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【発明の名称】 空気入りラジアルタイヤ
【発明者】 【氏名】南 伸明
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内

【要約】 【課題】耐久性及び乗り心地性を悪化させることなく、操縦安定性を向上させる。

【解決手段】ビードエーペックスゴム8の内側面に沿って、ゴム100重量部に対して短繊維を10〜30重量部配合してなり、かつこの短繊維をタイヤ周方向に配向させた内の短繊維補強ゴム層10を配する。内の短繊維補強ゴム層10は、ビードコア5からビードエーペックスゴム8の外方端8eよりも内方の高さ位置まで延在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、前記ビードコアの半径方向外面からタイヤ半径方向外方に向けて先細状にのびるビードエーペックスゴムとを具える空気入りラジアルタイヤであって、前記ビードエーペックスゴムのタイヤ軸方向内側面に沿い、かつ前記ビードコアからビードエーペックスゴムの半径方向外方端よりも内方の高さ位置まで半径方向に延在する内の短繊維補強ゴム層を配するとともに、前記内の短繊維補強ゴム層は、ゴム100重量部に対して短繊維を10〜30重量部配合させた短繊配合ゴムからなり、かつその短繊維をタイヤ周方向に配向させたことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】前記内の短繊維補強ゴム層は、その厚さが0.3〜2.0mmであることを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】前記内の短繊維補強ゴム層は、タイヤ周方向の複素弾性率Ea*を、ビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より大、かつ半径方向の複素弾性率Eb*をビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より小とするとともに、前記複素弾性率Ea*とEb*との比Ea*/Eb*を10〜30としたことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】前記内の短繊維補強ゴム層は、前記半径方向の複素弾性率Eb*を10Mpa以下としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】前記内の短繊維補強ゴム層は、その半径方向外端とビードエーペックスゴムの前記外方端との間の半径方向距離を3mm以上としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項6】前記ビード部は、前記短繊維配合ゴムからなりかつ前記ビードエーペックスのタイヤ軸方向外側面に沿って前記ビードコアからビードエーペックスゴムの半径方向外方端よりも内方の高さ位置まで延在する外の短繊維補強ゴム層を具えるとともに、前記内の短繊維補強ゴム層の半径方向外端は、外の短繊維補強ゴム層の半径方向外端よりも半径方向内方に位置させたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項7】前記内、外の短繊維補強ゴム層の外端間の半径方向の距離は5mm以上としたことを特徴とする請求項6に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビードエーペックスゴムの少なくとも内側面を含む側面に、短繊維補強ゴム層を隣設することにより、耐久性及び乗り心地性を悪化させることなく、操縦安定性を向上させた空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】近年、自動車の高出力化や高性能化に伴い、タイヤについても、高い乗り心地性とともに操縦安定性の向上が強く望まれている。
【0003】他方、空気入りラジアルタイヤにおいては、タイヤ横剛性を増すことにより操縦安定性能を高めうることは知られており、そのために、従来、スチールコードや有機繊維コードを用いたコード補強層を、ビード部からサイドウォール部にかけて設け、サイドウォールの曲げ剛性を高めることがおこなわれている。
【0004】しかし、このようなコード補強層の使用は、タイヤ縦剛性の増加を伴うため、乗り心地性の悪化を招くこととなる。又コード補強層は、その端部に応力が集中しやすく、特にタイヤ偏平率を55%以下に減じ接地巾や接地面積の増大を図った高性能タイヤに採用した場合には、サイドウォール部のフレキシブル領域が狭く応力集中が顕著となるため、耐久性を損ねる傾向となる。
