トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 車両用空気調和装置
【発明者】 【氏名】倉田 俊
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【氏名】高野 義昭
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【要約】 【課題】ホットガスサイクル起動時の圧縮機内部への空気の混入を防止できると同時に圧縮機への冷媒・オイル戻りを向上できる車両用空気調和装置を提供する。

【解決手段】車両用空気調和装置は、空調ダクト2内を通過する空気をエンジンEの冷却水により加熱する主暖房装置4と、クーラモードの第1冷媒循環回路21と補助暖房であるヒータモードの第2冷媒循環回路22とを有する冷凍サイクル装置20とを具備していて、ECU10によりその作動が制御されるものであって、ヒータモードの補助暖房運転時に、暖房負荷が所定値以上のときに、エンジンE起動後から所定時間T1 を経過するまで、冷媒圧縮機7をOFFさせるようにしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車室内に空気を送るための空調ダクトと、該空調ダクト内を通過する空気をエンジンの冷却水により加熱する主暖房装置と、冷媒圧縮機より吐出された高温の冷媒を、冷媒凝縮器、減圧手段及び冷媒蒸発器に順番に導いて、その冷媒蒸発器で空調ダクト内を流れる空気を冷却した後に該冷媒圧縮機に戻すようにしたクーラモードの第1冷媒循環回路と、冷媒圧縮機により吐出された高温の冷媒を、該冷媒凝縮器を迂回させて、減圧手段及び冷媒蒸発器に順番に導いて、その冷媒蒸発器で空調ダクト内を流れる空気を補助加熱した後に該冷媒圧縮機に戻すようにした補助暖房であるヒータモードの第2冷媒循環回路とを有する冷凍サイクル装置と、を具備していて、空気制御装置(ECU)によりその作動が制御される車両用空気調和装置において、前記ヒータモードの補助暖房運転時に、暖房負荷が所定値以上のときに、エンジン起動後から所定時間T1 を経過するまで前記冷媒圧縮機をOFFさせることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】 前記暖房負荷を表す数値が、外気温度、内気温度、冷媒蒸発器下流空気温度又は冷却水温度のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】 前記第2冷媒循環回路の経路に加熱ヒータを取り付けると共に、前記エンジン起動時から、該加熱ヒータをONさせ、同時に前記所定時間T1 より短い時間T2 だけ、前記冷媒圧縮機をOFFさせることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】 前記加熱ヒータが前記冷媒蒸発器と前記冷媒圧縮機間に設けられるアキュムレータに取り付けられることを特徴とする請求項3に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車室内を暖房する車両用空気調和装置に関するもので、特に冷媒圧縮機より吐出された、高温、高圧のガス冷媒を室外熱交換器(凝縮器)を迂回させて減圧手段および室内熱交換器(蒸発器)に順番に導いて、その室内熱交換器にて空調ダクトを流れる空気を加熱するようにしたホットガスサイクルを備えた車両用空気調和装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】一般的に車両用空調装置、中でも車両用暖房装置としては、エンジンの冷却水を空調ダクト内の温水ヒータに導いて、その温水ヒータにて空調ダクト内を流れる空気を加熱して車室内を暖房する温水式暖房装置を用いている。しかし、このような温水式暖房装置は、外気温度が低く、冷却水温度が低い時にエンジンを始動して温水式暖房装置を起動する場合、その立ち上がり時に著しく暖房能力が不足するという不具合が生じている。
