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【発明の名称】 電動式車輪駆動装置
【発明者】 【氏名】大六野 智
【住所又は居所】神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内

【要約】 【課題】車両の旋回時、車体重量の遠心力が車体からモータケース等を介してタイヤに伝わることに対処すること。

【解決手段】モータケース7とホイール1との間に、第1軸受31aが介装してある。この第1軸受31aは、車両の旋回時に、車両重量の径方向荷重と、車幅方向内方から外方への(右向きの)第1軸方向荷重(F1)を受け止める。くさびローラ式変速機6の支持軸30とホイール1との間に、第2軸受31bが介装してある。この第2軸受31bは、車両の旋回時に、車両重量の径方向荷重と、車幅方向外方から内方への(左向きの)第2軸方向荷重(F2)を受け止める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】車輪のホイールの内径側に、電動モータとくさびローラ式変速機を組み込んだ電動式車輪駆動装置において、前記くさびローラ式変速機は、電動モータで駆動される回転駆動軸の先端部の周囲に、該回転駆動軸に対し偏心した状態で、前記車輪と共に回転自在に設けられた外輪と、該回転駆動軸の外周面である駆動側円筒面と前記外輪の内周面である被駆動側円筒面との間に存在して、径方向に関する幅が円周方向に関して不同である環状空間内に配置されるそれぞれの外周面を動力伝達用円筒面とした、少なくとも1個のガイドローラおよび少なくとも1個の可動ローラとを具備し、前記電動モータあるいはくさびローラ式変速機とホイールとの間に装着された第1軸受と第2軸受とを有し、前記第1軸受と前記第2軸受それぞれが、前記電動モータあるいはくさび式ローラ変速機とホイールとの間に作用する径方向荷重を受け止めるだけでなく、向きが反対の第1軸方向荷重と第2軸方向荷重の少なくともどちらか一方を受け止めることを特徴とする電動式車輪駆動装置。
【請求項2】車輪のホイールの内径側に、電動モータとくさびローラ式変速機を組み込んだ電動式車輪駆動装置において、前記くさびローラ式変速機は、電動モータで駆動される回転駆動軸の先端部の周囲に、該回転駆動軸に対し偏心した状態で、前記車輪と共に回転自在に設けられた外輪と、該回転駆動軸の外周面である駆動側円筒面と前記外輪の内周面である被駆動側円筒面との間に存在して、径方向に関する幅が円周方向に関して不同である環状空間内に配置されるそれぞれの外周面を動力伝達用円筒面とした、少なくとも1個のガイドローラおよび少なくとも1個の可動ローラとを具備し、前記電動モータのモータケースとホイールとの間に、車両重量の径方向荷重だけでなく、モータケースからホイールへ伝わる向きが電動モータ側からくさびローラ式変速機側への第1軸方向荷重を受け止める第1軸受を介装すると共に、前記くさびローラ式変速機の支持軸とホイールとの間に、車両重量の径方向荷重だけでなく、支持軸からホイールへ伝わる向きがくさびローラ式変速機側から電動モータ側への第2軸方向荷重を受け止める第2軸受を介装したことを特徴とする電動式車輪駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電動式車輪駆動装置に関する。特に本発明は、四輪自動車、二輪自動車、ハイブリッド車、電動車、ゴルフカート或は高齢者や障害者用の三輪或は四輪のカート、建設現場や輸送業界で使用する手押し式の一輪車乃至は四輪車等、各種車両の車輪を電動駆動する(電動により補助動力を付与する場合も含む)場合に使用するに好適な電動式車輪駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電動自動車の駆動装置として、車輪を構成するホイールの内径側に電動モータを組み込み、この電動モータの駆動力をホイールに伝達する電動式車輪駆動装置が、特開平7ー131961号公報、特開平9ー23631号公報に記載されている様に、従来から知られている。このうちの特開平7ー131961号公報に記載された構造の場合には、電動モータにより(変速機を介する事なく)直接ホイールを回転駆動する様に構成している。これに対して特開平9ー23631号公報に記載された構造の場合には、電動モータの駆動力を、多段式の歯車式変速機を介して、ホイールに伝達する様に構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記公報に開示した電動式車輪駆動装置では、大型で重量が嵩み、騒音の問題もあることから、本発明では電動モータからホイールに駆動力を伝達する手段として、くさびローラ式変速機を採用している。
