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【発明の名称】 車両の定速走行制御装置
【発明者】 【氏名】中井 一弘
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【要約】 【課題】定速走行制御中の車速変動を少なくする。

【解決手段】定速走行制御中には、目標車速と実車速との偏差に応じてスロットル開度を制御するための基本制御量を基本制御量演算手段27により演算すると共に、吸気管圧力に応じて基本制御量を負荷補正するための負荷補正量を負荷補正量演算手段33により演算する。更に、負荷補正規制手段40により、大気圧と吸気管圧力との差圧に応じて負荷補正を許可又は禁止し若しくは該負荷補正量を変更し、最終制御量演算手段34により、前記基本制御量と前記負荷補正規制手段40で許可又は変更された前記負荷補正量とに基づいてスロットル開度の最終制御量を演算する。これにより、定速走行制御中にエンジン出力の増加割合が飽和するスロットル開度領域で、スロットル開度を無闇に開く方向に制御し続ける事態を回避することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 目標車速を設定する目標車速設定手段と、実車速を検出する車速検出手段とを備え、定速走行制御中に前記車速検出手段で検出した実車速を前記目標車速設定手段で設定した目標車速に一致させるように内燃機関のスロットル開度を制御する車両の定速走行制御装置において、車両の走行負荷を検出する走行負荷検出手段と、定速走行制御中に前記目標車速と前記実車速との偏差に応じて前記スロットル開度を制御するための基本制御量を演算する基本制御量演算手段と、定速走行制御中に前記走行負荷検出手段で検出される走行負荷に応じて前記基本制御量を補正するための負荷補正量を演算する負荷補正量演算手段と、定速走行制御中に内燃機関の運転条件に応じて前記負荷補正量による前記基本制御量の補正(以下「負荷補正」という)を許可又は禁止し若しくは該負荷補正量を変更する負荷補正規制手段と、定速走行制御中に前記基本制御量と前記負荷補正規制手段で許可又は変更された前記負荷補正量とに基づいて前記スロットル開度の最終制御量を演算する最終制御量演算手段と、定速走行制御中に前記最終制御量に基づいて前記スロットル開度を制御するスロットル開度制御手段とを備えていることを特徴とする車両の定速走行制御装置。
【請求項2】 前記負荷補正規制手段は、吸気管圧力と大気圧との差圧に応じて負荷補正を許可又は禁止し若しくは前記負荷補正量を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両の定速走行制御装置。
【請求項3】 前記負荷補正規制手段は、前記スロットル開度の変化に対する吸気管圧力の変化割合に応じて負荷補正を許可又は禁止し若しくは前記負荷補正量を変更することを特徴とする請求項1に記載の車両の定速走行制御装置。
【請求項4】 前記基本制御量演算手段は、PI制御で前記基本制御量を演算し、前記負荷補正規制手段は、内燃機関の運転条件に応じてPI制御のI項の負荷補正を許可又は禁止し若しくはI項の負荷補正量を変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両の定速走行制御装置。
【請求項5】 目標車速を設定する目標車速設定手段と、実車速を検出する車速検出手段とを備え、定速走行制御中に前記車速検出手段で検出した実車速を前記目標車速設定手段で設定した目標車速に一致させるように内燃機関のスロットル開度を制御する車両の定速走行制御装置において、車両の走行負荷を検出する走行負荷検出手段と、定速走行制御中に前記目標車速と前記実車速との偏差に応じて前記スロットル開度を制御するための基本制御量を演算する基本制御量演算手段と、定速走行制御中に前記走行負荷検出手段で検出される走行負荷に応じて前記基本制御量を補正するための負荷補正量を演算する負荷補正量演算手段と、定速走行制御中に内燃機関の運転条件に応じて前記基本制御量の増加を許可又は禁止し若しくは該基本補正量を変更する基本制御量規制手段と、定速走行制御中に前記基本制御量規制手段で規制された前記基本制御量と前記負荷補正量とに基づいて前記スロットル開度の最終制御量を演算する最終制御量演算手段と、定速走行制御中に前記最終制御量に基づいて前記スロットル開度を制御するスロットル開度制御手段とを備えていることを特徴とする車両の定速走行制御装置。
