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【発明の名称】 ランフラットタイヤ
【発明者】 【氏名】田中 正俊
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】サイド補強を不必要に強化することなく、ランフラット操安性を改善したランフラットタイヤを提供すること。

【解決手段】路面と接触するトレッド部1と、該トレッド部1の両側のサイドウォール部2と、該サイドウォール部2の端部でタイヤリムに嵌着されるビード部3とを有し、一方のビード部3からサイドウォール部2、トレッド部1、他方のサイドウォール部2、及び、ビード部3に至るカーカス5と、該カーカス5の前記トレッド部1における接地面側に配置されたベルト6と、該ベルト6の接地面側に配置されたトレッドゴム7と、前記サイドウォール部2に設けられた高硬度ゴムからなるサイド補強部8とを有したランフラットタイヤにおいて、前記トレッド部1に、トレッドリフトを抑制する抑制部材9が配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 路面と接触するトレッド部と、該トレッド部の両側のサイドウォール部と、該サイドウォール部の端部でタイヤリムに嵌着されるビード部とを有し、一方のビード部からサイドウォール部、トレッド部、他方のサイドウォール部、及び、ビード部に至るカーカスと、該カーカスの前記トレッド部における接地面側に配置されたベルトと、該ベルトの接地面側に配置されたトレッドゴムと、前記サイドウォール部に設けられた高硬度ゴムからなるサイド補強部とを有したランフラットタイヤにおいて、前記トレッド部に、トレッドリフトを抑制する抑制部材が配置されていることを特徴とするランフラットタイヤ。
【請求項2】 前記抑制部材は、タイヤ曲げ変形の圧縮側に配置された圧縮に強い材料からなるベースゴムであることを特徴とする請求項1記載のランフラットタイヤ。
【請求項3】 前記ベースゴムは、前記ベルトとトレッドゴムとの間に配置され、該トレッドゴムよりも硬度の高いゴムからなることを特徴とする請求項2記載のランフラットタイヤ。
【請求項4】 前記ベースゴムは、ベルトの幅方向中央部に配置され、その幅が前記ベルトの幅の20%以上であり、且つ、前記トレッドゴムより硬度7度以上高いゴムからなることを特徴とする請求項2又は3記載のランフラットタイヤ。
【請求項5】 前記ベースゴムの厚みは2mm以上であることを特徴とする請求項2〜4の何れか一つに記載のランフラットタイヤ。
【請求項6】 前記ベースゴムの硬度は73度以上であることを特徴とする請求項2〜5の何れか一つに記載のランフラットタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サイドウォール補強式のランフラットタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】パンクしても応急的に走行可能なタイヤは、「ランフラットタイヤ(Run FlatTire)」と呼ばれ、デノボ(Denovo)タイプ、Nタイプ、及び、二重構造式の3種類に大別される((株)グランプリ出版1990年11月20日発行「タイヤ工学」401〜403頁参照)。
【0003】前記Nタイプのランフラットタイヤとは、サイドウォール部が強化されたものであり、本発明は、このサイドウォール補強式ランフラットタイヤに関する。この種サイドウォール補強式ランフラットタイヤとして、例えば、特開2001−138721号公報や特開平11−301222号公報に記載のものが公知である。前記特開2001−138721号公報に記載のものは、サイドウォール部におけるカーカス層の内面に、断面が三日月状の比較的硬質の補強ゴム層を配置して強化することにより、走行中にタイヤがパンクして空気が抜けてしまっても、補強ゴム層で強化されたサイドウォール固有の剛性によって荷重を支持し、所定の距離ランフラット走行を可能とした空気入りタイヤにおいて、前記補強ゴム層を内外2分割構成とし、その境界面に凹凸領域を設けて、前記補強ゴム層の耐久性の向上を図ったものであった。
【0004】また、前記特開平11−301222号公報に記載のものは、サイドウォール補強式ランフラットタイヤにおいて、カーカスプライに特定のスチールコードを埋設することにより、ランフラット耐久性の向上を図り、また、カーカスプライとベルトとの間に特定のゴム層を配設することにより、通常内圧走行時における乗り心地性の改善を図ったものである。すなわち、前記従来の技術は、サイドウォール部を強化することを主目的として、ランフラット走行の耐久性の向上を図ろうとするものであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】サイドウォール補強式ランフラットタイヤにおいては、前記ランフラット走行の耐久性の問題以外に、操縦安定性(以下、「操安性」という)の問題があった。即ち、ランフラット時には、タイヤの横剛性とコーナリングパワーが内圧充填時より大幅に低下するため、操安性が低下する。この操安性を向上させるためには、サイドウォール部の補強を強化することが考えられるが、前記従来技術の如く、サイド補強を強化すれば、タイヤ重量の増加及び乗り心地の低下を招来し、好ましくない。
