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【発明の名称】 空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】佐口 隆成
【住所又は居所】東京都小平市小川東町3−1−1 株式会社ブリヂストン技術センター内

【要約】 【課題】ラグ溝で発生するタイヤ車軸力の変動に対して逆方向の車軸力を発生させることにより、トレッド部のラグ溝に起因するパターンノイズを低下するようにした空気入りタイヤを提供する。

【解決手段】トレッド部11の踏み面部Tに、タイヤ周方向Xに延びるリブ溝12と、このリブ溝12によって形成されるリブ列Bの周方向に適宜間隔をもってタイヤ幅方向Yに延びるラグ溝13とを形成し、これらリブ溝12とラグ溝13とによって複数のブロック14を形成する。ブロック14の表面に、ラグ溝13で発生するタイヤ車軸力の減少分を打ち消す剛性増加部分20を設けることにより、車軸の加振力を低減して、これに起因するパターンノイズを効果的に減少する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トレッド部の踏み面部に、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本のリブ溝と、このリブ溝によって形成されるリブ列の周方向に適宜間隔をもってタイヤ幅方向に延びるラグ溝とが形成され、これらリブ溝とラグ溝とによって複数のブロックが形成された空気入りタイヤにおいて、前記ブロックの表面に、前記ラグ溝で発生するタイヤ車軸力の減少分を打ち消す剛性増加部分を設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】 請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記剛性増加部分は、前記ブロックの表面から突出する隆起部であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項3】 請求項1または2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ラグ溝をタイヤの接地ラインに対して傾斜させ、前記踏み面部内において接地ラインがラグ溝の壁面に最初に接触する接触開始点と最後に接触する接触終了点を通る位置で囲まれたブロック表面の領域に、前記剛性増加部分を存在させたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項4】 請求項2または3に記載の空気入りタイヤにおいて、前記隆起部は、トレッド部に形成されるタイヤスピューの断面積よりも十分に大きな面積に設定されることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項5】 請求項2〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤにおいて、前記隆起部の高さは、リブ溝深さの1〜10%の範囲に設定されることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤにおいて、前記剛性増加部分は、タイヤ周方向に配列されたブロックの所定数毎に設けられたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リブ溝によって形成されたリブ列の周方向に、タイヤ車軸力の変動を発生するラグ溝が形成された空気入りタイヤに関し、とりわけ、このラグ溝に起因する車室内の騒音を低減するようにした空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車等の車両に装着されるラジアルタイヤ等の空気入りタイヤでは、路面とのグリップ性能を高めるためにトレッド部が形成される。このトレッド部は、路面に接触する踏み面部にタイヤ周方向に延びる複数本のリブ溝(周方向溝)を形成して複数のリブ列を形成し、更に、このリブ列にタイヤ幅方向に延びる多数のラグ溝(横溝)を適宜間隔をもって形成することにより構成され、これらリブ溝とラグ溝とによってブロック(陸部)が形成されるようになっている。