【0003】そこで、上記の不具合を解消する目的で、通常の冷凍サイクルに冷媒圧縮機で圧縮され吐出された高温、高圧のガス冷媒(ホットガス)を、室外熱交換器(冷媒凝縮器)を迂回させて減圧装置に通し、更に空調ダクト内の室内熱交換器(冷媒蒸発器)に供給し、ここで空調ダクト内を流れる空気を加熱することにより、エンジンの冷却水を利用して暖房を行う主暖房装置の暖房能力を補助するようにした補助暖房機能であるホットガスサイクルを備えた車両用空調装置が提案されている。なお、冷媒圧縮機は電磁クラッチを介してエンジンによりベルト駆動される。
【0004】そして、車両を急速に暖房する時には、エンジンの冷却水温度が所定温度以上の場合、主暖房装置による暖房能力が充分高いので、ホットガスサイクルを停止させるように冷媒圧縮機をOFFにし、また冷却水温度が所定温度以下の場合、主暖房装置による暖房能力が不足しているので、ホットガスサイクルを起動させるように冷媒圧縮機をONするように制御されている。
【0005】ここで、ホットガスサイクルは、車室内熱交換器を冷媒凝縮器として働かせ、車室外熱交換器を冷媒蒸発器として働かす通常のヒートポンプサイクルと異なり、冷媒圧縮機の圧縮仕事を車室内熱交換器(冷房モード時の冷媒蒸発器)で放熱するようにしているため、例えば−40℃付近の極低外気温まで作動させることが可能である。
【0006】ところが従来の技術において、例えば−20℃以下の極低温時には、冷媒HFC−134aの特性上、冷媒圧縮機を起動させる前に負圧(大気圧よりも低い圧力:例えば−26℃で大気圧0kg/cm2G)となる時がある。また、ホットガスサイクルの特性から起動直後に冷媒圧縮機の吸入部に吸入される吸入圧力は、一度低下してから徐々に上昇する傾向を持つため、冷媒圧縮機の吸入部が負圧となる頻度は非常に高いことが確認されている。
【0007】ところで、その吸入部が負圧になる点に対して、現在一般に用いられているエンジン駆動式の冷媒圧縮機は、シャフトシール部が弱く、冷媒圧縮機の吸入圧力が所定値(例えば−0.5kg/cm2G)以下に低下すると、そのシール部から冷媒圧縮機内部に空気が混入してしまう可能性がある。このような冷媒圧縮機内部への空気の混入は、サイクル内に腐食が発生したり、冷房使用時に高圧圧力(凝縮圧力)が異常な上昇をしたりする等の不具合を招くことになるため、これを防止する必要がある。
【0008】この不具合を解消するために、特開2000−142094号公報に開示された従来技術においては、極低外気温時のホットガスサイクルの起動時に、吸入圧力検出手段で検出される冷媒圧縮機に吸入される吸入圧力に関連する物理量が所定値より小さくなった場合には、冷媒圧縮機を自動停止して補助暖房運転を止めることにより、冷媒圧縮機の起動直後に冷媒圧縮機の吸入圧力が低下することを防止して冷媒圧縮機の吸入部が負圧になるのを防止している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明者達は、ホットガスサイクル内(特に冷媒圧縮機内)の冷媒温度が、エンジンの始動時から常に上昇する傾向に気付いた。この理由として、エンジンに冷媒圧縮機は固定されているため、エンジンの熱が冷媒圧縮機に伝わるのと、エンジンルーム内が温まってくることとで、ホットガスサイクル内に熱が伝わるためであると考えた。そのため、吸入圧力を推定しなくても、一定時間経てば、ホットガスサイクル内の温度が上昇するため、体積比あたりの冷媒重量が増加するので、冷媒圧縮機内の圧力が大きく負圧になることを防止し、かつ冷媒凝縮器等からの冷媒・オイル戻りを向上させることができると考えた。
【0010】本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その目的は、吸入圧力検出手段を設けることなく、また冷媒圧縮機のシャフトシール部等を改良することなく、ホットガスサイクル起動時の冷媒圧縮機内部への空気の混入を防止でき、サイクル内の腐食の発生を防止することができると同時に、ホットガスサイクル起動時の冷媒凝縮器等から冷媒圧縮機への冷媒・オイル戻りを向上させることができる車両用空気調和装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載の車両用空気調和装置を提供する。