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【発明の名称】 空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】瀬田 英介
【住所又は居所】東京都小平市小川東町3−1−1 株式会社ブリヂストン技術センター内

【要約】 【課題】ブロック高さを適正化する形状を定義することにより接地圧の不均一を解消し、乾燥路面での操縦安定性能、及び氷上性能を向上させる。

【解決手段】ブロック18のタイヤ幅方向において、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減する形状とすることにより、踏面高さが一定の従来ブロック対比でタイヤ幅方向の接地端側及びタイヤ幅方向の中央部側の接地圧を下げることができ、接地圧をタイヤ幅方向に均一化でき乾燥路面での高い操縦安定性能が得られる。ブロック18のタイヤ周方向において、端部から中央部へ向けて高さが漸減する形状とすることにより、従来ブロック対比でタイヤ周方向の中央部側の接地圧を下げることができ、接地圧をタイヤ周方向に均一化でき、高い氷上性能が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 実質的にタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝と、前記周方向溝に対して交差する横溝とによって区画されたブロックをトレッドに複数備えた空気入りタイヤであって、前記ブロックの踏面には、タイヤ幅方向に沿った断面で見たときには、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減し、タイヤ周方向に沿った断面で見たときには、端部から中央部へ向けて高さが漸減するように、隆起部及び陥没部の少なくとも一方が設けられている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】 タイヤ周方向のどの部分のタイヤ幅方向断面においても、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減し、タイヤ幅方向のどの部分のタイヤ周方向断面においても、端部から中央部へ向けて高さが漸減するように、隆起部及び陥没部の少なくとも一方が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】 前記ブロックのタイヤ幅方向断面での踏面の最も高い部分と最も低い部分との高低差、及びタイヤ周方向断面での踏面の最も高い部分と最も低い部分との高低差が、各々0.1〜2.5mmの範囲内にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトレッドにブロックを備えた空気入りタイヤに係り、特に操縦安定性能及び氷上性能に優れた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、空気入りタイヤにおいては、図7に示すように、ブロック100の高さは一定になっているのが通常であった。
【0003】このような高さが一定とされたブロック100が、図8に示すように、乾燥した路面102に接地すると、ブロック100と乾燥した路面102との間に摩擦力が発生するため、ブロック100が樽型に膨らむ変形をするため、ブロック100の接地端に曲げが働き、接地端が接地方向に押される。
【0004】また、トレッドの主材料であるゴムは非圧縮性であるため、高さが一定のブロック100は中央付近の圧縮剛性が大きい(ブロック側部付近は、外側へ膨らむことができるため圧縮剛性は低い。)。
【0005】したがって、高さが一定とされたブロック100が乾燥した路面102に接地すると、図8のグラフに示すように、接地圧は、接地端(ブロック端)で特に大となると共にブロック中央部で大となり、接地端とブロック中央部との間で相対的に小となる不均一が生じる。
【0006】このため、高さが一定とされたブロック100では、特に操縦安定性で重要となる微小舵角域(スリップ角が小のとき)や大舵角域(スリップ角が大のとき)において、踏面全体が路面に横力を伝えることが困難になる問題があった。
【0007】また、このような高さが一定とされたブロック100が、図9に示すように氷路面104に接地すると、ブロック100と氷路面104との間には摩擦力が殆ど存在しないため、ブロック100は踏面側が広がる台形型に変形をし、ブロック100の接地端には乾燥した路面102の場合のような曲げは働かない。
【0008】また、トレッドの主材料であるゴムは非圧縮性であるため、高さが一定のブロック100は中央付近の圧縮剛性が大きい(ブロック側部付近は、外側へ膨らむことができるため圧縮剛性は低い。)。
【0009】したがって、高さが一定とされたブロック100が氷路面104に接地すると、図9のグラフに示すように、接地圧はブロック中央部で特に大きくなる。