【0003】ところで、このようなトレッド部のパターンに起因するパターンノイズを改善するためには、トレッド部のパターン、とりわけリブ溝とラグ溝とで囲まれたブロックが路面と接触することによる衝撃という考え方から、接地形状と溝の幾何学的な関係を変化させる等の手法が多用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかるタイヤのパターンに起因する騒音の中で問題となる現象の1つに、車両が走行中に車室内で聞こえる騒音(以下、パターンノイズと称する)がある。
【0005】このパターンノイズ現象は、タイヤが直接放射している成分も有するが、その周波数が1000Hz 以下であることから、タイヤが車軸を加振して車体が振動することにより発生する間接音の影響も大きいと考えられる。
【0006】この場合の間接音の原因は、タイヤの周方向に剛性的に不連続成分となるラグ溝に起因するタイヤ車軸力の変動として捉えることができる。つまり、ラグ溝が路面に接触した瞬間は、このラグ溝の空間が剛性の低下部分となって荷重が大きく低下し、これによってタイヤ車軸力が大きく変動することになる。
【0007】そこで、本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、ラグ溝で発生するタイヤ車軸力の変動に対して逆方向の車軸力を発生させることにより、トレッド部のラグ溝に起因するパターンノイズを低下するようにした空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために請求項1の発明は、トレッド部の踏み面部に、タイヤ周方向に延びる少なくとも1本のリブ溝と、このリブ溝によって形成されるリブ列の周方向に適宜間隔をもってタイヤ幅方向に延びるラグ溝とが形成され、これらリブ溝とラグ溝とによって複数のブロックが形成された空気入りタイヤにおいて、前記ブロックの表面に、前記ラグ溝で発生するタイヤ車軸力の減少分を打ち消す剛性増加部分を設けたことを特徴としている。
【0009】この場合、リブ列に形成されたラグ溝がタイヤ回転に伴って接地ラインに到達すると、このラグ溝によってタイヤ車軸力が減少される一方、ブロックの表面に設けた剛性増加部分によってタイヤ車軸力が増大されるため、ラグ溝によるタイヤ車軸力の減少分を剛性増加部分の増大分によって打ち消すことができる。このため、前記ラグ溝に起因するタイヤ車軸力の変動が抑制され、ひいては、車軸の加振力を低減して、これに起因するパターンノイズを効果的に低減することができる。
【0010】ここで、前記接地ラインとは、タイヤと路面との接地縁のことであり、タイヤを車両へ装着した状態で測定することができるが、タイヤ単体としては以下の状態で測定することも可能である。この場合、荷重は下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)であり、内圧は下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことであり、リムは下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または、Approved Rim 、Recommended Rim )のことである。
【0011】また、規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、アメリカ合衆国では The Tire and Rim Association Inc. の Year Book であり、欧州では The European Tire and Rim TechnicalOrganization の Standards Manual であり、日本では日本自動車タイヤ協会のJATMA Year Book にて規定されている。
【0012】請求項2の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記剛性増加部分は、前記ブロックの表面から突出する隆起部であることを特徴としている。
【0013】この場合、隆起部が接地ラインに到達すると隆起部が路面によって圧縮されて、その圧縮部分の剛性が増加されることになり、この剛性増加部分によってタイヤ車軸力を増大することができる。従って、ラグ溝によるタイヤ車軸力の減少分を、ブロック表面から単に突出させるという簡単な構造によって打ち消すことができる。
【0014】請求項3の発明は、請求項1または2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ラグ溝をタイヤの接地ラインに対して傾斜させ、前記踏み面部内において接地ラインがラグ溝の壁面に最初に接触する接触開始点と最後に接触する接触終了点を通る位置で囲まれたブロック表面の領域に、前記剛性増加部分を存在させたことを特徴としている。