【0004】しかしながら、ホイール内に電動モータとくさびローラ式変速機を組み込だ構造では、モータケースが車体に取付けてあるため、車両の旋回時、車体重量の遠心力が車体からモータケース等を介してタイヤに伝わるといったことがある。
【0005】本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、車両の旋回時、車体重量の遠心力が車体からモータケース等を介してタイヤに伝わることに対処した電動式車輪駆動装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明に係る電動式車輪駆動装置は、車輪のホイールの内径側に、電動モータとくさびローラ式変速機を組み込んだ電動式車輪駆動装置において、前記くさびローラ式変速機は、電動モータで駆動される回転駆動軸の先端部の周囲に、該回転駆動軸に対し偏心した状態で、前記車輪と共に回転自在に設けられた外輪と、該回転駆動軸の外周面である駆動側円筒面と前記外輪の内周面である被駆動側円筒面との間に存在して、径方向に関する幅が円周方向に関して不同である環状空間内に配置されるそれぞれの外周面を動力伝達用円筒面とした、少なくとも1個のガイドローラおよび少なくとも1個の可動ローラとを具備し、前記電動モータに装着された第1軸受と、前記くさびローラ式変速機に装着された第2軸受とを有し、前記第1軸受と前記第2軸受それぞれが、径方向荷重もしくは軸方向荷重の少なくともどちらか一方を受け止めることを特徴とする。
【0007】また、本発明に係る電動式車輪駆動装置は、車輪のホイールの内径側に、電動モータとくさびローラ式変速機を組み込んだ電動式車輪駆動装置において、前記くさびローラ式変速機は、電動モータで駆動される回転駆動軸の先端部の周囲に、該回転駆動軸に対し偏心した状態で、前記車輪と共に回転自在に設けられた外輪と、該回転駆動軸の外周面である駆動側円筒面と前記外輪の内周面である被駆動側円筒面との間に存在して、径方向に関する幅が円周方向に関して不同である環状空間内に配置されるそれぞれの外周面を動力伝達用円筒面とした、少なくとも1個のガイドローラおよび少なくとも1個の可動ローラとを具備し、前記電動モータのモータケースとホイールとの間に、車両重量の径方向荷重だけでなく、モータケースからホイールへ伝わる向きが電動モータ側からくさびローラ式変速機側への第1軸方向荷重を受け止める第1軸受を介装すると共に、前記くさびローラ式変速機の支持軸とホイールとの間に、車両重量の径方向荷重だけでなく、支持軸からホイールへ伝わる向きがくさびローラ式変速機側から電動モータ側への第2軸方向荷重を受け止める第2軸受を介装したことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に係る電動式車輪駆動装置を図面を参照しつつ説明する。まず、本発明で採用する電動式車輪駆動装置の内部構造について詳述し、次いで本発明の実施の形態について説明する。
【0009】(電動式車輪駆動装置の内部構造)図1は、本発明の実施の形態に係る電動式車輪駆動装置の内部構造を示す断面図である。図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【0010】本発明の実施の形態に係る電動式車輪駆動装置は、ホイール1の周囲にタイヤ2を支持して成る車輪3と、この車輪3を回転駆動する為に、このホイール1の内径側に設けた駆動手段とを備える。そして、この駆動手段を図示しない懸架装置に支持する共に、この駆動手段の周囲に上記ホイール1を回転自在に支持する事により、上記車輪3を上記懸架装置に、回転自在に支持している。尚、図示の例では、上記ホイール1の内端部(車両の幅方向中央寄り端部で、図1の左端部)に、ディスクロータ等の制動用回転部材を支持固定する為の支持筒部4を設けている。