【0010】接地圧に不均一が生じると接地圧が均一なときに比べて接地面積が小さくなるため、高さが一定とされたブロック100では、特に氷上性能で重要となる駆動時や制動時において、踏面全体が路面に駆動力、制動力を伝えることが困難になる問題があった。
【0011】これに対し、従来の検討では、上記接地特性改良のためにトレッドパターンの改良なども行われてきたが、排水性の面やその他諸性能とのバランスから、限界があるのが現状である。
【0012】特開昭62−279105号のように、ブロックの中央部分をタイヤ周方向または幅方向断面において凸状態とするような発明もなされてきたが、このような手法のみでは諸性能との両立を考えた踏面形状は得にくく、また、形状決定には試行錯誤を伴い、困難を伴うのが通常である。
【0013】また、特開平2000−71719号のように、ブロック端縁及びブロックの中央部に向けて高さが漸減する周辺隆起部をブロック端縁の近傍に形成することで接地圧の均一化を図る発明もなされてきたが、この手法のみでは、乾燥した路面の性能は上がるものの、氷路面での性能と両立化することは困難であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事実を考慮し、トレッドに存在するブロックのブロック高さを適正化する形状を定義することにより接地圧の不均一を解消し、操縦安定性能、及び氷上性能を向上させた空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0015】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、実質的にタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝と、前記周方向溝に対して交差する横溝とによって区画されたブロックをトレッドに複数備えた空気入りタイヤであって、前記ブロックの踏面には、タイヤ幅方向に沿った断面で見たときには、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減し、タイヤ周方向に沿った断面で見たときには、端部から中央部へ向けて高さが漸減するように、隆起部及び陥没部の少なくとも一方が設けられている、ことを特徴としている。
【0016】次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0017】従来の高さが一定のブロックが乾燥した路面に接地した場合のブロック幅方向の接地圧分布は、接地端で特に大となると共にブロック中央部で大となり、接地端とブロック中央部との間で相対的に小となるが(図8参照)、タイヤ幅方向に沿った断面で見たときに、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減するブロックは、ブロック端縁及びブロック中央部側のブロック高さが低くなるので、踏面高さが一定のブロック対比でタイヤ幅方向の接地端側及びタイヤ幅方向の中央部側の接地圧を下げることができ、接地圧をタイヤ幅方向に均一化することができる(図5参照)。
【0018】操縦安定性能は、微小舵角域や大舵角域において、ブロックの踏面全体が路面に対して横力を伝えることが重要であるが、請求項1に記載の空気入りタイヤでは、乾燥路面でのブロックのタイヤ幅方向の接地圧の不均一が抑えられているので、乾燥路面での横力入力時のブロックの接地性が良く、このため、乾燥路面では高い操縦安定性能が得られる。
【0019】次に、従来の高さが一定のブロックが氷路面に接地した場合のブロック周方向の接地圧分布は、ブロック中央部で大となり、接地端で相対的に小となるが(図9参照)、タイヤ周方向に沿った断面で見たときに、端部から中央部へ向けて高さが漸減しているブロックは、氷路面でのブロックのタイヤ周方向の中央部側の接地圧を下げることができ、氷路面での接地圧をタイヤ周方向に均一化することができる(図6参照)。
【0020】氷上性能は、駆動時や制動時において、踏面全体が氷路面に駆動力、制動力を伝えることが重要であるが、請求項1に記載の空気入りタイヤでは、氷路面でのブロックのタイヤ周方向の接地圧の不均一が抑えられているので、氷路面での駆動、制動時のブロックの接地性が良く、このため、高い氷上性能が得られる。
【0021】なお、周方向溝は、タイヤ周方向に対して平行であっても良く、タイヤ周方向に対してある程度傾斜していても良い。
【0022】また、横溝は、少なくとも周方向溝に対して交差していれば良く、タイヤ幅方向に対して平行であっても良く、タイヤ幅方向に対してある程度傾斜していても良い。
【0023】また、接地圧が不均一に分布するために起こる局所的な摩耗を生じさせないために、踏面の高さは滑らかに変化していることが好ましく、ブロックを高さ方向に断面にしたときに、踏面輪郭線が滑らかな曲線で構成されていることが好ましい。
