値化された好みデータと前記検出手段にて検出された走行データの内の前記自車両の前後方向の加減速度を除く走行データとを用いて、自車両を先行車両に追従させる際の車両前後方向の目標加減速度を算出し、前記制御手段は、自車両の前後方向の加減速度が前記目標加減速度となるように車両の駆動・制動系を構成している制御対象を制御することにより、自車両を先行車両に自動で追従させる自動追従制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項6何れか記載の車両の走行制御装置。 【請求項8】 前記検出手段は、前記走行データとして、少なくとも、自車両の前後方向の加減速度、自車両と先行車両との相対車速、及び、自車両と先行車両との車間距離と目標車間距離との偏差である車間距離偏差を検出し、前記数値化手段は、前記検出手段にて検出された走行データの内、自車両の前後方向の加減速度を目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、車両が先行車両に追従して走行する際の運転者の好みを数値化し、前記制御目標算出手段は、該数値化手段にて数値化された好みデータと前記検出手段にて検出された走行データの内の前記自車両の前後方向の加減速度を除く走行データとを用いて、自車両を先行車両に追従させる際の車両前後方向の目標加減速度を算出し、前記制御手段は、自車両の前後方向の加減速度が前記目標加減速度となるように車両の駆動・制動系を構成している制御対象を制御することにより、自車両を先行車両に自動で追従させる自動追従制御を行い、前記領域判定手段は、前記走行領域の判定に、自車両及び先行車両の少なくとも一方の前後方向の加減速度を用いることを特徴とする請求項5記載の車両の走行制御装置。 【請求項9】 前記検出手段は、前記走行データとして、少なくとも、自車両の前後方向の加減速度、自車両と先行車両との相対車速、及び、自車両と先行車両との車間距離と目標車間距離との偏差である車間距離偏差を検出し、前記数値化手段は、前記検出手段にて検出された走行データの内、自車両の前後方向の加減速度を目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、車両が先行車両に追従して走行する際の運転者の好みを数値化し、前記制御目標算出手段は、該数値化手段にて数値化された好みデータと前記検出手段にて検出された走行データの内の前記自車両の前後方向の加減速度を除く走行データとを用いて、自車両を先行車両に追従させる際の車両前後方向の目標加減速度を算出し、前記制御手段は、自車両の前後方向の加減速度が前記目標加減速度となるように車両の駆動・制動系を構成している制御対象を制御することにより、自車両を先行車両に自動で追従させる自動追従制御を行い、前記領域判定手段は、前記走行領域の判定に、先行車両の自車両に対する前後方向の相対加速度を用いることを特徴とする請求項5記載の車両の走行制御装置。 【請求項10】 前記検出手段は、自車両の前後方向の速度及び自車両と先行車両との車間距離を夫々検出し、自車両の前後方向の速度から目標車間距離を算出して、該目標車間距離と前記検出した車間距離との差を求めることにより、前記車間距離偏差を検出することを特徴とする請求項7〜9何れかに記載の車両の走行制御装置。 【請求項11】 前記数値化手段は、前記制御目標算出手段が目標加減速度を算出するのに用いる好みデータに加えて、前記検出手段にて検出された自車両と先行車両との車間距離を目的変数、自車両の前後方向の速度を説明変数とする単回帰分析により、車両が先行車両に追従して走行する際の車間距離と自車速との関係を表す第2の好みデータを数値化し、前記検出手段は、該第2の好みデータと自車両の前後方向の速度とに基づき前記目標車間距離を算出することを特徴とする請求項10に記載の車両の走行制御装置。 【請求項12】 前記検出手段は、前記走行データとして、少なくとも、車両前後方向の速度、ヨーレート、走行路の道路曲率、車両よりも所定距離前方の走行車線の幅方向中心位置と車両の幅方向中心位置との偏差、を検出し、前記数値化手段は、前記検出手段にて検出された走行データの内、車両のヨーレートを目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、車両が走行車線に沿って走行する際の運転者の好みを数値化し、前記制御目標算出手段は、該数値化手段にて数値化された好みデータと、前記検出手段にて検出された走行データの内の前記ヨーレートを除く走行データとを用いて、車両を走行車線に沿って走行させる際の目標ヨーレートを算出し、前記制御手段は、車両のヨーレートが前記目標ヨーレートとなるように車両の操舵系を構成している制御対象を制御することにより、車両を走行車線に沿って自動走行させる自動車線維持制御を行うことを特徴とする請求項1〜請求項6何れか記載の車両の走行制御装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、運転者による車両の運転を代行・支援する車両の走行制御装置に関し、特に走行制御に運転者の好みを反映させるのに好適な車両の走行制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、例えば、エンジン、自動変速機、ブレーキ装置等を運転者の運転操作によらず自動で制御することにより自車両を先行車両に追従して走行させる自動追従制御装置、車両が道路の走行車線に沿って走行するようにタイヤ角を自動で制御する自動操舵装置、エンジン、ブレーキ装置、操舵装置等を自動で制御することにより自動車の車庫入れを行う自動車庫入れ装置等、運転者による車両の運転を代行・支援する走行制御装置が知られている。 【0003】そして、この種の走行制御装置では、運転者による車両の運転を代行・支援する際の車両の走行状態が運転者好みの走行状態となるように車両を制御できるようにするために、運転者の運転操作に基づく通常走行時の走行状態(車速,前後方向の加速度,ヨーレート等の車両自体の挙動)と車両周囲の走行環境との関係を学習し、走行制御実行時には、その学習結果に応じて制御目標を設定することが考えられている。 【0004】例えば、特開平7−108849号公報には、車両を自動走行させるに当たって、運転者の運転操作に基づく通常走行時に、車両の走行状態と車両周囲の環境状態との関係を学習しておき、車両の走行制御を実行する際には、その学習結果と車両の走行状態とから運転者好みの環境状態(制御目標)を設定して、実際の環境状態がその制御目標となるように、車両の制御量を求めることが開示されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、こうした従来の走行制御装置では、走行制御に運転者の好みを反映させるに当たって、車速と車間距離との関係、車速と道幅との関係、というように、単に一つの走行状態と一つの走行環境との関係を学習するものであったことから、制御結果に運転者の好みを充分反映させることができず、運転者に違和感を与えてしまうことがあった。 【0006】つまり、上記公報には、車両の通常走行時に、車速と車間距離とをサンプリングして、そのサンプリングした車速を説明変数、車間距離を目的変数とする単回帰分析により運転者の好みを学習し、走行制御の実行時には、その学習結果に従い現在の車速に対応した目標車間距離を設定して、自車両と先行車両との間の車間距離がこの目標車間距離となるように車両を制御することが記載されている。 【0007】しかし、このような単回帰分析による学習結果に基づく走行制御では、たとえ、目標車間距離を運転者の好みに応じた距離に設定できたとしても、車間距離を目標車間距離に制御する際の車両の加減速度や車両を加減速する際の応答特性については、運転者の好みに対応させることができないのである。 【0008】本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、運転者による車両の運転を代行・支援する走行制御装置において、走行制御時の車両の挙動を運転者の複数の好みに応じて最適に制御できるようにすることを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の車両の走行制御装置においては、車両走行時の車両の挙動、若しくは、車両の挙動に加えて運転者の運転操作及び車両の走行環境の少なくとも一方を含む、3種類以上の走行データを検出する検出手段が備えられ、当該走行制御装置による制御対象の非制御時には、サンプリング手段が、検出手段にて検出される全走行データを所定数サンプリングする。 【0010】すると、数値化手段が、そのサンプリングされた走行データの内、車両の挙動を表す走行データの一つを目的変数、他の走行データを説明変数、とする重回帰分析を行うことにより、車両走行時の運転者の複数の好みを数値化し、更に、当該走行制御装置による制御対象の制御時には、制御目標算出手段が、検出手段にて検出される走行データの内、目的変数である車両の挙動を除く走行データと、数値化手段にて数値化された複数の好みデータとに基づき、目的変数である車両の挙動を制御目標として算出し、制御手段が、その制御目標に基づき、車両走行時の車両の挙動がその制御目標となるように、制御対象を制御する。 【0011】尚、数値化手段における運転者の好みの数値化は、次のように行われる。即ち、サンプリング手段が、目的変数とする走行データとして、y1,y2,・・・・ynの計n個のデータをサンプリングし、説明変数とする走行データとして、x11,x12,・・・・x1px21,x22,・・・・x2p・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・xn1,xn2,・・・・xnpの計n×p個のデータをサンプリングした時(但し、nはサンプリングしたデータ数、pは説明変数とするデータ数である。)、定数1を並べた1列を追加したn行、「p+1」列の説明変数行列Xを、【0012】 【数1】
【0013】とおき、また目的変数行列Yを、【0014】 【数2】
【0015】とおく。そして、重回帰分析は、【0016】 【数3】
【0017】で計算する次元がp+1であるaを重回帰計数とし、【0018】 【数4】