【0011】上記駆動手段は、電動モータ5とくさび作用を利用した摩擦ローラ式変速機6(以後、くさびローラ式変速機6と記す)とを動力の伝達方向に関して互いに直列に接続して成る。ここで、くさび作用を利用した摩擦ローラ式変速機とは、電動モータで駆動される回転駆動軸の先端部の周囲に、該回転駆動軸に対し偏心した状態で、前記車輪と共に回転自在に設けられた外輪と、該回転駆動軸の外周面である駆動側円筒面と前記外輪の内周面である被駆動側円筒面との間に存在して、径方向に関する幅が円周方向に関して不同である環状空間内に配置される、それぞれの外周面を動力伝達用円筒面とした、少なくとも1個のガイドローラおよび少なくとも1個の可動ローラとを備えた変速機のことを言う。又、可動ローラとは、くさび作用により押付け力を発生するローラであり、半径方向、円周方向に動くローラのことを言う。又、上記電動モータ5は、有底円筒状のモータケース7を有する。このモータケース7は、基端部(図1の左端部)に底板部8を有する有底円筒状の主体9と、この主体9の先端(図1の右端)開口部に被着固定した蓋板10とを組み合わせて成る。この主体9の周壁部11の外周面の中心軸と内周面の中心軸とは互いに偏心させて、この周壁部11の肉厚を、円周方向に関して不同にしている。この様な主体9の基端面複数個所にはねじ孔(図示略)を形成しており、図示しない懸架装置の構成部品を挿通した、やはり図示しない複数本のボルトをこれら各ねじ孔(図示略)に螺合し更に緊締する事により、上記主体9を上記懸架装置に結合固定自在としている。又、上記蓋板10の片面(図1の左面)には、上記主体9の先端開口部にがたつきなく嵌合自在な環状突部13を形成している。この環状突部13の中心と上記蓋板10の外周面の中心とは、上記周壁部11の外周面と内周面とが偏心しているのに合わせて、互いに偏心させている。この様な蓋板10は、上記環状突部13を上記主体9の先端開口部に内嵌した状態でこの主体9の先端開口部に付着し、更に複数本のねじ14により、この主体9に対し結合固定している。
【0012】この様にしてこの主体9と上記蓋板10とを互いに結合固定して成る、上記モータケース7の両端部には、それぞれ支持孔15と通孔16とを、互いに同心に、且つ、上記周壁部11の内周面と同心に形成している。そして、上記支持孔15及び通孔16の内側に、前記電動モータ5を構成する回転駆動軸17の基端部(図1の左端部)及び中間部先端寄り(図1の右寄り)部分を、それぞれ回転自在に支持している。このうち、上記主体9の底板部8の中央部に設けた支持孔15の内側には、上記回転駆動軸17の基端部を、深溝型或はアンギュラ型の玉軸受の如き、ラジアル、アキシアル両方向の荷重を支承自在な転がり軸受18により、回転自在に支持している。これに対して、上記蓋板10の中央部に設けた通孔16の内側には、上記回転駆動軸17の中間部先端寄り部分を、深溝型或はアンギュラ型の玉軸受の如き、ラジアル、アキシアル両方向の荷重を支承自在な転がり軸受19により、回転自在に支持している。
【0013】この様にして上記モータケース7に対し回転自在に支持された上記回転駆動軸17の中間部で、上記1対の転がり軸受18、19の間部分には、永久磁石等により構成したロータ20を、上記回転駆動軸17に対する回転を阻止した状態で外嵌支持している。これに対して、上記周壁部11の内周面で上記ロータ20の外周面に対向する部分には、ステータ21を支持固定している。そして、このステータ21に通電したり、上記ロータ20の位相を検出する為のセンサ22の信号を取り出したりする為の導線23、23を、上記底板部8の一部に形成した導出孔24を通じて外部に取り出している。
【0014】又、前記蓋板10の他面(図1の右面)中央部で上記通孔16を囲む部分には環状凸部25を形成しており、この環状凸部25の先端面に、連結板26を結合固定している。この連結板26の両側面のうち、上記環状凸部25に対向する片面(図1の左面)の円周方向3個所位置には突部27、27を、この環状凸部25に向け同じだけ突出する状態で形成している。上記連結板26は、上記各突部27、27の先端面と上記環状凸部25の先端面とを互いに突き当てた状態で、3本のボルト28、28により、上記蓋板10に対し固定している。尚、図示の例では、上記各突部27、27の外周縁部と上記環状凸部25の外周縁部との間に印籠嵌合部を設けて、上記蓋板10に対する上記連結板26の径方向に関する位置決めを図っている。この様にしてこの連結板26を上記蓋板10に対し結合固定した状態で、上記3個所位置の突部27、27が前記回転駆動軸17の先端部周囲を覆う状態となる。又、この回転駆動軸17の先端は、上記連結板26の片面中央部に形成した凹孔29に緩く侵入した状態となる。