【0006】そこで、本発明は、サイド補強を不必要に強化することなく、ランフラット操安性を改善したランフラットタイヤを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明は、次の手段を講じた。即ち、本発明の特徴とするところは、路面と接触するトレッド部と、該トレッド部の両側のサイドウォール部と、該サイドウォール部の端部でタイヤリムに嵌着されるビード部とを有し、一方のビード部からサイドウォール部、トレッド部、他方のサイドウォール部、及び、ビード部に至るカーカスと、該カーカスの前記トレッド部における接地面側に配置されたベルトと、該ベルトの接地面側に配置されたトレッドゴムと、前記サイドウォール部に設けられた高硬度ゴムからなるサイド補強部とを有したランフラットタイヤにおいて、前記トレッド部に、トレッドリフトを抑制する抑制部材が配置されている点にある。
【0008】本願発明者は、ランフラット走行時の操安性について鋭意研究した結果、パンク時の内圧低下により、接地部におけるトレッド中央部が路面から浮き上がり(トレッドリフト)、接地性が損なわれて、コーナリングパワーが低下することにより、操安性が悪くなるということを見出した。そこで、本発明では、ランフラット時のトレッドリフトを小さくする手段を講じたのである。即ち、ランフラット走行時に見られるトレッドリフトは、接地面内において、トレッド中央部が路面から浮き上がり、ショルダー部(トレッド部とサイドウォール部の接続部分)のみが接地する現象であり、このトレッドリフトは、トレッドの接地中央部がタイヤ内側方向に曲げられることにより生じている。
【0009】従って、この曲げ変形を抑制すれば、トレッドリフトが抑制される。前記抑制部材は、タイヤ曲げ変形の圧縮側に配置された圧縮に強い材料からなるベースゴムとするのが好ましい。曲げ変形の圧縮側に、圧縮に強いベースゴムを配置することにより、曲げ変形が抑制され、トレッドリフトが抑制される。前記ベースゴムは、前記ベルトとトレッドゴムとの間に配置され、該トレッドゴムよりも硬度の高いゴムからなるのが好ましい。硬度の高いゴムは、圧縮に強いからである。
【0010】また前記ベースゴムは、ベルトの幅方向中央部に配置され、その幅が前記ベルトの幅の20%以上であり、且つ、前記トレッドゴムより硬度7度以上高いゴムからなるのが好ましい。前記幅が20%より狭く及び硬度差が7度より小さければ、トレッドリフトを充分に抑制できない。前記ベースゴムの厚みは2mm以上であることが好ましい。2mmより薄ければ、トレッドリフトを充分に抑制できない。
【0011】前記ベースゴムの硬度は73度以上であることが好ましい。硬度が73度よりも低ければ、トレッドリフトを充分に抑制できない。尚、本発明における「幅方向」とは、タイヤ軸方向を意味している。「接地面側」とは、タイヤ径方向の外周側を意味する。「硬度」は、JISーK6253に基づくデュロメータータイプAによる硬さとして定義する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1に示すものは、本発明に係わるランフラットタイヤの軸方向に沿った断面図であり、タイヤ赤道面より左半分が示されており、その右半分は対称形であるので図示省略されている。同図において、前記ランフラットタイヤは、路面と接触するトレッド部1と、該トレッド部1の両側のサイドウォール部2と、該サイドウォール部2の端部でタイヤリム(図示省略)に嵌着されるビード部3とを有する。ビード部3には、リング状のビードコア4が埋設されている。
【0013】前記ランフラットタイヤはその断面内において、一方のビード部3からサイドウォール部2、トレッド部1を経て、他方のサイドウォール部2、及び、ビード部3に至るカーカス5と、該カーカス5の前記トレッド部1における接地面側に配置されたベルト6と、該ベルト6の接地面側に配置されたトレッドゴム7と、前記サイドウォール部2に設けられた高硬度ゴムからなるサイド補強部8とを有している。前記トレッド部1に、トレッドリフトを抑制する抑制部材9が配置されている。
【0014】前記カーカス5は、前記両側のビードコア4間に跨ってのびる本体部10と、該本体部10の両側において前記ビードコア4の廻りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返されてタイヤ径方向外側にのびる折返部11とを一体に有した、1枚のカーカスプライにより構成されている。このカーカスプライには、実質上、幅方向に配列された複数のカーカスコード(図示省略)が埋設されている。前記ベルト6は、スチール又は芳香族ポリアミドからなる非伸張性コードを、多数平行に配列したベルトプライ6a、6bからなる。
