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【発明の名称】 空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】川上 和紀
【住所又は居所】大阪市西区江戸堀1丁目17番18号 東洋ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】操縦安定性を改善するとともに、ロードノイズ等の低減が可能な空気入りタイヤを提供する。

【解決手段】トレッド部1を、タイヤ赤道面Aが通る第一区域4aと、第一区域4aを挟んでその両側に形成される第二区域4bと、第二区域4bを挟んでその両側に形成される第三区域4cの5つの区域に区分し、第一区域4aのゴム硬度をx、第二区域4bのゴム硬度をy、第三区域4cのゴム硬度をzとするとき、x及びyがzよりも大きくなるように設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トレッド部が、タイヤ赤道面が通る第一区域と、第一区域を挟んでその両側に形成される第二区域と、第二区域を挟んでその両側に形成される第三区域の5つの区域に区分され、第一区域のゴム硬度をx、第二区域のゴム硬度をy、第三区域のゴム硬度をzとするとき、x、y、zをそれぞれ異なる値にするとともに、x及びyがzよりも大きくなるように設定したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】 タイヤ赤道面を0としてトレッド端部の位置を100とするときに、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線を5〜50の範囲内に位置させ、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線を10〜80の範囲内に位置させたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】 タイヤ赤道面を0としてトレッド端部の位置を100とするときに、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線を5〜10の範囲内に位置させ、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線を50〜80の範囲内に位置させるとともに、x>y>zになるように設定されたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】 前記x、y及びzのデュロメータA硬度が、それぞれ62°≦x≦75°、58°≦y≦70°及び52°≦z≦60°の範囲内とされたことを特徴とする請求項3記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】 タイヤ赤道面を0としてトレッド端部の位置を100とするときに、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線を5〜10の範囲内に位置させ、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線を50〜80の範囲内に位置させるとともに、y>x>zになるように設定されたことを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】 前記x、y及びzのデュロメータA硬度が、それぞれ58°≦x≦70°、62°≦y≦75°及び52°≦z≦60°の範囲内とされたことを特徴とする請求項5記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、操縦安定性に優れるとともに、ロードノイズやパターンノイズ等の車内音の低減が可能な空気入りタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より車内音の大きな要因であるロードノイズやパターンノイズを低減する方法として、トレッドゴムの硬度を下げて、トレッド面の接地による路面からの入力を和らげる方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、トレッドゴムの硬度を下げると、トレッドのパターン剛性が低下し、操縦安定性が低下することになる。したがって、単一のトレッドのゴム配合や硬度の変更では、パターンノイズやロードノイズの低減と操縦安定性の向上とを両立させることは困難であった。操縦安定性は、主に、高速走行時における直進レーンチェンジの際や、ハンドリング走行の際の安定性を示すものであり、一般的にタイヤ剛性及びコーナリングパワーが増加すると操縦安定性も向上する。