【0019】で得られる結果を目的変数Yの推定値とするものであることから、数値化手段では、この重回帰分析で得られる重回帰係数aを、運転者の好みデータとする。このように、本発明では、車両走行時の車両の挙動を目的変数とする重回帰分析により車両走行時の運転者の好みを表す複数の好みデータを生成し、制御実行時には、その好みデータを用いて、目的変数である車両の挙動(車速や加減速度等)を制御目標として設定することから、単回帰分析により学習した学習結果に基づき車間距離等の走行環境を設定する従来装置に比べて、走行制御実行時の車両の挙動を運転者の好みに応じてより細かく制御することができる。 【0020】ここで、本発明において、検出手段が検出する走行データとしては、走行制御の内容に応じて適宜設定すればよいが、その走行データの内、車両の挙動を表す走行データとしては、車両の前後方向の速度・加減速度、車両の横方向の速度・加減速度、車両の上下方向の速度・加減速度、車両走行時に車体に加わるヨーレート、ロールレート、ピッチレート等を挙げることができる。 【0021】同様に、運転者の運転操作を表す走行データとしては、運転者が操作するハンドル、アクセル、ブレーキ、変速シフトレバー等の操作量や操作状態を挙げることができ、車両の走行環境を表す走行データとしては、先行車両と自車両との間の状態を表す情報(車間距離、相対車速等)、先行車両の走行状態を表す情報(先行車両の前後方向の速度・加減速度、先行車両の横方向の速度・加減速度、先行車両のヨーレート等)、走行する道路の状態を表す情報(道路の混雑度、道路曲率、道路勾配、道路種別(高速道路,国道,農道等)、道路上の障害物の位置、道路上の信号機の点灯状態、道路上に塗布された走行車線識別用の白線の位置等)、車両の道路上での位置を表す情報(道路上に塗布された白線と車両との横方向相対位置、走行車線の中心と車両の幅方向中心との相対位置、道路上の歩行者と車両との相対位置等)、等を挙げることができる。 【0022】そして、これら各種走行データの内、車両の挙動や運転者の運転操作を表す走行データについては、車両に搭載した各種センサを用いて直接検出でき、車両の走行環境を表す走行データについては、車両に搭載したレーダ装置を用いて検出し得る車両周囲の先行車両や障害物の位置情報、車載カメラを用いて得られる車両周囲の画像情報、外部のサービスセンタから送信されてくる道路交通情報、車両に搭載されたナビゲーション装置等の情報機器で得られる車両の位置情報や道路情報、等を処理することにより検出することができる。 【0023】ところで、本発明の走行制御装置では、制御対象の非制御時(換言すれば走行制御の非実行時)に、各種走行データを所定数サンプリングし、そのサンプリングデータから好みデータを生成するが、当該走行制御装置が走行制御を実行していない場合であっても、車両に他の走行制御装置が搭載され、他の走行制御装置が動作しているとき(他の走行制御装置が運転者による車両の運転を代行・支援若しくは補助しているとき)には、車両は運転者の運転操作によって走行していないことになり、この状態で得られる走行データは、運転者の好みを正確に反映しないものとなる。 【0024】そこで、本発明の走行制御装置には、請求項2に記載のように、更に、第1のサンプリング禁止手段を設けて、運転者による車両の運転を代行・支援若しくは補助する他の走行制御装置の動作中には、サンプリング手段による走行データのサンプリング動作を禁止するようにするとよい。 【0025】そして、このようにすれば、サンプリング手段にてサンプリングされる走行データは、車両が運転者の運転操作だけで走行しているときの走行データとなり、数値化手段において、運転者の好みを正確に反映した好みデータを生成できることになる。 【0026】また、車両が運転者の運転操作だけで走行している場合であっても、運転者が衝突等の危険を回避するためにハンドルやブレーキを急激に操作したとき(急ハンドル時、急ブレーキ時等)に得られる走行データは、運転者の好みを反映したものとはならず、また、こうした走行データを用いて好みデータを生成することは、車両の走行安全上好ましくない。 【0027】そこで、本発明の走行制御装置には、請求項3に記載のように、更に、第2のサンプリング禁止手段を設けて、車両が走行安全上不適当な走行状態である場合には、サンプリング手段の動作を禁止するようにするとよい。そして、このようにすれば、サンプリング手段にてサンプリングされる走行データは、車両が安全に走行しているときの走行データとなり、数値化手段において、運転者の好みを正確に反映し、且つ、車両を安全走行させるのに好適な好みデータを生成できることになる。 【0028】尚、車両が走行安全上不適当な走行状態であるか否かは、検出手段にて検出される走行データの変化から判定できる。つまり、運転者が衝突等の危険を回避するために急激な運転操作(急ハンドル操作、急ブレーキ操作等)を行った際には、その運転操作だけでなく、車両の挙動も急激に変化するので、検出手段で得られる走行データの少なくとも一部は、その変化速度が通常よりも大きくなることから、こうした走行データの変化を監視して、走行データが急変した際に、走行安全上不適当な走行状態であると判断するようにすればよい。 【0029】ところで、本発明において、サンプリング手段にてサンプリングする走行データの種類を多くすればするほど、運転者毎に異なる固有の好みを最適に数値化できる。しかし、数値化手段において、運転者の好みを数値化するに当たって、サンプリング手段にてサンプリングした全ての走行データを用いるようにすると、最終的に得られる好みデータに、運転者個人の好みを特徴付けるものとして適切なものと不適切なものとが含まれることになってしまい、制御目標算出手段において算出される制御目標である車両の挙動が、運転者の好みに対応せず、不安定になってしまうことも考えられる。 【0030】つまり、例えば、サンプリング手段にてサンプリングされる走行データが4種類であり、目的変数である走行データをy、説明変数である走行データをx1,x2,x3、とした場合、数値化手段でこれらサンプリングデータの全てを用いるようにすると、数値化手段は、各々のタイミングでサンプリングした全てのサンプリングデータで「y=a1・x1+a2・x2+a3・x3+a4」が成り立つように、重回帰係数a1〜a4を所謂線形近似によって求め、これら各重回帰家数a1〜a4を好みデータとして設定することになるが、この場合、目的変数である走行データyと説明変数である特定の走行データxとの相対関係を線形近似できなければ、数値化手段で数値化された好みデータは、運転者個人の好みを表すパラメータとして不適切なものとなってしまう。 【0031】そこで、このような問題を防止するには、請求項4に記載のように、サンプリング手段にてサンプリングされた走行データの内、目的変数となる車両の挙動と他の走行データとの単相関係数を夫々算出する相関係数算出手段を設け、数値化手段では、その相関係数算出手段にて算出された単相関係数が所定値以上となる走行データを説明変数として重回帰分析を行うことにより、運転者の複数の好みを数値化するようにするとよい。 【0032】尚、相関係数算出手段において、目的変数とするn個の走行データを、y1,y2,・・・・yn、p個あるうちのj番目の説明変数を、x1j,x2j,・・・・xnjとした時、これらの間の相関係数rは、【0033】 【数5】
【0034】で計算する。但し、Sxj,Sy,Sxjyは、以下の式で計算する値である。 【0035】 【数6】
【0036】そして、このように計算される相関係数rは、−1以上、+1以下の値となり、絶対値が1に近いほど、目標変数yと説明変数xjの線形関係が強いことを表す指標となる。つまり、このようにすれば、数値化手段にて運転者の好みを数値化する際に説明変数として用いられる走行データが、目的変数である走行データと相関のとれた走行データに制限され、その走行データを用いて、運転者個人の好みを高精度に抽出することができるようになるのである。 【0037】一方、目的変数と説明変数とは、車両の全走行領域では線形近似が難しい場合であっても、車両の走行領域を制限すれば、容易に線形近似できることがある。このため、本発明(請求項1〜請求項4)の走行制御装置は、更に、請求項5に記載のように構成してもよい。 【0038】即ち、請求項5に記載の走行制御装置においては、検出手段にて検出される走行データの少なくとも一つを用いて、車両の走行領域が予め複数に分割された走行領域の何れに属するかを判定する領域判定手段を備え、サンプリング手段は、その領域判定手段にて判定された走行領域毎に走行データを所定数サンプリングし、数値化手段は、そのサンプリング手段にてサンプリングされた各走行領域毎の走行データを用いて、各走行領域毎に車両走行時の運転者の複数の好みを数値化し、制御目標算出手段は、数値化手段にて数値化された各走行領域毎の好みデータの内、領域判定手段にて判定された現在の走行領域に対応した好みデータを用いて、制御目標を算出する。 【0039】つまり、請求項5に記載の走行制御装置では、数値化手段が好みデータの算出に用いる走行データを、車両の各走行領域毎にサンプリングした走行データに制限することにより、好みデータである重回帰係数を算出する際の目的変数と各々の説明変数の相関係数が大きくなるようにしているのである。 【0040】このため、請求項5に記載の走行制御装置によれば、数値化手段による好みデータの数値化、及び、制御目標算出手段による制御目標の算出を、領域判定手段による走行領域の判定結果に従い、車両の各走行領域毎に行う必要があるが、数値化手段にて数値化される好みデータは、運転者の好みをより正確に反映したものとなり、走行制御実行時の車両の挙動を、より運転者好みの挙動に制御することができるようになる。 【0041】ところで、本発明の走行制御装置は、走行制御の非実行時に得られる走行データに基づき運転者の複数の好みを数値化し、その数値化した好みデータを用いて走行制御を実行することにより、走行制御実行時の車両の挙動を運転者好みの挙動に制御するのであるが、数値化手段によって数値化した好みデータが運転者の好みを反映できていないときには、走行制御実行時に、運転者が制御を中断させることが考えられる。 【0042】そこで、本発明の走行制御装置においては、請求項6に記載のように、当該走行制御装置による前記制御対象の制御時に、運転者の操作に基づき制御が中断される頻度を監視し、その頻度が多い時には、好みデータを初期値に戻す初期化手段を設けるとよい。ここで、初期値には、例えば、運転者の好みデータのおおよその平均を設定するようにするとよい。つまり、運転者が走行制御を中断する頻度が多い場合には、数値化手段によって数値化した好みデータが運転者の好みを正確に反映していないものとして、好みデータを初期化し、数値化手段による好みの数値化を再度実行させるのである。 【0043】このため、請求項6に記載の走行制御装置によれば、数値化手段の誤動作等によって運転者の好みを良好に数値化できなかったような場合に、数値化手段による好みデータの数値化を最初から実行させることにより、最終的には、運転者の好みを正確に反映させることのできる走行制御装置を構築できることになる。 【0044】尚、本発明の走行制御装置を実際の車両に搭載する際、その車両が多数の運転者により使用されるような場合には、運転者による自己申告若しくは運転者の識別手段によって、車両を実際に運転している運転者を識別し、その識別結果に従い、数値化手段及び制御目標算出手段を動作させる必要はある。つまり、数値化手段が、各運転者毎に好みデータの数値化を行い、制御目標算出手段が、現在運転中の運転者に対応した好みデータを用いて制御目標を算出するようにするのである。そして、このようにすれば、車両の運転者が代わっても、その運転者に対応した好みデータを用いて、走行制御を実行できることになり、運転者にとって最適な走行制御を実現できることになる。 【0045】一方、請求項7に記載の車両の走行制御装置は、上述した本発明(請求項1〜請求項6)を、自車両を先行車両に自動で追従させる自動追従制御装置に適用したものであり、検出手段は、走行データとして、少なくとも、自車両の前後方向の加減速度と、自車両と先行車両との相対車速と、自車両と先行車両との車間距離と目標車間距離との偏差である車間距離偏差とを検出し、数値化手段は、検出手段にて検出された走行データの内、自車両の前後方向の加減速度を目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、車両が先行車両に追従して走行する際の運転者の複数の好みを数値化し、制御目標算出手段は、数値化手段にて数値化された好みデータと検出手段にて検出された走行データの内の前記自車両の前後方向の加減速度を除く走行データとを用いて、車両前後方向の目標加減速度を算出し、制御手段は、自車両の前後方向の加減速度が前記目標加減速度となるように車両の駆動・制動系を構成している制御対象を制御する。 【0046】このため、請求項7に記載の走行制御装置によれば、自車両を先行車両に追従させるに当たって、当該装置の制御動作によって自車両を先行車両に追従させる際の車両の加減速度を、運転者が自らの運転操作によって自車両を先行車両に追従させるときの加減速度に制御することができるようになり、例えば、自車両と先行車両との間の車間距離が目標車間距離よりも長く、自車両を先行車両に接近させる際に、自車両の加速度が運転者の好みよりも高くなりすぎ、運転者に危険を感じさせるとか、逆に、加速度が運転者の好みよりも低くなって、運転者に応答性が悪いと感じさせる、といったようなことを防止できる。 