トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 ドアパネルのシール構造
【発明者】 【氏名】舘 健太
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】菊谷 慎二
【住所又は居所】神奈川県高座郡寒川町宮山3316番地 河西工業株式会社内

【要約】 【課題】ドアインナーパネルの開口をシールするようにドアインナーパネルの全面に沿ってシーリングスクリーンを貼付したドアパネルのシール構造であって、環境温度の変動による収縮歪みが原因となるシーリングスクリーンの剥離を防止して、長期に亘り良好なシール性能を維持する。

【解決手段】ドアインナーパネル11の凸部14や開口13に対応した凹凸部21,22を備えたシーリングスクリーン20であって、凹凸部21,22の成形と同時に左右縁部、及び又は上下縁部に波形部23等の伸縮部を成形し、この波形部23等の伸縮部により収縮歪みを吸収することで、接着部分に剥離応力が作用するのを抑え、シーリングスクリーン20の剥離を防止し、長期に亘り良好なシール性能を維持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ドアパネル(10)におけるドアインナーパネル(11)の室内面側にシーリングスクリーン(20)の周縁部が接着剤(16)を介して貼付され、ドアインナーパネル(11)の開口(13)を蓋して、水漏れ、音漏れを防ぐドアパネル(10)のシール構造であって、上記シーリングスクリーン(20)は、ドアインナーパネル(11)の凹凸面形状に対応して、凹凸部(21,22)が成形されているとともに、冷間時、発生する収縮歪みを吸収する伸縮部が形成されていることを特徴とするドアパネルのシール構造。
【請求項2】 上記シーリングスクリーン(20)に形成される伸縮部は、波形部(23)であることを特徴とする請求項1に記載のドアパネルのシール構造。
【請求項3】 上記シーリングスクリーン(20)に形成される伸縮部は、シーリングスクリーン(20)の両側の接着部より内側に沿って上下に伸びるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドアパネルのシール構造。
【請求項4】 上記シーリングスクリーン(20)に形成される伸縮部は、シーリングスクリーン(20)の外周4辺の接着部より内側に沿って設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のドアパネルのシール構造。
【請求項5】 シーリングスクリーン(20)に形成される伸縮部は、ドアパネル(10)のドアロックノブ(35)に対応する箇所に設けられている湾曲部(24)であることを特徴とする請求項1に記載のドアパネルのシール構造。
【請求項6】 シーリングスクリーン(20)に形成される伸縮部は、ドアパネル(10)のドアロックノブ(35)に対応する箇所に設けられているスリット(25)であることを特徴とする請求項1に記載のドアパネルのシール構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ドアパネルの室内側面にシート状のシール部材(以下、シーリングスクリーンという)を貼付して、水漏れ、音漏れを防いだドアパネルのシール構造に係り、特に、環境温度の変動により、シーリングスクリーンに熱収縮歪みが生じても、シーリングスクリーンの剥離を抑え、長期に亘り良好なシール性能を維持できるドアパネルのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、車両のドアパネルの室内側面には、シーリングスクリーンが貼付され、パネル側から車室内に水漏れや音漏れを防止するためのシール構造が採用されている。
【0003】図9において、ドアパネルのシール構造の概要について説明すると、まず、ドアパネル1におけるドアインナーパネル2には、スピーカ取付用の開口3aやインナーハンドル取付用の開口3bが開設されているとともに、ドアインナーパネル2自体には、補強機能を付与するための凸部4が形成されている。
【0004】そして、ドアパネル1のドアインナーパネル2面に、ドアトリム5を装着する前にドアパネル1におけるドアインナーパネル2の作業用開口3を通して室内側に騒音や水漏れ等が生じないように、ドアインナーパネル2面の全面に沿ってシート状のシーリングスクリーン6を貼付しておく。
【0005】このシーリングスクリーン6をドアインナーパネル2に貼付するには、シーリングスクリーン6の周縁部に対応するように、ドアインナーパネル2面にブチルゴム系接着剤7を塗布してこのブチルゴム系接着剤7を介してシーリングスクリーン6を接着固定した後、このシーリングスクリーン6の外方に沿って設けられたトリム固定孔8にクリップ、あるいはビス止め等によりドアトリム5が取り付けられる。
