| 【発明の名称】 |
空気入りタイヤ |
| 【発明者】 |
【氏名】松本 忠雄 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号 住友ゴム工業株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】操縦安定性を損ねることなくウエット性能を向上する。
【解決手段】トレッド接地巾TWの45%の領域をなすトレッド面2の中央領域Crに、タイヤ周方向に連続してかつ溝中心がタイヤ赤道Cから離れてのびる少なくとも1本の縦溝3aを有する。中央領域Crにおいて最もタイヤ軸方向外側の縦溝3aのタイヤ軸方向外側の溝壁面は、その外側部分に、トレッド面2に向かって溝巾を拡大させる向きに傾く面取り状の斜壁部8を含む。縦溝3aのタイヤ軸方向外側の陸部に、前記溝縁3eからトレッド接地巾TWの1〜5%の小距離δを外側に隔てる位置に内方端部11iを有しかつタイヤ周方向に対して5〜30゜の角度で傾く急傾斜溝を設ける。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】タイヤ赤道を中心としてトレッド接地巾の45%の領域をなすトレッド面の中央領域に、タイヤ周方向に連続してかつ溝中心がタイヤ赤道から離れてのびる少なくとも1本の縦溝を具え、前記中央領域において最もタイヤ軸方向外側の前記縦溝のタイヤ軸方向外側の溝壁面は、溝縁からタイヤ半径方向内方に小距離を隔てた高さまでの外側部分に、前記トレッド面に向かって溝巾を拡大させる向きに傾く面取り状の斜壁部を含むとともに、前記縦溝のタイヤ軸方向外側の陸部に、前記縦溝の前記溝縁からトレッド接地巾の1〜5%の小距離δをタイヤ軸方向外側に隔てる位置に内方端部を有しかつタイヤ周方向に対して5〜30゜の角度で傾いてタイヤ軸方向外側にのびる急傾斜溝をタイヤ周方向に隔設したことを特徴とする空気入りタイヤ。 【請求項2】前記中央領域は、タイヤ赤道の両側に配された一対の縦溝を具えることにより、タイヤ赤道上に中央リブを具えることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。 【請求項3】前記トレッド面は、その中央領域の各外側をなすショルダー領域に、それぞれタイヤ周方向に連続してのびる外の縦溝が形成されるとともに、前記急傾斜溝は、この外の縦溝に連通することなく終端する外方端部を有し、しかもタイヤ周方向に前記内方端部が隣り合う前記急傾斜溝は、各々、タイヤ周方向に延在することによりタイヤ軸方向に互いに重なる重複部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。 【請求項4】前記急傾斜溝のタイヤ周方向の略中間部と前記外の縦溝との間を、前記急傾斜溝と同向きかつタイヤ周方向に対する角度が前記急傾斜溝よりも大きい緩傾斜溝により接続したことを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】前記斜壁部は、前記縦溝の溝縁を通るトレッド面の法線に対して50〜80゜の角度で傾くことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、偏摩耗や乾燥路面での操縦安定性を損ねることなく耐ハイドロプレニング性能を向上しうる空気入りタイヤに関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】高速でウエット路面を走行すると、タイヤが水膜上に乗り上げ操舵不能に陥るいわゆるハイドロプレーニング現象が発生することが知られている。種々の実験の結果、このハイドロプレーニング現象の発生速度をより高速域へと移行させること、即ち耐ハイドロプレニング性能を向上するためには、トレッド面に凹設される縦溝の溝容積を増大することや、この縦溝に連通する傾斜溝などを多数配置することが効果的であることが判明している。 【0003】しかしながら、トレッド面に縦溝、傾斜溝を配する場合、その用い方によっては偏摩耗が発生したり、またパターン剛性が低下するため乾燥路面での操縦安定性を損ねる等の問題が生じうる。本発明は、このような実状に鑑み案出なされたもので、トレッド面の中央領域に設けた縦溝の溝壁面の形状、及び傾斜溝の傾き角度や縦溝との相対関係を規制することを基本として、耐偏摩耗性能や乾燥路面での操縦安定性を損ねることなく耐ハイドロプレニング性能を向上しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1記載の発明は、タイヤ赤道を中心としてトレッド接地巾の45%の領域をなすトレッド面の中央領域に、タイヤ周方向に連続してかつ溝中心がタイヤ赤道から離れてのびる少なくとも1本の縦溝を具え、前記中央領域において最もタイヤ軸方向外側の前記縦溝のタイヤ軸方向外側の溝壁面は、溝縁からタイヤ半径方向内方に小距離を隔てた高さまでの外側部分に、前記トレッド面に向かって溝巾を拡大させる向きに傾く面取り状の斜壁部を含むとともに、前記縦溝のタイヤ軸方向外側の陸部に、前記縦溝の前記溝縁からトレッド接地巾の1〜5%の小距離δをタイヤ軸方向外側に隔てる位置に内方端部を有しかつタイヤ周方向に対して5〜30゜の角度で傾いてタイヤ軸方向外側にのびる急傾斜溝をタイヤ周方向に隔設したことを特徴としている。 