【0047】次に、請求項8に記載の走行制御装置は、領域判定手段を備えた請求項5に記載の発明を、自動追従制御装置に適用したものであり、検出手段、数値化手段、制御目標算出手段、及び、制御手段は、請求項7に記載の装置と同様に動作する。従って、この請求項8に記載の装置によれば、請求項7に記載の装置と同様の効果が得られる。 【0048】そして、特に、この請求項8に記載の走行制御装置においては、領域判定手段が、走行領域の判定に、自車両及び先行車両の少なくとも一方の前後方向の加減速度を用い、サンプリング手段が、その加減速度を用いて判定された走行領域毎に走行データをサンプリングし、数値化手段が、そのサンプリングされた各走行領域毎の走行データを用いて、各走行領域毎に車両走行時の運転者の好みを数値化する。 【0049】このため、本発明によれば、数値化手段において、自車両を先行車両に追従させる際の運転者の好みを、自車両若しくは先行車両の加減速度の正負や大小に応じて設定できることになり、例えば、先行車両が加速した際に自車両を加速させる際の車両の挙動、あるいは先行車両が減速した際に自車両を減速させる際の車両の挙動を、運転者の好みに応じて最適に制御することができるようになる。 【0050】また次に、請求項9に記載の走行制御装置は、請求項8に記載の走行制御装置と同様、領域判定手段を備えた請求項5に記載の発明を、自動追従制御装置に適用したものであり、請求項8に記載の装置と異なる点は、領域判定手段が走行領域を判定する際に、先行車両の自車両に対する前後方向の相対加速度を用いる点である。 【0051】よって、この請求項9に記載の走行制御装置によれば、自車両を先行車両に追従させる際の運転者の好みを、先行車両と自車両との相対加速度の正負や大小に応じて設定できることになり、請求項8に記載の装置と同様、先行車両が加速した際に自車両を加速させる際の車両の挙動、あるいは先行車両が減速した際に自車両を減速させる際の車両の挙動を、運転者の好みに応じて最適に制御することができるようになる。 【0052】尚、請求項7〜請求項9何れかに記載の走行制御装置において、検出手段にて車間距離偏差を検出するには、先行車両との間の実際の車間距離をレーダ装置等を用いて測定して、その車間距離と目標車間距離との偏差を求めるようにすればよいが、この場合の目標車間距離は、固定値ではなく、請求項10に記載のように、車速(自車両の前後方向の速度)に応じて設定することが望ましい。 【0053】また、目標車間距離を車速に応じて設定するに当たっては、予め設定されたマップ若しくは演算式を用いて、車速から一義的に目標車間距離を設定するようにしてもよいが、車両を先行車両に追従させる際の車間距離は、運転者の好みによって大きくばらつくことから、車速から車間距離を設定するようにするのであれば、その設定に運転者の好みを反映させた好みデータを使用するようにするとよく、このためには、走行制御装置を請求項11に記載のように構成するとよい。 【0054】つまり、請求項11に記載の走行制御装置において、数値化手段は、制御目標算出手段が目標加減速度を算出するのに用いる好みデータに加えて、検出手段にて検出された自車両と先行車両との車間距離を目的変数、自車両の前後方向の速度を説明変数とする単回帰分析により、車両が先行車両に追従して走行する際の車間距離と自車速との関係を表す第2の好みデータを数値化し、検出手段は、その第2の好みデータと自車両の前後方向の速度とに基づき目標車間距離を算出する。このため、目標車間距離、延いては、この目標車間距離と実際の車間距離との偏差である車間距離偏差は、運転者の好みを反映したものとなり、自動追従制御実行時の車両の挙動を運転者の好みに応じてより細かく制御できることになる。 【0055】また次に、請求項12に記載の車両の走行制御装置は、上述した本発明を、車両を道路上の走行車線に沿って自動走行させる自動車線維持制御装置に適用したものであり、検出手段は、走行データとして、少なくとも、車両前後方向の速度と、ヨーレートと、走行路の道路曲率と、車両よりも所定距離前方の走行車線の幅方向中心位置と車両の幅方向中心位置との偏差とを検出し、数値化手段は、検出手段にて検出された走行データの内、車両のヨーレートを目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、車両が走行車線に沿って走行する際の運転者の複数の好みを数値化し、制御目標算出手段は、数値化手段にて数値化された好みデータと、検出手段にて検出された走行データの内の前記ヨーレートを除く走行データとを用いて、車両を走行車線に沿って走行させる際の目標ヨーレートを算出し、制御手段は、車両のヨーレートが目標ヨーレートとなるように車両の操舵系を構成している制御対象を制御する。 【0056】このため、請求項12に記載の走行制御装置によれば、車両を道路上の走行車線に沿って自動走行させるに当たって、車両の道路上での位置(道路の幅方向の位置)を運転者の好みの位置に制御することができるようになり、例えば、運転者が自らの運転操作によって車両を走行させる際に、走行車線の左寄りの位置で車両を走行させることを好む場合には、走行制御実行時にも、車両を走行車線の左寄りの位置で走行させるようにすることができる。また、本発明によれば、車両が走行車線から外れそうになった際に、車両を車線中央に戻すときの応答性(具体的には操舵装置の操舵角・操舵速度等)についても、運転者の好みに応じて制御できる。 【0057】 【発明の実施の形態】以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。 [第1実施例]図1は、本発明が適用された第1実施例の走行制御装置全体の構成を表すシステム構成図である。 【0058】本実施例の走行制御装置は、運転者からの自動走行制御実行指令(ACC実行指令)に従い、自車両を先行車両に追従して走行させる自動追従制御を行うためのものであり、自動追従制御用の電子制御装置(ACC・ECU)10を中心に構成されている。 【0059】そして、このACC・ECU10は、自車両と先行車両との相対的な走行状態を表す車間距離D及び相対車速VRと、先行車両の挙動を表す先行車両の車速(先行車速)V2及び先行車両の前後方向の加減速度(先行車加減速度)G2とを検出するためのレーダ装置10aを備えている。 【0060】また、ACC・ECU10は、通信線Lを介して、エンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6等の他の電子制御装置(ECU)に接続されており、これら他のECUと共に、車両制御系のネットワーク(所謂車載LAN)を構築している。 【0061】そして、ACC・ECU10は、通信線Lを介して接続された他のECUから、自車両の走行データとして、車両走行時の挙動を表す自車両の車速(自車速)V1及び自車両の前後方向の加減速度(自車加減速度)G1、運転者による車両運転時の操作量を表すステアリングの操舵角(ハンドル角)θ、車両周囲の走行環境を表す道路勾配α及び道路曲率Kを取得し、これらの走行データG1、V1、θ、α、Kと、レーダ装置10aを用いて得られる上述の走行データD、VR、V2、G2とを用いて、自動追従制御のための各種制御処理を実行する。 【0062】具体的には、ACC・ECU10は、運転者からACC実行指令が入力されると、制御目標として、自車両を先行車両に追従させるのに必要な目標加減速度を求め、自車両の加減速度を目標加減速度に制御するのに必要なエンジン2aのスロットルバルブの開度(スロットル開度)、自動変速機(AT)4aの変速段(AT変速段)、制動装置(ブレーキ装置)6aのブレーキ圧を設定し、これらを制御データとして、エンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6に送信する。 【0063】一方、エンジンECU2は、運転者によるアクセル操作に従いエンジン2aのスロットルバルブを開閉すると共に、エンジンの運転状態(スロットル開度に応じて変化する吸入空気量若しくは吸気管圧力、エンジン回転数、吸気温、排気温、冷却水温、排気中の酸素濃度等)に基づき、エンジン2aの各気筒に噴射供給する燃料噴射量や点火時期等を制御する、周知のエンジン制御を実行するものである。そして、エンジンECU2は、運転者からのACC実行指令を受けると、運転者によるアクセル操作に関わらず、ACC・ECU10から通信線Lを介して送信されてくる制御データに従い、スロットルバルブを開閉し、エンジン2aを自動運転する。 【0064】また、AT・ECU4は、予め設定された変速パターンに従い自動変速機4aの変速段を制御し、必要に応じて、自動変速機4aを構成しているトルクコンバータの入・出力軸を締結する、周知の変速制御及びロックアップ制御を実行するものである。そして、AT・ECU4は、運転者からのACC実行指令を受けると、自動変速機4aの変速段を、ACC・ECU10から通信線Lを介して送信されてくる制御データ(変速段)に従い制御する。 【0065】また次に、ブレーキECU6は、ブレーキペダルの非操作時にもブレーキ圧や車両の減速度を指令に応じて発生させ、車両を自動で減速させるものである。そして、ブレーキECU6は、運転者からのACC実行指令を受けると、運転者によるブレーキ操作がなされていなくても、ACC・ECU10から通信線Lを介して送信されてくる制御データ(減速度)に従いブレーキ圧を制御し、車両に制動力を加える。 【0066】尚、上記各ECU2、4、6、10は、通信機能を有するマイクロコンピュータを中心に構成されており、上記各制御は、マイクロコンピュータの演算処理により実現される。また、通信線Lには、上記ECU2、4、6、10の他、例えば、車両加速時や発進時等に生じる駆動輪のスリップを抑制するためにエンジン2aの出力を抑制したり制動装置6aを介して駆動輪に制動力を加えるトラクションコントロール用のECUや、車両の加減速時や旋回時にエンジン2aの出力を制御したり制動装置6aを介して任意の車輪に制動力を加えることにより車体姿勢を安定化させる姿勢制御用のECU等、自動追従制御を行うACC・ECU10とは別に、運転者による車両の運転を代行・支援する他のECUも接続される。 【0067】そして、エンジンECU2やブレーキECU6は、これらのECUから制御用のデータを受信した際にも、そのデータに従い、エンジン2aや制動装置6aを制御する。次に、図2は、自動追従制御を実行するためにACC・ECU10に付与された各機能を表す機能ブロック図である。尚、図2に示す各機能は、実際には、ACC・ECU10を構成するマイクロコンピュータが後述の制御データ算出処理及び目標加減速度算出処理を実行することにより実現される。 【0068】図2に示すように、ACC・ECU10は、自動追従制御を実行するのに必要な各種制御データを記憶する制御データ記憶部12を備える。この制御データ記憶部12は、実際には、ACC・ECU10を構成するマイクロコンピュータのメモリにより実現されるものであり、自車速V1に応じて運転者の好みに応じた目標車間距離を算出するための目標車間距離算出用データb1,b2、自動追従制御実行時に制御目標である目標加減速度を算出するための目標加減速度算出用データa1〜a10、及び、後述の制御データ算出部30にて目標加減速度算出用データを算出するのに用いられる単相関係数r1〜r9が、車両の全走行領域を複数(本実施例では8つ)に分割した各走行領域X毎に記憶されている。 【0069】尚、これらの制御データは、後述の制御データ算出部30の動作によって更新されるが、制御データ記憶部12には、これら各制御データの更新前の初期値も記憶されている。