【0005】そこで本発明者は、操縦安定性にはタイヤ横剛性だけでなく、回転方向の捩じれ剛性すなわち周方向剛性も大きく関与していることに着目し、短繊維をタイヤ周方向に配向させることにより、タイヤ半径方向の複素弾性率を低く維持しながら周方向の複素弾性率を大幅に高めた短繊維補強ゴム層を、ビードエーペックスゴムから突出させることなくかつその側面に沿って配することを提案した。そして、これによってタイヤの捩じれ剛性が効果的に高まり、操縦安定性を向上させる一方、タイヤ縦剛性を低く維持させうることを究明し得た。
【0006】即ち本発明は、タイヤ周方向に短繊維を配向させた短繊維補強ゴム層を、ビードエーペックスゴムの少なくとも内側面を含む側面に沿って配することを基本として、耐久性及び乗り心地性を悪化させることなく、操縦安定性を向上させた空気入りラジアルタイヤの提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至るカーカスと、前記ビードコアの半径方向外面からタイヤ半径方向外方に向けて先細状にのびるビードエーペックスゴムとを具える空気入りラジアルタイヤであって、前記ビードエーペックスゴムのタイヤ軸方向内側面に沿い、かつ前記ビードコアからビードエーペックスゴムの半径方向外方端よりも内方の高さ位置まで半径方向に延在する内の短繊維補強ゴム層を配するとともに、前記内の短繊維補強ゴム層は、ゴム100重量部に対して短繊維を10〜30重量部配合させた短繊配合ゴムからなり、かつその短繊維をタイヤ周方向に配向させたことを特徴としている。
【0008】又請求項2の発明では、前記内の短繊維補強ゴム層は、その厚さが0.3〜2.0mmであることを特徴としている。
【0009】又請求項3の発明では、前記内の短繊維補強ゴム層は、タイヤ周方向の複素弾性率Ea*を、ビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より大、かつ半径方向の複素弾性率Eb*をビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より小とするとともに、前記複素弾性率Ea*とEb*との比Ea*/Eb*を10〜30としたことを特徴としている。
【0010】又請求項4の発明では、前記内の短繊維補強ゴム層は、前記半径方向の複素弾性率Eb*を10Mpa以下としたことを特徴としている。
【0011】又請求項5の発明では、前記内の短繊維補強ゴム層は、その半径方向外端とビードエーペックスゴムの前記外方端との間の半径方向距離を3mm以上としたことを特徴としている。
【0012】又請求項6の発明では、前記ビード部は、前記短繊維配合ゴムからなりかつ前記ビードエーペックスのタイヤ軸方向外側面に沿って前記ビードコアからビードエーペックスゴムの半径方向外方端よりも内方の高さ位置まで延在する外の短繊維補強ゴム層を具えるとともに、前記内の短繊維補強ゴム層の半径方向外端は、外の短繊維補強ゴム層の半径方向外端よりも半径方向内方に位置させたことを特徴としている。
【0013】又請求項7の発明では、前記内、外の短繊維補強ゴム層の外端間の半径方向の距離は5mm以上としたことを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は本発明の空気入りラジアルタイヤが、タイヤ偏平率を55%以下とした高性能の乗用車用タイヤである場合を例示した子午断面図を示す。図2はビード部を拡大して示す断面図である。
【0015】図1に示すように、空気入りラジアルタイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、トレッド部2の内方かつ前記カーカス6の外側に配されるベルト層7とを具えるとともに、ビード部4には、前記ビードコア5の半径方向外面からタイヤ半径方向外方に立上がるビードエーペックスゴム8を設けている。
【0016】なお前記ベルト層7は、高弾性のベルトコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜35°の角度で配列した2枚以上、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから構成される。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがプライ間相互で交差するように傾斜の向きを違えて重置され、これによってベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して強固に補強している。ベルトコードとしては、スチールコード或いは、これに匹敵する例えば芳香族ポリアミド繊維等のハイモジュラスの有機繊維コードが好適に使用される。
【0017】又本例では、前記ベルト層7に対する拘束力を高めて高速耐久性能等を向上させる目的で、ベルト層7の外側にバンド層9を配した場合を例示している。このバンド層9は、タイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で螺旋巻きしたバンドコードを有し、少なくとも前記ベルト層7のタイヤ軸方向外端部を覆って延在する。