【0015】この場合、ラグ溝は接地ラインに対して傾斜されるため、タイヤ車軸力の変動箇所となるラグ溝の壁面と接地ラインとの接触領域は、このラグ溝が傾斜された分だけタイヤ周方向にある程度の幅を持つことになって、接地ラインが接触開始点と接触終了点を通る位置で囲まれた領域となる。従って、この領域内に含まれるブロック表面に剛性増加部分を存在させることにより、前記ラグ溝によるタイヤ車軸力の減少分を効率良く低減することができる。
【0016】請求項4の発明は、請求項2または3に記載の空気入りタイヤにおいて、前記隆起部は、トレッド部に形成されるタイヤスピューの断面積よりも十分に大きな面積に設定されることを特徴としている。
【0017】この場合、タイヤスピューは、タイヤ成形時に空気抜きのために形成されるベントホール跡で、このタイヤスピューはトレッド部表面に突出されて、通常、直径が3mm程度以下で細く形成される。従って、前記隆起部の面積をタイヤスピューの断面積よりも十分に大きくすることにより、ラグ溝によるタイヤ車軸力の低減分に相当する剛性の増加量を容易に得ることができ、パターンノイズの低減効果を高めることができる。
【0018】請求項5の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤにおいて、前記隆起部の高さは、リブ溝深さの1〜10%の範囲に設定されることを特徴としている。
【0019】この場合、隆起部の高さを、リブ溝深さの1〜10%の範囲とすることにより、この隆起部が接地した際に倒れを生ずることなく、この隆起部の形成部分のタイヤ剛性を安定的に増加させることができる。
【0020】請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤにおいて、前記剛性増加部分は、タイヤ周方向に配列されたブロックの所定数毎に設けられたことを特徴としている。
【0021】この場合、剛性増加部分を所定数毎のブロックに設けた場合にも、タイヤ全体におけるタイヤ車軸力の変動低減効果をさほど低下することなく、剛性増加部分の形成総数を減少させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】(基本構造)本実施形態を開示するにあたって、まず、図1から図5によって本発明の空気入りタイヤ10の基本構造を説明する。
【0024】図1は傾斜したラグ溝によって形成したブロック14を示す拡大図、図2はラグ溝の傾斜方向が反対となったブロック14を示す拡大図、図3はショルダー部に形成されるブロック14を示す拡大図、図4は隆起部20の平面形状を(a)〜(c)によって各種示す説明図、図5は隆起部20の断面形状を(a)〜(d)によって各種示す説明図である。
【0025】即ち、本発明の空気入りタイヤ10のトレッド部11は、図1に示すようにトレッド部11の踏み面部Tに、タイヤ周方向Xに延びる少なくとも1本(通常は複数本)のリブ溝(周方向溝)12が形成され、このリブ溝12によってリブ列Bが形成されるとともに、このリブ列Bの周方向には、このリブ列Bをタイヤ幅方向Yに横切って、タイヤ周方向Xに対して剛性的な不連続部分となるラグ溝(横溝)13が適宜間隔をもって多数形成される。また、同図中CLはタイヤのタイヤ赤道面を示す。
【0026】そして、前記リブ溝12と前記ラグ溝13によって多数のブロック(陸部)14が形成され、これらブロック14の表面が図外の路面との接地面となる。尚、この基本例では、前記ラグ溝13はタイヤ周方向Xに対して若干右肩上がりとなって傾斜(傾斜角θ)されるようになっている。
【0027】前記空気入りタイヤ10は、前記踏み面部Tの境界に接地ラインKが形成されるが、この接地ラインKは走行時のタイヤ回転に伴って、矢印Uで示す図中上方に移動するものとする。
【0028】ここで、本発明にあっては、図1に示したように前記ブロック14の表面の対角部分に設定される領域Z1および領域Z2に、図4,図5に示す剛性増加部分としての隆起部20を存在させ、この隆起部20によって前記ラグ溝13で発生するタイヤ車軸力の減少分を打ち消すようになっている。このとき、隆起部20は、その面積が前記領域Z1,Z2に半分以上含まれていることが好ましい。