そして、これらの制御データの内、制御データ算出部30により更新される制御データは、ACC・ECU10の電源オフ時に制御データが消滅することのないよう、上記電源供給を受けるバックアップRAM若しくはデータの読み書きが可能なROM(EEPROM等)に記憶され、制御データの初期値は、マイクロコンピュータが実行するプログラムと同じROMに記憶される。 【0070】次に、制御データ記憶部12に記憶された目標加減速度算出用データa1〜a10は、運転者からACC実行指令が入力されているときに動作する目標加減速度算出部14に入力され、目標車間距離算出用データb1,b2は、目標車間距離算出部20に入力される。 【0071】また、ACC・ECU10には、自車速V1と先行車加減速度G2と道路勾配αとに基づき、車両の現在の走行状態が予め設定された8つの走行領域X(領域1〜4,1′〜4′)の内の何れに属するかを判定する車両走行領域判定部18が設けられており、この車両走行領域判定部18による判定結果(走行領域X)も、目標加減速度算出部14及び目標車間距離算出部20に入力される。 【0072】ここで、車両走行領域判定部18が判定する8つの走行領域X(領域1〜4,1′〜4′)は、図3(a)に示すように予め設定されている。つまり、この8つの走行領域は、車両の走行環境である道路勾配αが−4[deg]以下であるか否か(換言すれば車両が下り坂を走行しているか否か)によって、車両の全走行領域を、2つの走行領域に分割し、更に、これら各走行領域を、車両走行時の自車速V1と先行車加減速度G2とで決まる4つの走行領域に分割したものであり、車両走行領域判定部18は、これら各パラメータの変化に従い、現在の車両の走行領域Xが8つの走行領域(領域1〜4,1′〜4′)の何れに属するかを判定する。 【0073】具体的には、図3(b)に示すように、車両走行領域判定部18は、道路勾配αが−4[deg]より大きい走行領域では、自車両が発進して自車速V1が「0」の状態から10[km/h]に達するまでの走行領域Xを「領域1」として設定し、自車速V1が10[km/h]以上になると、走行領域Xを「領域2」に切り換える。また、走行領域Xが「領域2」であるとき、先行車両が減速運転に入って、先行車加減速度G2が−0.3[m/s2]以下になると、走行領域Xを「領域3」に切り換え、更に、この「領域3」で先行車両が加速し始め、先行車加減速度G2が+0.1[m/s2]以上となると、走行領域Xを再度「領域2」に設定する。また、走行領域Xが「領域3」であるとき、自車速V1が10[km/h]以下になると、走行領域Xを「領域4」に切り換え、この「領域4」で、車両が停車状態(自車速V1=10[km/h])に移行すると、走行領域を「領域1」に戻す。また更に、走行領域Xが「領域4」であるとき、先行車両が加速し始め、先行車加減速度G2が+0.1[m/s2]以上となると、走行領域Xを再度「領域2」に切り換える。 【0074】尚、図3(b)から明らかなように、車両走行領域判定部18は、道路勾配αが−4[deg]以下となる走行領域では、道路勾配αが−4[deg]より大きいときと同様の手順で、車両の走行領域を「領域1′」、「領域2′」、「領域3′」、「領域4′」の何れかに設定する。 【0075】次に、目標車間距離算出部20は、車両走行領域判定部18により判定された車両の現在の走行領域Xに対応した目標車間距離算出用データb1,b2を、制御データ記憶部12から取り込み、これと自車速V1とを用いて、次式(1) に従い、目標車間距離Doを算出する。 【0076】 Do=b1×V1+b2 …(1)また、この目標車間距離算出部20にて算出された目標車間距離Doは、車間距離偏差算出部24に入力され、車間距離偏差算出部24は、この目標車間距離Doと現在の車間距離Dとの偏差(D−Do)を車間距離偏差△Dとして算出し、その算出結果(車間距離偏差△D)を、走行データの一つとして、目標加減速度算出部14及び制御データ算出部30に出力する。 【0077】一方、目標加減速度算出部14は、車両走行領域判定部18により判定された車両の現在の走行領域Xに対応した目標加減速度算出用データa1〜a10を、制御データ記憶部12から取り込み、これら各データa1〜a10と、車間距離偏差算出部24にて走行データの一つとして算出された車間距離偏差△Dと、レーダ装置10a或いは他のECUから取得した走行データの内の自車加減速度G1を除く走行データV1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kとを用いて、次式(2) に従い、制御目標である目標加減速度Goを算出する。 【0078】
そして、その算出結果(目標加減速度Go)は、指令値算出部16に入力され、指令値算出部16は、自車加減速度G1を目標加減速度Goに制御するのに必要なスロットル開度、AT変速段、及びブレーキ圧を予め設定された手順に従い設定し、これらを制御データとして、エンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6に送信する。尚、指令値算出部16は、目標加減速度算出部14と同様、運転者からACC実行指令が入力されているときに動作する。 【0079】次に、制御データ算出部30は、制御データ記憶部12に記憶された目標車間距離算出用データb1,b2及び目標加減速度算出用データa1〜a10を、運転者の運転操作に基づく車両の実際の走行状態に沿って更新するためのものであり、サンプリング中止判定部26の判定結果に従い動作する。 【0080】即ち、サンプリング中止判定部26は、運転者による車両の運転を代行・支援する代行・支援装置(当該ACC・ECU10や、トラクションコントロール用のECU等)の作動状態を、これら各装置から出力される作動中信号により監視し、これらの作動中は、制御データ算出部30による数値化(詳しくは走行データのサンプリング)を禁止し、これら装置が全て動作していないとき(換言すれば車両が運転者の運転操作だけで運転されているとき)に、制御データ算出部30による数値化を許可する。 【0081】また、サンプリング中止判定部26は、ハンドル角θ、自車速V1、自車加減速度G1等の変化に基づき、運転者が緊急回避のための車両操作を行っているか否かを判断し、緊急回避操作がなされている場合にも、制御データ算出部30による数値化(詳しくは走行データのサンプリング)を禁止する。 【0082】そして、制御データ算出部30では、サンプリング中止判定部26にて数値化が許可されていれば、サンプリング部32が、レーダ装置10a或いは他のECUから取得した走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kと車間距離偏差算出部24で算出された車間距離偏差△Dとを所定周期で繰り返しサンプリングする。 【0083】尚、制御データ算出部30には、車両走行領域判定部18による判定結果も入力され、サンプリング部32は、車両走行領域判定部18により判定された車両の現在の走行領域X毎に、上記各走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kをサンプリングする。 【0084】また、サンプリング部32は、周期的に発生するサンプリングタイミングで、上記各走行データをサンプリングするのであるが、その際、例えば、レーダ装置10aにて先行車両を検出できず、全走行データをサンプリングできない場合は、そのサンプリングタイミングでの走行データのサンプリングを中止する。 【0085】また次に、制御データ算出部30には、サンプリング部32でサンプリングされた走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kを、各走行領域X毎に取り込み、自車加減速度G1と他の走行データV1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kとの単相関係数r1〜r9を各走行領域X毎に計算する相関係数計算部34と、サンプリング部32でサンプリングされた各走行領域X毎の走行データの内、相関係数計算部34にて計算された単相関係数rの絶対値が所定値(例えば0.5)以上となる走行データと自車加減速度G1とを各走行領域X毎に選択的に取り込むデータ選択部36と、データ選択部36が選択的に取り込んだ各走行領域X毎の走行データを用いて、目標加減速度算出用データを各走行領域X毎に更新する重回帰係数計算部38とが備えられている。 【0086】ここで、相関係数計算部34は、サンプリング中止判定部26により当該制御データ算出部30による数値化動作が許可されてから次に禁止されるまでの間にサンプリング部32でサンプリングされた各走行領域X毎の走行データを用いて、自車加減速度G1と他の走行データV1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kとの単相関係数r1〜r9を各走行領域X毎に計算する。そして、その後は、今回算出した各走行領域X毎の単相関係数r1〜r9と、制御データ記憶部12に記憶された対応する走行領域Xの単相関係数r1〜r9とを平均化し、その平均化後の単相関係数r1〜r9を、新たな単相関係数r1〜r9として制御データ記憶部12に記憶された単相関係数r1〜r9を更新すると共に、データ選択部36に出力する。 【0087】一方、重回帰係数計算部38は、基本的には、上記各走行領域X毎の走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kの内、自車加減速度G1を目的変数、他の走行データV1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kを説明変数とする次式(3) の重回帰モデルに従い、重回帰係数a1〜a10を各走行領域X毎に計算することにより、車両走行時の運転者の好みを表す好みデータを生成するものである。 【0088】
そして、本実施例では、各走行領域X毎の好みデータである重回帰係数a1〜a10を算出するに当たって、自車加減速度G1との単相関係数rが小さい走行データを説明変数として利用すると、運転者の好みを正確に反映しない好みデータを生成してしまうことがあるので、データ選択部36にて、各走行領域X毎に、自車加減速度G1との単相関係数rの絶対値が所定値以上の走行データを選択し、重回帰係数計算部38では、各走行領域X毎に、選択された走行データのみを説明変数とする重回帰モデルに従い、その説明変数に対応した重回帰係数を算出するようにしている。 【0089】例えば、サンプリング中止判定部26により数値化動作が許可されてから次に禁止されるまでの間に、ある走行領域Xでサンプリングされた走行データの中で、自車加減速度G1との単相関係数rの絶対値が所定値以上となる走行データが、相対車速VRと、車間距離偏差△Dとの2つであった場合、重回帰係数計算部38では、自車加減速度G1と相対車速VRと車間距離偏差△Dとの3つのサンプリングデータを用いて、次式(4) の重回帰モデルに従い、重回帰係数a4、a6、a10を計算し、他の走行データに対応した重回帰係数a1〜a3、a5、a7〜a9については「0」とする。 【0090】 G1=a4×VR+a6×△D+a10 …(4)また、重回帰係数計算部38は、上記のように重回帰係数a1〜a10を算出すると、その算出した重回帰係数a1〜a10と制御データ記憶部12に目標加減速度算出用データとして記憶されている重回帰係数a1〜a10とを平均化し、その平均化後の重回帰係数a1〜a10が、対応する走行領域Xでの運転者の好みを表す好みデータであるとして、制御データ記憶部12内の目標加減速度算出用データa1〜a10を、平均化後の重回帰係数a1〜a10に書き換える。 【0091】また次に、制御データ算出部30には、制御データ記憶部12に記憶された目標車間距離算出用データb1,b2を更新するための単回帰係数計算部39も備えられている。