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【発明の名称】 農業機械用タイヤ
【発明者】 【氏名】江面 栄
【住所又は居所】東京都小平市小川東町3−1−1 株式会社ブリヂストン技術センター内

【要約】 【課題】農業機械用タイヤにおける高いラグに起因した走行時の振動、特に良路走行時の横揺れ振動を抑制した、振動乗り心地性に優れる農業機械用タイヤについて提供する。

【解決手段】タイヤのトレッドに、その周方向に間隔を置いて配置された複数のラグを有する、トレッド幅がタイヤの総幅以内である農業機械用タイヤにおいて、そのタイヤの外径に比しトレッド端の径をトレッド幅の12〜20%は小さくする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 タイヤのトレッドに、その周方向に間隔を置いて配置された複数のラグを有する、トレッド幅がタイヤの総幅以内である農業機械用タイヤであって、タイヤの幅方向断面において、タイヤの外径に比しトレッド端の径をトレッド幅の12〜20%は小さくして成る農業機械用タイヤ。
【請求項2】 タイヤの幅方向断面における、各ラグの表面輪郭形状は、トレッド中央域での曲率半径に比し、その外側の側部域での曲率半径が小さい請求項1に記載の農業機械用タイヤ。
【請求項3】 トレッド中央域と、その外側の側部域との境界付近に、該トレッド中央域との径差がトレッド幅の1〜5%となる段差を設けた請求項1に記載の農業機械用タイヤ。
【請求項4】 トレッド中央域はタイヤの赤道を中心とするトレッド幅の40〜60%の領域である請求項2または3に記載の農業機械用タイヤ。
【請求項5】 トレッド中央域での曲率半径がタイヤの外径と同等またはそれ以上である請求項2、3または4に記載の農業機械用タイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、泥濘地や湿田等で使用される農業機械に供するタイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、住宅や土地の開発が都市部からその周辺へと拡大する中、農耕地に住宅地が隣接することが多くなり、また道路事情も良くなってきていることから、農耕地での作業を終えたトラクタや田植え機などの農業機械が舗装路等の良路を走行する機会が増加している。
【0003】ところで、農業機械に装着されるタイヤは、泥濘地や湿田等の圃場を走行する際のトラクションが重視されるために、タイヤのトレッド周方向に間隔を置いて比較的に高さの高いラグを八の字状に配置し、かつトレッド幅をタイヤの総幅より大きく設定した、いわゆるハイラグパターンに成るものが一般的である。
【0004】このハイラグパターンのタイヤは、確かに泥濘地などにおいて優れたトラクションを発揮するが、とりわけ舗装路における振動乗り心地性に劣ることから、上記したように農耕機械が良路を走行する機会が増加した現状において、振動乗り心地性に対する改良が必須である。
【0005】この種タイヤの走行振動を抑制する策としては、トレッド周方向あるいは幅方向にラグが部分的に重複する、ラグパターンを与えることが採用されているが、振動乗り心地性に対する効果は十分なものではなかった。
【0006】また、振動乗り心地性、特に横揺れを抑制する観点から、トレッド幅をタイヤの総幅以内に規制したタイヤが提案されているが、振動乗り心地性全般にわたる改善は未だ十分に満足するレベルになく、更なる改善が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、農業機械用タイヤにおける高いラグに起因した走行時の振動、特に良路走行時の横揺れ振動を抑制した、振動乗り心地性に優れる農業機械用タイヤについて提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) タイヤのトレッドに、その周方向に間隔を置いて配置された複数のラグを有する、トレッド幅がタイヤの総幅以内である農業機械用タイヤであって、タイヤの幅方向断面において、タイヤの外径に比しトレッド端の径をトレッド幅の12〜20%は小さくして成る農業機械用タイヤ。