【0029】前記領域Z1,Z2は、傾斜したラグ溝13に対して、接地ラインKが前記踏み面部T内においてラグ溝13の壁面13aに最初に接触する接触開始点P1から最後に接触する接触終了点P2で囲まれた領域として設定される。このとき、前記接触開始点P1および接触終了点P2はブロック14のタイヤ回転方向Xに対向する2辺14a,14bにそれぞれ設けられて、前記領域Z1,Z2はブロック14の対角位置に対を成して配置されることになる。
【0030】特に、前記隆起部20は、前記ラグ溝13の壁面13aに最初に接触する接触開始点P1を通る接地ラインK上に存在することが好ましい。
【0031】ところで、図2に示すように前記ラグ溝13の傾斜方向が前記図1の場合とは反対、つまり、左肩上がりとなった場合には、前記領域Z1,Z2が配置されるブロック14の対角方向は逆となる。
【0032】また、図3に示すようにブロック14がタイヤ幅方向Yの両側部分に位置するショルダーリブBに設けられた場合は、接地ラインKが最後に接触する接触終了点P2は、タイヤ幅方向Yの接地ラインKwがラグ溝13の壁面13aと交差する点で決定される。
【0033】前記隆起部20は、トレッド部11に形成されるタイヤスピューの断面積よりも十分に大きな面積となるように形成される。即ち、図4中2点鎖線に示すように、このタイヤスピューSはタイヤ成形時に空気抜きのために成形金型に設けたベントホール跡として形成される突起物で、通常は直径3mm程度以下の細径となっている。
【0034】また、前記隆起部20は、図4に示すように平面形状が正方形(a)または円形(b)若しくは三角形(c)として形成することができるが、特にこれら(a)〜(c)の平面形状に限ることなく、その他いかなる形状とすることもできる。そして、いずれの形状として形成した場合にも、隆起部20はタイヤスピューSとして通常形成される直径略3mmの円の断面積以上の十分に大きな面積をもって形成される。
【0035】また、隆起部20のタイヤ直径方向の断面形状は路面に接地して圧縮される際にも安定的に潰される形状であればよく、例えば、図5に示すようになだらかな山形に変化する断面形状(a)、変曲点を有して山形に盛り上がる断面形状(b)、平坦な頂面を有して盛り上がる台形状の断面形状(c)、矩形状の断面形状(d)として形成することができる。勿論、隆起部20はこれら(a)〜(d)以外の断面形状として形成することもできるが、いずれの場合にあっても隆起部20の高さH0は、リブ溝深さの1〜10%の範囲に設定される。
【0036】更に、前記隆起部20は、リブ列Bのタイヤ周方向Xに多数配置される全てのブロック14に設けることなく、それらブロック14の所定数毎に設けることもできる。
【0037】(作用)かかる構成になる空気入りタイヤ10では、トレッド部11の踏み面部Tに形成したリブ溝12によって形成されるリブ列Bは、このリブ列Bのタイヤ周方向Xに適宜間隔をもってラグ溝13が形成されているため、このラグ溝13がタイヤ回転に伴って接地ラインKに到達すると、このラグ溝13の空間部分、つまり剛性低下部分によってタイヤ車軸力が減少するが、本実施形態では前記リブ溝12と前記ラグ溝13で形成されるブロック14の表面に、前記ラグ溝13によるタイヤ車軸力の変動分を打ち消す隆起部20を設けてある。
【0038】つまり、ブロック14の表面に隆起部20を設けることにより、この隆起部20が路面に接地した段階で圧縮されるため、この隆起部20の形成部分でタイヤ剛性を増加することができ、ひいては、前記ラグ溝13によるタイヤ車軸力の減少分を、前記隆起部20の剛性増加分によって打ち消すことができる。
【0039】従って、前記ラグ溝13に起因するタイヤ車軸力の変動が抑制され、ひいては、車軸の加振力を低減して、これに起因するパターンノイズを効果的に低減することができ、これによって、走行中における車室内の静粛性を確保して乗り心地性を向上することができる。
【0040】また、ラグ溝13によるタイヤ車軸力の低下を隆起部20によって打ち消すようにしたので、この隆起部20を前記ブロック14の表面から突出させるという簡単な構造で達成でき、タイヤの加硫型枠の構造が大幅に複雑化することなく剛性増加部分を簡単に形成することができる。
【0041】更に、本発明の基本構造では、ラグ溝13はタイヤ幅方向Yに対して傾斜(傾斜角θ)しているため、結果的に接地ラインKに対してラグ溝13が傾斜している。このため、タイヤ車軸力の変動箇所となるラグ溝13の壁面13aと接地ラインKとの接触領域は、このラグ溝13が傾斜された分だけタイヤ周方向にある程度の幅を持つことになって、接地ラインKが接触開始点P1と接触終了点P2を通る位置で囲まれた領域Z1,Z2が形成される。