単回帰係数計算部39は、サンプリング中止判定部26により数値化動作が許可されてから次に禁止されるまでの間にサンプリング部32でサンプリングされた各走行領域X毎の走行データの内、車間距離Dと自車速V1を各走行領域X毎に取り込み、車間距離Dを目的変数、自車速V1を説明変数とする次式(5) の単回帰モデルに従い、単回帰係数b1,b2を各走行領域X毎に計算するものである。 【0092】 D=b1×V1+b2 …(5)そして、単回帰係数計算部39は、各走行領域X毎に単回帰係数b1,b2を計算すると、今回算出した単回帰係数b1,b2と制御データ記憶部12に目標車間距離算出用データとして記憶されている単回帰係数b1,b2とを各走行領域X毎に平均化し、その平均化後の単回帰係数b1,b2が、対応する走行領域Xでの運転者の好みを表す第2の好みデータであるとして、制御データ記憶部12内の目標車間距離算出用データb1,b2を、平均化後の単回帰係数b1,b2に書き換える。 【0093】尚、このように、制御データ記憶部12に記憶された制御データ(目標車間距離算出用データ、目標加減速度算出用データ等)は、制御データ算出部30の動作によって、運転者の好みに応じたデータに更新されるが、その更新後の制御データが運転者の好みを正確に反映しないことも考えられるので、本実施例では、このような場合に、制御データ初期化部28によって、制御データ記憶部12に記憶された制御データを初期化できるようにされている。 【0094】つまり、制御データ初期化部28は、当該ACC・ECU10による自動追従制御が中止された際、その制御中止は、運転者の好みを正確に反映していない事の結果としての操作とみなせる運転者のブレーキ操作若しくはアクセル操作による一時的な中止か、或いは、運転者が自らの操作で運転したい意志の表れとみなせる運転者のスイッチ操作による中止かを、運転者のアクセル操作量やブレーキ操作量に基づき判断することにより、制御データ記憶部12に記憶された制御データが適切であるか否かを判断し、制御データが不適切であると判断した際には、制御データ記憶部12に記憶された制御データを初期化する。 【0095】以上のように、ACC・ECU10では、運転者の運転操作に基づく車両走行時に取得した各種走行データを用いて、自動追従制御実行時に制御目標である目標加減速度Goを算出するのに用いる制御データ(目標車間距離算出用データ及び目標加減速度算出用データ)を更新することにより、自動追従制御実行時の車両の挙動を運転者個人の好みに近づけるのであるが、次に、図2に示した各機能を実現するために、ACC・ECU10を構成するマイクロコンピュータにて実行される制御処理を、図4、図5に示すフローチャートに沿って説明する。 【0096】まず、図4は、主として、上述した制御データ算出部30としての機能を実現するために、マイクロコンピュータにて実行される制御データ算出処理を表すフローチャートである。図4に示す如く、この処理では、まずS110(Sはステップを表す)にて、当該ACC・ECU10を含む代行・支援装置が作動中か否かを判定する、サンプリング中止判定部26としての処理を実行し、代行・支援装置が作動中でなければ、S120に移行する。尚、S110の処理は、本発明(請求項2)の第1のサンプリング禁止手段に相当する。 【0097】次に、S120では、今まで当該ACC・ECU10による自動追従制御が実行されており、運転者がブレーキ操作やアクセル操作等のACC解除操作によって、自動追従制御が一時的に解除された直後であるか否かを判断する。そして、ACC解除操作により自動追従制御が解除された直後であれば、S130にて、過去のACC解除操作の履歴から、自動追従制御実行時にACC解除操作がなされる頻度(操作頻度)を計算し、S140にて、操作頻度が予めされた上限値よりも高いか否かを判断する。 【0098】そして、S140にて、操作頻度が高いと判断された場合には、制御データ記憶部12に記憶された目標車間距離算出用データ及び目標加減速度算出用データは、運転者の好みを正確に反映していないものと判断して、S150に移行し、制御データ記憶部12に記憶された全制御データ(目標車間距離算出用データ、目標加減速度算出用データ、単相関係数)を初期値に設定する、制御データ初期化部28としての処理を実行し、当該処理を一旦終了する。尚、S140及びS150の処理は、本発明(請求項6)の初期化手段に相当する。 【0099】一方、S140にて、操作頻度が上限値以下であると判断されるか、或いは、S120にて、ACC解除操作はなされていないと判断された際には、S160にて、現在、運転者が緊急回避のための車両操作を行っているか否かを判断する。具体的には、運転者が事故を回避するために急ハンドル,急ブレーキ等の運転操作を行ったか否かを、ハンドル角θ、自車速V1、自車加減速度G1等の変化から判定する、サンプリング中止判定部26としての処理を実行する。 【0100】そして、S160にて、運転者による緊急回避操作がなされていると判断されると、そのまま当該処理を終了し、逆に、運転者による緊急回避操作はなされていないと判断されると、続くS170に移行する。尚、このS160の処理は、本発明(請求項3)の第2のサンプリング禁止手段に相当する。 【0101】次に、S170では、レーダ装置10a或いは他のECUから走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kを取得する車両走行状態検出処理を実行する。そして、続くS175では、S170の検出処理によって、全ての走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kを取得できたか否かを判断し、全ての走行データを取得できていなければ、そのまま当該処理を終了し、逆に、全ての走行データを取得できていれば、S180に移行する。 【0102】S180では、S170の検出処理によって取得した走行データの内、先行車加減速度G2と自車速V1と道路勾配αとを用いて、図3に示した条件に従い、車両の現在の走行領域Xが8つの走行領域(領域1〜4,1′〜4′)の何れに属するかを判定する、車両走行領域判定部18(換言すれば本発明(請求項5、7)の領域判定手段)としての処理を実行する。 【0103】また、続くS190では、制御データ記憶部12としてのメモリ(バックアップRAM等)からS180にて判定された走行領域Xに対応した目標車間距離算出用データb1,b2を取り込み、続くS190にて、このデータb1,b2と、S170の検出処理によって取得した自車速V1とを用いて、上記(1) 式に従い、目標車間距離Doを算出する、目標車間距離算出部20としての処理を実行する。 【0104】そして、続くS200では、S170の検出処理によって取得した車間距離Dと、S190で算出した目標車間距離Doとを用いて、車間距離偏差△D(=D−Do)を算出する、車間距離偏差算出部24としての処理を実行し、続くS210では、S170の検出処理によって取得した全走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kと、S200で算出した車間距離偏差△Dとを、S180にて判定された走行領域Xに対応したサンプリングデータとして、メモリに記憶するサンプリング部32としての処理を実行し、当該処理を一旦終了する。 【0105】尚、上記S170〜S200の一連の処理は、レーダ装置10a或いは他のECUに設けられた走行データ検出用のセンサと共に、本発明の検出手段として機能し、S210の処理は、本発明のサンプリング手段として機能する。一方、S110にて、当該ACC・ECU10を含む代行・支援装置の何れかが作動中であると判断された際には、S215に移行して、現在、当該ACC・ECU10が自動追従制御を開始した直後(ACC作動開始直後)であるか否かを判断する。そして、現在、ACC作動開始直後でなければ、そのまま当該処理を一旦終了し、逆に、ACC作動開始直後であれば、続くS220に移行して、上述の処理によってサンプリングされたサンプリングデータ(走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、K)がメモリ内に記憶されているか否かを判断する。 【0106】そして、メモリにサンプリングデータがなければ、そのまま当該処理を終了し、メモリにサンプリングデータが所定数存在すれば、このサンプリングデータに基づき、制御データ記憶部12内の制御データを更新するために、S230〜S260の処理を実行する。 【0107】即ち、まず、S230では、各走行領域X毎に、メモリから自車速V1と車間距離Dのサンプリングデータを読み出し、上記(5) 式の単回帰モデルに従い、単回帰係数b1,b2を算出して、制御データ記憶部12としてのメモリに記憶された目標車間距離算出用データを更新する、単回帰係数計算部39(換言すれば請求項11に記載の数値化手段)としての処理を実行する。 【0108】また、S240では、各走行領域X毎に、メモリから全走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kのサンプリングデータを読み出し、その読み出したサンプリングデータの内、重回帰分析の際に目的変数として用いられる自車加減速度G1と、説明変数として用いられる他の走行データV1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kとの単相間係数r1〜r9を算出し、制御データ記憶部12としてのメモリに記憶された単相関係数を更新する、相関係数計算部34(換言すれば本発明(請求項4)の相関係数算出手段)としての処理を実行する。 【0109】次に、S250では、S240にて各走行領域X毎に更新された単相間係数r1〜r9の内、絶対値が所定値(例えば0.5)以上となる単相関係数ri,rj…に対応した走行データのサンプリングデータと、自車加減速度G1のサンプリングデータとを、各走行領域X毎に読み出し、その読み出した自車加減速度G1を目的変数、他の走行データを説明変数とする重回帰分析により、重回帰係数ai,aj,…を算出する。 【0110】そして、続くS260では、S250にて各走行領域X毎に算出された重回帰係数ai,aj,…を用いて、制御データ記憶部12としてのメモリに記憶された各走行領域X毎の目標加減速度算出用データa1〜a10を更新し、メモリ内の全サンプリングデータを消去した後、当該処理を一旦終了する。 【0111】尚、S260にて目標加減速度算出用データa1〜a10を更新する際、単相関係数rが小さく、S250にて重回帰係数の計算がなされなかった目標加減速度算出用データについては、上述したように、S250による重回帰分析の結果が「0」であるとして、目標加減速度算出用データa1〜a10の更新(平均化)がなされる。 【0112】そして、本実施例において、上記S250,S260の処理は、上述したデータ選択部36及び重回帰係数計算部38(換言すれば本発明の数値化手段)として機能する。次に、図5は、主として、上述した目標加減速度算出部14としての機能を実現するために、ACC・ECU10を構成するマイクロコンピュータにて実行される目標加減速度算出処理を表すフローチャートである。 【0113】図5に示すように、この処理では、まずS310にて、レーダ装置10a或いは他のECUから走行データV1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kを取得する車両走行状態検出処理を実行する。そして、続くS320では、S310の検出処理によって取得した走行データの内、先行車加減速度G2と自車速V1と道路勾配αとを用いて、図3に示した条件に従い、車両の現在の走行領域Xが8つの走行領域(領域1〜4,1′〜4′)の何れに属するかを判定する、車両走行領域判定部18(換言すれば本発明(請求項5、7)の領域判定手段)としての処理を実行する。 