【0024】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、タイヤ周方向のどの部分のタイヤ幅方向断面においても、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減し、タイヤ幅方向のどの部分のタイヤ周方向断面においても、端部から中央部へ向けて高さが漸減するように、隆起部及び陥没部の少なくとも一方が設けられている、ことを特徴としている。
【0025】次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0026】タイヤ周方向のどの部分のタイヤ幅方向断面においても、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減する踏面形状とすることにより、ブロック全体で接地圧をタイヤ幅方向に均一化することができる。これにより、操縦安定性能を高めることができる。
【0027】また、タイヤ幅方向のどの部分のタイヤ周方向断面においても、端部から中央部へ向けて高さが漸減する踏面形状とすることにより、ブロック全体で接地圧をタイヤ周方向に均一化することができる。これにより、氷上性能を高めることができる。
【0028】請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ブロックのタイヤ幅方向断面での踏面の最も高い部分と最も低い部分との高低差、及びタイヤ周方向断面での踏面の最も高い部分と最も低い部分との高低差が、各々0.1〜2.5mmの範囲内にあることを特徴としている。
【0029】次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0030】タイヤが受ける入力下では、ブロックの変形には限度があるため、上記高低差の寸法が大き過ぎるとブロックの踏面で路面と接地しなくなる部分が生じる。即ち、接地面積が減少する場合がある。
【0031】したがって、極端な接地面積の減少を生じないようにするために上記高低差の寸法の上限を2.5mmとする。
【0032】一方、高低差の寸法が0.1mm未満になると、ブロック端縁やブロック中央部の接地圧を下げる効果が低く、接地圧の不均一を抑える効果が不足する。
【0033】したがって、上記高低差の寸法を0.1〜2.5mmの範囲内とすることが好ましい。
【0034】なお、上記高低差の寸法を0.3〜1.0mmの範囲内とすることが更に好ましい。
【0035】
【発明の実施の形態】本発明の空気入りタイヤの一実施形態を図1乃至図6にしたがって説明する。
【0036】図2に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向(矢印A方向)に沿って延びる複数本の周方向溝14及び、タイヤ幅方向(矢印B方向)に沿って延びる複数本の横溝16とによって複数のブロック18が形成されている。
【0037】なお、この空気入りタイヤ10の内部構造は、一般の空気入りタイヤと何ら変わらないので内部構造の説明は省略する。
【0038】図1にはブロック18が斜視図にて示されており、図3にはブロック18のタイヤ幅方向断面が示されており、図4にはブロック18のタイヤ周方向断面が示されている。
【0039】これら図1、図3及び図4に示すように、ブロック18の踏面には、タイヤ幅方向の両側のブロック端縁の近傍に隆起部20が形成されている。
【0040】この隆起部20は、タイヤ周方向に連続して形成されており、かつ、その高さは、タイヤ周方向両端部分が最も高く、タイヤ周方向中央部が最も低く設定されており、ブロック高さとしてはタイヤ周方向両端部からタイヤ周方向中央部に向けて滑らかに漸減している。
【0041】また、隆起部20と隆起部20との間にはタイヤ周方向に連続する陥没部22、隆起部20のタイヤ幅方向のブロック端側にはタイヤ周方向に連続する陥没部24が設けられている。
【0042】これら陥没部22及び陥没部22は、タイヤ周方向両端部分が最も高く、タイヤ周方向中央部が最も低く設定されており、ブロック高さとしてはタイヤ周方向両端部からタイヤ周方向中央部に向けて滑らかに漸減している。
【0043】また、陥没部22、陥没部22及び隆起部20は、互いに滑らかにつながっている。
【0044】本実施形態のブロック18においては、タイヤ幅方向に沿った断面で見たときの踏面の輪郭形状は全て図3に示すような端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減する形状であり、タイヤ周方向に沿った断面で見たときの踏面の輪郭形状は全て図4に示すような端部から中央部へ向けて高さが漸減する形状である。
【0045】図3に示すように、ブロック18をタイヤ幅方向に沿った断面で見た時の踏面の最も高い部分と最も低い部分との高低差D1は、0.1〜2.5mmの範囲内が好ましく、0.3〜1.0mmの範囲内が更に好ましい。
