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【発明の名称】 懸架装置
【発明者】 【氏名】川崎 裕章
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】ステアリングを切った状態でもエアスプリングを円滑に伸縮できる、特に車高調整式として用いられる懸架装置を提供することを目的とする。

【解決手段】緩衝装置2と、コイルスプリング3と、上板部材11と下板部材12と上下板部材11,12の間に介設される弾性膜10を有するエアスプリング4とを、備え、コイルスプリング3の上部に、エアスプリング4を、直列的に配設し、緩衝装置2のロッド2aが、上板部材11の孔部11a及び下板部材12の孔部12aを貫通して、緩衝装置2が、車体6と車軸8を連結しており、エアスプリング4の内圧を、ロッド2aと摺接する両孔部11a,12aに内嵌されたパッキン9で密封し、両孔部11a,12aの軸心Oに対してロッド2aの軸心Lが偏心可能となるように両孔部11a,12aとロッド2aとの間に隙間Gを設けている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 緩衝装置2と、コイルスプリング3と、上板部材11と下板部材12と該上下板部材11,12の間に介設される弾性膜10を有するエアスプリング4とを、備え、上記コイルスプリング3の上部に、上記エアスプリング4を、直列的に配設し、上記緩衝装置2のロッド2aが、上記上板部材11の孔部11a及び上記下板部材12の孔部12aを貫通して、該緩衝装置2が、車体6と車軸8を連結しており、上記エアスプリング4の内圧を、上記ロッド2aと摺接する上記両孔部11a,12aに内嵌されたパッキン9で密封し、該両孔部11a,12aの軸心Oに対して上記ロッド2aの軸心Lが偏心可能となるように該両孔部11a,12aと該ロッド2aとの間に隙間Gを設けたことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】 エアスプリング4にエアを出し入れすることで車高を調整するよう構成された請求項1記載の懸架装置。
【請求項3】 両孔部11a,12aの内径Dを、ロッド2aの外径dよりも、1mm〜5mm大きく形成した請求項1又は2記載の懸架装置。
【請求項4】 パッキン9の形状を横断面略V字状乃至略U字状とした請求項1、2又は3記載の懸架装置。
【請求項5】 下板部材12の中央部を上方突隆状に形成して、該下板部材12の孔部12aを上板部材11の孔部11aに接近するように形成した請求項1、2、3又は4記載の懸架装置。
【請求項6】 コイルスプリング3と、エアスプリング4の下板部材12との間に、スラストベアリング13を介設した請求項1、2、3、4又は5記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の車輪懸架装置に係り、特に車高調整式の懸架装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、懸架装置(サスペンション)を構成する緩衝装置のロッドの先端は、ピローボール若しくはラバーブッシュで構成された軸受部を介して、車体に取り付けられる。
【0003】ピローボールで構成された軸受部は、懸架装置と車体の接点部分の剛性を向上させ懸架装置の動きをダイレクトに伝える効果があるため、レーシングカーやスポーツタイプの乗用車で好んで使われることもあるが、ラバーブッシュの軸受部に比べて、乗り心地が悪いことや、金属音がするなどの理由でファミリーカーなどのワゴンタイプの乗用車などではあまり使われない。また、ラバーブッシュの軸受部に比べて、高価であることも敬遠される理由である。
【0004】一方、ラバーブッシュで構成された軸受部は、ステアリングを切っても緩衝装置が回転したり大きく振れたりしないダブルウィッシュボーン式サスペンションでは特に工夫は必要ないが、車高調整式のストラット式サスペンションの場合、以下のような問題点が発生する。