請求項1に記載の車両用空気調和装置は、空調ダクト内を通過する空気をエンジンの冷却水により加熱する主暖房装置と、クーラモードの第1冷媒循環回路と補助暖房であるヒータモードの第2冷媒循環回路とを有する冷凍サイクル装置とを具備していて、空気制御装置によりその作動が制御されるものであって、ヒータモードの補助暖房運転時に、暖房負荷が所定値以上のときに、エンジン起動後から所定時間T1 を経過するまで冷媒圧縮機をOFFさせるようにしたものである。これにより、エンジンの熱が冷媒圧縮機に伝わると共にエンジンルーム内が温まり、第2冷媒回路であるホットガスサイクル内の冷媒温度が上昇し、体積比当りの冷媒重量が増加するので、冷媒圧縮機内の圧力が大きく負圧になることが防止されると共に、冷媒圧縮機への冷媒・オイル戻りを向上させることができる。
【0012】請求項2の車両用空気調和装置は、暖房負荷を表す数値が、外気温度、内気温度、冷媒蒸発器下流空気温度又は冷却水温度のいずれかであることを規定したものである。請求項3の車両用空気調和装置は、第2冷媒循環回路の経路に加熱ヒータを取り付け、ヒータモード運転時に、エンジン起動時から加熱ヒータをONさせ、同時に所定時間T1 より短い時間T2 だけ、冷媒圧縮機をOFFさせるものである。このように、エンジン起動時に加熱ヒータでも第2冷媒循環回路を加熱させてやることにより、より少い冷媒圧縮機のOFF時間でも、冷媒圧縮機内を大きく負圧してすることなく、ホットガスサイクルの起動を開始することができる。したがって、乗員が暖房感を得られる時間が短くなる。
【0013】請求項4の車両用空気調和装置は、加熱ヒータをアキュムレータに設けるようにしたものであり、冷媒溜りであるアキュムレータに加熱ヒータを設けたことで冷媒の加熱が効果的に行われる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面に従って本発明の実施の形態の車両用空気調和装置について説明する。なお、本発明は車両用空気調和装置としているが、一般の空気調和装置においても適宜適用可能なものである。図1は、本発明の第1実施形態の車両用空気調和装置の全体構成を示す図である。
【0015】図1の車両用空気調和装置は、暖房用主熱源であるエンジンEを搭載する自動車の車室内を空調する空調ユニット1における各空調手段を、空調制御装置(ECU)10によって制御するように構成されている。空調ユニット1は、車室内に空調空気を導く空気通路11をなす空調ダクト2を備えている。この空調ダクト2の最も空気上流側には、外気吸込口、内気吸込口および内外気切替ドア(いずれも図示せず)が設けられ、これらよりも空気下流側には遠心式送風機3が設けられている。また、空調ダクト2の最も空気下流側には、デフロスタ吹出口、フェイス吹出口またはフット吹出口等の吹出口およびモード切替ドア(図示せず)が設けられている。
【0016】吹出口よりも空気上流側には、後述する冷媒蒸発器6を通過した空気を再加熱する温水式暖房装置(主暖房装置)4の温水ヒータ5が設けられている。この温水ヒータ5は、エンジンEにより駆動されるウォータポンプ(図示せず)により冷却水の循環流が発生する冷却水循環回路14の途中に設置されている。そして、温水ヒータ5は、冷却水循環回路14に設置された温水弁15が開弁すると内部にエンジンEの排熱を吸収した冷却水が還流し、この冷却水を暖房用熱源として空気を再加熱する。ここでこれらのエンジンE、温水ヒータ5、冷却水循環回路14および温水弁15によって温水式暖房装置(主暖房装置)4が構成される。
【0017】遠心式送風機3と温水ヒータ5との間には、自動車に搭載された冷凍サイクル装置20の一構成部品を成す冷媒蒸発器6が空調ダクト2内の空気通路11の全面を塞ぐように配置されている。この冷凍サイクル装置20は、第1冷媒循環回路(冷凍サイクル)21と、第2冷媒循環回路(ホットガスサイクル)22と、これらの回路21,22とを切り替える第1、第2電磁弁23,24とを備えている。
【0018】第1冷媒循環回路21は、冷媒圧縮機7より吐出された高温、高圧のガス冷媒を、第1電磁弁23→冷媒凝縮器25→レシーバ(気液分離器)26→第1減圧手段27→冷媒蒸発器6→アキュームレータ(気液分離器)28→冷媒圧縮機7の順に循環させる冷媒回路である。また、第2冷媒循環回路22は、冷媒圧縮機7より吐出された高温、高圧のガス冷媒(ホットガス)を、第2電磁弁24→第2減圧手段29→冷媒蒸発器6→アキュームレータ28→冷媒圧縮機7の順に循環させる冷媒回路である。なお、第1減圧手段27と第2減圧手段29を一つの減圧手段として、冷凍サイクルとホットガスサイクルとをこの一つの減圧手段で兼用してもよい。