【請求項6】 目標車速を設定する目標車速設定手段と、実車速を検出する車速検出手段とを備え、定速走行制御中に前記車速検出手段で検出した実車速を前記目標車速設定手段で設定した目標車速に一致させるように内燃機関のスロットル開度を制御する車両の定速走行制御装置において、車両の走行負荷を検出する走行負荷検出手段と、定速走行制御中に前記目標車速と前記実車速との偏差に応じて前記スロットル開度を制御するための基本制御量を演算する基本制御量演算手段と、定速走行制御中に前記走行負荷検出手段で検出される走行負荷に応じて前記基本制御量を補正するための負荷補正量を演算する負荷補正量演算手段と、定速走行制御中に前記基本制御量と前記負荷補正量とに基づいて前記スロットル開度の最終制御量を演算する最終制御量演算手段と、定速走行制御中に内燃機関の運転条件に応じて前記最終制御量の増加を許可又は禁止し若しくは該最終補正量を変更する最終制御量規制手段と、定速走行制御中に前記最終制御量規制手段で規制された前記最終制御量に基づいて前記スロットル開度を制御するスロットル開度制御手段とを備えていることを特徴とする車両の定速走行制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、運転者が設定した目標車速で車両を自動的に定速走行させる車両の定速走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スロットルバルブをモータ等のアクチュエータで駆動する電子スロットルシステムを採用した車両においては、定速走行制御装置(一般にクルーズコントロール装置と呼ばれる)を搭載したものがある。この定速走行制御装置は、走行中に運転者がクルーズコントロールスイッチで目標車速をセットすると、以後は、アクセルペダルを操作しなくても、車速センサで検出した実車速が目標車速に一致するようにスロットル開度を自動的に制御して、車両を目標車速で定速走行させるものである。一般に、定速走行制御は、目標車速と実車速との偏差に応じてPI制御によるフィードバック制御を行っており、その際、走行負荷の変化による車速変化を抑えるために、走行負荷(吸気管圧力等)を検出して、走行負荷に応じてPI制御のP項(比例項)及び/又はI項(積分項)を補正して、実車速が目標車速に一致するようにスロットル開度をフィードバック制御するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図10に示すように、スロットル開度とエンジン出力との関係は、ある程度のスロットル開度以下の領域では、ほぼリニアな関係を保って、スロットル開度の増加に応じてエンジン出力が増加するが、それ以上のスロットル開度領域では、リニアな関係が崩れて、スロットル開度を増加してもエンジン出力があまり増加しない領域(以下「エンジン出力飽和領域」という)が存在する。例えば、定速走行制御中に急な上り坂に差し掛かると、変速機をシフトダウンさせて最大出力付近で運転しても、実車速が上がらず、目標車速と実車速との偏差が縮まらない場合がある。このような場合、スロットル開度を増加させても、エンジン出力がほとんど増加しないにも拘らず、PI制御のI項が増加し続けてスロットル開度を更に開く方向に制御し続けることになる。特に、高地走行時には、空気密度の低下によってエンジン出力が低下して、低地走行時よりも小さいスロットル開度でエンジン出力飽和領域に入るようになるため、定速走行制御中にエンジン出力飽和領域で運転する頻度が増加するものと思われる。
【0004】定速走行制御中に、上り坂等によって、目標車速と実車速との偏差が縮まらない状態が続くと、エンジン出力飽和領域であっても、PI制御のI項によりスロットル開度を更に開く方向に制御し続けることになる。このような状態で、急に下り坂に差し掛かったような場合、スロットル開度が大きく開き過ぎた状態(I項が大きくなり過ぎた状態)になっているために、PI制御によって下り坂走行に適したスロットル開度に閉じるまでにある程度の時間が掛かり、その間、下り坂で過大なエンジン出力が発生して加速状態となり、実車速が目標車速を大きく越えてしまい、定速走行制御中の車速変動が大きくなるという欠点があった。
【0005】本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、車速変動の少ない安定した定速走行を行うことができる車両の定速走行制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1の車両の定速走行制御装置は、定速走行制御中に、目標車速と実車速との偏差に応じてスロットル開度を制御するための基本制御量を基本制御量演算手段により演算すると共に、走行負荷検出手段で検出される走行負荷に応じて前記基本制御量を補正するための負荷補正量を負荷補正量演算手段により演算する。更に、定速走行制御中には、負荷補正規制手段により、内燃機関の運転条件に応じて前記負荷補正量による前記基本制御量の補正(以下「負荷補正」という)を許可又は禁止し若しくは該負荷補正量を変更し、最終制御量演算手段により、前記基本制御量と前記負荷補正規制手段で許可又は変更された前記負荷補正量とに基づいてスロットル開度の最終制御量を演算し、この最終制御量に基づいてスロットル開度をスロットル開度制御手段により制御する。このようにすれば、定速走行制御中にエンジン出力の増加割合が飽和するスロットル開度領域(エンジン出力飽和領域)で、負荷補正を禁止したり、負荷補正量を制限することが可能となり、このエンジン出力飽和領域で、スロットル開度を無闇に開く方向に制御し続ける事態を回避することができる。その結果、エンジン出力飽和領域で定速走行しているときに、急に下り坂に差し掛かったような場合でも、スロットル開度が大きく開き過ぎていないため、速やかにスロットル開度を閉じてエンジン出力を低下させて実車速を目標車速付近に制御することができる。これにより、定速走行制御中の車速変動を少なくして安定した定速走行を行うことができる。