【0005】本明細書において、「トレッド接地巾」はタイヤを正規リムにリム組しかつ正規内圧を充填するととともに正規荷重を付加して平面に接地させたときのトレッド接地端間のタイヤ軸方向の距離とする。また前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"とする。また、前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRELOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とするが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。さらに「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLDINFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"とするが、タイヤが乗用車用である場合には、上記荷重の0.8倍の荷重とする。なお以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等は、タイヤを正規リムにリム組しかつ正規内圧を充填した無負荷の状態で特定されるものとする。 【0006】また請求項2記載の発明は、前記中央領域は、タイヤ赤道の両側に配された一対の縦溝を具えることにより、タイヤ赤道上に中央リブを具えることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤである。 【0007】また請求項3記載の発明は、前記トレッド面は、その中央領域の各外側をなすショルダ領域に、それぞれタイヤ周方向に連続してのびる外の縦溝が形成されるとともに、前記急傾斜溝は、この外の縦溝に連通することなく終端する外方端部を有し、しかもタイヤ周方向に前記内方端部が隣り合う前記急傾斜溝は、各々、タイヤ周方向に延在することによりタイヤ軸方向に互いに重なる重複部を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤである。 【0008】また請求項4記載の発明は、前記急傾斜溝のタイヤ周方向の略中間部と前記外の縦溝との間を、前記急傾斜溝と同向きかつタイヤ周方向に対する角度が前記急傾斜溝よりも大きい緩傾斜溝により接続したことを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤである。 【0009】また請求項5記載の発明は、前記斜壁部は、前記縦溝の溝縁を通るトレッド面の法線に対して50〜80゜の角度で傾くことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気入りタイヤである。 【0010】 【発明の実施の形態】以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施形態を示すトレッドパターンの展開図、図2(A)はそのA−A線断面図、図2(B)はそのB−B線断面図、図3は図2(A)の斜視図、図4は図2(B)の斜視図をそれぞれ示す。図において、本実施形態の空気入りタイヤは、トレッド面2に、タイヤ赤道Cの両側に実質的に左右対称で配された一対の内の縦溝3a、3aと、その外側に実質的に左右対称に配された一対の外の縦溝3b、3bとが設けられており、例えば乗用車用ラジアルタイヤとして好適に用いられる。 【0011】前記各縦溝3(総称するとき、符号3を用いる)は、本実施形態では、いずれもタイヤ周方向に直線状でかつ連続してのびるものが示される。縦溝3は、トレッド面の排水性を向上するために、例えば図2に示す如く、トレッド面2と溝壁面6との交点である溝縁3e、3e間の溝巾GWがトレッド接地巾TWの2〜7%程度、より好適には2〜5%程度に設定されるのが望ましい。また縦溝3の溝深さGDについては、例えば6.5〜10.0mm、より好ましくは7.0〜9.0mmとするのが望ましい。 【0012】前記内の縦溝3aは、その溝中心がタイヤ赤道Cから離れて設けられるが、その配設位置(溝中心線がある位置)は、タイヤ赤道Cを中心としてトレッド接地巾TWの45%の領域をなすトレッド面の中央領域Crに設けられる。このような中央領域Crは、走行中の接地圧が高くしかも接地長さも大となるため、かかる領域に縦溝3aを設けることによって、路面の水膜を効果的に除去、排出することができる。