【0042】従って、前記隆起部20の配置個所を、接地ラインKが傾斜したラグ溝13の壁面13aに、最初と最後に接触する接触開始点P1および接触終了点P2を通る位置で囲まれた前記領域Z1,Z2とすることにより、ラグ溝13によるタイヤ車軸力の減少分を効率良く低減することができる。
【0043】特に、前記隆起部20は、ラグ溝13の壁面13aに最初に接触する接触開始点P1を通る接地ラインK上に存在させることが好ましく、この場合、ラグ溝13と隆起部20とが、ラグ溝13によるタイヤ車軸力の変動の発生起点となる接地ラインK上で同時に存在することになる。このため、ラグ溝13が路面に接触開始してタイヤ車軸力の変動が発生する瞬間に隆起部20で変動打ち消しできるため、ラグ溝13によるタイヤ車軸力の変動を高精度で抑制することができる。
【0044】また、図4に示したように前記隆起部20の面積を、通常直径3mm以下として設定されるタイヤスピューSの断面積よりも十分に大きな面積としたので、ラグ溝13によるタイヤ車軸力の低減分に相当する剛性の増加量を容易に得ることができ、パターンノイズの低減効果を高めることができる。
【0045】更に、図5に示したように前記隆起部20の高さH0を、リブ溝深さの1〜10%の範囲に設定したので、この隆起部20が接地した際に倒れを生ずることなく、この隆起部20の形成部分のタイヤ剛性を安定的に増加させることができる。
【0046】ところで、前記隆起部20を、リブ列Bのタイヤ周方向Xに多数設けたブロック14のうち所定数毎、例えば1つ置きのブロック14に設けた場合にも、タイヤ全体におけるタイヤ車軸力の変動低減効果をさほど低下することなく、隆起部20の形成総数を減少させることができ、これによってタイヤの構成の簡素化、例えばタイヤの成形型枠の構造を簡素化することができ、タイヤコストの低下を図ることができる。
【0047】(実施形態)以上説明した空気入りタイヤ10の基本的構成に基づいて、図6〜図11に示す第1〜第6実施形態によって空気入りタイヤ10a〜10gの具体的な構造を開示する。
【0048】(第1実施形態)図6は本発明の第1実施形態の空気入りタイヤ10aのトレッド部11を示す底面図で、前記基本構造と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0049】この第1実施形態の空気入りタイヤ10aのトレッド部11は、タイヤ幅方向Yの中央部に3列のリブ列B1,B2,B3が設けられるとともに、B2,B3の幅方向外側の側方部分(幅方向Y両側部分)に幅広のリブ列B4,B5が設けられる。
【0050】この場合、中央部の3列のリブ列B1,B2,B3は、B1をセンターリブ、B2,B3をセカンドリブと称し、かつ、側方部分のリブ列B4,B5をショルダーリブと称するものとする。勿論、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5はタイヤ周方向Xに延びる複数のリブ溝12で形成され、かつ、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5には多数のラグ溝13が形成されており、これらリブ溝12およびラグ溝13によって多数のブロック14が形成され、この実施形態ではタイヤ周方向Xに60個のブロック14が配置されるようになっている。
【0051】尚、この実施形態ではセンターリブB1およびセカンドリブB2,B3に形成されるラグ溝13は一定方向に傾斜(傾斜角θ)されるが、ショルダーリブB4,B5に形成されるラグ溝13はタイヤ幅方向Yに平行に形成されている。
【0052】前記空気入りタイヤ10が接地した際の踏み面部Tの外周境界が接地ラインKとなり、この接地ラインKはタイヤ回転に伴って図中上方へと連続的に移動する。また、踏み面部Tのタイヤ幅方向Yの境界はショルダーリブB4,B5上に位置し、接地幅ラインKwが設定される。
【0053】ここで、この第1実施形態では、前記各リブ列B1,B2,B3,B4,B5の全てのブロック14に対応して円形の隆起部20が設けられるようになっており、隆起部20は各ブロック14の対角位置に設定される領域Z1,Z2(図1,図3参照)に配置される。従って、この場合、隆起部20が設けられるブロック14のタイヤ周方向Xの個数は60個となる。