【0007】ところで、図10に示すように、ある程度のスロットル開度以下の領域では、スロットル開度を開くほど、吸気管圧力と大気圧との差圧が小さくなって、エンジン出力飽和領域に近付いていき、更に、エンジン出力飽和領域では、スロットル開度を開いても、吸気管圧力の増加割合が飽和するという特性がある。
【0008】このような特性を考慮して、請求項2のように、吸気管圧力と大気圧との差圧に応じて負荷補正を許可又は禁止し若しくは負荷補正量を変更するようにしたり、或は、請求項3のように、スロットル開度の変化に対する吸気管圧力の変化割合に応じて負荷補正を許可又は禁止し若しくは負荷補正量を変更するようにしても良い。このようにすれば、エンジン出力飽和領域であるか否かを正確に判断して、より精度の高い負荷補正を行うことができる。
【0009】また、請求項4のように、PI制御で基本制御量を演算する場合は、内燃機関の運転条件に応じてPI制御のI項の負荷補正を許可又は禁止し若しくはI項の負荷補正量を変更するようにすると良い。このようにすれば、定速走行制御中にエンジン出力の増加割合が飽和するスロットル開度領域(エンジン出力飽和領域)で、目標車速と実車速との偏差が縮まらない状態が続いても、PI制御のI項の負荷補正量が無闇に増加し続けることを未然に防止することができ、従来のPI制御の欠点を解消することができる。
【0010】以上説明した請求項1〜4に係る発明は、定速走行制御中にエンジン出力の増加割合が飽和するスロットル開度領域(エンジン出力飽和領域)で、負荷補正を禁止したり、負荷補正量を制限することで、スロットル開度を無闇に開く方向に制御し続ける事態を回避できるようにしたが、負荷補正の禁止又は負荷補正量の変更の代わりに、請求項5のように、基本制御量の増加を禁止したり、基本制御量を変更したり、或は、請求項6のように、最終制御量の増加を禁止したり、最終制御量を変更するようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】[実施形態(1)]以下、本発明の実施形態(1)を図1乃至図11に基づいて説明する。
【0012】まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側には、吸入空気量を検出するエアフロメータ14が設けられている。このエアフロメータ14の下流側には、DCモータ等のモータ31によって駆動されるスロットルバルブ15が設けられ、このスロットルバルブ15の開度(スロットル開度)がスロットル開度センサ16によって検出される。エンジン運転中は、スロットル開度センサ16によって検出した実スロットル開度を、アクセル操作量等に応じて設定された目標スロットル開度に一致させるようにスロットルバルブ15の駆動モータ31の制御量をフィードバック制御する。
【0013】また、スロットルバルブ15の下流側には、サージタンク17が設けられ、このサージタンク17に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ18が設けられている。この吸気管圧力センサ18は、定速走行制御中に走行負荷を検出する走行負荷検出手段としても機能する。また、サージタンク17には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド19が設けられ、各気筒の吸気マニホールド19の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁20が取り付けられている。
【0014】一方、エンジン11の排気管21の途中には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒22が設置されている。この触媒22の上流側には、排出ガスの空燃比(又は酸素濃度)を検出する空燃比センサ(又は酸素センサ)23が設けられている。また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ24や、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ25が取り付けられている。その他、実車速を検出する車速センサ27(車速検出手段)と、定速走行制御を開始する際に目標車速をセットするクルーズコントロールスイッチ28(目標車速設定手段)と、大気圧を検出する大気圧センサ29が装備されている。