【0015】又、上記連結板26の他面(図1の右面)中央部には支持軸30を、上記蓋板10と反対側に突出する状態で突設している。そして、この支持軸30の外周面及び前記モータケース7の主体9の先端部外周面と、前記ホイール1の内周面2個所位置との間に設けた、深溝型或はアンギュラ型の玉軸受の如き、ラジアル、アキシアル両方向の荷重を支承自在な転がり軸受31a、31bにより、上記ホイール1を図示しない懸架装置に対し回転自在に支持している。この状態でこのホイール1は、上記主体9の外周面と同心に配置される。従って、このホイール1とこの主体9の内周面とは互いに偏心している。
【0016】そして、この様な位置関係でこの主体9に対し回転自在に支持された、上記ホイール1の中間部内周面で上記回転駆動軸17の先端部周囲に位置する部分に、前記くさびローラ式変速機6を構成する為の外輪32を配置している。この為に本例の場合には、上記ホイール1の中間部に内嵌した保持リング33をこのホイール1に対し複数本のボルト34、34により結合固定すると共に、上記保持リング33の内径側にスプライン係合させた上記外輪32を、止め輪35により、図1に示した所定位置に保持している。上記保持リング33と外輪32を係合するスプラインには、十分な遊びを設けてあり、保持リング33に対し、外輪32が半径方向にスプラインの遊び分、自由に動けるようにしてある。これにより,製造誤差、運転時の部品の変形を許容するようにしてある。この状態でこの外輪32の内周面は、上記ホイール1とほぼ同心になり、上記回転駆動軸17の外周面とは互いに偏心した状態となる。従って、これら外輪32の内周面と回転駆動軸17の先端部外周面との間には、径方向に関する幅が円周方向に関して不同である環状空間36が設けられる。
【0017】この様な環状空間36内には、2個のガイドローラ37a、37bと1個の可動ローラ38とを設置して、上記くさびローラ式変速機6を構成している。図において、可動ローラ38は切欠いて部分的に示している。これら各ローラ37a、37b、38を設置する為に上記環状空間36部分には、3本の支持軸39a、39a、39bを設けている。これら3本の支持軸39a、39a、39bのうち、図1、2の下部及び図2の上部右側に位置する2本の支持軸39a,39aは、それぞれの両端部を前記蓋板10及び前記連結板26に形成した嵌合孔40、40に圧入固定している。従って、上記2本の支持軸39a,39aが、上記環状空間36内で円周方向或は直径方向に変位する事はない。これに対して、上記3本の支持軸39a、39a、39bのうち、図2の上部左側に位置する残り1本の支持軸39bは、両端部を上記蓋板10及び連結板26に対し、上記外輪32の円周方向及び直径方向に関する若干の変位可能に支持している。この為に、上記蓋板10及び連結板26の一部で上記1本の支持軸39bの両端部に整合する部分に、この支持軸39bの外径よりも大きな内径を有する支持孔41を形成し、これら各支持孔41に、上記支持軸39bの両端部を緩く係合させている。
【0018】そして、上述の様に支持した各支持軸39a、39a、39bの中間部周囲に、それぞれ上記各ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38を、それぞれラジアルニードル軸受42、42等の軸受(可動ローラの軸受は図示省略)により、回転自在に支持している。尚、上記連結板26を上記蓋板10に結合固定する為、この連結板26の片面に突設した、前記各突部27、27は、この連結板26の円周方向に関して、上記各ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38同士の間に存在する。言い換えれば、上記環状空間36内に上記各突部27、27と上記各ガイドローラ37a、37b又は可動ローラ38とが、上記環状空間36の円周方向に関して交互に存在する。又、これら各ガイドローラ37a、37b又は可動ローラ38の外周面と上記各突部27、27の円周方向側面とが干渉する(擦れ合う)事はない。