【0018】又前記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して75〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aから形成される。このカーカスプライ6Aは、前記ビードコア5、5間を跨る本体部6aの両端に、前記ビードコア5の廻りで内から外に折り返す折返し部6bを一体に具えている。カーカスコードとして、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミドなどの有機繊維コードの他、スチールコードも適宜用いることができるが、軽量化の観点から有機繊維コードが好ましい。
【0019】次に、前記ビードエーペックスゴム8は、カーカスプライ6Aの前記本体部6aと折返し部6bとの間を通ってタイヤ半径方向外方に向けて先細状にのびる断面三角形状をなす。本例では、高性能タイヤとして必要なタイヤ剛性を確保するため、その半径方向外方端8eのビードベースラインBLからの高さh1を、タイヤ断面高さHTの0.25〜0.5倍の範囲としている。なおビードエーペックスゴム8には、複素弾性率E*が35〜60Mpaと、サイドウォールゴム(通常、複素弾性率は2.5〜6Mpa)に比して高弾性のゴムが使用される。
【0020】そして本実施形態では、このようなタイヤ1において、耐久性及び乗り心地性を悪化させることなく、操縦安定性を向上させるために、ビード部4に内の短繊維補強ゴム層10を設けている。
【0021】この内の短繊維補強ゴム層10は、図2に示すように、実質的に一定のゴム厚さtを有する薄いゴム層であって、前記ビードエーペックスゴム8のタイヤ軸方向内側面に沿い、かつ前記ビードコア5からビードエーペックスゴム8の前記外方端8eよりも内方の高さ位置まで半径方向に延在する。
【0022】又内の短繊維補強ゴム層10は、ゴム100重量部に対して短繊維を10〜30重量部配合させた短繊配合ゴムGからなり、かつその短繊維をタイヤ周方向に配向させている。なお「短繊維がタイヤ周方向に配向する」とは、短繊維の90%以上が、タイヤ周方向を中心とした±20度以下の角度範囲に配向することを意味する。
【0023】この短繊維の配向により、図3に示すように、前記内の短繊維補強ゴム層10は、その半径方向の複素弾性率Eb*の上昇を抑えながら、タイヤ周方向の複素弾性率Ea*を大幅に増加させることが可能となり、その比Ea*/Eb*を、例えば10以上にまで高めることができる。なお図3は、短繊維の配合量に基づく、周方向及び半径方向の複素弾性率Ea*、Eb*の変化の一例を示す。
【0024】このように、内の短繊維補強ゴム層10は、タイヤ周方向の複素弾性率Ea*を大幅に増加させているため、タイヤの周方向剛性、即ちタイヤ回転時の捩じれ剛性を効果的に高めることができる。又図4に誇張して示すように、大きな横力Fが作用してビード部4がタイヤ軸方向内方に湾曲する際、ビードエーペックスゴム8の内側面側が引張り、外側面側が圧縮となる。従って、引張り側となる内側面側に短繊維補強ゴム層10を設ける方が、外側面側に設けるよりも効果的に抗力をうることができるなどコーナリングフォースが高まり、前記捩じれ剛性と相俟って優れた操縦安定性を発揮できる。そのためには、内の短繊維補強ゴム層10は、その半径方向内端e2を、ビードコア5からの半径方向の距離Kを3mm以下としてできるだけビードコア5に近接させることが好ましい。
【0025】他方、内の短繊維補強ゴム層10では、前記図3の如く、半径方向の複素弾性率Eb*への影響をほとんど回避しうるなどタイヤ縦剛性を低く維持でき、乗り心地性の低下を抑制できる。なお、このためには、前記タイヤ周方向の複素弾性率Ea*が、ビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より大(Ea*>E*)、かつ前記半径方向の複素弾性率Eb*がビードエーペックスゴムの複素弾性率E*より小(Eb*<E*)であることが必要である。
【0026】又前記操縦安定性の向上と乗り心地性の低下抑制との効果をより顕著に発揮させるためには、前記比Ea*/Eb*を10〜30とすることが好ましく、比Ea*/Eb*が10未満のとき、操縦安定性の向上効果が不十分となり、特にハンドル応答性が低下傾向となる。又比Ea*/Eb*が30を越えることは、技術的に難しく、生産性や生産コストに不利を招くほか、ゴム強度が低下傾向となる。従って、前記比Ea*/Eb*は、15〜25がさらに好ましい。
【0027】このとき、前記タイヤ半径方向の複素弾性率Eb*が、10MPa以下、さらには5MPa以下であることが、乗り心地性のために好ましい。
【0028】なお複素弾性率は、岩本製作所(株)製の粘弾性スペクトロメーターを用い、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%、動歪±1%として測定した値としている。
