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【発明の名称】 燃料電池車両の水素配管構造
【発明者】 【氏名】金森 謙二
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産自動車株式会社内

【要約】 【課題】車両が衝突するなどして車体が変形しても、高圧水素配管の変形を防止する。

【解決手段】サイドメンバ9上に固定された支持フレーム5に、水素を加圧して貯蔵する水素タンク1が固定され、この水素タンク1と、水素が供給される燃料電池32とは、高圧水素配管33および低圧水素配管39によって接続されている。高圧水素配管33には、衝撃によって閉じる電磁弁35および高圧水素を低圧水素に減圧する調圧弁37がそれぞれ介装され、これらは支持フレーム5の配管固定部21上に固定される。調圧弁37と燃料電池32とを接続する低圧水素配管39は、車体上下方向に延設される上下配管部39aを備えており、この上下配管部39aに、脆弱部43を設けてある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水素を加圧して貯蔵するタンク、このタンクに接続される高圧水素配管、この高圧水素配管途中に設けられてその流路を閉じる開閉手段および、前記高圧水素配管を流れる高圧水素を低圧に調圧する調圧手段を、車体に固定した支持フレームにそれぞれ固定し、前記調圧手段と、この調圧手段により調圧された低圧水素が供給される燃料電池とを接続する低圧水素配管に、脆弱部を設けたことを特徴とする燃料電池車両の水素配管構造。
【請求項2】 前記脆弱部は、車体上下方向に向けて延設される上下配管部に設定されていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池車両の水素配管構造。
【請求項3】 前記脆弱部が配置される空間は、自動車の車室に対して隔壁によって隔てられていることを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池車両の水素配管構造。
【請求項4】 前記脆弱部は、前記低圧水素配管の直径が部分的に小径化されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池車両の水素配管構造。
【請求項5】 前記脆弱部は、前記低圧水素配管の肉厚が部分的に薄肉化されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池車両の水素配管構造。
【請求項6】 前記薄肉化された脆弱部の内径は、前記低圧水素配管の他の部位の内径と同一であることを特徴とする請求項5記載の燃料電池車両の水素配管構造。
【請求項7】 前記脆弱部は、前記低圧水素配管がS字状に湾曲していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の燃料電池車両の水素配管構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、高圧水素が貯蔵されるタンクと燃料電池とを接続する水素配管を備えた燃料電池車両の水素配管構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、燃料ガスを貯蔵するタンクを、車体に固定された支持フレームに固定するものが知られている(特開平9−290647号公報参照)。この配管構造では、燃料配管のジョイント部などのユニットが、支持フレームに直接固定されず、ジョイントプレートを介して支持フレームに固定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の配管構造では、配管のジョイント部などのユニットが、強固な支持フレームに直接固定されていないので、車両衝突時、特に後面衝突時に車体が変形したときに、高圧の燃料配管が変形する恐れがある。この変形は、燃料タンクからガス圧を高圧から低圧に減圧する調圧弁までの高圧配管部を含むすべての領域で発生する可能性がある。
【0004】そこで、この発明は、車両が衝突するなどして車体が変形しても、高圧燃料配管の変形を防止することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1の発明は、水素を加圧して貯蔵するタンク、このタンクに接続される高圧水素配管、この高圧水素配管途中に設けられてその流路を閉じる開閉手段および、前記高圧水素配管を流れる高圧水素を低圧に調圧する調圧手段を、車体に固定した支持フレームにそれぞれ固定し、前記調圧手段と、この調圧手段により調圧された低圧水素が供給される燃料電池とを接続する低圧水素配管に、脆弱部を設けた構成としてある。
【0006】請求項2の発明は、請求項1の発明の構成において、前記脆弱部は、車体上下方向に向けて延設される上下配管部に設定される構成としてある。
【0007】請求項3の発明は、請求項1または2の発明の構成において、前記脆弱部が配置される空間は、自動車の車室に対して隔壁によって隔てられる構成としてある。
【0008】請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明の構成において、前記脆弱部は、前記低圧水素配管の直径が部分的に小径化される構成としてある。