【0019】冷凍サイクル装置20は、第1電磁弁23が開弁し、第2電磁弁24が閉弁すると、第1冷媒循環回路21中に冷媒が還流する。また、冷凍サイクル装置20は、第1電磁弁23が閉弁し、第2電磁弁24が開示すると、第2冷媒循環回路22中に冷媒が還流する。なお、第1、第2電磁弁23,24により循環回路切替手段を構成する。また、16は駆動モータ17により回転駆動される冷却ファンで、冷媒凝縮器25に強制的に外気を吹き付ける。
【0020】冷媒蒸発器6は、室内熱交換器に相当するもので、第1冷媒循環回路21中を冷媒が流れる時に、第1減圧手段27より流入する低温の気液二相冷媒を蒸発させて、通過する空気を冷却する冷却用熱交換器として働く。また、冷媒蒸発器6は、第2冷媒循環回路22中を冷媒が流れる時に、第2減圧手段29より流入する高温のガス冷媒を流して、通過する空気を加熱する加熱用熱交換器(補助暖房装置)として働く。
【0021】冷媒圧縮機7は、吸入口より吸入した冷媒を圧縮して吐出口より高温、高圧のガス冷媒を吐出するエンジン駆動式の圧縮機である。この場合、可変容量型でも固定容量型でもどちらでもよい。この冷媒圧縮機7のシャフトには、エンジンEの回転動力を冷媒圧縮機7に伝達したり遮断したりする電磁クラッチ8が接続されている。また、電磁クラッチ8のプーリ33には、ベルトVが掛けられている。そのベルトVは、エンジンEのクランクプーリに掛けられており、エンジンEの回転動力を冷媒圧縮機7に伝達可能としている。
【0022】そして、電磁クラッチ8が通電状態(ON)のときには、エンジンEの回転動力がベルトVおよび電磁クラッチ8を介して冷媒圧縮機7に伝達される。これにより、冷凍サイクル装置20が起動することによって冷媒蒸発器6による空気冷却作用または空気加熱作用が行われる。また、電磁クラッチ8への通電が停止(OFF)のときには、エンジンEの動力が冷媒圧縮機7に伝達されず、冷媒蒸発器6による空気冷却作用または空気加熱作用が停止される。
【0023】空調ユニット1における各空調手段を制御するECU(空調制御手段)10には、車室内前面に設けられた操作パネル(図示せず)上の各スイッチからの各スイッチ信号が入力される。なお操作パネル上には、ホットガススイッチ、空調モードをクーラモード(冷房運転)とヒータモード(暖房運転)とのいずれかに切り替えるモード切替スイッチ、車室内の温度を所望の温度に設定する温度設定スイッチ、冷凍サイクル装置20の起動または停止を指令するエアコンスイッチ、および遠心式送風機3のON,OFFを指令するブロワスイッチ等が設置されている。
【0024】また、ECU10の内部には、CPU,ROM,RAM等からなる周知のマイクロコンピュータが設けられ、各センサからの信号が図示しない入力回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータへ入力されるように構成されている。なお、ECU10は、自動車のエンジンEの始動および停止を司るイグニッションスイッチ(IG)が投入(ON)されたときに、自動車に搭載された車載電源であるバッテリ(図示せず)から直流電源が供給されると制御処理を開始するように構成されている。
【0025】エアコンECU10には、車室内の空気温度(内気温度)を検出する内気温度センサ104、車室外の空気温度(外気温度)を検出する外気温度センサ105、冷媒蒸発器6を通過した直後の空気温度(エバポレータ下流空気温度)を検出するエバ後温度センサ107、温水ヒータ5に流入する冷却水温度を検出する冷却水温度センサ108等からの各信号が入力される。なお、上記の各スイッチや各センサは、自動車の車室内を空調するのに必要な空調環境因子を検出するもので、内気温度センサ、外気温度センサ、エバ後温度センサ、冷却水温度センサには、サーミスタ等が使用されている。また、ECU10には、エンジン始動後の時間を演算する計測手段が設けられている。