【0114】また、続くS330では、制御データ記憶部12としてのメモリからS320にて判定された走行領域Xに対応した目標車間距離算出用データb1,b2を取り込み、S340にて、このデータb1,b2と、S310の検出処理によって取得した自車速V1とを用いて、上記(1) 式に従い、目標車間距離Doを算出する、目標車間距離算出部20としての処理を実行する。 【0115】次に、S350では、S310の検出処理によって取得した車間距離DとS340で算出した目標車間距離Doとを用いて、車間距離偏差△D(=D−Do)を算出する、車間距離偏差算出部24としての処理を実行する。そして、続くS360では、制御データ記憶部12としてのメモリから目標加減速度算出用データa1〜a10を読み込み、S370にて、その読み込んだ目標加減速度算出用データa1〜a10と、S310の検出処理によって取得した全走行データV1、θ、V2、VR、D、G2、α、Kと、S350で算出した車間距離偏差△Dとを用いて、上記(2) 式に従い、自動追従制御の制御目標である目標加減速度Goを算出する、目標加減速度算出部14(換言すれば本発明の制御目標算出手段)としての処理を実行し、当該処理を一旦終了する。 【0116】尚、この目標加減速度算出処理で算出された目標加減速度Goは、一旦メモリに記憶され、指令値算出部16(換言すれば本発明の制御手段)としての図示しない制御量算出処理にて、エンジン2aのスロットル開度、自動変速機4aの変速段、制動装置6aのブレーキ圧力を算出するのに用いられる。 【0117】以上説明したように、本実施例では、自動追従制御のための制御目標である自車両の目標加減速度Goを設定する際、自車速V1,ハンドル角θ,先行車速V2,相対車速VR,車間距離D,先行車加減速度G2,道路勾配α,道路曲率K,及び車間距離偏差△Dを用い、しかも、これら各走行データV1,θ,V2,VR,D,G2,α,K,△Dから目標加減速度Goを設定するのに用いる目標加減速度算出用データa1〜a10を、車両が運転者の運転操作により走行しているときにサンプリングした走行データG1、V1、θ、V2、VR、D、△D、G2、α、Kを用いた重回帰分析により得られる重回帰係数(好みデータ)によって更新する。 【0118】このため、本実施例によれば、自動追従制御実行時の車両の挙動を、運転者好みの挙動に制御することができ、単回帰分析により学習した学習結果に基づき車間距離等の走行環境を設定する従来装置に比べて、運転者にとってより良い自動追従制御を実現できる。 【0119】また、本実施例では、重回帰分析により好みデータである重回帰係数a1〜a10を算出する際には、図6に例示するように、車両の走行領域Xを複数の走行領域(図6では領域1〜4)に分割して、各走行領域X毎に走行データをサンプリングし、しかも、そのサンプリングした走行データの内、重回帰分析時の目的変数となる自車加減速度G1と他の走行データとの単相間係数rを算出して、単相間係数rの絶対値が所定値(例えば0.5)以上となる走行データと自車加減速度G1を用いて、その走行データに対応する重回帰係数を算出する。 【0120】このため、本実施例によれば、重回帰分析にて重回帰係数を算出する際に用いる説明変数と目的変数との相関がとれず、運転者の好みデータである重回帰係数(換言すれば目標加減速度算出用データa1〜a10)が運転者の好みを反映しないものとなる、といったことを防止し、運転者個人の好みを正確に反映した目標加減速度算出用データa1〜a10を用いて、目標加減速度Goを設定することができる。 【0121】尚、図6は、道路勾配αが−4[deg]よりも大きい略平坦路若しくは上り坂を車両が走行しているときの各走行データG1,V1,θ,V2,VR,D,△D,G2,α,Kの変化と、その走行時に先行車加減速度G2と自車速V1とで設定される走行領域X(領域1〜4)の変化と、各走行領域X毎に算出される自車加減速度G1と他の走行データV1,θ,V2,VR,D,△D,G2,α,Kとの単相関係数及び重回帰係数とを関連づけて記述したタイムチャートであり、図6にハッチングを付与した走行データV1,θ,V2,VR,D,△D,G2,α,Kの領域は、自車加減速度G1との単相関係数の絶対値が所定値(0.5)未満となって、重回帰分析の際に重回帰係数が「0」に設定される領域を表す。 【0122】そして、図6において、例えば、領域1では、自車加減速度G1との単相関係数rの絶対値が所定値(0.5)以上となるサンプリングデータが先行車速V2と相対車速VRと車間距離Dとのサンプリングデータであり、目標加減速度算出用データa1〜a10の更新のために算出される重回帰係数が、これら各走行データV2,VR,Dに対応したa3,a4,a5と、定数項となる重回帰係数a10であり、他の走行データV1,θ,△D,G2,α,Kに対応した重回帰係数a1,a2,a6〜a9には「0」が設定され、この領域1での目標加減速度算出用データa1〜a10は、こうした重回帰分析により設定された値0を含む重回帰係数a1〜a10との平均化により更新されることを表している。 【0123】また次に、本実施例では、図7に例示するように、ACC・ECU10を含む代行・支援装置が作動しているときや、運転者が衝突等の危険を回避するためにハンドルやブレーキを急激に操作したとき(緊急回避操作時)には、重回帰係数の計算に用いる走行データのサンプリングを中止し、車両が運転者の操作によって安定走行している場合に限って、走行データのサンプリングを行うようにしている。 【0124】このため、本実施例によれば、車両が走行安全上不適当な走行状態である場合には走行データのサンプリングが禁止されることになり、好みデータである重回帰係数a1〜a10及び単回帰係数b1,b2は、運転者が車両を安全に走行させているときの走行データを用いて算出されることになる。よって、本実施例によれば、自動追従制御実行時に、これら重回帰係数a1〜a10及び単回帰係数b1,b2により更新される目標加減速度算出用データa1〜10及び目標車間距離算出用データb1,b2を用いて、車両を安全に走行させることができる。 【0125】また更に、本実施例では、図8に例示するように、自動追従制御実行時に、運転者のブレーキ操作やアクセル操作等によって制御が一時的に中断される頻度が高い場合(図8は、30秒よりも短い短時間の間に、運転者のブレーキ操作によって自動追従制御が2回も中断された場合を表している)には、制御に用いる目標車間距離算出用データb1,b2及び目標加減速度算出用データa1〜a10を、初期値に戻すようにしている。 【0126】このため、本実施例によれば、単回帰分析或いは重回帰分析を正常に行うことができず、好みデータとしての単回帰係数b1,b2或いは重回帰係数a1〜a10が運転者の好みを反映しないものとなって、目標車間距離算出用データb1,b2及び目標加減速度算出用データa1〜a10を正常に更新できなかったとしても、これら各データを初期化して、その後、新たなサンプリングデータを用いて、これら各データを運転者の好みを反映したものに更新できることになる。よって本実施例によれば、最終的には、運転者の好みを正確に反映させることのできる自動追従制御装置を構築できることになる。 【0127】ここで、本実施例では、好みデータである重回帰係数a1〜a10を精度よく算出できるようにするために、先行車加減速度G2と自車速V1と道路勾配αとを用いて、車両の走行領域Xを8つの走行領域(領域1〜4,1′〜4′)に区分し、これら各走行領域X毎に走行データのサンプリングして制御データを設定するものとして説明したが、走行領域Xの区分に用いるデータや区分する方法等については、制御対象となる車両の特性や制御の種類等に応じて適宜設定すればよい。 【0128】但し、本実施例のような自動追従制御を行う際には、先行車両の加速に伴い自車両を加速させる場合と、先行車両の減速に伴い自車両を減速させる場合とで、運転者の好みが大きく分かれるので、少なくとも、図9(a)に例示するように、先行車両(若しくは自車両)の加減速度G2を用いて走行領域Xを区分するか、或いは、図9(b)に例示するように、先行車両の自車両に対する相対加速度を用いて走行領域Xを区分することが望ましい。 【0129】尚、図9(a)は、走行データのサンプリング時、車両走行時に先行車両が存在する際に走行領域1を設定し、走行領域1での走行中に先行車両が減速し始め、先行車加減速度G2が−0.3[m/s2]以下になったときに、走行領域2を設定し、走行領域2での走行中に先行車両が加速し始め、先行車加減速度G2が+0.1[m/s2]以上となった際に、走行領域1を設定する、というように、先行車両の加減速度G2に応じて、走行領域Xを走行領域1と走行領域2の何れかに設定することを表している。 【0130】また、図9(b)は、走行データのサンプリング時、車両走行時に先行車両が存在する際に走行領域1を設定し、先行車両と自車両との相対加速度が−0.3[m/s2]以下になったとき(つまり、自車両が先行車両に近付きつつあるとき)に、走行領域2を設定し、走行領域2での走行中に先行車両と自車両との相対加速度が+0.1[m/s2]以下になったとき(つまり、自車両が先行車両から離れつつあるとき)に、走行領域1を設定する、というように、先行車両の自車両に対する相対加速度に応じて、走行領域Xを走行領域1と走行領域2の何れかに設定することを表している。[第2実施例]次に、本発明の第2実施例を図10〜図15を用いて説明する。 【0131】本実施例は、第1実施例の走行制御装置と同様、自車両を先行車両に自動追従させる自動追従制御装置に関するものであり、装置全体のシステム構成は、図1に示した第1実施例のものと同様である。そして、第1実施例と異なる点は、ACC・ECU10が制御目標である目標加減速度Goを算出する際に、自車両と先行車両との相対車速VRと、車間距離偏差△Dとをパラメータとするマップを用いる点と、このマップを、運転者の運転操作に基づく車両走行時にサンプリングしたサンプリングデータを用いて、図11(a)に示す基本マップから、図14若しくは図15に示すような、運転者好みのマップに更新する点である。以下、このように第1実施例と異なる点を中心に、本実施例の走行制御装置を説明する。 【0132】まず、図10は、本実施例のACC・ECU10の各機能を表す機能ブロック図である。図10に示すように、本実施例のACC・ECU10は、自動追従制御を実行するのに必要な制御データとして、上述の目標加減速度算出用マップと目標車間距離算出用データb1,b2との2種類のデータが記憶された制御データ記憶部12を備える。 【0133】尚、この制御データ記憶部12は、第1実施例のものと同様、実際には、ACC・ECU10を構成するマイクロコンピュータのメモリにより実現されるものであり、後述の制御データ算出部30の動作によって更新されて実際に制御に用いられる制御データ(目標加減速度算出用マップ及び目標車間距離算出用データ)だけでなく、これらの更新前の初期データも記憶されている。 【0134】また、この初期データの一つである目標加減速度Go算出用の基本マップは、相対車速VRと車間距離偏差△Dとをパラメータとする次式(6)Go=a1×VR+a2×△D+a0 …(6)に従い作成されており、本実施例では、a1=0.1、a2=0.04,a0=0として、「Go=0.1×VR+0.04×△D」となるように設定されている。従って、この基本マップによれば、図11(b)及び(c)に示すように、目標加減速度Goは、相対車速VR及び相対車速VRに夫々比例して変化することになる。 【0135】次に、制御データ記憶部12に記憶された目標加減速度算出用マップは、運転者からACC実行指令が入力されているときに動作する目標加減速度算出部14に入力され、目標車間距離算出用データb1,b2は、目標車間距離算出部20に入力される。 