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【発明の名称】 空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】服部 一郎
【住所又は居所】東京都小平市小川東町3−1−1 株式会社ブリヂストン技術センター内

【要約】 【課題】偏摩耗を抑制すると共に、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止できる空気入りタイヤを得る。

【解決手段】空気入りタイヤ10によれば、ショルダー区域STに位置するラグ溝16Bの深さを主溝14の深さよりも浅く形成し、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aの深さを周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さよりも浅く、かつショルダー区域STに位置するラグ溝16Bの深さよりも浅く形成したことにより、ブロック18のブロック剛性を向上させることができる。このため、ブロック18の圧縮変形及び回転変形を小さくでき、偏摩耗を抑制することができる。また、同時に、周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さが深いため、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 タイヤ周方向に沿って又はタイヤ周方向に対して傾斜して延びる主溝と、タイヤ幅方向に沿って又はタイヤ幅方向に対して傾斜して延びるラグ溝と、前記主溝と前記ラグ溝により区画されたブロックと、タイヤ赤道線からトレッド接地端までの距離の5%以上40%以下の距離だけ前記トレッド接地端からタイヤ幅方向内側に入ったショルダー区域の前記ブロックにタイヤ周方向に向かって前記ラグ溝と交叉して形成された周方向副溝と、を有する空気入りタイヤであって、前記ショルダー区域に位置する前記ラグ溝の深さを前記主溝の深さよりも浅く形成し、前記周方向副溝の一部分の深さを該周方向副溝の他部分の深さよりも浅く、かつ前記ショルダー区域に位置する前記ラグ溝の深さと同等又はそれよりも浅く形成したことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】 前記周方向副溝の一部分は、前記ラグ溝に開口するラグ溝近傍部分であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】 前記周方向副溝の他部分の深さは、前記ラグ溝の深さと同等又はそれよりも深いことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩耗中期以降のWET性能の向上とショルダー区域の偏摩耗性を向上した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の空気入りタイヤの中には、周方向に対して傾斜して延びるV字状の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝と、を備えたタイヤ(ハイアングルパターン)がある。
【0003】かかる構成のタイヤでは、WET排水性が向上するという利点があるが、偏摩耗、特にショルダー区域STの偏摩耗が悪化するという問題が浮上してきた。
【0004】そこで、従来では、図4に示すように、上記V字状の主溝100、ラグ溝102の他に、タイヤ幅方向外側であるショルダー区域STにタイヤ周方向に延びる周方向副溝104を形成し、上記ラグ溝102のタイヤ幅方向に対する傾斜角度をタイヤ赤道線側であるセンター区域CTでは比較的を大きくし(タイヤ周方向に近い角度)、ショルダー区域STではタイヤ幅方向に対する傾斜角度を小さく(タイヤ幅方向に近い角度)するとともに、周方向副溝104とラグ溝102の深さを主溝100の深さよりも浅くすることによって偏摩耗を軽減してきた。
【0005】ところが、かかる構成のタイヤにすると、偏摩耗対策には効果があるものの、摩耗中期以後のWET排水性の低下が大きくなるという別の問題が生じていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上記事実を考慮し、周方向副溝の深さを一部で浅くすることにより、偏摩耗を抑制すると共に、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止できる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に沿って又はタイヤ周方向に対して傾斜して延びる主溝と、タイヤ幅方向に沿って又はタイヤ幅方向に対して傾斜して延びるラグ溝と、前記主溝と前記ラグ溝により区画されたブロックと、タイヤ赤道線からトレッド接地端までの距離の5%以上40%以下の距離だけ前記トレッド接地端からタイヤ幅方向内側に入ったショルダー区域の前記ブロックにタイヤ周方向に向かって前記ラグ溝と交叉して形成された周方向副溝と、を有する空気入りタイヤであって、前記ショルダー区域に位置する前記ラグ溝の深さを前記主溝の深さよりも浅く形成し、前記周方向副溝の一部分の深さを該周方向副溝の他部分の深さよりも浅く、かつ前記ショルダー区域に位置する前記ラグ溝の深さと同等又はそれよりも浅く形成したことを特徴とする。
【0008】次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0009】一般に、曲率を持つ空気入りタイヤの踏面がフラットな路面に接地するときには、ブロックにタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かう力が作用し、この力によりブロックがタイヤ幅方向内側に変形(圧縮変形)する。この圧縮変形の際に、ブロックが路面上を滑ることにより、ブロックが摩耗する。
【0010】また、上記ラグ溝がタイヤ幅方向に対して傾斜して形成されている場合、ブロックの軸線はタイヤ幅方向に対して傾斜する。かかる場合、ブロックにタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かう力が作用すると、その力が回転モーメントとなってブロックに作用するため、特にブロックのタイヤ幅方向外側端部(ショルダー区域側)が回転変形する。この回転変形の際に、ブロックのタイヤ幅方向外側端部が路面上を滑ることにより、ブロックのタイヤ幅方向外側端部が偏摩耗する。