【0015】前記ベルト6に埋設されているコードは、通常、タイヤ赤道面EFに対して15度から30度程度の角度で、隣接するベルトプライのコードと交差するように配列され、曲げ剛性を確保している。さらに、ナイロンなどの熱収縮性コードを、ベルトのタイヤ半径方向に0度方向、即ち、タイヤ赤道面EFに平行に巻き付けて補強するのが好ましい。前記サイド補強部8は、前記カーカス5の内側に配置されており、硬度75度以上の高硬度のゴムが用いられている。好ましくは、78〜88度に設定される。
【0016】このサイド補強部8は、ランフラット走行時のタイヤ荷重をその剛性により支えるものである。前記トレドゴム7は、JIS硬度が60度から70度程度である。好ましくは、62〜67度に設定される。前記抑制部材9は、図2に示すように、トレッドリフトを防止するために設けられている。即ち、トレッドリフトとは、ランフラット走行時、図2(a)に示す如く、タイヤ断面において、接地部の中央が路面から浮き上がり、また、図2(b)に示す如く、タイヤ側面視において、接地部の中央が路面から浮き上がる現象をいう。即ち、トレッド部1がタイヤ内方に曲げ変形をうける。
【0017】前記トレッドリフトが生じると、コーナリングパワーが低下し、操安性が損なわれる。そこで、このトレッドリフトを小さくすべく、前記抑制部材9が設けられている。トレッドリフトは、トレッド部1の曲げ変形により生じているので、この曲げ変形の圧縮側に、抑制部材9が配置され、該抑制部材9は、圧縮に強い材料からなるベースゴム12とされている。
【0018】曲げ変形は、中立軸を介して圧縮側と引っ張り側に分けられる。ベルト6は非伸張性であるので、曲げ変形の中立軸と解される。従って、ベルト6とトレッドゴム7との間にベースゴム12が配置されている。このベースゴム12は、前記トレッドゴム7よりも硬度の高いゴムからなる。曲げ変形の引っ張り側は、前述の如く、ナイロンなどの熱収縮性コードを0度方向に巻き付けて補強するのが好ましい。この補強コードは、引っ張り側の抑制部材として機能する。
【0019】前記ベースゴム12は、ベルト6の幅方向中央部に配置されている。ベースゴム12の幅は、前記ベルト6の幅の20%以上である。特に最も歪の大きいブレーカ幅方向中央部にベースゴム12を配置するのが良い。ベルト6の端部までをベースゴム9で覆った場合と、中央部のみにベースゴム12を配置した場合とでは、トレッドリフトに大きな差は現れないが、ベースゴム12の幅を徐々に減じ、ベルト総幅の20%よりも狭くした場合には、トレッドリフト抑制効果は殆ど期待できなかった。
【0020】このベースゴム12は、ショルダー部のトレッドゴム7より硬度7度以上高いゴムからなる。好ましくは、8度以上である。その理由は、トレッド表面のゴムをあまり硬くすると、乗り心地を損なうので、ベースゴムとの硬度差は大きくなるからである。また、前記ベースゴム12の厚みは2mm以上である。好ましくは、2.5mm以上である。前記ベースゴム12の硬度は73度以上である。好ましくは、75度以上である。
【0021】前記ベースゴム12は、転がり抵抗上昇などの不利益を及ぼさないように、低発熱性配合であることが望ましく、例えば、tanδ(損失正接:損失弾性率と動的弾性率の比)が、0.08以下のものが好ましい。トレッドリフトが減じると、実質的にランフラット時の接地面積が増加し、ショルダー部の接地圧が減少するので、ハンドリングの応答性、グリップ限界、ブレーキ性能などが向上し、操安性が向上する。また、トレッド部1の変形が小さくなると、サイドウォール部2、特にバットレス部分の変形が減じるため、ランフラット時の発熱が減り、耐久性も向上する。
【0022】表1に、ベースゴム12を種々変えたときの実験例を示す。実験は、テスト車両として、2L FR国産車を用い、タイヤサイズ215/45R17のタイヤを用いて、タイヤ内圧を0として、トレッドリフトを測定した。
【0023】
【表1】

【0024】この表1の実施例1〜3が本発明に関わるものである。なお、本発明は、前記実施の形態に示すものに限定されるものではない。例えば、抑制部材として、曲げ変形の圧縮側に配置したベースゴムを例示したが、引っ張り側に、引っ張りを抑制する部材を配置しても良い。また、圧縮側と引っ張り側の両方に夫々抑制部材を配置しても良い。また、ベースゴムは、硬度のみをもって特定されるものに限定されず、要は、圧縮に強い材料であればよい。
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、ランフラット時のトレッドリフトを小さくし、サイド補強を不必要に強化することなく、ランフラット操安性を改善することができる。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
【出願日】 平成14年5月29日(2002.5.29)
【代理人】 【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
【公開番号】 特開2003−341308(P2003−341308A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−156292(P2002−156292)