【0046】また、図4に示すように、ブロック18をタイヤ周方向に沿った断面で見た時の踏面の最も高い部分と最も低い部分との高低差D2は、0.1〜2.5mmの範囲内が好ましく、0.3〜1.0mmの範囲内が更に好ましい。
(作用)次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
【0047】高さが一定のブロックが乾燥した路面に接地した場合のブロック幅方向の接地圧分布は、接地端で特に大となると共にブロック中央部で大となり、接地端とブロック中央部との間で相対的に小となるが、図3に示すように、ブロック18をタイヤ幅方向に沿った断面で見たときに、端部から中央部へ向けて高さが一旦漸増し、その後、中央部へ向けて高さが漸減する形状とすることにより、踏面高さが一定のブロック対比でタイヤ幅方向の接地端側及びタイヤ幅方向の中央部側の接地圧を下げることができ、図5に示すように、ブロック18全体で接地圧をタイヤ幅方向に均一化することができる。
【0048】これにより、乾燥路面での横力入力時のブロックの接地性が良くなり、乾燥路面での高い操縦安定性能が得られる。
【0049】さらに、本実施形態のブロック18では、上記のようにタイヤ幅方向の接地圧の不均一を抑えることができるので、乾燥路面のように摩擦力の働く路面で横力に起因するバックリング減少の発生を抑えて操縦安定性能を向上できる。
【0050】また、高さが一定のブロックが氷路面に接地した場合のブロック周方向の接地圧分布は、ブロック中央部で大となり、接地端で相対的に小となるが、図4に示すように、ブロック18をタイヤ周方向に沿った断面で見たときに、端部から中央部へ向けて高さが漸減する形状とすることにより、踏面高さが一定のブロック対比でタイヤ周方向の中央部側の接地圧を下げることができ、図6に示すように、ブロック18全体で接地圧をタイヤ周方向に均一化することができる。
【0051】これにより、氷路面での駆動、制動時のブロックの接地性が良くなり、高い氷上性能が得られる。
【0052】また、タイヤ周方向断面、及びタイヤ幅方向断面において、ブロック18の踏面の高低差を0.1〜2.5mmの範囲内とすることにより、ブロック18の接地面積を減少させることなく、タイヤ幅方向及びタイヤ周方向ともに接地圧を均一化することができる。
【0053】なお、本実施形態では周方向溝14がタイヤ周方向(矢印A方向)に沿って延び、横溝16がタイヤ幅方向(矢印B方向)に沿って延びていたが、本発明のこれに限らず、周方向溝14がタイヤ周方向に対して傾斜していても良く、横溝16がタイヤ幅方向に対して傾斜していても良い。
【0054】また、本実施形態のブロック18は矩形であったが、本発明はこれに限らず、トレッド12を平面視したときのブロック18の形状は、周方向溝14及び横溝16の向き、面取り、切り欠き等の追加により菱形、6角形、8角形等の多角形とされたり、略コ字形状を呈していても良く、円形、楕円等であっても良い。
(試験例)本発明の効果を確かめるために、本発明の適用された実施例のタイヤ4種、比較例のタイヤ2種、及び従来のタイヤ1種を用意し、実車走行により操縦安定性能と氷上性能の評価を行った。
【0055】なお、タイヤサイズは195/50R15であり、内圧200kPaを充填して実車走行を行った。
【0056】ブロックの寸法は、タイヤ周方向が30mm、タイヤ幅方向が20mm、高さが9mm(平均値)である。
【0057】従来例のタイヤは、高さが一定のブロックを有するタイヤである。
【0058】実施例及び比較例のタイヤは、前述した実施形態のように、踏面に隆起部及び陥没部を有するタイヤである。
【0059】なお、図3に示すように、ブロック端から隆起部20の頂部までの距離L1は3mmである。
【0060】評価は以下の表1に示す通りである。なお、評価は、テストドライバーによるフィーリング評価であり、従来のタイヤを100とする指数表示である。また、数値が大きいほど性能が良いことを示す。
【0061】
【表1】

試験の結果、実施例1〜実施例4のタイヤは、従来例及び比較例のタイヤに対して乾燥路面での操縦安定性能、及び氷上性能が向上しているのが分かる。
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の空気入りタイヤは上記の構成としたので、接地圧の不均一を解消でき、従来よりも乾燥路面での操縦安定性能、及び氷上性能を向上させることができる、という優れた効果を有する。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目10番1号
【出願日】 平成13年12月21日(2001.12.21)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2003−182311(P2003−182311A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−389102(P2001−389102)