【0019】この様にして、上記各支持軸39a、39a、39bにより上記蓋板10と連結板26との間に回転自在に支持した、上記各ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38の外周面である、動力伝達用円筒面43a、43a、43bは、それぞれ前記回転駆動軸17の先端部の外周面である駆動側円筒面44と前記外輪32の内周面である被駆動側円筒面45とに当接させている。前述した通り、上記各ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38を設置した上記環状空間36の径方向に関する幅は、円周方向に関して不同である。この様に、この環状空間36の幅寸法を円周方向に関して不同にした分、上記ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38の外径を異ならせている。即ち、上記ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38のうち、それぞれ上記外輪32に対し回転駆動軸17の先端部が偏心している側(図1、2の上側)に位置する可動ローラ38及びガイドローラ37bの外径を、互いに同じにすると共に比較的小径にしている。これに対し、上記外輪32に対し回転駆動軸17の先端部が偏心しているのと反対側(図1、2の下側)に位置するガイドローラ37aの外径を、上記可動ローラ38及びガイドローラ37bの外径よりも大きくしている。そして、上記ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38の外周面である上記各動力伝達用円筒面43a、43a、43bを、それぞれ上記駆動側、被駆動側円筒面44、45に当接させている。
【0020】尚、上記各ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38のうち、各ガイドローラ37a、37bを支持した支持軸39a、39aの両端部は、前述の様に、前記蓋板10及び連結板26に対し(環状空間36内に)固定している。これに対して、上記可動ローラ38を支持した支持軸39bは、やはり前述した様に上記蓋板10及び連結板26に対し(環状空間36内に)、円周方向及び直径方向に関する若干の変位を可能に支持している。従って、上記可動ローラ38も、上記環状空間36内で円周方向及び直径方向に若干の変位可能である。そして、前記蓋板10及び連結板26のシリンダ孔46内に設置した、圧縮ばね等の弾性材47により、上記可動ローラ38を支持した支持軸39bを、これら支持軸39bに回転自在に支持した可動ローラ38を前記環状空間36の幅の狭い部分に向け移動させるべく、弾性的に軽く押圧している。
【0021】上述の様に構成する本発明の電動式車輪駆動装置により車輪を回転駆動する場合には、電動モータ5に通電する事により、この電動モータ5の回転駆動軸17を、図2の時計方向に回転させる。この回転駆動軸17の回転は、上記各ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38を介して前記外輪32に伝わり、これら各ローラ37a、37b、38を、図2の反時計方向に回転させる。更にこれら各ローラ37a、37b、38の回転は、上記外輪32に伝わり、この外輪32を上記ホイール1と共に、図2の反時計方向に回転させる。上記回転駆動軸17と上記ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38との間の動力伝達、並びに、これらガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38と上記外輪32との間の動力伝達は、何れも摩擦伝達により行なわれる為、動力伝達時に発生する騒音並びに振動は低い。
【0022】又、上記可動ローラ38は、上記回転駆動軸17から上記外輪32に伝達するトルクの大きさに応じた力で、前記環状空間36の幅が狭い部分(図2の上部中央部分)に食い込む傾向となる。この為、上記回転駆動軸17の外周面である駆動側円筒面44と上記ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38の外周面である動力伝達用円筒面43a、43a、43bとの当接部、並びに、これら各動力伝達用円筒面43a、43a、43bと上記外輪32の内周面である被駆動側円筒面45との当接部の面圧は、何れも、上記トルクが大きくなる程高くなる。逆に言えば、このトルクが小さい場合には、上記各当接部の面圧が低い状態となる。この為、これら各当接部の面圧を、伝達すべきトルクに合わせた適正値にして、トルク伝達を効率良く行なえる。
【0023】即ち、上記回転駆動軸17の先端部が図2で時計方向に回転し、上記外輪32を同じく反時計方向に回転させる際には、上記可動ローラ38が、上記回転駆動軸17の先端部の外周面である駆動側円筒面44及び上記外輪32の内周面である被駆動側円筒面45から、前記弾性材47による押圧力と同方向の力を受けて、上記環状空間36の幅の狭い部分、即ち、図2の上部中央に向け移動する傾向となる。