【0029】ここで、短繊維は、押出機やカレンダロールにより短繊配合ゴムをシート状に押し出す際、押し出し方向に配向する傾向があり、これを利用して、内の短繊維補強ゴム層10の短繊維を前記周方向に配向させることができる。しかし、内の短繊維補強ゴム層10の前記厚さtが2.0mmを越えると、短繊維の配向性が悪化するなど、前記比Ea*/Eb*を10以上に確保することが難しくなる。その結果、操縦安定性の向上効果が小さくなり、又タイヤ重量も増加して転がり抵抗を増大させる。又厚さtが0.3mmより小では、材料が薄すぎて補強効果を発揮することができなくなり、又その取り扱いが難しく生産性に不利となる。このように前記厚さtは、0.3〜2.0mmが好ましく、さらには0.3〜1.5mmがより好ましい。
【0030】次に、前記短繊配合ゴムのゴム基材として、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレインゴム(IR)等のジエン系ゴムの一種若しくは複数種を組み合わせたものが好適に使用できる。
【0031】また前記短繊維としては、例えば、ナイロン、ポリエステル、アラミド、レーヨン、ビニロン、コットン、セルロース樹脂、結晶性ポリブタジエンなどの有機繊維の他、例えば金属繊維、ウイスカ、ボロン、ガラス繊維等の無機繊維が挙げられ、これらは単独でも、又2種以上を組合わせて使用することもできる。さらに好ましくは、短繊維はゴム基材との接着性を向上させるために適宜の表面処理を施してもよい。
【0032】また前記短繊維の平均繊維長さLは、20μm以上、特に50〜5000μmが好ましい。又平均繊維長さLと繊維径Dとのアスペクト比L/Dは10以上、特に20〜500が好ましい。この平均繊維長さLが20μm未満、及びアスペクト比L/Dが10未満では、短繊維が高精度で配向した場合にも、複素弾性率Ea*、Eb*の間に十分な差が確保できなくなるなど操縦安定性の向上と乗り心地性の低下抑制との両立が難しくなる。逆に平均繊維長さLが5000μmより大、及びアスペクト比L/Dが500より大では、短繊維の配向性自体が低下し、同様に前記両立を難しいものとする。
【0033】また短繊維の配合量は、10〜30重量部であることが必要であり、10重量部未満では補強効果に劣り、必要なタイヤ周方向の複素弾性率Ea*が確保できなくなるなど、操縦安定性の向上効果が発揮されない。逆に30重量部を越えると、短繊維が高精度で配向した場合にも、タイヤ半径方向の複素弾性率Ea*が上昇傾向となって乗り心地性を低下させることとなる。又未加硫ゴムの粘度が増し加工性も低下する。
【0034】なお前記短繊配合ゴムでは、前記ゴム基材に、さらにカーボンブラックを配合することができ、このカーボンブラックとして、ヨウ素吸着量が30〜90mg/gのものが好適に使用しうる。ヨウ素吸着量が30mg/g未満のカーボンブラックでは、ゴム補強性が低く、強度、耐カット性が共に劣り、逆に90mg/gを越えると、発熱性が高くなって転がり抵抗の悪化を招く。
【0035】このカーボンブラックの配合量は、前記ゴム基材100重量部に対して40重量部以下、好ましくは20〜30重量部であり、40重量部を越えると、ゴムの発熱性が高くなり転がり抵抗も悪化する。なお短繊配合ゴムには、前記短繊維やカーボンブラック以外に、さらに添加剤としてオイル、老化防止剤、ワックス、加硫促進剤等の従来のタイヤゴム用の添加剤が適宜配合できる。
【0036】また本実施形態の内の短繊維補強ゴム層10では、その半径方向外端e1が、ビードエーペックスゴム8の前記外方端8eよりも半径方向内方に控えているため、応力の集中が緩和され、耐久性の悪化を防止できる。特に外端e1と外方端8eとの間の半径方向距離L1を3mm以上とすることが、耐久性の点で好ましい。
【0037】ここで、ビード部4に設ける短繊維補強ゴム層が、本例の如く、内の短繊維補強ゴム層10のみの場合、即ちビードエーペックスゴム8の外側面に短繊維補強ゴム層を配さない場合には、前記外端e1のビードコア5からの高さHiを、タイヤ断面高さHTの0.1〜0.25倍とするのが好ましい。0.1倍未満では、操縦安定性の向上効果が十分発揮されず、逆に0.25倍を越えると乗心地性悪化という不利がある。
【0038】又前記内の短繊維補強ゴム層10は、前記ビードエーペックスゴム8とカーカスプライ6Aとの間に挟まれて配されるため、加硫成型時のゴム流れが抑制されるなどゴム厚tを均一に確保できる。即ち、他の部位に設けた場合など、ゴム厚tが部分的に変化し、これが強度の弱所となって損傷を起こすなどの不具合がなく、耐久性を維持できる。
【0039】又前記内の短繊維補強ゴム層10では、本例の如く、その内端e2から外端e1まで略直線状にのびることが好ましく、これによって、捩じれ剛性をより効果的に高めることができる。なお「略直線状」とは、短繊維補強ゴム層10の内端e2、外端e1、及びその中点を通る3点円弧の直径が100mm以上のものを意味する。