【0054】(第2実施形態)図7は本発明の第2実施形態の空気入りタイヤ10bのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0055】この第2実施形態の空気入りタイヤ10bのトレッド部11は、第1実施形態と同様の形状および数をもってリブ溝12およびラグ溝13が形成されるとともに、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5にはタイヤ周方向Xに60個のブロック14が設けられている。
【0056】この第2実施形態では前記各リブ列B1,B2,B3,B4,B5のブロック14に対して1つ置きに円形の隆起部20が設けられるようになっており、この隆起部20が設けられるブロック14はタイヤ周方向Xに30個となる。
【0057】(第3実施形態)図8は本発明の第3実施形態の空気入りタイヤ10cのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0058】この第3実施形態の空気入りタイヤ10cのトレッド部11にあっても、第1実施形態と同様の形状および数をもってリブ溝12およびラグ溝13が形成されるとともに、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5にはタイヤ周方向Xに60個のブロック14が設けられている。
【0059】この第3実施形態ではセカンドリブB2,B3のブロック14のみに円形の隆起部20が設けられるようになっている。この場合、セカンドリブB2,B3の全てのブロック14に隆起部20が設けられ、この隆起部20を設けたブロック14はタイヤ周方向Xに60個となる。
【0060】(第4実施形態)図9は本発明の第4実施形態の空気入りタイヤ10dのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0061】この第4実施形態の空気入りタイヤ10dのトレッド部11にあっても、第1実施形態と同様の形状および数をもってリブ溝12およびラグ溝13が形成されるとともに、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5にはタイヤ周方向Xに60個のブロック14が設けられている。
【0062】この第4実施形態ではセンターリブB1のブロック14のみに円形の隆起部20が設けられるようになっている。この場合、センターリブB1の全てのブロック14に隆起部20が設けられ、この隆起部20を設けたブロック14はタイヤ周方向Xに60個となる。
【0063】(第5実施形態)図10は本発明の第5実施形態の空気入りタイヤ10eのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0064】この第5実施形態の空気入りタイヤ10eのトレッド部11にあっても、第1実施形態と同様の形状および数をもってリブ溝12およびラグ溝13が形成されるとともに、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5にはタイヤ周方向Xに60個のブロック14が設けられている。
【0065】この第5実施形態の空気入りタイヤ10eは、前記第4実施形態と同様にセンターリブB1のブロック14のみに隆起部20が設けられるが、この場合の隆起部20は三角形状に形成される。
【0066】また、隆起部20はセンターリブB1の全てのブロック14に設けられて、この隆起部20を設けたブロック14はタイヤ周方向Xに60個となる。
【0067】(第6実施形態)図11は本発明の第6実施形態の空気入りタイヤ10fのトレッド部11を示す底面図で、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0068】この第6実施形態の空気入りタイヤ10fのトレッド部11にあっても、第1実施形態と同様の形状および数をもってリブ溝12およびラグ溝13が形成されるとともに、各リブ列B1,B2,B3,B4,B5にはタイヤ周方向Xに60個のブロック14が設けられている。
【0069】この第5実施形態の空気入りタイヤ10fは、前記第4,第5実施形態と同様にセンターリブB1のブロック14のみに隆起部20が設けられるが、この場合の隆起部20はブロック14の対角線に沿って延びる矩形状となっている。
【0070】また、隆起部20はセンターリブB1の全てのブロック14に設けられて、この隆起部20を設けたブロック14はタイヤ周方向Xに60個となる。
【0071】(各実施形態のトレッド部および隆起部の寸法)ところで、前記第1〜第6実施形態に示した各空気入りタイヤ10a〜10fのトレッド部11および隆起部20の具体的な寸法は、各実施形態で共通しており、リブ溝12は幅および深さが共に8mm、ラグ溝13は幅および深さが共に8mmとなる。