【0136】そして、目標加減速度算出部14は、レーダ装置10aにより検出される相対車速VRと、車間距離偏差算出部24にて算出される車間距離偏差△Dとを用いて、目標加減速度算出用マップに従い目標加減速度Goを算出し、目標車間距離算出部20は、他のECUから取得した走行データである自車速V1を用いて、上述の(1) 式に従い、目標車間距離Doを算出する。 【0137】尚、車間距離偏差算出部24は、第1実施例のものと同様、目標車間距離算出部20にて算出された目標車間距離Doと、レーダ装置10aにより検出される車間距離Dとの偏差(D−Do)を、車間距離偏差△Dとして算出するものである。 【0138】また、目標加減速度算出部14にて算出された目標加減速度Goは、第1実施例と同様、指令値算出部16に入力され、指令値算出部16は、自車加減速度G1を目標加減速度Goに制御するのに必要なスロットル開度、AT変速段、及びブレーキ圧を予め設定された手順に従い設定して、これらを、エンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6に送信する。 【0139】一方、本実施例の制御データ算出部30は、サンプリング部42と、単回帰係数計算部44と、重回帰係数計算部46と、目標加減速度算出用マップ更新部48とから構成されており、第1実施例と同様のサンプリング中止判定部26の判定結果に従い動作する。 【0140】ここで、サンプリング部42は、運転者の運転操作に基づく車両走行時に、相対車速VR、車間距離D、自車速V1、自車加減速度G1、及び、車間距離偏差△Dを、所定周期で繰り返しサンプリングし、単回帰係数計算部44は、サンプリング部42でサンプリングされた各種走行データのうち、自車速V1を説明変数、車間距離Dを目的変数とする単回帰モデル(前述の(5) 式参照)に従い、単回帰係数b1,b2を計算する。 【0141】尚、単回帰係数計算部44は、単回帰係数b1,b2を算出すると、第1実施例の単回帰係数計算部39と同様、その算出した単回帰係数b1,b2と制御データ記憶部12に目標車間距離算出用データとして記憶されている単回帰係数b1,b2とを平均化し、その平均化後の単回帰係数b1,b2が運転者の好みを表す第2の好みデータであるとして、制御データ記憶部12内の目標車間距離算出用データb1,b2を、平均化後の単回帰係数b1,b2に書き換える。 【0142】一方、重回帰係数計算部46は、サンプリング部32でサンプリングされた走行データのうち、自車加減速度G1を目的変数、相対車速VR及び車間距離偏差△Dを説明変数とする次式(7) の重回帰モデルに従い、重回帰係数a0〜a2を計算することにより、車両走行時の運転者の好みを表す好みデータを生成する。 【0143】 G1=a1×VR+a2×△D+a0 …(7)そして、目標加減速度算出用マップ更新部48は、重回帰係数計算部46にて算出された重回帰係数a0〜a2を用いて、制御データ記憶部12内の目標加減速度算出用マップを更新する。 【0144】また、このように制御データ算出部30の動作によって更新される制御データ記憶部12内の制御データ(目標車間距離算出用データ及び目標加減速度算出用マップ)は、制御データ算出部30の誤動作等によって、運転者の好みを正確に反映しなくなることも考えられるので、本実施例においても、上記第1実施例と同様の制御データ初期化部28の動作によって、制御データ記憶部12に記憶された制御データが適切であるか否かを判断し、制御データが不適切である際には、制御データ記憶部12に記憶された制御データを初期化するようにされている。 【0145】以上のように、本実施例では、ACC・ECU10において、運転者の運転操作に基づく車両走行時に取得した各種走行データを用いて、目標加減速度算出用マップ及び目標車間距離算出用データを更新することにより、自動追従制御実行時の車両の挙動を運転者個人の好みに近づけるのであるが、次に、図10に示した各機能を実現するためにマイクロコンピュータにて実行される制御処理を、図12、図13に示すフローチャートに沿って説明する。 【0146】まず、図12は、目標加減速度を算出するために実行される目標加減速度算出処理を表すフローチャートである。図12に示すように、この処理では、まずS410にて、レーダ装置10a或いは他のECUから自車速V1、相対車速VR、車間距離Dを取得する車両走行状態検出処理を実行する。そして、続くS420では、S410で取得した自車速V1と、制御データ記憶部12としてのメモリに記憶された目標車間距離算出用データb1,b2とを用いて、上述の(1) 式に従い目標車間距離Doを算出する、目標車間距離算出部20としての処理を実行する。 【0147】また、続くS430では、S410の検出処理で取得した車間距離DとS420で算出した目標車間距離Doとを用いて、車間距離偏差△D(=D−Do)を算出する、車間距離偏差算出部24としての処理を実行する。そして、続くS440では、S410で取得した相対車速VRとS430で算出した車間距離偏差△Dとを用いて、制御データ記憶部12としてのメモリに記憶された目標加減速度算出用マップに従い目標加減速度Goを算出する、目標加減速度算出部14(換言すれば本発明の制御目標算出手段)としての処理を実行し、当該処理を一旦終了する。 【0148】次に、図13は、目標加減速度算出用マップ及び目標車間距離算出用データを運転者好みの値に更新するために実行される制御データ算出処理を表すフローチャートである。図13に示す如く、この処理が開始されると、第1実施例のS110〜S160と同様の手順で、S510〜S560の処理が実行される。そして、このS510〜S560の一連の処理で、当該ACC・ECU10を含む代行・支援装置が制御を停止しており、運転者によるACC解除操作の頻度が上限値以下で、しかも、運転者による緊急回避操作がなされていないと判断されると、S570に移行して、レーダ装置10a或いは他のECUから自車速V1、相対車速VR、車間距離D、及び自車加減速度G1を取得する車両走行状態検出処理を実行する。 【0149】そして、続くS575では、S570の検出処理によって、上記各走行データV1、VR、D、G1を取得できたか否かを判断し、取得できていなければそのまま当該処理を終了する。また、逆に、上記各走行データV1、VR、D、G1を取得できた場合には、上記S420、S430と同様の手順で、自車速V1と目標車間距離算出用データb1,b2とを用いて目標車間距離Doを算出(S580)すると共に、車間距離偏差△D(=D−Do)を算出する(S590)。 【0150】そして、最後に、S600にて、S570で取得した自車速V1、相対車速VR、車間距離、自車加減速度G1とS590で算出した車間距離偏差△Dをメモリに記憶するサンプリング部32としての処理を実行し、当該処理を一旦終了する。 【0151】尚、上記S570〜S590の処理は、レーダ装置10a或いは他のECUに設けられた走行データ検出用のセンサと共に、本発明の検出手段として機能し、S600の処理は、本発明のサンプリング手段として機能する。一方、S510にて、当該ACC・ECU10を含む代行・支援装置の何れかが作動中であると判断された際には、S615に移行して、現在、当該ACC・ECU10が自動追従制御を開始した直後(ACC作動開始直後)であるか否かを判断する。そして、現在、ACC作動開始直後でなければ、そのまま当該処理を一旦終了し、逆に、ACC作動開始直後であれば、S610に移行して、メモリにサンプリングデータが記憶されているか否かを判断する。そして、メモリにサンプリングデータがなければ、そのまま当該処理を終了し、メモリにサンプリングデータがあれば、S620に移行して、メモリから自車速V1と車間距離Dのサンプリングデータを読み出し、上記(5) 式の単回帰モデルに従い、単回帰係数b1,b2を算出して、目標車間距離算出用データを更新する、単回帰係数計算部39(換言すれば請求項11に記載の数値化手段)としての処理を実行する。 【0152】また、続くS630では、メモリから自車加減速度G1,相対車速VR、車間距離偏差△Dの全サンプリングデータを読み出し、上記(7) 式の重回帰モデルに従い、重回帰係数a0〜a2を計算することにより、運転者の好みを表す好みデータを生成する、重回帰係数計算部46としての処理を実行する。そして、続くS640では、S630で算出した重回帰係数a0〜a2を用いて、目標加減速度算出用マップを更新する、目標加減速度算出用マップ更新部48としての処理を実行し、当該処理を一旦終了する。尚、本実施例において、上記S630,S640の処理は、本発明の数値化手段に相当する。 【0153】以上説明したように、本実施例では、自動追従制御のための制御目標である自車両の目標加減速度Goを設定する際に、相対車速VRと車間距離偏差△Dとをパラメータとするマップを用い、このマップを、車両が運転者の運転操作により走行しているときにサンプリングした自車加減速度G1と相対車速VRと車間距離偏差△Dとを用いた重回帰分析により得られる重回帰係数(好みデータ)によって更新する。 【0154】このため、本実施例によれば、運転者が車両を運転するにつれて、目標加減速度算出用マップが、図14に示した基本マップから、図14若しくは図15に示す運転者好みのマップへと更新されることになり、第1実施例の走行制御装置と同様、自動追従制御実行時の車両の挙動を、運転者好みの挙動に制御することができるようになる。 【0155】尚、図14(a)はドライバーAの好みのマップを表し、「Go=0.15×VR+0.04×△D」となるように更新されたものである。また、図15(b)はドライバーBの好みのマップを表し、「Go=0.1×VR+0.1×△D」となるように更新されたものである。 【0156】従って、図14(a)に示すドライバーA好みのマップによれば、相対車速VRの変化に対する目標加減速度Goの変化割合が、図11(b)に示した基本マップのそれよりも急峻となり(図14(b)参照)、逆に図15(a)に示すドライバーB好みのマップによれば、車間距離偏差△Dの変化に対する目標加減速度Goの変化割合が、図11(c)に示した基本マップのそれよりも急峻となる(図15(b)参照)。 【0157】そして、このことから、自車両を先行車両に追従させる際に、ドライバーAは、相対車速VRを一定に保つように自車両を頻繁に加減速する傾向があり、ドライバーBは、車間距離Dを一定に保つように自車両を頻繁に加減速する傾向があることが判る。[第3実施例]図16は、第3実施例の走行制御装置全体の構成を表すシステム構成図である。 【0158】本実施例の走行制御装置は、運転者からの車線維持制御実行指令に従い、車両を道路上の走行車線に沿って自動で走行させる自動車線維持制御を行うためのものであり、自動車線維持制御用の電子制御装置(車線維持ECU)50を中心に構成されている。 【0159】そして、この車線維持ECU50は、車両進行方向前方の道路を撮影し、その撮影した画像を処理することにより、車両よりも所定距離前方の走行車線の幅方向中心位置と車両の幅方向中心位置との偏差(横方向位置偏差)△P、及び、走行路の道路曲率Kを検出するための撮像装置(詳しくは画像処理機能を有するカメラ)50aを備えている。 【0160】また、車線維持ECU50は、上述したACC・ECU10と同様、通信線Lを介して、エンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6、操舵ECU8等の他の電子制御装置(ECU)に接続されており、これら他のECUと共に、車両制御系のネットワーク(所謂車載LAN)を構築している。 