【0005】ここで、従来の車高調整式懸架装置は、図6に例示するように、緩衝装置42と、コイルスプリング43と、上板部材45と下板部材46と上下板部材45,46の間に介設される弾性膜47を有するエアスプリング44とを、備え、コイルスプリング43の上部に、エアスプリング44を、直列的に配設し、緩衝装置42のロッド42aが、上板部材45の孔部45a及び下板部材46の孔部46aを貫通し、エアスプリング44の内圧を、ロッド42aと摺接する両孔部45a,46aに内嵌されたOリング48で密封している。そして、緩衝装置42のロッド42a先端は、防振ゴム(ラバーブッシュ)41を内装したストラットマウント40を介して車体6に取り付けられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の懸架装置では、ステアリングを切ると緩衝装置42は回転しながらストラットマウント40を支点に左右に振れ、その振れに伴いエアスプリング44も一緒に振れることができれば問題はないが、エアスプリング44はスラストベアリング49を介してストラットマウント40と当接しているために左右に振れることができない。しかも、ロッド42aと両孔部45a,46aとの隙間は、Oリング48の場合通常0.05mm程度しかとれないので、その結果、ロッド42aが両孔部45a,46aに当接し、ロッド42aに曲げ方向の力が加わってしまう。さらに、その状態でエアスプリング44に加圧エアを充填するとロッド42aに対して下板部材46が円滑に摺動することができないなどの不具合が発生する。
【0007】そこで、本発明は、ステアリングを切った状態でもエアスプリングを円滑に伸縮できる、特に車高調整式として用いられる懸架装置を提供することを目的とする。また、本発明は、車の乗り心地を改善し、低価格な、かつ、簡素な構造の懸架装置を提供することを、他の目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明に係る懸架装置は、緩衝装置と、コイルスプリングと、上板部材と下板部材と該上下板部材の間に介設される弾性膜を有するエアスプリングとを、備え、上記コイルスプリングの上部に、上記エアスプリングを、直列的に配設し、上記緩衝装置のロッドが、上記上板部材の孔部及び上記下板部材の孔部を貫通して、該緩衝装置が、車体と車軸を連結しており、上記エアスプリングの内圧を、上記ロッドと摺接する上記両孔部に内嵌されたパッキンで密封し、該両孔部の軸心に対して上記ロッドの軸心が偏心可能となるように該両孔部と該ロッドとの間に隙間を設けたものである。
【0009】また、エアスプリングにエアを出し入れすることで車高を調整するよう構成されたものである。また、両孔部の内径を、ロッドの外径よりも、1mm〜5mm大きく形成したものである。また、パッキンの形状を横断面略V字状乃至略U字状としたものである。
【0010】また、下板部材の中央部を上方突隆状に形成して、該下板部材の孔部を上板部材の孔部に接近するように形成したものである。また、コイルスプリングと、エアスプリングの下板部材との間に、スラストベアリングを介設したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳説する。
【0012】図1は、本発明に係る自動車の車輪懸架装置の実施の一形態を示したものであり、本懸架装置1は、緩衝装置(ダンパー)2とコイルスプリング3とエアスプリング4とを備え、コイルスプリング3の上部に直列的に、エアスプリング4を配設し、緩衝装置2のロッド2aが、エアスプリング4を貫通して、緩衝装置2が、車体6と車軸8を連結しているものである。即ち、本懸架装置1は、自動車5の車体6と車軸8との間に装着されている。ここで、「直列的」とは、車体6側と車軸8側の間の力の伝達が、一方のみを介して伝達されることが無く、必ず両者を介して伝達されるような配置を言う。
【0013】具体的に述べると、図1と図2に示すように、緩衝装置2のストラット本体2bの下部は、車輪7,7間に架け渡された車軸8に取り付けられ、かつ、緩衝装置2のロッド2aは、軸受部14を介して車体6に連結される。
【0014】軸受部(ストラットマウント)14は、車体6に(ボルト等の)固着具にて離脱自在に固定される取付板14aと、取付板14aに装着されてロッド2aを保持する防振ゴム(ラバーブッシュ)14bと、を備えており、ロッド2aがあらゆる方向に対して弾性支持されることにより、地面等からの衝撃・振動の伝達を緩和させることができる。また、ステアリングを切ると緩衝装置2は回転しながら振れるが、その振れを許容する働きもある。ここで、「振れ」とは、ロッド2aが軸受部14を支点として揺動すること、若しくは、ロッド2aが平行移動することをいう。
【0015】コイルスプリング3は、緩衝装置2の中間部を包囲するように配設され、コイルスプリング3の下部は、緩衝装置2のストラット本体2bに当接乃至取り付けられ、かつ、コイルスプリング3の上部は、エアスプリング4の下部にスラストベアリング13を介して当接乃至取り付けられている。
【0016】エアスプリング4は、上板部材11と下板部材12と上下板部材11,12の間に介設される弾性膜10とを有している。即ち、ビア樽型乃至円筒型の(ゴム製)弾性膜10の上・下開口部を、水平状の(金属製)上板部材11と下板部材12にて、塞ぐように挾んでいる。