【0015】これら各種センサ等の出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)30に入力される。このECU30は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶されたエンジン制御用の各プログラムを実行することで、燃料噴射弁20の燃料噴射量(空燃比)を制御すると共に、点火プラグ26の点火時期を制御する。
【0016】更に、ECU30は、走行中に運転者がクルーズコントロールスイッチ28で目標車速をセットしたときに、後述する図3乃至図9の各プログラムを実行することで、車速センサ27で検出した実車速が目標車速に一致するようにスロットル開度を自動的に制御して、車両を目標車速で定速走行させる定速走行制御を実行する。
【0017】以下、本実施形態(1)の定速走行制御の具体的な内容を説明する。図2は、ECU30による定速走行制御の機能を表すブロック図である。ECU30による定速走行制御の機能は、基本制御量演算手段32、負荷補正量演算手段33、負荷補正規制手段40、最終制御量演算手段34、車両駆動源制御手段(図示せず)から構成されている。ここで、基本制御量演算手段32は、PI制御により基本制御量(P項、I項)を演算するものであり、クルーズコントロールスイッチ28でセットされた目標車速と車速センサ27で検出した実車速との偏差を算出する車速偏差算出手段35と、PI制御のP項の基本制御量を算出するP項算出手段36と、I項の基本制御量を算出するI項算出手段37とから構成されている。
【0018】負荷補正量演算手段33は、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管圧力(走行負荷)に応じてP項、I項の基本制御量を補正するための負荷補正量を演算するものであり、P項用負荷補正量を算出するP項用負荷補正量算出手段38と、I項用負荷補正量を算出するI項用負荷補正量算出手段39とから構成されている。
【0019】負荷補正規制手段40は、エンジン運転条件、例えば大気圧と吸気管圧力との差圧に応じてI項用負荷補正量を変更(補正)するものであり、大気圧と吸気管圧力との差圧が所定値A以下の領域(エンジン出力飽和領域)では、I項用負荷補正量を変更する負荷補正変更係数を最小値(例えば0)とすることで、I項用負荷補正量を最小値(例えば0)とする。また、大気圧と吸気管圧力との差圧が所定値B以上の領域(スロットル開度の増加に応じてエンジン出力がほぼリニアに増加する領域)では、負荷補正変更係数を最大値(例えば1)とすることで、I項用負荷補正量算出手段39で算出したI項用負荷補正量を変更せずに用いる。また、大気圧と吸気管圧力との差圧が所定値AからBまでの領域では、大気圧と吸気管圧力との差圧が大きくなるほど負荷補正変更係数を増加させる。
【0020】最終制御量演算手段34は、P項、I項の基本制御量と負荷補正量と負荷補正変更係数とに基づいて、最終的な要求スロットル開度(最終制御量)を次式により演算する。
要求スロットル開度=P項基本制御量×P項用負荷補正量+I項基本制御量×I項用負荷補正量×負荷補正変更係数【0021】ECU30は、上式により要求スロットル開度を算出する毎に、スロットル開度センサ16で検出した実スロットル開度が要求スロットル開度に一致するようにスロットルバルブ15の駆動モータ31の制御量をフィードバック制御することで、車両を目標車速で定速走行させる。この機能が特許請求の範囲でいう車両駆動源制御手段に相当する。
【0022】以上説明した本実施形態(1)の定速走行制御は、図3乃至図9の各プログラムによって実行される。以下、これら各プログラムの処理内容を説明する。
【0023】図3の車速偏差算出プログラムは、車速偏差算出手段35の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、以降の処理を行うことなく、本プログラムを終了する。
【0024】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ101からステップ102に進み、クルーズコントロールスイッチ28でセットされた目標車速vtと車速センサ27で検出した実車速vrとの偏差dvを算出する。
dv=vt−vr【0025】この後、ステップ103に進み、上記ステップ102で算出した車速偏差dvをなまし処理して、車速偏差なまし値dvsm(i) を求める。
dvsm(i) =dv−(dv−dvsm(i-1) )×αここで、dvsm(i-1) は前回の車速偏差なまし値、αはなまし係数である。このなまし処理は、車速センサ27の出力に重畳したノイズ等の影響を少なくするために行われる。
【0026】図4のP項算出プログラムは、P項算出手段36の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ111で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、ステップ112に進み、P項基本制御量tpbを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0027】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ111からステップ113に進み、P項基本制御量tpbを車速偏差なまし値dvsm(i) に応じてテーブル又は数式により算出して、本プログラムを終了する。