【0009】請求項5の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明の構成において、前記脆弱部は、前記低圧水素配管の肉厚が部分的に薄肉化される構成としてある。
【0010】請求項6の発明は、請求項5の発明の構成において、前記薄肉化された脆弱部の内径は、前記低圧水素配管の他の部位の内径と同一である構成としてある。
【0011】請求項7の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明の構成において、前記脆弱部は、前記低圧水素配管がS字状に湾曲している構成としてある。
【0012】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、水素が貯蔵される高圧タンクから、高圧水素を低圧に調圧する調圧手段までの高圧配管系を車体に固定した支持フレームに固定するとともに、調圧手段より下流側の低圧水素配管に脆弱部を設けたので、車両衝突時などに車体が変形しても、このとき発生する応力を低圧水素配管の脆弱部が受けて変形により吸収し、高圧水素配管の変形を防止することができる。
【0013】また、配管が変形しやすい脆弱部が、流路を閉じる開閉手段の下流にあるため、車両衝突時などに開閉手段を閉じることで、脆弱部側への水素の供給が停止され、脆弱部で破損が生じたとしても、タンク内の燃料の漏れを防止することができる。
【0014】さらに、配管が変形しやすい脆弱部が、調圧手段の下流にあるため、脆弱部で破損が生じたとしても、低圧の水素のみが漏れるだけであり、漏れ量を少なくすることができる。
【0015】請求項2の発明によれば、脆弱部は、車体上下方向に向けて延設される上下配管部に設定されているので、車両衝突時などに、支持フレームが車体に対して前後左右に移動したときに、脆弱部が配管の軸方向と交差する曲げ方向に力を受け、脆弱部での変形が容易となる。
【0016】請求項3の発明によれば、脆弱部に破損が生じたとしても、隔壁により車室内への水素の浸入を防止することができる。
【0017】請求項4の発明によれば、脆弱部は、低圧水素配管の直径が部分的に小径化しているので、脆弱部としての機能が確実に発揮される。
【0018】請求項5の発明によれば、脆弱部は、低圧水素配管の肉厚が部分的に薄肉化しているので、脆弱部としての機能が確実に発揮される。
【0019】請求項6の発明によれば、脆弱部を含む低圧水素配管の内径が一定であることから、脆弱部を設けることによる流路抵抗の低下を防止することができる。
【0020】請求項7の発明によれば、脆弱部は、低圧水素配管がS字状に湾曲しているので、車体変形時には、湾曲部がある程度弾性変形して変形時に発生する応力を吸収することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0022】図1は、この発明の実施の一形態に係わる燃料電池車両の水素配管構造を適用した車両後部の内部構造を示す側面断面図であり、水素を加圧して貯蔵する水素タンク1が、後部座席3の後方に配置されている。図2は、水素タンク1の車体への搭載部分を示す平面図である。
【0023】水素タンク1を支持する強固な支持フレーム5は、車体7の骨格部材である一対のサイドメンバ9上に、4本のボルト11により固定されている。
【0024】上記した支持フレーム5は、車幅方向中央部分に、水素タンク1の円形の外形に整合する円弧状凹部13が形成されている。水素タンク1は、この円弧状凹部13に収容された状態で、2本の固定バンド15が被せられ、各固定バンド15の両端は、支持フレーム5の車体前後方向両側部の上面17にボルト19により固定されている。
【0025】支持フレーム5の車幅方向の一方(図2中で下方)の端部には、図1に示すように、円弧状凹部13より下部に位置して車体前後方向に延長される配管固定部21が形成されている。支持フレーム5の車幅方向の他方(図2中で上方)の端部についても、配管固定部21と同高さ位置となる段部23が形成されている。そして、支持フレーム5の前記上面17に対応する下部には、図1に示すように、突出固定部25が車幅方向全長にわたり形成され、突出固定部25の車幅方向両端が前記したサイドメンバ9上に載置されて、この部位に前記したボルト11が締結されている。
【0026】水素タンク1の上記した配管固定部21側の端部中央には水素出入口部27が設けられ、この水素出入口部27には、図1中で下方に向けて延設される水素充填配管29の一方の端部が接続され、水素充填配管29の他方の端部には、水素タンク1へ水素を充填するための充填口31が設けられている。この水素充填配管29の下部側の一部は、サイドメンバ9などの車体部品に固定されている。
【0027】また、水素タンク1の上記した水素出入口部27には、後部座席3の下部に配置してある燃料電池32に水素を供給するための高圧水素配管33の一端が接続されている。高圧水素配管33の他端側は、車体後方へ延設された後、図2に示すように車幅方向外側へ延設され、さらに下方へ延設されて配管固定部21に達している。配管固定部21上での高圧水素配管33は、車体前方へ延設され、その途中に開閉手段としての電磁弁35が介装されるとともに、前方端部には調圧手段としての調圧弁37が設けられている。