【0009】(2) タイヤの幅方向断面における、各ラグの表面輪郭形状は、トレッド中央域での曲率半径に比し、その外側の側部域での曲率半径が小さい上記(1) に記載の農業機械用タイヤ。
【0010】(3) トレッド中央域と、その外側の側部域との境界付近に、該トレッド中央域との径差がトレッド幅の1〜5%となる段差を設けた上記(1) に記載の農業機械用タイヤ。
【0011】(4) トレッド中央域はタイヤの赤道を中心とするトレッド幅の40〜60%の領域である上記(2) または(3) に記載の農業機械用タイヤ。
【0012】(5) トレッド中央域での曲率半径がタイヤの外径と同等またはそれ以上である上記(2) 、(3) または(4) に記載の農業機械用タイヤ。
【0013】
【発明の実施の形態】図1に、この発明に従う農業機械用タイヤの幅方向断面を示す。この農業機械用タイヤは、そのトレッド1のタイヤ赤道面Oを境とする、トレッド半部において、それぞれトレッドの周方向に間隔を置いて配置した複数のラグ2を有する。このラグ2のトレッド幅方向外側への延在幅は、タイヤの総幅以内であり、従って、トレッド幅TWはタイヤの総幅SWと同等またはそれ以下の範囲に規制される。
【0014】また、ラグ2は、タイヤの幅方向断面において、タイヤの外径Hに比しトレッド端Eの径Ehがトレッド幅TWの12〜20%は小さいこと、換言すると、タイヤの外径Hとトレッド端Eの径Ehとの間に上記差があることによって生じる、トレッド中央域TCに対するトレッド端Eの落ち高δがTWの6〜10%であることが肝要である。
【0015】ここで、トレッド端Eは、トレッド表面部とタイヤサイド部から連なるバッドレス部との境界、すなわちラグ2の表面部2aとラグ2の側端面2bとの境界である。ちなみに、上記のトレッド幅TWは、両トレッドE間の距離となる。
【0016】さて、農業機械用タイヤでは、一般にトレッド幅を大きくすると、トラクション性は向上する反面、良路での振動乗り心地性は劣化する傾向にある。これは、トレッド幅が大きいと、走行の際にトレッド面の左右に振り分けて配置したラグに加わる、荷重中心の作用点が、左右のラグ間で交互にトレッド幅方向に大きくずれる結果、走行振動、主に横揺れが大きくなるためと考えられる。従って、トレッド幅を狭くすることが、振動乗り心地性の観点からは好ましい。しかし、あまり狭くすると、農業機械用タイヤの基本性能である優れたトラクション性を阻害することになるため、両者の兼ね合いが重要になる。また、トレッド幅をタイヤの総幅より大きくすると、水田で使用した際に付着した泥を該水田外に持ち来す問題や、畑地耕運作業中の土の持ち上げ問題などを招くことになる。そこで、ここでは、トレッド幅TWをタイヤの総幅SWと同等またはそれ以下の範囲に規制することとした。
【0017】次に、振動乗り心地性の更なる向上を所期して、上記のトレッド端Eの落ち高δを規制する必要がある。すなわち、各ラグ2におけるクラウン形状を、落ち高δがトレッド幅TWの6%以上であれば、ラグ2が接地する際の接地端、つまりトレッド端E付近の面圧が小さくなって、ラグ2の接地幅が実質的に減少するため、各ラグが接地する際の荷重中心はよりトレッド幅中心側に移行することになる。すると、上記した荷重中心の作用点が、左右のラグ間で交互にトレッド幅方向に大きくずれる現象は抑制されるため、横揺れも効果的に抑制される。なお、落ち高δをTWの6%以上にした場合に、トラクション性に与える悪影響は無視できる範囲である。
【0018】一方、落ち高δがTWの10%をこえると、タイヤのトラクション力に関与するラグの表面積が小さくなり、トラクション力が著しく減少してしまい、水田や畑地の耕耘作業に支障を来すことになる。
【0019】ここで、落ち高δをTWの6〜10%とするには、タイヤの幅方向断面における、各ラグ2の表面輪郭を、トレッド中央域TCでの曲率半径R1に比し、その外側の側部域TSでの曲率半径R2が小さくなる、形状とすることが、有利である。すなわち、曲率半径R1より小さい曲率半径R2でトレッド側部域TSを形成することによって、トレッド中央域TCに対するトレッド間Eの落ち高δをTWの6%以上とする。