【0028】図5のI項算出プログラムは、I項算出手段37の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ121で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、ステップ122に進み、積分量tintを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0029】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ121からステップ123に進み、前回のI項基本制御量tib(i-1) に加算する積分量tintを、車速偏差なまし値dvsm(i) に応じてテーブル又は数式により算出する。この後、ステップ124に進み、前回のI項基本制御量tib(i-1) に今回の積分量tintを加算して、今回のI項基本制御量tib(i) を求め、本プログラムを終了する。
tib(i) =tib(i-1) +tint【0030】図6のP項用負荷補正量算出プログラムは、P項用負荷補正量算出手段38の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ131で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、ステップ132に進み、P項用負荷補正量Kpを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0031】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ131からステップ133に進み、P項用負荷補正量Kpを吸気管圧力センサ18で検出した吸気管圧力pmに応じてテーブル又は数式により算出して、本プログラムを終了する。
【0032】図7のI項用負荷補正量算出プログラムは、I項用負荷補正量算出手段39の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ141で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、ステップ142に進み、I項用負荷補正量Kiを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0033】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ141からステップ143に進み、I項用負荷補正量Kiを吸気管圧力センサ18で検出した吸気管圧力pmに応じてテーブル又は数式により算出して、本プログラムを終了する。
【0034】図8の負荷補正変更係数算出プログラムは、負荷補正規制手段40の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ151で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、ステップ152に進み、負荷補正変更係数Khを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0035】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ151からステップ153に進み、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)に応じて負荷補正変更係数Khをテーブル又は数式により算出する。この際、差圧(pa−pm)が所定値A以下の領域(エンジン出力飽和領域)では、負荷補正変更係数Khを最小値(例えば0)とすることで、I項用負荷補正量Kiを最小値(例えば0)とする。また、差圧(pa−pm)が所定値B以上の領域(スロットル開度の増加に応じてエンジン出力がほぼリニアに増加する領域)では、負荷補正変更係数Khを最大値(例えば1)とすることで、I項用負荷補正量Kiを変更せずに用いる。また、差圧(pa−pm)が所定値AからBまでの領域では、差圧(pa−pm)が大きくなるほど負荷補正変更係数Kiを増加させる。
【0036】図9の要求スロットル開度算出プログラムは、最終制御量演算手段34の機能を実現するプログラムであり、エンジン運転中に所定周期で繰り返し実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ161で、定速走行制御中であるか否かを判定し、定速走行制御中でなければ、ステップ162に進み、定速走行制御の要求スロットル開度tを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0037】これに対し、定速走行制御中である場合は、ステップ161からステップ163に進み、前記各プログラムで算出したP項基本制御量tpb、P項用負荷補正量Kp、I項基本制御量tib、I項用負荷補正量Ki、負荷補正変更係数Khを用いて、定速走行制御の要求スロットル開度tを次式により算出する。