【0017】エアスプリング4は、緩衝装置2のロッド2aの一部を包囲するように配設され、コイルスプリング3と、エアスプリング4の下板部材12との間に、スラストベアリング13を介設しており、ステアリングを切ったときに、ストラット本体2b及びコイルスプリング3が回転しても、エアスプリング4は回転しないようになっている。
【0018】また、スラストベアリング13は径方向に若干の余裕代をもって介設されており、ステアリングを切ったときの緩衝装置2及びコイルスプリング3の振れが、エアスプリング4へ伝達することを防止している。
【0019】エアスプリング4の上板部材11は、(ゴム・発泡ウレタン等の)環状の弾性体16を介して、軸受部14の取付板14aに当接しており、エアスプリング4が安定した姿勢で車体6を支持することができ、かつ、地面等から車体6への衝撃・振動を緩和することができる。
【0020】そして、緩衝装置2のロッド2aは、上板部材11の孔部11a及び下板部材12の孔部12aを貫通して、エアスプリング4の内圧を、ロッド2aと摺接する両孔部11a,12aの夫々に内嵌された(環状の)パッキン9,9で密封している。即ち、上板部材11に貫設されたエア出入口15よりエアスプリング4に(加圧)エアを出し入れすることで、エアスプリング4が伸縮して、車高を調整するように構成されている。
【0021】図2、図3及び図4に示すように、両孔部11a,12aの軸心Oに対してロッド2aの軸心Lが偏心可能となるように両孔部11a,12aとロッド2aとの間に隙間Gを設けている。言い換えると、両孔部11a,12aは、ステアリングを切ったとき等のロッド2aの最大の振れ幅を許容できる大きさに形成されている。ここで、「偏心」とは、ロッド2aの軸心Lが、両孔部11a,12aの軸心Oに対して、揺動(図4(ロ)参照)乃至平行移動(図4(イ)の状態から軸心Lと軸心Oが平行を保ったままで離れるように移動)した状態をいう。
【0022】両孔部11a,12aの内径Dを、ロッド2aの外径dよりも、1mm〜5mm大きく形成しており、(言い換えると、隙間Gを 0.5mm〜 2.5mmに設定しており、)ロッド2aの偏心を確実に許容できる。即ち、1mm未満では、ロッド2aの軸心Lの偏心を許容できず、ロッド2aと孔部12aが当ってスムーズな下板部材12の作動が妨げられる。他方、5mmを越えると、孔部11a,12aが無駄に大きくなり、パッキン9にてエアスプリング4の内圧を確実に密封することができない。
【0023】パッキン9は、横断面略V字状乃至略U字状に形成され、パッキン9の溝がエアスプリング4内の内圧を受け得るように、両孔部11a,12aに形成された凹周溝に夫々装着されている。即ち、図3と図4に示すように、パッキン9の自由状態での張り代Mを、十分に大きくすることができる形状とする。
【0024】このように構成することで、図4(イ)に示すように、孔部12aの軸心Oに対してロッド2aの軸心Lが略一致した状態から、ステアリングを切った際等に、図4(ロ)に示すように、孔部12aの軸心Oに対してロッド2aの軸心Lが偏心するが、ロッド2aは孔部12aに当接(干渉)せず、しかも、パッキン9のシールリップはロッド2aに密着したままである。なお、図4には下板部材12側を示したが、上板部材11側のロッド2aの偏心量(偏心幅)は、下板部材12側のロッド2aの偏心量に比べて、同等乃至小さくなるため、当然に、ロッド2aの偏心を許容でき、かつ、エアスプリング4の密封状態を保持できる。
【0025】さらに、図2に示すように、下板部材12の中央部を上方突隆状に形成して、下板部材12の孔部12aを上板部材11の孔部11aに接近するように形成している。即ち、軸受部14から下板部材12の孔部12a(及びパッキン9)までの距離を極力近くするように形成することで、ロッド2aが軸受部14を支点に振れたときに、ロッド2aの振れ幅(偏心量)を少しでも小さくすることができ、孔部12aの内径Dを極力小さくして、隙間Gを減少し、パッキン9の隙間Gからのハミ出しを防止する。
【0026】次に、本懸架装置1にて車高を調整する方法を説明すると、エアスプリング4の内圧が無いときは、上板部材11の中央下部が、下板部材12の中央上部に載置された(ゴム・発泡ウレタン等の)弾性体17に当接して、車体6等の荷重を、エアスプリング4の弾性膜10にかけず、弾性体17にて受け持つようにしている。
【0027】そして、エアスプリング4のエア出入口15から、エアを供給すると、エアスプリング4内に加圧空気が充填され、エアスプリング4は鉛直方向に弾発付勢力を発生し、車体6等の荷重と釣り合う高さまで伸び、車体6と車軸8(図1参照)の間隔を広げ、車高をアップすることができる。なお、車高の最大上昇量は、下板部材12の中央下部とロッド2aに外嵌されたストッパー18との間の距離にて決定される。