【0006】上記シーリングスクリーン6は、従来はポリエチレン(PE)フィルム(0.08mm厚み)を使用していたが、遮音効果を上げるために、厚み0.3mm、あるいは0.6mm等のPEシート(通常厚みが0.254mm以上のものをシート、それ未満のものをフィルムという)を使用するとともに、特に、ドアインナーパネル2に設けた凸部4にマッチするように、シーリングスクリーン6においても凸部6aを成形したシート状の成形体をシーリングスクリーン6として使用している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来では、ドアパネル1におけるドアインナーパネル2の全面に亘り、水漏れを防ぎ、かつ遮音効果を上げるために、シーリングスクリーン6が貼付され、特に、最近の傾向として、0.3mm、0.6mmといった比較的厚手のPEシートにインナーパネル2の凸部4に即した凹凸形状を付与したものが使用されているが、車両内の環境温度の変動により、ドアパネル1に対してPEシート、特に成形されたPEシートは、熱収縮歪みが顕著である。例えば、PE樹脂の理論上の線膨張係数は15〜16×10-5であるものの、成形シートでは実測上の収縮率が1.2%である。
【0008】従って、シーリングスクリーン6として、ドアパネル1の凹凸形状に対応する凸部6aを成形したタイプのものでは、熱収縮歪みを吸収しづらく、この収縮歪み応力に対して接着止めした部分が剥離し易いため、シール性能を損なうという欠点が指摘されている。
【0009】この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドアインナーパネルの凹凸形状に即した凹凸部を備えたシーリングスクリーンをドアインナーパネル全面に貼付したドアパネルのシール構造であって、環境温度の変動により、シーリングスクリーンに収縮歪みが発生しても、ドアパネル接着部分に収縮歪み応力が作用せず、長期に亘り良好なシール性能を付与できるドアパネルのシール構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、ドアパネルにおけるドアインナーパネルの室内面側にシーリングスクリーンの周縁部が接着剤を介して貼付され、ドアインナーパネルの開口を蓋して、水漏れ、音漏れを防ぐドアパネルのシール構造であって、上記シーリングスクリーンは、ドアインナーパネルの凹凸面形状に対応して、凹凸部が成形されているとともに、冷間時、発生する収縮歪みを吸収する伸縮部が形成されていることを特徴とする。
【0011】ここで、シーリングスクリーンの材料としては、PEシート、PPシート、ポリエステルシート等、汎用の合成樹脂シートを使用することができ、特に、コストを考慮すれば、PEシートが好ましい。また、PEシートでは、低圧PEシート、高圧PEシートがあるが、いずれを使用することもできる。
【0012】次いで、伸縮部は、波形部、ジグザグ波部、矩形波部等、連続する凹凸を条設するものであれば良く、特に、波形部を採用すれば、成形加工時、金型にエッジが形成されないため好ましい。
【0013】また、上記伸縮部の変形例としては、ドアロックノブを収容するために形成されるドアパネル側の凹部に対応して、シーリングスクリーンに形成する湾曲部、あるいはスリットとして適用することもできる。
【0014】更に、この伸縮部の形成部位は、シーリングスクリーン周縁の接着部より内方に沿う左右縁部、あるいは上下縁部、又は4辺部等、収縮応力の作用を考慮して適宜設定すれば良い。
【0015】以上の構成から明らかなように、本発明に係るドアパネルのシール構造によれば、シーリングスクリーンは、ドアインナーパネルの凹凸面形状に対応した凹凸部を備えており、この凹凸部を成形する際、伸縮部が同時に形成されている。そして、この伸縮部により、環境温度の変動による収縮歪みを吸収するという機能を備えているため、長期使用によってもドアパネルに対するシーリングスクリーンの接着部位に収縮歪み応力が作用することがなく、シーリングスクリーンの剥離を長期間抑えることにより、水漏れ、音漏れ等がない優れたシール機能を長期に亘り維持できる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るドアパネルのシール構造の好適な実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】図1はドアパネルのシール構造の概要を示すもので、ドアパネル、シーリングスクリーン、ドアトリムを分解して示す説明図、図2,図3はドアパネルに対するシーリングスクリーンの取付構造をそれぞれ示す各断面図、図4は図1に示すシーリングスクリーンの正面図、図5は同シーリングスクリーンの断面図、図6乃至図8はシーリングスクリーンの別実施形態を示す各正面図である。
【0018】図1乃至図5において、ドアパネル10は、ドアインナーパネル11とドアアウターパネル12の周縁フランジ部分を溶接加工することにより形成されており、このドアインナーパネル11には、後述するスピーカユニットを取り付けるための開口13a及びインナーハンドルを取り付けるための開口13b、作業用開口13c等の複数の開口13が開設されている。更に、ドアインナーパネル11には、変形防止のためにウエスト部に沿って伸び、また、一部は中央部に分岐して伸びる凸部14が形成されているため、剛性の強化された凹凸面形状を備えている。また、周縁部に沿ってトリム取付孔15が複数箇所に開設されている。