【0072】また、第1〜第4実施形態の円形の隆起部20は、直径が4mm、高さが0.3mmとなっている。尚、第5実施形態の三角状の隆起部20および第6実施形態の矩形状の隆起部20は、前記円形の隆起部20に見合った大きさに形成されるとともに、高さは同じ0.3mmとなっている。
【0073】(各実施形態の車室内騒音評価試験)次に、2000ccクラスの乗用車で、第1実施形態〜第6実施形態の空気入りタイヤ10a〜10g(タイヤサイズを195/65R14,内圧200kPaとする)をそれぞれ用いて、従来タイヤ対比の車室内騒音(パターンのピッチ1次周波数を含む400〜600Hz の帯域値)を個々に測定し、その結果を次表に示す。この場合、車室内騒音はドライバーの耳元音を基準に測定し、ドライバーの官能評価も併せて記載する。尚、乗用車の走行条件は、2名の乗車状態で、車速50Km/hにて平滑なコンクリート路を走行するものとする。
【0074】
【表1】

従って、前記表から車室内騒音は、第1実施形態で3dB、第2〜第5実施形態で2dB、第6実施形態で2.5dBの低減(改良)が認められ、かつ、ドライバーの官能評価では全ての実施形態において向上された。
【0075】ところで、剛性増加部分は、隆起部20や凹設部等の凹凸部分に限ることなく、その部分の材質を部分的に変化させることにより剛性を変化させることもできる。
【0076】また本発明の空気入りタイヤは前記各実施形態に限ることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種実施形態をとることができる。
【0077】
【発明の効果】請求項1に記載の発明によれば、リブ溝とラグ溝で形成されるブロックの表面に、ラグ溝で発生するタイヤ車軸力の減少分を打ち消す剛性増加部分を設けたので、ラグ溝によるタイヤ車軸力の減少分を剛性増加部分の増大分によって打ち消すことができる。このため、前記ラグ溝に起因するタイヤ車軸力の変動を抑制して、これに起因するパターンノイズを効果的に低減できるため、車室内の静粛性を確保して乗り心地性を向上することができる。
【0078】請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記剛性増加部分を、前記ブロックの表面から突出する隆起部としたので、ラグ溝によるタイヤ車軸力の減少分を、ブロック表面から隆起部を単に突出させるという簡単な構造によって打ち消すことができるため、タイヤの加硫型枠の構造を大幅に複雑化することなく剛性増加部分を簡単に形成することができる。
【0079】請求項3に記載の発明によれば、請求項1,2の発明の効果に加えて、前記ラグ溝をタイヤの接地ラインに対して傾斜させ、前記踏み面部内において接地ラインがラグ溝の壁面に最初に接触する接触開始点と最後に接触する接触終了点を通る位置で囲まれたブロック表面の領域に、前記剛性増加部分を存在させたので、前記ラグ溝によるタイヤ車軸力の減少分を効率良く低減することができる。
【0080】請求項4に記載の発明によれば、請求項2の発明の効果に加えて、前記隆起部を、トレッド部に形成されるタイヤスピューの断面積よりも十分に大きな面積に設定したので、ラグ溝によるタイヤ車軸力の低減分に相当する剛性の増加量を容易に得ることができ、パターンノイズの低減効果を高めることができる。
【0081】請求項5の発明は、請求項2〜4の発明の効果に加えて、前記隆起部の高さをリブ溝深さの1〜10%の範囲に設定したので、隆起部が接地した際に倒れを生ずることなく、この隆起部の形成部分のタイヤ剛性を安定的に増加させることができる。
【0082】請求項6の発明は、請求項1〜5の発明の効果に加えて、前記剛性増加部分を、タイヤ周方向に配列されたブロックの所定数毎に設けたので、タイヤ全体におけるタイヤ車軸力の変動低減効果をさほど低下することなく、剛性増加部分の形成総数を減少させて構成を簡素化し、ひいては、タイヤのコスト低下を達成することができる。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目10番1号
【出願日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外7名)
【公開番号】 特開2003−211918(P2003−211918A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−10753(P2002−10753)