t=tpb×Kp+tib×Ki×Kh【0038】定速走行制御中は、図9の要求スロットル開度算出プログラムのステップ163で要求スロットル開度tを算出する毎に、スロットル開度センサ16で検出した実スロットル開度が要求スロットル開度tに一致するようにスロットルバルブ15の駆動モータ31の制御量をフィードバック制御することで、車両を目標車速で定速走行させる。
【0039】以上説明した本実施形態(1)の定速走行制御の効果を図11のタイムチャートを用いて説明する。図11のタイムチャートは、定速走行制御中に走行路が上り坂から下り坂に変化して走行負荷(走行抵抗)が急低下したときの実車速、吸気管圧力、PI制御のI項の挙動の一例を従来の定速走行制御と比較して示している。
【0040】従来の定速走行制御では、定速走行制御中に、上り坂等によって、目標車速と実車速との偏差が縮まらない状態が続くと、スロットル開度を増加してもエンジン出力があまり増加しない領域(エンジン出力飽和領域)であっても、図11中に破線で示すように、PI制御のI項が増加し続けてスロットル開度を更に開く方向に制御し続けることになる。このような状態で、急に下り坂に差し掛かったような場合、スロットル開度が大きく開き過ぎた状態(I項が大きくなり過ぎた状態)になっているために、PI制御によって下り坂走行に適したスロットル開度に閉じるまでにある程度の時間が掛かり、その間、下り坂で過剰なエンジン出力が発生して加速状態となり、実車速が目標車速を大きく越えてしまい、定速走行制御中の車速変動が大きくなるという欠点があった。
【0041】これに対して、本実施形態(1)では、大気圧と吸気管圧力との差圧に応じて負荷補正変更係数を算出して、この負荷補正変更係数によりI項用負荷補正量を変更(補正)するようにしている。そのため、定速走行制御中に、スロットル開度がエンジン出力飽和領域に入っていると判断された時点t1 で、PI制御のI項の増加を抑えることができて、スロットル開度を無闇に開く方向に制御し続ける事態を回避することができる。その結果、エンジン出力飽和領域で定速走行しているときに、急に下り坂に差し掛かったような場合でも、PI制御のI項が大きくなり過ぎていない(スロットル開度が大きく開き過ぎていない)ため、速やかにスロットル開度を閉じてエンジン出力を低下させて実車速を目標車速付近に制御することができる。これにより、定速走行制御中の車速変動を少なくして安定した定速走行を行うことができる。
【0042】[実施形態(2)]本発明の実施形態(2)では、図12乃至図14のプログラムによって、前記実施形態(1)とは異なる方法でI項を算出する。
【0043】図12のI項算出プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図5のI項算出プログラムのステップ124の処理のみを変更したものであり、それ以外のステップの処理は同じである。図12のI項算出プログラムでは、ステップ121、123で、定速走行制御中に積分量tintを車速偏差なまし値dvsm(i)に応じてテーブル又は数式により算出した後、ステップ124aに進み、前回のI項制御量tib(i-1) 、積分量tint、I項用負荷補正量Ki、負荷補正変更係数Khを用いて、次式により最終的なI項制御量tib(i) を求める。
tib(i) =tib(i-1) +tint×Ki×Kh【0044】ここで、I項用負荷補正量Kiは、前記実施形態(1)と同じく、図7のI項用負荷補正量算出プログラムによって算出される。また、負荷補正変更係数Khは、後述する図13の負荷補正変更係数算出プログラムによって算出される。本実施形態(2)では、積分量tintにI項用負荷補正量Kiと負荷補正変更係数Khを乗算することで、I項の負荷補正を行うものである。
【0045】図13の負荷補正変更係数算出プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図8の負荷補正変更係数算出プログラムのステップ151の次に2つのステップ151a、151bを追加したものであり、それ以外のステップの処理は同じである。図13の負荷補正変更係数算出プログラムでは、ステップ151で、定速走行制御中と判定されると、ステップ151aに進み、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)が所定値よりも大きいか否かを判定し、この差圧(pa−pm)が所定値よりも大きければ、ステップ151bに進み、演算周期当たりの吸気管圧力変化量Δpm、つまり、今回の吸気管圧力pm(i) と前回の吸気管圧力pm(i-1) との差分[pm(i) −pm(i-1) ]が所定値よりも大きいか否かを判定する。