【0019】一方、ドアインナーパネル11のほぼ全面に亘り貼付されるシーリングスクリーン20は、PEシートを素材としており、ドアインナーパネル11の凸部14に対応した凸部21が形成されているとともに、スピーカユニットやインナーハンドルを取り付けるための開口13a,13bに対応して凹部22a,22bが設けられている。更に、左右縁部に波形部23が上下方向に沿って条設されている。尚、符号30はドアトリムを示す。
【0020】そして、ドアインナーパネル11にシーリングスクリーン20を接着固定する作業は、ブチルゴム系接着剤16が塗布ガンによりドアインナーパネル11面に塗工され、このブチルゴム系接着剤16を介してシーリングスクリーン20が接着される。
【0021】このとき、ドアパネル10におけるドアインナーパネル11に突設した凸部14に対しては、図2に示すように、シーリングスクリーン20の凸部21がマッチングする。また、開口13には、シーリングスクリーン20の凹部22a,22bが嵌まり込み、ドアインナーパネル11面にシーリングスクリーン20が密着シールされ、ドアパネル10側からの水漏れ、音漏れを防止でき、ドアトリム30に外部からの雨水等が付着することがなく、また、車室内の静粛性を良好に保つことができる。
【0022】尚、ドアトリム30は、図2に示すように、ドアトリム30の裏面に設けたクリップ座31に装着したクリップ32をドアインナーパネル11のトリム取付孔15内に圧入することにより内装される。
【0023】更に、図3に示すように、ドアトリム30のスピーカグリル33の内方に位置するスピーカユニット34は、ドアインナーパネル11のスクリーン20の凹部22aが嵌まり込んでいるため、シール性を損なうことがない。
【0024】ところで、上記シーリングスクリーン20は、図4,図5に示すように、左右側の接着部より内側に沿って上下方向に沿って伸びる波形部23が図5中符号aで示す範囲に設けられており、この波形部23は、凹凸部21,22を成形する際に同時に成形されている。
【0025】すなわち、車両内の環境温度の変動により、ドアパネル10に対してシーリングスクリーン20の素材であるPEシートの線膨張係数が金属に対して高いため、夏季には、ドアパネル10に対してシーリングスクリーン20が伸びるとともに、冬季には、ドアパネル10に対して収縮し、特に、PEシートに凹凸部21,22を成形する関係で、分子の配向性の問題から、成形品は非成形シートに比べ収縮歪みの吸収性が劣るものの、この波形部23が歪み代を有効に吸収することができる。
【0026】従って、シーリングスクリーン20のドアパネル10に対する接着部位に剥離応力が作用することがなく、長期使用によってもシーリングスクリーン20は剥離することがないため、良好なシール性能が長期に亘り保証できる。
【0027】以上説明した実施形態は、波形部23を左右縁部に沿って設けたもので、図4中X方向、すなわち車両の前後方向に沿う収縮歪みを吸収するものであるが、図6に示すように、左右縁部に加えて上下縁部に波形部23を付設した場合、図6中X方向に加えてY方向、すなわち上下方向におけるシーリングスクリーン20の収縮歪みを吸収することができる。
【0028】また、図7に示すように、波形部23に替えて、湾曲部24で代用することもできる。すなわち、ドアパネル10には、ドアロックノブ35を収容する凹部が形成されているが、シーリングスクリーン20にもドアロックノブ35対応箇所に湾曲部24が形成されている。
【0029】そして、この湾曲部24は、夏季、車内温度が高くなれば伸び代が湾曲部24に加味され、逆に、冬季、車内温度が低くなれば湾曲部24がフラット状に近づくことにより、熱収縮歪みを吸収でき、シーリングスクリーン20の剥離を抑えることができる。
【0030】また、図8に示すように、湾曲部24に替えて、ドアロックノブ35対応箇所に上下に伸びるスリット25を形成しても、同様にシーリングスクリーン20における冷間時の収縮歪みを吸収できる。
【0031】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明に係るドアパネルのシール構造は、ドアパネルにおけるインナーパネルの凹凸面形状に対応した凹凸部を備えるシーリングスクリーンをインナーパネル全面に沿って貼付するというもので、このシーリングスクリーンには、凹凸部の成形と同時に左右縁部、あるいは上下縁部、又は4辺部に波形部等の伸縮部を成形することにより、シーリングスクリーンの収縮歪みを伸縮部により吸収でき、シーリングスクリーンのドアパネル接着部位に剥離を生じさせる応力が作用しないため、シーリングスクリーンを剥離させることなく長期間接着固定でき、長期に亘り水漏れ、音漏れ等が生じることがなく、確実なシール性能が得られるという効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
【住所又は居所】神奈川県高座郡寒川町宮山3316番地
【出願日】 平成13年11月8日(2001.11.8)
【代理人】 【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
【公開番号】 特開2003−146076(P2003−146076A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−343707(P2001−343707)