【0020】なお、トレッド中央域TCとしては、タイヤの赤道Oを中心とするトレッド幅TWの40〜60%の領域とし、残る両側域をトレッド側域TSとすることが好ましい。なぜなら、トレッド幅TWの50%付近の領域の踏面圧がショルダー部側の領域に比較して低くならないように、トレッド幅TWの50%付近の領域、つまりトレッド幅TWの40〜60%の領域に、曲率半径が異なる領域の境界を対応させて、トレッド幅TWの50%付近の領域とショルダー部側の領域との面圧をバランスさせるためである。この面圧バランスが崩れると、偏摩耗をまねくことになる。
【0021】また、トレッド中央域TCでの曲率半径R1はタイヤの外径Hと同等またはそれ以上とすることが有利である。すなわち、大きな曲率半径R1を設定することによって、トレッド中央域の踏面圧分布を均一化することができる。
【0022】一方、トレッド側域TSでの曲率半径R2は、上記曲率半径R1より小さくすることが、トレッド側域の高い踏面圧を低下させ、偏摩耗を抑制する上で有利である。
【0023】さらに、落ち高δをTWの6〜10%とする別の手法について、以下に述べる。すなわち、図2に示すように、トレッド中央域TCと、その外側の側部域TSとの境界付近に、該トレッド中央域との間に径差のある段差3を設けることによって、トレッド中央域TCに対するトレッド間Eの落ち高δをTWの6%以上とする。
【0024】その際、トレッド中央域TCとの径差xをトレッド幅TWの1〜5%とすることが好ましい。なぜなら、1%未満であると、段差が低くなり過ぎて、上記した段差による効果が十分に発揮し難くなる。一方、5%をこえると、ラグの面積が大きく減少し、トラクション性能を大幅に低下させることになる。
【0025】ここで、段差3を設ける位置は、トレッド中央域TCと側部域TSとの境界付近、より具体的には、この境界を中心とする両側にそれぞれトレッド幅TWの10%の幅内に設けることが好ましい。
【0026】なお、上記の段差3を設ける場合においても、上記したトレッド中央域TCをトレッド幅TWの40〜60%にすること、そして中央域TCおよび側部域TSでの曲率半径R1およびR2を上記の範囲とすることが推奨される。
【0027】
【実施例】図1および図2に示したところに従って、表1に示す種々の仕様の下に、サイズがAGS 13.6−26 4PR T13Hの農業機械用タイヤをそれぞれ試作した。なお、その他の構造は、当該サイズの農業機械用タイヤの一般に従って作製した。
【0028】
【表1】

【0029】かくして得られた各タイヤを標準リムに組み込み、最大負荷能力に対応する内圧に調整した後、41馬力の2輪駆動トラクターの後輪に装着し、コンクリート路を速度16km/hで直進走行した際の、振動乗り心地性について、計器計測および運転者のフィーリング評価を行った。その結果を表2に示す。
【0030】なお、振動乗り心地性に関する計器計測は、運転席直下の床に取り付けた加速度計にて、車両の左右方向の加速度を計測した。そして、この計測結果を、従来タイヤでの振動レベルを100 としたときの指数で表示した。この指数が小さいほど、振動乗り心地性に優れることを意味する。
【0031】
【表2】

【0032】
【発明の効果】この発明によれば、湿田、軟弱地や泥濘地などでの走行時に必要なトラクションを低下することなしに、良路での走行性、とりわけ振動乗り心地性を改善することができる。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目10番1号
【出願日】 平成13年11月12日(2001.11.12)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作 (外1名)
【公開番号】 特開2003−146019(P2003−146019A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−345745(P2001−345745)