【0004】上記問題を解決する方法として、特開2001−10308号公報に記載されているように、トレッド部をタイヤ軸方向に3分割し、トレッド部の中央部域と両側ショルダー部域とで硬度の異なるゴムを用いる方法が提案されている。この方法では、トレッド部の一部に硬度の低いゴムを使用することによって、ロードノイズ等を低減するとともに、操縦安定性の低下を抑えることが可能とされている。
【0005】しかしながら、上記方法では、操縦安定性については従来の性能を維持するにとどまり、操縦安定性を向上させるにいたっていないのが現状である。本発明は、上記問題に鑑み、操縦安定性を改善するとともに、ロードノイズ等の低減が可能な空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明者が種々検討した結果、意外にも、トレッド部をタイヤ軸方向に5区域に区分し、各区域のゴム硬度を所定の範囲に設定すれば、ロードノイズやパターンノイズを低減可能であるとともに、単一のゴム硬度のものに比べて剛性及びコーナリングパワーが向上し、操縦安定性が改善されることを見い出して本発明を完成させるに至ったものである。
【0007】すなわち、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部が、タイヤ赤道面が通る第一区域と、第一区域を挟んでその両側に形成される第二区域と、第二区域を挟んでその両側に形成される第三区域の5つの区域に区分され、第一区域のゴム硬度をx、第二区域のゴム硬度をy、第三区域のゴム硬度をzとするとき、x、y、zをそれぞれ異なる値にするとともに、x及びyがzよりも大きくなるように設定したことを特徴とする。
【0008】上記構成によれば、タイヤの前後剛性、横剛性及びコーナリングパワーが向上し、操縦安定性を改善することが可能となり、さらにトレッド部のショルダー部に硬度の低いゴムを使用しているため、ロードノイズ及びパターンノイズを低減することが可能となる。
【0009】このように、各区域のゴム硬度を変化させることで操縦安定性の向上とロードノイズ等の低減が可能となるのは、各区域におけるゴム硬度の変化に対するタイヤ剛性、コーナリングパワー及びロードノイズ等の増加率、すなわち、感度がそれぞれ異なるためである。本発明においてはこれら感度の相違を利用することによって操縦安定性の向上とロードノイズ等の低減を両立させている。
【0010】トレッド部における第一区域と第二区域とを区分する第一境界線と、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線の配置については、赤道面を0としてトレッド端部の位置を100とするとき、第一境界線を5〜50の範囲内に位置させ、第二境界線を10〜80の範囲内に位置させるのが好ましく、第一境界線を5〜25、第二境界線を40〜65の範囲内に位置させるのがより好ましい。
【0011】上述のごとく、操縦安定性は、タイヤ剛性及びコーナリングパワーを増加させることにより向上するが、タイヤ剛性のみ又はコーナリングパワーのみを増加させても向上する。タイヤ剛性及びコーナリングパワーは、操縦安定性のみならず他の性能にも影響を及ぼすことを考慮すれば、それぞれの特性を選択的に増加させるようにするのが好ましい。
【0012】そこで、本発明者が鋭意検討した結果、第一境界線及び第二境界線を特定の範囲内に位置させた上で、第一区域のゴム硬度が最も高くなるように設定すれば、コーナリングパワーに比べてタイヤ剛性が大幅に増加し、また、第二区域のゴム硬度が最も高くなるように設定すれば、タイヤ剛性に比べてコーナリングパワーが大幅に増加することを見出した。
【0013】すなわち、本発明においては、タイヤ赤道面及びトレッド端部の位置をそれぞれ0及び100とするときに、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線を5〜10の範囲内に位置させ、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線を50〜80の範囲内に位置させるとともに、x>y>zになるように設定された構成を採用可能とし、これにより、タイヤ剛性を選択的に増加させることを可能とした。
【0014】また、タイヤ赤道面及びトレッド端部の位置をそれぞれ0及び100とするときに、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線を5〜10の範囲内に位置させ、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線を50〜80の範囲内に位置させるとともに、y>x>zになるように設定された構成を採用することで、コーナリングパワーを選択的に増加させることをも可能とした。
【0015】以上説明したように、第一境界線と第二境界線とを特定範囲内に位置させ、第一区域と第二区域のゴム硬度を調整することにより、タイヤ剛性及びコーナリングパワーのうち一方を選択的に増加させることが可能となり、用途に応じたきめ細かなタイヤ設計が可能となる。