【0026】次に、本発明の特徴である上記のように構成された第1実施形態の車両用空気調和装置のホットガス作動について、図2のフローチャートに基づいて説明する。ステップS1においてイグニッションスイッチ(IG)がONされ、ECU10に直流電源が供給される。先ず、ステップS2において、エアコン操作パネル上の各スイッチから信号を読み込む。またステップS3において、各センサからの信号を読み込む。具体的には、外気温度、内気温度、エバポレータ下流空気温度、冷却水温度等を読み込む。
【0027】次に、空調モードがヒータ(暖房)モードであるか否かを判定する(ステップS4)。即ち、モード切替スイッチによりヒータモードに設定されているか否かを判定する。判定結果がNOの場合は、図2のルーチンを抜ける。ステップS4の判定結果がYESの場合、つまり空調モードがヒータモードである場合には、ホットガススイッチが投入(ON)されているか否かを判定する(ステップ5)。この判定結果がNOの場合には、電磁クラッチ(Mg/Cl)8への通電を停止(OFF)して冷媒圧縮機7を自動停止し、図2のルーチンを抜ける。
【0028】また、ステップS5の判定結果がYESの場合、つまりホットガススイッチがONされている場合は、ステップS6に進み暖房負荷が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、暖房負荷として、外気温度が所定値(−30℃)以下であるかどうかを判定する。なお、暖房負荷としては、外気温度以外に内気温度、エバポレータ下流空気温度、冷却水温度等を採用してもよい。また所定値も、適宜設定できる。ステップS6の判定結果がYESの場合、つまり外気温度が−30℃以上である場合には、電磁クラッチ(Mg/Cl)8をONして(ステップS7)、冷媒圧縮機7が起動して、第1電磁弁23を閉弁し、第2電磁弁24を開弁し、第2冷媒循環回路(ホットガスサイクル)22にて、そのままホットガス運転が始まる。
【0029】ステップS6の判定結果がNOの場合、つまり外気温度が−30℃より低い場合に、本発明の特徴であるエンジン始動後の時間が演算され、ステップS8でエンジン始動後の時間T1 が60秒以上か否かを判定する。そして、エンジン始動から60秒を経過した後に、ステップS7に進み電磁クラッチ8がONされ、冷媒圧縮機7が起動して、第1電磁弁23を閉弁し、第2電磁弁24を開弁して、第2冷媒循環回路でのホットガス運転が始まる。
【0030】このように、本発明の第1実施形態では、暖房負荷が所定値以上である場合に、エンジン始動から所定時間T1 、例えば60秒経過後に、ホットガスサイクル運転を起動するようにしている。これにより、エンジンの熱が直接、冷媒圧縮機に伝わると共にエンジンルーム内が温まって、ホットガスサイクル内に熱が伝わり、サイクル内温度が上昇する。そのため、従来技術のように冷媒圧縮機の吸入圧力を推定しなくても、一定時間経てば、サイクル内温度が上昇し、体積比当りの冷媒重量が増加するので、冷媒圧縮機内の圧力が大きく負圧になることを防止し、また冷媒・オイル戻りを向上させることができる。
【0031】図3は、エンジン始動後のエンジンの冷却水温度及び圧縮機の表面温度の上昇具合を計測したグラフである。横軸は時間(分)を、縦軸は温度(℃)を表わしており、G1の線は、エンジンの冷却水温度を、G2の線は、容量可変型圧縮機を使用し、エンジン始動の1分後にホットガス作動をした場合の圧縮機の表面温度を、G3の線は、容量可変型圧縮機を使用し、ホットガス作動なしの場合の圧縮機の表面温度を、G4の線は、容量固定型圧縮機を使用し、エンジン始動の5分後にホットガス作動をした場合の圧縮機の表面温度を、G5の線は、容量固定型圧縮機を使用し、ホットガス作動なしの場合の圧縮機の表面温度を、それぞれ示している。容量可変型圧縮機の方が、容量固定型圧縮機より圧縮機の表面温度上昇の傾きが大きいのは、容量可変圧型縮機ではエンジン始動と同時にシャフトが空回りしているため、圧縮機内で発熱し、圧縮機の温度上昇が大きい故である。したがって、図2において、電磁クラッチのON及びOFFとは、容量可変型圧縮機では、容量制御を0%より大きくする及び容量制御を0%にするの意味である。