【0024】この結果、上記可動ローラ38の外周面である動力伝達用円筒面43bが、上記駆動側円筒面44と上記被駆動側円筒面45とを強く押圧する。そして、この動力伝達用円筒面43bと上記駆動側円筒面44との当接部である内径側当接部48、及び、この動力伝達用円筒面43bと上記被駆動側円筒面45との当接部である外径側当接部49の当接圧が高くなる。この様に上記可動ローラ38に関する内径側、外径側両当接部48、49の当接圧が高くなると、この可動ローラ38の外周面である動力伝達用円筒面43bにより押圧される、上記回転駆動軸17及び上記外輪32が、弾性変形や組み付け隙間により、直径方向に僅かに変位する。この結果、前記各ガイドローラ37a、37bに関する内径側、外径側両当接部48、49の当接圧が高くなる。そして、これら各内径側、外径側両当接部48、49での摩擦係合に基き、上記回転駆動軸17の先端部の回転力を、上記ガイドローラ37a、37b及び可動ローラ38を介して上記外輪32に伝達自在となる。
【0025】上述の様にして、上記可動ローラ38を上記環状空間36の幅の狭い部分に向け移動させようとする力は、上記回転駆動軸17の先端部から上記外輪32に伝達する回転駆動力の大きさに応じて変化する。そして、この力が大きくなる程、上記内径側、外径側両当接部48、49の当接圧が高くなる。従って、この様な作用に基づき、上記伝達する回転駆動力に応じた当接圧を自動的に選定して、くさびローラ式変速機の伝達効率を確保できる。
【0026】本例の場合には、くさびローラ式変速機6は、ワンウェイクラッチ機能を備えており、上記外輪32の回転速度が上記回転駆動軸17の回転速度に見合う速度、即ち、この回転駆動軸17の回転速度にくさびローラ式変速機6の減速比を掛けた速度よりも速くなった場合には、このくさびローラ式変速機6の接続が断たれる。即ち、この場合には、上記可動ローラ38が、前記弾性材47の弾力に抗して、上記環状空間36の幅の広い側(図2の左下側)に変位する。この結果、上記内径側、外径側両当接部48、49の当接部が低下若しくは喪失して、上記外輪32の回転が上記回転駆動軸17にまでは伝わらなくなる。従って、本例の構造は、前記車輪3を一方向にのみ回転駆動する場合に適切な構造である。
【0027】尚、くさびローラ式変速機6の減速比は、回転駆動軸17の先端部の外径と外輪32の内径との比を変える事により、任意に調節可能である。電動自動車用の電動式車輪駆動装置に組み込むくさびローラ式変速機6を考えた場合、上記減速比は3〜9程度の範囲で設定可能である。しかも、この程度の減速比を得るのであれば、上記回転駆動軸17の先端部の外径を小さくする事により十分に対応可能である為、減速比を大きくする事に伴って上記くさびローラ式変速機6が大型化する事はない。従って、電動モータ5として、高速型で小型・軽量のものを使用する事ができて、上記電動式車輪駆動装置全体としての小型・軽量化も図れる。この為、前記ディスクロータ等の制動用部品と共に、限られた空間内に設置しなければならない、上記電動式車輪駆動装置の設計の容易化を図れる。又、ばね付きの懸架装置を有する自動車に組み込む場合、所謂ばね下荷重の軽減により、乗り心地や走行安定性を中心とする電動自動車の走行性能の向上にも寄与できる。また、小型且つ軽量に構成でき、十分な走行性能を得易く、しかも運転時に発生する騒音が低い電動式車輪駆動装置を低コストで実現できる。
【0028】(本発明の実施の形態)本実施の形態に係る電動式車輪駆動装置を搬送車の左右の車輪に適用した場合、搬送車がカーブを曲がる時には、車両の遠心力(軸方向荷重)が電動式車輪駆動装置を経由して車輪に伝わる。
【0029】従って、図1に示す軸受31a,31b(第1及び第2軸受)は、車両重量の径方向荷重だけでなく、遠心力による軸方向荷重荷重も受け止めなければならない。
【0030】図3は、本発明の実施の形態に係り、(a)は、第1軸受の拡大断面図であり、(b)は、第2軸受の拡大断面図である。
【0031】図3(a)に示すように、モータケース7とホイール1との間に、第1軸受31aが介装してある。この第1軸受31aは、車両の旋回時に、車両重量の径方向荷重だけでなく、車幅方向内方から外方への(右向きの)第1軸方向荷重(F1)を受け止めるようになっている。