【0016】上述した空気入りタイヤにおいて、x、y及びzの硬度については、xとyのうち、硬度の高い方をa、低い方をbとすると、62°≦a≦75°、58°≦b≦とし、zについては52°≦z≦60°の範囲内になるようにするのが好ましい。
【0017】すなわち、x>y>zのときは、a=x、b=yとなり、y>x>zのときには、a=y、b=xとなる。なお、本明細書においてゴム硬度とは、JIS K6253に規定するデュロメータA硬度を意味するものである。
【0018】上記範囲内において、ノイズ低減と操縦安定性の向上のためには、aとzの硬度差を6°以上とするのが好ましい。また、bの値としては、[(a+2z)/3]≦b≦[(2a+z)/3]の範囲内とするのが好ましい。
【0019】トレッド部は、接地面からその下層側のベルト層まで全体を5つの区域に区分してもよいが、キャップ層とその内方に位置するベース層の2層構造を採用し、キャップ層のみ5区域に区分することも可能であり、この場合には耐久性と低燃費性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施形態を示す空気入りラジアルタイヤの軸(幅)方向の要部断面図である。このラジアルタイヤは、図示しない一対のビード部およびビード部から半径方向外向きに延びるサイドウォール部と、その上端をつなぐトレッド部1と、その内周に沿って両端がビードコアで折返されて支持されたカーカス2とを備えている。また、トレッド部1とカーカス2の間にベルト層3を備えており、その補強構造は一般的なラジアルタイヤの場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0021】トレッド部1は、キャップ層4とその内方に位置するベース層5の2層からなるキャップ−ベース構造を備えており、キャップ層4の外周面にはタイヤ周方向に直線状もしくはジグザグ状をなして延びる複数本の主溝6が形成され、さらに図の断面図では図示を省略しているが、通常、前記の主溝6と交叉する方向の横溝、さらにはタイヤ周方向で主溝より細幅の副溝や横溝を繋ぐ補助溝が形成されて、所定のトレッドパターンが形成されている。
【0022】キャップ層4は、赤道面Aを中心に挟んで形成された第一区域4aと、第一区域4aを挟んでその両側に形成される第二区域4bと、第二区域4bを挟んでその両側に形成される第三区域4cの5つの区域に区分されており、第一区域のゴム硬度をx、第二区域のゴム硬度をy、第三区域のゴム硬度をzとするとき、x>z、y>zになるように設定されている。
【0023】本実施形態においては、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線7と、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線8は、主溝6の底面に沿って形成されている。また、第一境界線7と第二境界線8は、それぞれ赤道面Aを挟んで対称位置に一対ずつ形成されている。第一境界線7及び第二境界線8は、トレッド部1の陸部表面に形成してもよい。なお、第一境界線7と第二境界線8は、それぞれ赤道面Aを挟んで対称位置に一対ずつ形成されるため、図ではタイヤ赤道面Aから一側のトレッド端部Bまでの半分のみを示している。
【0024】
【実施例】表1に示すように、6種類のラジアルタイヤを作製して評価試験を行った。具体的には、キャップ層を5区域に区分した本発明に係るラジアルタイヤ(実施例1〜4)と、キャップ層を区分せずに単一のゴムを使用したもの(比較例1)、及び、キャップ層を、赤道面を通る中央部域と、中央部域を挟んでその両側に形成されるショルダー部域とに3区分したもの(比較例2)を作製して比較評価を行った。
【0025】なお、テストに供したタイヤは、タイヤサイズが205/55R16 89Vのラジアルタイヤである。テスト車両としては、2000ccのFR車を使用した。
【0026】[タイヤの作製]実施例1〜4については、キャップ層を5区域に区分したラジアルタイヤを使用した。具体的には、実施形態で述べたように、キャップ層4を、タイヤ赤道面Aを中心とする第一区域4aと、第一区域4aを挟んでその両側に形成される第二区域4bと、第二区域4bを挟んでその両側に形成される第三区域4cの5つの区域に区分し、赤道面Aの位置を0としトレッド端部Bの位置を100とするときに、第一境界線7および第二境界線8を表1に記載する所定の位置に形成した。
【0027】実施例1及び3については、第一区域4aのゴム硬度x(JIS K6253に規定するデュロメータA硬度、以下同じ)を70°、第二区域4bのゴム硬度yを65°、第三区域4cのゴム硬度zを60°になるようにしてタイヤを作製した。
【0028】また、実施例2及び4については、第一区域4aのゴム硬度xを65°、第二区域4bのゴム硬度yを70°、第三区域4cのゴム硬度zを60°になるようにしてタイヤを作製した。