【0161】そして、車線維持ECU50は、通信線Lを介して接続された他のECUから、車両の走行データとして、車両走行時の車両の挙動を表す走行データである、前後方向の速度(つまり車速)V1、前後方向の加減速度G1、ヨーレートY、及び、横方向の加速度(横加速度)Gyと、運転者による車両運転時の操作量を表す走行データである、ハンドル角θ、アクセル開度A、ブレーキの踏込量(ブレーキストローク)B、及びAT変速段Sとを夫々取得し、これらの走行データθ,A,B,S,V1,G1,Y,Gyと、撮像装置50aにより検出される車両の走行環境(道路曲率K及び横方向位置偏差△P)とを用いて、自動車線維持制御のための各種制御処理を実行する。 【0162】具体的には、車線維持ECU50は、運転者から車線維持制御実行指令が入力されると、制御目標として、目標ヨーレートYoと目標加減速度(前後方向の加減速度)Goとを算出し、更に、ヨーレートY及び加減速度G1をこれら制御目標に制御するのに必要なスロットル開度、AT変速段、ブレーキ圧、及び、タイヤ角を設定して、これらをエンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6、操舵ECU8に送信する。 【0163】ここで、操舵ECU8は、運転者のステアリング操作によらずタイヤ角を制御するための操舵装置8aを自動制御するためのものであり、車線維持ECU50から送信されてくるタイヤ角に従い、操舵装置8aを制御する。尚、他のECU2、4、6は、第1実施例で説明したものと同様であり、また、車線維持ECU50及び操舵ECU8は、他のECU2、4、6と同様、通信機能を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。 【0164】次に、図17は、自動車線維持制御を実行するために車線維持ECU50に付与された各機能を表す機能ブロック図である。図17に示すように、車線維持ECU50は、自動車線維持制御を実行するのに必要な各種制御データを記憶する制御データ記憶部52を備える。 【0165】この制御データ記憶部52は、実際には、車線維持ECU50を構成するマイクロコンピュータのメモリにより実現されるものであり、自動車線維持制御実行時に、上記各走行データを用いて目標ヨーレートYo及び目標加減速度Goを算出するのに必要な制御データ(目標ヨーレート算出用データc1〜c10及び目標加減速度算出用データd1〜d10)が、車両の全走行領域を複数(本実施例では4つ)に分割した各走行領域X毎に記憶されている。そして、これら各制御データc1〜c10、d1〜d10は、運転者から車線維持制御実行指令が入力されているときに動作する目標ヨーレート・目標加減速度算出部53に入力される。 【0166】また、車線維持ECU50には、自車速V1と道路曲率Kとに基づき、車両の現在の走行状態が予め設定された4つの走行領域X(領域1,2,1′,2′)の内の何れに属するかを判定する車両走行領域判定部56が設けられており、この車両走行領域判定部56による判定結果(走行領域X)も、目標ヨーレート・目標加減速度算出部53に入力される。 【0167】ここで、車両走行領域判定部56が判定する4つの走行領域X(領域1,2,1′,2′)は、図18(a)に示すように予め設定されている。つまり、この4つの走行領域は、車両の挙動を表す車速V1が60[km/h]以上か否かによって、車両の全走行領域を2つの走行領域に分割し、更に、これら各走行領域を、車両の走行環境を表す道路曲率Kの絶対値が0.02[1/m ]以上か否かによって、2つの走行領域(合計4つの走行領域)に分割したものである。 【0168】このため、図18(b)に示すように、車両走行領域判定部56は、車速V1が60[km/h]以上で道路曲率Kの絶対値が0.02[1/m ]未満であるとき「領域1」を設定し、車速V1が60[km/h]以上で道路曲率Kの絶対値が0.02[1/m ]以上であるとき「領域2」を設定し、車速V1が60[km/h]未満で道路曲率Kの絶対値が0.02[1/m ]未満であるとき「領域1′」を設定し、車速V1が60[km/h]未満で道路曲率Kの絶対値が0.02[1/m ]以上であるとき「領域2′」を設定することになる。 【0169】次に、目標ヨーレート・目標加減速度算出部53は、車両走行領域判定部56により判定された走行領域Xに対応した制御データc1〜c10、d1〜d10を制御データ記憶部52から取り込み、これら各制御データc1〜c10、d1〜d10と、撮像装置50a或いは他のECUから取得した走行データθ,A,B,S,V1,G1,Y,Gy,K,△Pとを用いて、次式(8) ,(9) に従い、目標ヨーレートYo及び目標加減速度Goを算出する。 【0170】
そして、その算出結果(目標ヨーレートYo及び目標加減速度Go)は、指令値算出部54に入力され、指令値算出部54は、ヨーレートY及び加減速度G1を目標ヨーレートYo及び目標加減速度Goに制御するのに必要なスロットル開度、AT変速段、ブレーキ圧、タイヤ角を予め設定された手順に従い設定し、これらを、エンジンECU2、AT・ECU4、ブレーキECU6、操舵ECU8に送信する。尚、指令値算出部54は、目標ヨーレート・目標加減速度算出部53と同様、運転者から車線維持制御実行指令が入力されているときに動作する。 【0171】次に、制御データ算出部60は、制御データ記憶部52に記憶された目標ヨーレート算出用データc1〜c10及び目標加減速度算出用データd1〜d10を、運転者の運転操作に基づく車両の実際の走行状態に沿って更新するためのものであり、サンプリング中止判定部58の判定結果に従い動作する。 【0172】つまり、サンプリング中止判定部58は、上記各実施例のサンプリング中止判定部26と同様、当該車線維持ECU50を含む代行・支援装置の作動中は、制御データ算出部30による数値化(詳しくは走行データのサンプリング)を禁止し、これら装置が全て動作していないときに、制御データ算出部60による数値化を許可する。また、サンプリング中止判定部58は、ハンドル角θ、自車速V1、自車加減速度G1等の変化に基づき、運転者が緊急回避のための車両操作を行っているか否かを判断し、緊急回避操作がなされている場合にも、制御データ算出部60による数値化(詳しくは走行データのサンプリング)を禁止する。 【0173】そして、制御データ算出部60では、サンプリング中止判定部58にて数値化が許可されていれば、サンプリング部62が、撮像装置50a或いは他のECUから取得した走行データθ,A,B,S,V1,G1,Y,Gy,K,△Pを所定周期で繰り返しサンプリングする。 【0174】尚、制御データ算出部60には、車両走行領域判定部56による判定結果も入力され、サンプリング部62は、車両走行領域判定部56により判定された車両の現在の走行領域X毎に、上記各走行データをサンプリングする。また、サンプリング部62は、上述した全ての走行データをサンプリングできない場合は、そのサンプリングタイミングでの走行データのサンプリングを中止する。 【0175】また次に、制御データ算出部60には、サンプリング部62でサンプリングされた走行データθ,A,B,S,V1,G1,Y,Gy,K,△Pを各走行領域X毎に取り込み、次式(10)、(12)の重回帰モデルに従い重回帰分析を行うことにより、制御データ記憶部52に格納された目標ヨーレート算出用データc1〜c10及び目標加減速度算出用データd1〜d10を夫々更新する、目標ヨーレート算出用データ数値化部64、及び、目標加減速度算出用データ数値化部66が設けられている。 【0176】
尚、目標ヨーレート算出用データ数値化部64、及び、目標加減速度算出用データ数値化部66は、夫々、第1実施例において目標加減速度算出用データを更新するのに用いられる相関係数計算部34、データ選択部36、及び、重回帰係数計算部38と同様の機能を備える。 【0177】即ち、目標ヨーレート算出用データ数値化部64、及び、目標加減速度算出用データ数値化部66は、サンプリング部62でサンプリングされた各走行領域X毎の走行データの内、目的変数であるヨーレートY若しくは加減速度G1との単相関係数が所定値以上となる走行データを説明変数として、各走行領域X毎に重回帰分析を行い、その重回帰分析によって得られた重回帰係数を用いて、目標ヨーレート算出用データ及び目標加減速度算出用データを更新する。 【0178】従って、自動車線維持制御を行う本実施例の走行制御装置においても、第1実施例と同様、自動車線維持制御実行時の車両の挙動を、運転者好みの挙動に制御することができる。また、重回帰分析による好みデータ(重回帰係数)の算出手順及びその好みデータを用いた目標ヨーレート算出用データ及び目標加減速度算出用データの更新手順も第1実施例と同様であるので、これら各データを運転者個人の好みを正確に反映したデータに更新することができ、最終的には、運転者の好みの走行状態を正確に実現できる自動車線維持制御装置を構築できる。 【0179】また、このように、制御データ記憶部52に記憶された制御データ(目標ヨーレート算出用データ、目標加減速度算出用データ等)は、制御データ算出部60の動作によって、運転者の好みに応じたデータに更新されるが、その更新後の制御データが運転者の好みを正確に反映しないことも考えられるので、本実施例においても、上記各実施例と同様、制御データ初期化部59によって、制御データ記憶部52に記憶された制御データを初期化できるようにされている。 【0180】つまり、制御データ初期化部59は、当該車線維持ECU10による自動車線維持制御が中止された際、その制御中止は、運転者の好みを正確に反映していない事の結果としての操作とみなせる運転者のハンドル操作、ブレーキ操作若しくはアクセル操作による一時的な中止か、或いは、運転者が自らの操作で運転したい意志の表れとみなせる運転者のスイッチ操作による中止かを、運転者のハンドル操作量、ブレーキ操作量、アクセル操作量等に基づき判断することにより、制御データ記憶部52に記憶された制御データが適切であるか否かを判断し、制御データが不適切であると判断した際には、制御データ記憶部52に記憶された制御データを初期化する。 【0181】尚、図17に示す各機能は、車線維持ECU50を構成するマイクロコンピュータが実行する制御処理により実現されるが、具体的な制御処理の手順は、走行データの内容等が異なるだけで、第1実施例で図4,図5を用いて説明した制御処理と同様にできることから、ここでは説明を省略する。 【0182】以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例では、本発明を、自動追従制御若しくは自動車線維持制御を行う走行制御装置に適用した場合について説明したが、本発明は、運転者による車両の運転操作を代行、支援する装置であれば、上記実施例と同様に適用して、同様の効果を得ることができる。 【0183】また、上記各実施例において運転者の好みを抽出するのに用いた走行データは一例であり、本発明を適用する車両の仕様や運転者からの要望等を考慮して、運転者の好みをより簡単かつ正確に抽出できるように適宜変更することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000004260 【氏名又は名称】株式会社デンソー 【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地
|
| 【出願日】 |
平成14年8月20日(2002.8.20) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100082500 【弁理士】 【氏名又は名称】足立 勉
|
| 【公開番号】 |
特開2003−211999(P2003−211999A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月30日(2003.7.30) |
| 【出願番号】 |
特願2002−239329(P2002−239329) |
|