【0032】図4は、本発明の第2実施形態の車両用空気調和装置の全体構成を示す図である。この第2実施形態では、第2冷媒循環回路22であるホットガスサイクル内の経路、例えば、図4ではアキュムレータ28、の周囲又は内部に加熱ヒータ40を取り付ける。そして、ECU10からの指令で所定時間、アキュムレータ28を加熱できるようにしている。他の構成については、第1実施形態と同様である。加熱ヒータ40としては、PTCヒータ、ニクロム線ヒータ、グロープラグヒータ等の電気ヒータが好適である。
【0033】次に、本発明の第2実施形態の空気調和装置のホットガス作動について、図5のフローチャートに基づいて説明する。ステップT1においてイグニッションスイッチ(IG)がONされ、ECU10に直流電源が供給される。先ずエアコン操作パネル上の各スイッチから信号を読み込む(ステップT2)。また各センサからの信号も読み込む(ステップT3)。具体的には、外気温度、内気温度、エバポレータ下流空気温度、冷却水温度等を読み込む。
【0034】次いで、ステップT4において、暖房負荷が所定値以上であるか否かを判定する。例えば、暖房負荷として、外気温度が所定値(−30℃)以下であるかどうかを判定する。この暖房負荷の選定およびその所定値の設定については、第1実施形態と同じである。ステップT4の判定結果がYESの場合、つまり外気温度が−30℃以上の場合は、ステップT5に進み、空調モードがヒータモードであるか否かを判定する。判定結果がNOの場合は、図5のルーチンを抜け、判定結果がYESの場合は、ステップT6に進みホットガススイッチがONされているか否かを判定する。判定結果がNOの場合は、ステップT7に進み電磁クラッチ(Mg/Cl)8をOFFし、冷媒圧縮機7を停止する。判定結果がYESの場合は、電磁クラッチ8をONし、冷媒圧縮機7を起動しホットサイクル運転を開始する。以上のルーチンは、第1実施形態と同様である。
【0035】第2実施形態のルーチンは、以下のルーチンに特徴を有すものである。即ち、ステップT4において、判定結果がNOで暖房負荷が所定値以上である場合、例えば外気温度が−30℃より低い場合に、ステップT9に進み、アキュムレータ28の加熱ヒータ40をONにする。次いで、ステップT10で空調モードがヒータモードである否かを判定する。ステップT10の判定結果がYESの場合は、ステップT11に進みホットガススイッチがONか否かを判定する。ステップT9で加熱ヒータがONされたら、ステップT13に進み加熱ヒータ40の加熱時間が演算され、ステップT14で加熱時間が600秒を越えたら、ステップT15に進み加熱ヒータ40をOFFにする。
【0036】ステップT11の判定結果がNOの場合は、ステップT15に進み加熱ヒータ40がOFFされ、その判定結果がYESの場合、つまりホットガススイッチがONされていれば、ステップT12に進みエンジン始動後の時間が所定値T2 、例えば40秒以上かどうかが判断され、40秒以上経ったら電磁クラッチ(Mg/Cl)8がONされ、冷媒圧縮機7がホットガスサイクル運転を始める。
【0037】以上のように、本発明の第2実施形態では、エンジンの始動後、暖房負荷である外気温度が所定値(例えば−30℃)以下の場合に、加熱ヒータ40をONする。その後所定時間T1 (例えば600秒)以内にホットガススイッチが入らなければ、加熱ヒータ40をOFFにする。またホットガススイッチが入った場合は、加熱ヒータ40はそのままON状態(600秒まで)を続ける。
【0038】このように、第2実施形態では、加熱ヒータ40をホットガスサイクル運転の作動前にONしており、そのため極低外気温時の始動において、ホットガスサイクル内の冷媒温度上昇が向上し、ホットガスサイクル運転を始動させるまでの時間が、第1実施形態の場合よりも短くなる。これにより、乗員が暖房感を得られるまでの時間が短くなる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地
【出願日】 平成14年3月19日(2002.3.19)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開2003−267039(P2003−267039A)
【公開日】 平成15年9月25日(2003.9.25)
【出願番号】 特願2002−76706(P2002−76706)