【0032】第1軸受31aの内輪は、モータケース7の凸部P1により位置を規制されており、第1軸受31aの外輪は、ホイール1の凸部P2により位置を規制されているため、第1軸方向荷重(F1)は、第1軸受31aの内輪とモータケース7の凸部P1との当接部分、及び、第1軸受31aの外輪とホイール1の凸部P2との当接部分により受け止められる。
【0033】図3(b)に示すように、くさびローラ式変速機6の支持軸30とホイール1との間に、第2軸受31bが介装してある。この第2軸受31bは、車両の旋回時に、車両重量の径方向荷重だけでなく、車幅方向外方から内方への(左向きの)第2軸方向荷重(F2)を受け止めるようになっている。
【0034】第2軸受31bの内輪は、止め輪50により位置を規制されており、第1軸受31bの外輪は、ホイール1の凸部P3により位置を規制されているため、第2軸方向荷重(F2)は、第2軸受31bの内輪と止め輪50との当接部分、及び、第2軸受31bの外輪とホイール1の凸部P3との当接部分により受け止められる。
【0035】このように、方向の異なる軸方向荷重を夫々の第1及び第2軸受31a,31bにより分担しているため、車両の旋回時、車体重量の遠心力が車体からモータケース5等を介してタイヤ2に伝わることに対処することができる。
【0036】本実施の形態は、以上のように構成されているため、以下の組立法も同時に実現することができる。
【0037】図4は、電動式車輪駆動装置の組立図である。先ず、ホイール1に、保持リング33挿入して、ワッシャを介してボルト34により固定する。次に、出力リング(外輪)32を保持リング33に挿入(スプライン嵌合)して、止め輪35で固定する。ホイール1に、2個の第1及び第2軸受31a,31bを圧入する。これにより、ホイール組立体Aを構成する。
【0038】次に、電動モータ5を組み立てると共に、出力リング(外輪)32等を除くくさびローラ式変速機6を組み立てて、両者を合体し、摩擦ローラ・モータ組立体Bを構成する。
【0039】このように予め組み立てたホイール組立体Aに、同様に予め組み立てた摩擦ローラ・モータ組立体Bを挿入して、電動式車輪を組み立てて、止め輪50で固定する。したがって、ホイール1内に電動モータ5とくさびローラ式変速機6を内蔵した電動式車輪を容易に且つ迅速に組み立てることができる。
【0040】なお、第1軸受31a内径よりも保持リング33外径が大きいので、出力リング32と保持リング33を摩擦ローラ側に取り付けると、後に組み立てられない。
【0041】さらに、出力リング32だけ摩擦ローラ側に組み付けておけば、第1軸受31a内径は通るが、後に止め輪35が止められない。
【0042】さらに、第1軸受31aを最後に圧入するのは、モータケース7の凸部が干渉するからである。
【0043】さらに、第2軸受31bについては、前もってホイール1に組み付けず、ホイール組立体Aと摩擦ローラ・モータ組立体Bを組み合わせた後、ホイール1と連結板26との間に圧入してもよい。
【0044】このように、予め組み立てたホイール組立体に、同様に予め組み立てた摩擦ローラ・モータ組立体を挿入して、電動式車輪を組み立てているため、ホイール内に電動モータとくさびローラ式変速機を内蔵した電動式車輪を容易に且つ迅速に組み立てることができる。
【0045】なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、電動モータのモータケースとホイールとの間に、車両重量の径方向荷重だけでなく、車幅方向内方から外方への第1軸方向荷重を受け止める第1軸受を介装すると共に、くさびローラ式変速機の支持軸とホイールとの間に、車両重量の径方向荷重だけでなく、車幅方向外方から内方への第2軸方向荷重を受け止める第2軸受を介装して、方向の異なる軸方向荷重を夫々の軸受により分担しているため、車両の旋回時、車体重量の遠心力が車体からモータケース等を介してタイヤに伝わることに対処することができる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【住所又は居所】東京都品川区大崎1丁目6番3号
【出願日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【代理人】 【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
【公開番号】 特開2003−211980(P2003−211980A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−9599(P2002−9599)