【0046】これにより、本実施形態(2)では、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)と演算周期当たりの吸気管圧力変化量Δpmとに基づいてエンジン出力飽和領域であるか否かを判定する。例えば、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)が所定値以下で、且つ、演算周期当たりの吸気管圧力変化量Δpmが所定値以下である場合(2つのステップ151a、151bで共に「No」と判定された場合)は、エンジン出力飽和領域であると判断して、ステップ152に進み、負荷補正変更係数Khを0にセットして、本プログラムを終了する。
【0047】一方、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)が所定値よりも大きい場合(ステップ151aで「Yes」の場合)、又は、演算周期当たりの吸気管圧力変化量Δpmが所定値よりも大きい場合(ステップ151bで「Yes」の場合)には、ステップ153に進み、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)に応じて負荷補正変更係数Khをテーブル又は数式により算出する。
【0048】図14の要求スロットル開度算出プログラムは、前記実施形態(1)で説明した図9の要求スロットル開度算出プログラムのステップ163の処理のみを変更したものであり、それ以外のステップの処理は同じである。図14の要求スロットル開度算出プログラムでは、ステップ161で、定速走行制御中と判定されると、ステップ163aに進み、P項基本制御量tpb、P項用負荷補正量Kp、I項制御量tibを用いて、定速走行制御の要求スロットル開度tを次式により算出する。
t=tpb×Kp+tib【0049】この場合、図12のI項算出プログラムのステップ124aにより、I項制御量tibは、負荷補正変更係数Khを用いて負荷補正された値が求められているため、定速走行制御中に、スロットル開度がエンジン出力飽和領域に入っているときに、PI制御のI項の増加を抑えることができて、スロットル開度を無闇に開く方向に制御し続ける事態を回避することができ、前記実施形態(1)と同様の効果を得ることができる。
【0050】尚、本発明は、前記各実施形態(1)、(2)に限定されず、スロットル開度がエンジン出力飽和領域に入っているときに、負荷補正される前のI項基本制御量の増加を禁止し又はI項基本補正量を制限するようにしても良い。或は、スロットル開度がエンジン出力飽和領域に入っているときに、要求スロットル開度t(最終制御量)の増加を禁止し又は要求スロットル開度tを制限するようにしても良い。
【0051】また、前記各実施形態(1)、(2)では、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)に応じて負荷補正変更係数Khを連続的に変化させるようにしたが、差圧(pa−pm)が所定値よりも大きい領域で、負荷補正変更係数Khを1とし、差圧(pa−pm)が所定値以下の領域で、負荷補正変更係数Khを0とするようにしても良い。この場合には、大気圧paと吸気管圧力pmとの差圧(pa−pm)に応じて負荷補正の許可/禁止を切り換えるだけの制御となる。
【0052】或は、図10に示すスロットル開度と吸気管圧力との変化特性に着目して、スロットル開度の変化に対する吸気管圧力の変化割合に応じて負荷補正を許可又は禁止し若しくは負荷補正量を変更するようにしても良い。このようにしても、大気圧と吸気管圧力との差圧を用いて負荷補正を制御する場合と同様の効果を得ることができる。
【0053】また、前記各実施形態(1)、(2)では、走行負荷の情報として、吸気管圧力センサ18で検出した吸気管圧力を用いるようにしたが、エアフロメータ14で検出した吸入空気量を用いるようにたり、或は、回転速度センサ25で検出したエンジン回転速度を用いるようにしても良い。
【0054】また、前記各実施形態(1)、(2)では、車両駆動源をエンジン11(内燃機関)としたが、エンジン以外の電気モータ等を駆動源とする車両に適用しても良く、勿論、エンジンとそれ以外の駆動源(電気モータ等)とを併用するハイブリッド車両にも適用して実施できる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地
【出願日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【代理人】 【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
【公開番号】 特開2003−211997(P2003−211997A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−10853(P2002−10853)