【0028】電磁弁35は、車両に搭載してある図示しないGセンサが、車両の衝突などの衝撃を感知したときに、閉状態となって高圧水素配管33の流路を閉じる。一方調圧弁37は、高圧水素配管33内の高圧水素を、低圧に減圧してその下流側に接続されている低圧水素配管39に送り出す。
【0029】配管固定部21上における高圧水素配管33は、電磁弁35の上下流の両側位置および調圧弁37の上流側位置にて、固定ブラケット41により配管固定部21に固定されている。
【0030】前記した低圧水素配管39は、調圧弁37から車体前方に向けて延設された後、配管固定部21の前方にて下方へ屈曲して上下配管部39aとなり、さらに図2では省略してあるが、サイドメンバ9に沿って前方へ向けて延設されて、その端部が燃料電池32に接続されている。
【0031】配管固定部21上における低圧水素配管39は、固定ブラケット42にて配管固定部21に固定されている。この低圧水素配管39の上下方向に延設される上下配管部39aには、脆弱部43が形成されている。低圧水素配管39の上下配管部39aにおける脆弱部43の上部は、固定ブラケット45により配管固定部21の車体前方側の側面に固定され、上下配管部39aの下端部は、固定ブラケット47によりサイドメンバ9などの車体部品に固定されている。
【0032】上記したような水素タンク1から高圧水素配管33および低圧水素配管39に至る水素タンクモジュールMは、隔壁49によって車室51と隔てられた空間53内に配置されている。隔壁49は、後部座席3の後方に配置される前面部49aと、水素タンク1の上部を覆う上面部49bと、空間53と車室51の一部である車体後部の荷室51aとを隔てる後面部49cとを備えている。
【0033】さらに、上記した隔壁49の車体後端側の上部には、ダクト55の下端が空間53に連通して接続され、ダクト53の上端は車体7のルーフを経て外部に開口している。なお、上記した隔壁49は、車室51と空間53とを密閉するために、両者間を貫通する孔部などを備えていないものとする。
【0034】図3(a)は、前記した低圧水素配管39における脆弱部43の具体例を示している。この場合、直径Dの低圧水素配管39を、部分的に直径dとして小径化し、この小径部位を脆弱部43としている。低圧水素配管39の部分的な小径化は、スピニング加工や液圧成形などによって可能である。
【0035】上記したような燃料電池車両の水素配管構造においては、車両に後面衝突などが生じ、車体7のリアサイドメンバ9などの車体骨格部材が変形したとしても、水素タンク1に接続されている高圧水素配管33,電磁弁35および調圧弁37が、強固な支持フレーム5の配管固定部21に固定されているため、高圧水素配管33の変形が防止される。
【0036】また、上記した衝突時には、図示しないGセンサが衝撃を感知し、これに基づき高圧水素配管33に設けてある電磁弁35が作動して流路を閉じるので、高圧水素の電磁弁35より下流側への流出が回避される。
【0037】一方、上記した衝突時に車体7が変形し、水素タンクモジュールMと燃料電池32との位置関係が相対的に変化すると、この変化により配管系が受ける応力は、低圧水素配管39に設けてある脆弱部43が変形して吸収する。
【0038】そして、この脆弱部43は、車体7の上下方向に延設した上下配管部39aに設けてあって、その上部側を配管固定部21に、同下部側を車体部品のサイドブラケット9に、それぞれ固定してあるので、車両衝突時に発生する水素タンクモジュールMと燃料電池32との相対的位置関係の変化は、脆弱部43が配管の軸方向と交差する曲げ方向に力を受けて確実に吸収する。
【0039】さらに、上記した脆弱部43を含む水素タンクモジュールMは、隔壁49により車室51と隔てられているため、例え脆弱部43が変形により破損したとしても、空間53内の水素は、ダクト55を経て車体7の外部へ排出される。
【0040】図3(b),(c)は、脆弱部43の他の例を示している。同図(b)は、肉厚Tの低圧水素配管39を部分的に肉厚tとして薄肉化し、この薄肉部位を脆弱部43としている。この場合の低圧水素配管39は、脆弱部43の内径が他の部位の内径と同一となっており、これにより脆弱部43を設けることによる流路抵抗の低下が回避される。このような低圧水素配管39の部分的な薄肉化は、旋盤などによる機械加工やスピニング加工によって可能である。
【0041】図3(c)は、低圧水素配管39をS字状に湾曲させ、この湾曲部位を脆弱部43としている。この場合、S字状の湾曲部位が、ある程度弾性変形することで、車両衝突時の水素タンクモジュールMと燃料電池32との相対的位置関係の変化を吸収する。なお、図3(c)の場合、図中で左右方向を車体前後方向とすることが後面衝突に対して有効であるが、この位置関係に限定されるものではない。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【住所又は居所】神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地
【出願日】 平成14年1月23日(2002.1.23)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外7名)
【公開番号】 特開2003−211982(P2003−211982A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−14118(P2002−14118)