【0040】又本実施形態では、図5に示すように、前記内の短繊維補強ゴム層10に加え、外の短繊維補強ゴム層20を設けることができる。
【0041】この外の短繊維補強ゴム層20は、前記ビードエーペックスのタイヤ軸方向外側面に沿ってビードコア5からビードエーペックスゴム8の外方端8eよりも内方の高さ位置まで延在する。又外の短繊維補強ゴム層20は、短繊維を周方向に配向した前記短繊維配合ゴムGからなり、従って、複素弾性率Ea*、Eb*等のゴム物性を、前記内の短繊維補強ゴム層10のゴム物性と実質的に同じとしている。なおゴム厚さも、0.3〜2.0mmの範囲としている。
【0042】従って、内の短繊維補強ゴム層10と同様、タイヤ縦剛性を低く維持しながら、周方向の捩じれ剛性を高めることができ、内の短繊維補強ゴム層10と相俟って、操縦安定性のさらなる向上を達成しうる。なお、ビードエーペックスゴム8の外側面は、曲げ変形時の中立線に近いことから、外の短繊維補強ゴム層20は、曲げ剛性の増加を極力抑えながら周方向の捩じれ剛性を高めることができるため、より好ましい態様となる。
【0043】このとき、前記内、外の短繊維補強ゴム層10、20の各外端e1、f1の高さ位置が近すぎると、応力集中によって耐久性が低下する。従って、本例では、前記外端e1を、前記外端f1よりも半径方向内方に控えて終端せしめ、応力の分散を図っている。これはビードエーペックスゴム8の内側面の方が、曲げ変形時の中立線から遠いことから、内の短繊維補強ゴム層10の方が、曲げ剛性への影響が大きいためであり、従って、外端e1を低くすることが、乗り心地性に有利となる。
【0044】又前記耐久性の維持のために、前記外端e1、f1間の半径方向の距離L2を5mm以上とするのが好ましく、又同目的で、前記外端f1とビードエーペックスゴム8の前記外方端8eとの間の半径方向の距離L3を3.0mm以上とするのが好ましい。
【0045】なお、外の短繊維補強ゴム層20の前記外端f1のビードコア5からの高さHoは、タイヤ断面高さHTの0.1〜0.25倍とするのが好ましく、このときには、内の短繊維補強ゴム層10の前記高さHiを、0.08×HTまで減じてもよい。
【0046】なお、前記短繊維補強ゴム層10、20による前記作用効果は、本例の如く、タイヤ偏平率が30〜55%の高性能タイヤにより有効に機能しうるが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0047】
【実施例】タイヤサイズが215/45ZR17であるタイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤの操縦安定性、および乗り心地をテストした。なお比較例1では、図6に略示するように、スチールコードのコード補強層を、ビードエーペックスゴムの外方端から突出するように設けている。テストの方法は次の通りである。
【0048】(1)操縦安定性;
・ タイヤをリム(17×7JJの)、内圧(200kPa)の条件で、乗用車両(国産FR乗用車、排気量2500cc)の全輪に装着し、速度120km/Hで乾燥アスファルト路面を高速走行走行し、直進安定性及びレーンチェンジの安定性をドライバーの官能評価により従来例を100とする指数で表示している。指数の大きい方が良好である。
・ 同テスト車両を用い、ウエットなアスファルト路において速度80km/Hで走行し、その時の直進安定性及びレーンチェンジの安定性を含む操縦安定性能の全体を、ドライバーの官能評価により従来例を100とする指数で表示している。指数の大きい方が良好である。
【0049】(2)乗り心地性;
・ 同テスト車両を用い、アスファルト路面(良路)を走行したときの乗り心地性を、ドライバーの官能評価により従来例を100とする指数で表示している。指数の大きい方が良好である。
・ 同テスト車両を用い、ベルジャン路面(悪路)を走行したときの乗り心地性を、ドライバーの官能評価により従来例を100とする指数で表示している。指数の大きい方が良好である。
【0050】
【表1】

【0051】
【発明の効果】叙上の如く本発明は、タイヤ周方向に短繊維を配向させた短繊維補強ゴム層を、ビードエーペックスゴムの少なくとも内側面を含む側面に沿って配しているため、耐久性及び乗り心地性を悪化させることなく、操縦安定性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
【出願日】 平成13年11月14日(2001.11.14)
【代理人】 【識別番号】100082968
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 正 (外1名)
【公開番号】 特開2003−146029(P2003−146029A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−349191(P2001−349191)