【0029】比較例1については、キャップ層をゴム硬度65°の単一ゴムでタイヤを作製した。また、比較例2については、キャップ層を、赤道面を中心に挟んで形成されるゴム硬度65°の中央部域と、中央部域を挟んでその両側に形成されるゴム硬度60°のショルダー部域とに3区分した。なお、中央部域ショルダー部域とを区分する一対の境界線は、赤道面の位置を0とし、トレッド端部の位置を100とするときに、35の位置に形成した。
【0030】[評価試験]評価試験の項目としては、タイヤ剛性(前後剛性及び横剛性)並びにテスト車両にタイヤを装着したときの操縦安定性、パターンノイズ及びロードノイズの4項目とした。以下、各項目ごとに試験方法を説明する。
【0031】(タイヤ剛性)
・前後剛性:JATMA最大荷重の80%に相当する基準負荷をかけたタイヤに対し、前後方向の力を作用させて前後撓みを測定し、前後方向の力を前後撓み量で除して算出(N/mm)。
・横剛性 :JATMA最大荷重の80%に相当する基準負荷をかけたタイヤに対し、横方向の力を作用させて横撓みを測定し、横方向の力を横撓み量で除して算出(N/mm)。
【0032】(操縦安定性)実車走行時における直進レーンチェンジ、ハンドリング走行安定性について官能評価。なお、数値は比較例1の操縦安定性を100とした場合の相対値で表しており、数値が高いほど操縦安定性に優れていることを示す。
【0033】(ロードノイズ)空気圧220kPaを充填したタイヤを車両に装着し、粗い路面を60km/hの速度で走行したときの車室内の運転席側の耳の位置におけるロードノイズの音圧レベル(dB)を計測し、音圧レベルの積算値(OA)で表示。
【0034】(パターンノイズ)粗い路面に代えて、平滑路面で計測する以外は上記ロードノイズの試験方法と同様にして実施。
【0035】
【表1】

【0036】[評価結果]表1に評価結果を示す。表によれば、キャップ層を5区域に区分した実施例1〜4は、いずれも比較例1に比べて操縦安定性が向上し、かつ、パターンノイズ及びロードノイズも低い値を示している。
【0037】一方、キャップ層を中央部域とショルダー部域とに区分した比較例2においては、パターンノイズ及びロードノイズについては、比較例1よりも低い値を示しているものの操縦安定性が比較例1と同レベルで性能の改善は見られなかった。
【0038】実施例で見れば、実施例1及び2は、第一境界線を5〜10の範囲内とし、第二境界線を50〜80の範囲内に位置させるという特定の条件を満たしていない。その結果、第一区域のゴム硬度を最大とした場合(実施例1)、及び、第二区域のゴム硬度を最大とした場合(実施例2)、のどちらの場合でも、タイヤ剛性及びコーナリングパワーの両方の特性が増加した結果となっている。
【0039】一方、上記特定条件を満たす実施例3及び4においては、第一区域のゴム硬度を最大とした場合(実施例3)は、コーナリングパワーよりもタイヤ剛性が大幅に増加し、第二区域のゴム硬度を最大とした場合(実施例4)は、タイヤ剛性よりもコーナリングパワーが大幅に増加していることが判る。
【0040】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、トレッド部が、タイヤ赤道面が通る第一区域と、第一区域を挟んでその両側に形成される第二区域と、第二区域を挟んでその両側に形成される第三区域の5つの区域に区分され、第一区域のゴム硬度をx、第二区域のゴム硬度をy、第三区域のゴム硬度をzとするときに、x、y、zをそれぞれ異なる値にするとともに、x及びyがzよりも大きくなるように設定された構成を採用したので、操縦安定性を改善するとともに、ロードノイズ等を低減することができる。
【0041】また、タイヤ赤道面を0としてトレッド端部の位置を100とするときに、第一区域と第二区域とを区分する第一境界線を5〜10の範囲内に位置させ、第二区域と第三区域とを区分する第二境界線を50〜80の範囲内に位置させるという特定の条件のもと、x>y>zになるように設定した場合にはコーナリングパワーに比べてタイヤ剛性を大幅に増加させることができ、y>x>zになるように設定した場合にはタイヤ剛性に比べてコーナリングパワーを大幅に増加させることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市西区江戸堀1丁目17番18号
【出願日】 平成14年5月9日(2002.5.9)
【代理人】 【識別番号】100077780
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 泰甫 (外3名)
【公開番号】 特開2003−326916(P2003−326916A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−133833(P2002−133833)