【0011】上記した偏摩耗は、ブロックに周方向副溝が形成されることにより一層顕著になる。また、かかる偏摩耗を抑制すべく、周方向副溝及びラグ溝の深さを浅く形成すると、摩耗中期以後のWET排水性が低下する。
【0012】一方、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止するために、周方向副溝の深さを深く形成すると、上記したブロックの圧縮変形が大きくなり、かつこの圧縮変形に比例してブロックの回転変形も大きくなり、ショルダー区域のブロックの偏摩耗がさらに悪化することになる。
【0013】そこで、本発明の空気入りタイヤによれば、ショルダー区域に位置するラグ溝の深さを主溝の深さよりも浅く形成し、周方向副溝の一部分の深さを周方向副溝の他部分の深さよりも浅く、かつショルダー区域に位置するラグ溝の深さと同等又はそれよりも浅く形成したことにより、ブロックのブロック剛性を向上させることができる。
【0014】このようにブロックのブロック剛性を向上させることにより、ブロックの圧縮変形及び回転変形を小さくでき、偏摩耗を抑制することができる。また、同時に、周方向副溝の他部分の深さが深いため、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止できる。
【0015】なお、空気入りタイヤは、それぞれのサイズに応じて、JATMA(日本)などが発行する規格に定められたリムに装着して使用され、このリムが通常正規リムと称される。
【0016】同様に、正規荷重及び正規内圧とは、規格に定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重及び最大荷重に対する空気圧を指す。
【0017】また、本明細書において、トレッド接地端とは、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填し、正規荷重を静的に負荷したときのトレッド部のタイヤ幅方向(タイヤ軸方向)外側端部を指す。
【0018】ここで、荷重とは下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことであり、内圧とは下記規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)に対応する空気圧のことであり、リムとは下記規格に記載されている適用サイズにおける標準リムのことである。
【0019】そして規格とは、タイヤが生産又は使用される地域に有効な産業規格によって決められている。例えば、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA Year Book”にて規定されている。
【0020】請求項2に記載の空気入りタイヤでは、前記周方向副溝の一部分は、前記ラグ溝に開口するラグ溝近傍部分であることを特徴とする。
【0021】次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0022】ブロックの剛性は、周方向副溝がラグ溝と開口するラグ溝近傍部分で最も低くなる。このため、周方向副溝のラグ溝近傍部分の深さが深いと、ブロック剛性を効果的に向上させることはできず、特にブロックの回転変形を抑制することはできない。
【0023】そこで、周方向副溝のうちラグ溝に開口するラグ溝近傍部分の深さを浅く形成することにより、ブロックの剛性を効果的に向上させることができる。このため、特にブロックの回転変形を効果的に抑制でき、ブロックの偏摩耗を大幅に抑制することができる。
【0024】請求項3に記載の空気入りタイヤでは、前記周方向副溝の他部分の深さは、前記ラグ溝の深さと同等又はそれよりも深いことを特徴とする。
【0025】次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0026】周方向副溝の他部分の深さは、ラグ溝の深さと同等又はそれよりも深いことが好ましい。これにより、周方向副溝の一部分が表面に露出する摩耗中期以後のタイヤ周方向の排水性を確保することができる。
【0027】なお、ラグ溝とは、ショルダー区域に位置するラグ溝に限られず、ショルダー区域に挟まれた中央区域に位置するラグ溝も含まれる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。なお、図1には、トレッド12及びサイド部13の一部のパターンを示す図である。
【0029】図1に示すように、空気入りタイヤ10のトレッド12の中央区域CTには、タイヤ周方向(図1中矢印A方向)に対して傾斜して延びるV字状の主溝14がタイヤ周方向に亘って複数形成されている。また、この主溝14の屈曲部14Rは、タイヤ赤道線CL近傍に位置している。
【0030】なお、本明細書では、トレッド12の中央区域CTとは、タイヤ赤道線CLからトレッド接地端までの距離Wの5%以上40%以下の距離だけ前記トレッド接地端からタイヤ幅方向内側に入ったショルダー区域STに挟まれる区域を意味する。
【0031】また、トレッド12には、タイヤ幅方向(図1中矢印B方向)に延びたラグ溝16がタイヤ周方向に亘って複数形成されている。
【0032】このラグ溝16の中央区域CTに位置する部分16Aではタイヤ幅方向に対する傾斜角度が比較的大きくなるように形成されており、ラグ溝16のショルダー区域STに位置する部分16Bではタイヤ幅方向に対する傾斜角度が比較的小さくなるように形成されている。
【0033】また、ラグ溝16のショルダー区域STに位置する部分16Bの深さは、主溝14の深さよりも浅くなっている。
【0034】以上のように、トレッド12には、主溝14とラグ溝16とにより区画されたブロック18が複数形成されている。
【0035】また、トレッド12のショルダー区域STのブロック18には、タイヤ周方向に延びる周方向副溝20が形成されている。この周方向副溝20は、上記ラグ溝16と交叉して形成されている。
【0036】ここで、図1及び図2に示すように、周方向副溝20のラグ溝16に開口するラグ溝近傍部分20Aでは、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aで挟まれる周方向中央部分20Bよりも浅くなるように形成されている。このため、1つの周方向副溝20の中に、深さが浅い部分と深い部分とがある。