【0028】なお、図示省略するが、エアスプリング4のエア出入口15への加圧エアの供給は、コンプレッサからエアタンク、電磁弁、及び、配管等を介して行われ、運転席のスイッチにて、電磁弁を開閉させることで、エアスプリング4への加圧エアの出し入れを行うようにする。また、コンプレッサの電源は、バッテリーより供給する。
【0029】次に、ステップワゴンのフロントに(図2の)本懸架装置を取り付けた実施例と、ステップワゴンのフロントに(図6の)懸架装置を取り付けた従来例と、を比べると、従来例では、ステアリングを切った状態で、エアスプリング44内にエアを出し入れし車高の上げ下げを行ったところ、エアスプリング44がスムーズに鉛直方向に伸長しなかった。また、試験後分解してみると下板部材46及びロッド42aに傷がついていた。これに対して、本発明の実施例では、ステアリングを切った状態でも、エアスプリング4がスムーズに鉛直方向に伸長することができ、試験後分解しても下板部材12及びロッド2aともに全く傷がついていなかった。
【0030】なお、図5にパッキン9の他の実施の形態を示し、図3と比較すると、パッキン9の大気(低圧)側内面に小リップ部19が付設されている点が相違する。即ち、小リップ部19は、ロッド2aの上下摺動の際にロッド2aに付着するゴミを取り除く役目と、パッキン9を安定した姿勢でロッド2aに接触させる役目と、を担う。
【0031】なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、例えば、パッキン9、上板部材11、下板部材12等の形状等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【0032】
【発明の効果】本発明は、以下に記載するような著大な効果を奏する。
【0033】(請求項1によれば、)ステアリングを切った状態でも、緩衝装置2のロッド2aが両孔部11a,12aに当接(干渉)しないため、エアスプリング4を円滑に伸縮できる。特に、ロッド2aと車体6とを連結する軸受部14がラバーブッシュタイプの場合に、エアスプリング4を適用できるようになり、乗り心地や低価格を重視する被験者の使用選択の幅を広げることができる。
【0034】また、コイルスプリング3とエアスプリング4を直列的に配置しているため、全体のばね定数が小さくなり、一層、地面等からの衝撃を和らげ、乗り心地を向上させる。また、エアスプリング4の内圧や受圧有効面積を変えることで、全体のばね定数を変化させ、様々な乗り心地を楽しむことができる。
【0035】(請求項2によれば、)エアを出し入れするだけで、車高の調整が容易となり、さらに、全体のばね定数を変化させ、様々な乗り心地を楽しむことができる。具体的に述べると、車両の見栄えや走行性能を重視する場合、通常はエアスプリング4に加圧エアを充填せずに車高が低い状態で走行し、段差等がある場合にエアスプリング4に加圧エアを充填して車高を上昇させて段差を乗り越えるようにする。また、例えば、雪国で使用する場合、エアスプリング4に加圧エアを充填していないときの車高を標準的な車高に設定しておき、冬場などわだちが目立つようになると、エアスプリング4に加圧エアを充填して、通常よりも車高を高くして走行するなどの利用も可能である。
【0036】(請求項3によれば、)緩衝装置2のロッド2aが両孔部11a,12aに当接(干渉)するのを防止すると共に、パッキン9のハミ出し等を防いで寿命を延ばし、エアスプリング4内の密封性を確保することができる。
(請求項4によれば、)ロッド2aの軸心Lが偏心───平行移動や揺動による偏心───しても、確実にロッド2aに密着して、密封性を保持することができる。
【0037】(請求項5によれば、)ロッド2aの軸心Lの偏心幅を小さく設定でき、両孔部11a,12aとロッド2aとの隙間Gを減少でき、パッキン9の密封性を確保できる。
(請求項6によれば、)ステアリングを切ったときに生じる緩衝装置2及びコイルスプリング3の回転に伴うエアスプリング4の回転運動(弾性膜10の捩れ等の変形)を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
【出願日】 平成13年11月13日(2001.11.13)
【代理人】 【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
【公開番号】 特開2003−146042(P2003−146042A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−347837(P2001−347837)