【0037】また、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aの深さは、ラグ溝16のショルダー区域STに位置する部分16Bの深さよりも浅くなっている。
【0038】なお、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aの深さがラグ溝16のショルダー区域STに位置する部分16Bの深さと同じになっていてもよい。
【0039】また、周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さは、ラグ溝16の中央区域CTに位置する部分16Aとショルダー区域STに位置する部分16Bの深さと同等か又はそれらよりも深くなるように形成されている。
【0040】また、本明細書で周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aとは、1つのブロック18に形成された周方向副溝20のタイヤ周方向長さの10%以上30%以下だけ周方向副溝20の開口端部から周方向副溝20のタイヤ周方向中央側に入った領域を意味する。
【0041】次に、空気入りタイヤ10の作用及び効果について説明する。
【0042】図3に示すように、曲率を持つ空気入りタイヤ10のトレッド部の踏面がフラットな路面に接地するときには、ブロック18にタイヤ幅方向外側(図3中矢印C方向側)からタイヤ幅方向内側(図3中矢印D方向側)に向かう力Fが作用し、この力Fによりブロック18がタイヤ幅方向内側に変形(圧縮変形)しようとする。
【0043】また、上記ラグ溝16がタイヤ幅方向に対して傾斜して形成されている場合には、ブロック18の軸線はタイヤ幅方向に対して傾斜する。かかる場合、ブロック18にタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側に向かう力Fが作用すると、その力Fが回転モーメントMとなってブロック18に作用するため、特にブロック18のタイヤ幅方向外側端部(ショルダー区域側)が回転変形しようとする。
【0044】そこで、本発明の空気入りタイヤ10によれば、ショルダー区域STに位置するラグ溝16Bの深さを主溝14の深さよりも浅く形成し、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aの深さを周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さよりも浅く、かつショルダー区域STに位置するラグ溝16Bの深さよりも浅く形成したことにより、ブロック18のブロック剛性を向上させることができる。
【0045】このようにブロック18のブロック剛性を向上させることにより、ブロック18の圧縮変形及び回転変形を小さくでき、偏摩耗を抑制することができる。
【0046】また、同時に、周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さがラグ溝16の中央区域CTに位置する部分16Aとショルダー区域STに位置する部分16Bの深さと同等か又はそれらよりも深くなるように形成されているため、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止できる。
【0047】特に、本発明では、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aの深さを周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さよりも浅くしているため、ブロック18の回転変形に対して十分な剛性を持つことができる。
(試験例)次に、本発明の空気入りタイヤと従来からの空気入りタイヤとを用いて摩耗段差とハイプレ性を試す試験を行った。
【0048】試験対象のタイヤAは、従来タイヤであり、図4に示すトレッドパターンを備えた空気入りタイヤである。タイヤAでは周方向副溝104の深さが一定となっている。
【0049】ここで、タイヤAの主溝100の深さは7.6mm、ラグ溝102の深さは5.6mm(一定)、周方向副溝104の深さは7.6mm(一定)である。
【0050】試験対象のタイヤBは、本発明のタイヤであり、図1に示すトレッドパターンを備えた空気入りタイヤである。
【0051】ここで、タイヤBの主溝14の深さは7.6mm、ラグ溝16の深さは5.6mm(一定)、周方向副溝20のラグ溝近傍部分20Aの深さは4.6mm、周方向副溝20の周方向中央部分20Bの深さは7.6mmである。
【0052】タイヤA及びタイヤBのタイヤサイズを185/65R14とし、5−1/2Jのホイールに組み付け、内圧を210kPaとした。
【0053】試験方法として、摩耗評価については、タイヤA及びタイヤBを車両(日産サニー)に装着し、一般道にて40000kmを走行した後、摩耗段差を測定した。一方、ハイプレ性評価については、上記走行後、水深10mmの弊社テストコースにてハイドロプレーニング評価を実施した。
【0054】以下の表1の数値は、従来タイヤであるタイヤAを基準(100)とした指数表示で示したものである。表1中の数値が大きい程、良好であることを意味している。
【0055】
【表1】

【0056】上記表1に示すように、本発明の対象であるタイヤBでは、タイヤAと比較して、偏摩耗性が向上するとともに、摩耗中期以降のWET排水性が大幅に向上したことが判明した。
【0057】
【発明の効果】本発明の空気入りタイヤによれば、偏摩耗を抑制すると共に、摩耗中期以後のWET排水性の低下を防止できる。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目10番1号
【出願日】 平成13年12月20日(2001.12.20)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2003−182312(P2003−182312A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−387325(P2001−387325)