なおタイヤ赤道Cから離して縦溝3を設けた場合、乾燥路などでパターン剛性が不足するのを効果的に防止しうる。 【0013】また中央領域Crは、本例のようにタイヤ赤道Cの両側に一対の内の縦溝3a、3aを設けてタイヤ赤道C上に中央リブL1を具えるのが好適である。中央リブL1の巾は、好適にはトレッド接地巾TWの5〜10%、より好ましくは7〜10%である。なお中央領域Crに設ける縦溝3の本数は1本以上であれば特に限定はされないが、好ましくは本例のように複数本が望ましい。 【0014】前記外の縦溝3bは、中央領域Crの各外側の領域をなすショルダ−領域Shにその溝中心線が位置している。このため、ショルダ−領域Shにおいてもトレッド面2の水膜を除去して排水効果を高めることができる。また、本例のトレッド面2には、内の縦溝3aと外の縦溝3bとの間に中の陸部L2が形成され、さらに外の縦溝3bと接地端eとの間には外の陸部L3がそれぞれ形成される。 【0015】前記中央領域Crにおいて、最もタイヤ軸方向外側に配される縦溝、即ち本例では各内の縦溝3a、3aは、図2(A)に示すように、タイヤ軸方向の外側の溝壁面6oが、溝縁3eからタイヤ半径方向内方に小距離hを隔てた高さまでの外側部分4に、トレッド面2に向かって溝巾を拡大させる向きに傾く面取り状の斜壁部8を含んで構成される。この外側部分4は、例えば全てが斜壁部8により構成されても良いが、本例では斜壁部8と、この斜壁部8の外側縁8oからタイヤ半径方向にのび溝縁3eに至る小高さの縦壁部10とを含むものが例示される。 【0016】前記斜壁部8は、内の縦溝3aのトレッド面2付近の溝巾を局部的に拡大することによって、溝容積の拡大ないし路面に滞留した水を効果的に縦溝3内へ流入させることができ、排水性をより向上するのに役立つ。一方、縦壁部10は、溝縁3eをより明瞭な鋭いエッジとし、このエッジを利用して路面の水膜を切断しうるため、縦溝3内への前記水の取り込みをさらに助長し斜壁部8の効果を高める。 【0017】外側部分の高さhは、特に限定はされないが、例えば内の縦溝3aの深さGDの10〜60%、より好ましくは20〜50%とするのが望ましい。前記高さhが内の縦溝3aの深さGDの10%未満であると、斜壁部8による縦溝3の溝容積の拡大効果が低下する傾向があり、逆に60%を超えると、接地面積が減少したり溝縁3e付近の陸部剛性を低下させ偏摩耗などが生じやすくなるため好ましくない。 【0018】また斜壁部8は、その溝壁面6oの溝縁3eを通るトレッド面の法線Nに対する傾き角度θoを50〜80゜、さらに好ましくは60〜75゜程度とすることが好ましい。前記角度θoが50゜未満であると、溝巾を拡大させる効果が小さく、逆に80゜を超えると、十分な斜壁部8の高さを確保するのが困難となり、同様に溝容積の拡大化には寄与し得ない傾向がある。また縦壁部10の高さFは、好ましくは0.5〜1.5mm、さらに好ましくは0.5〜1.0mmの小高さとするのが望ましい。なお深さHを有する溝壁面6の内側部分5は、溝底との交わり部を除き前記法線Nに対して5〜15゜程度で傾く通常の主壁部7が形成される。 【0019】また、図3及びそのC−C線断面図である図5に示すように、本例では溝壁面6oの前記斜壁部8には、小巾かつ小深さの微細溝9…が本例ではタイヤ軸方向にほぼ平行にのびかつタイヤ周方向に隔設されているものを示す。このような微細溝9は、斜壁部8の濡れ性を高め該斜壁部8への水の付着性を向上しうることによって、内の縦溝3a内での排水性をより良く改善する。とりわけ新品時の溝壁面などには離型剤や油脂類が多く付着してるため水をはじきやすいが、斜壁部8に微細溝9を設けることにより、濡れ性を高めてウエット性能を向上することができる。また斜壁部8に微細溝9を設けると、斜壁部8と路面との間の水を溝内部へと効果的に押し出すことができ、その押し出された水によって図6に示すように内の縦溝3aの内部で渦状の水流が発生する。このような流れは、溝内部を通過する流水の排水効率を高める効果を有する。 【0020】上述のような作用を実現するために、図5に示すように、微細溝9の溝巾Wは、好ましくは0.3〜1.2mm、より好ましくは0.6〜1.0mmとするのが望ましい。また微細溝9の溝深さdは、好ましくは0.3〜1.5mm、より好ましくは0.3〜0.6mmとするのが望ましい。さらに微細溝9のタイヤ周方向のピッチP(図5の如く、微細溝9の溝中心線間の距離)は、好ましくは1.4〜4.0mm、より好ましくは2.0〜3.0mmとするのが望ましい。なお微細溝9のピッチPは、溝巾W、溝深さdと同様に、一定でも良いが、前記範囲内で違えることもできる。 【0021】また微細溝9の断面形状は、特に限定はされず、図5に示したような略半円状をなすものの他、角溝、三角溝(いずれも図示省略)など種々のものが採用できる。より好ましくは、微細溝9の溝容積を効率良く確保し得るとともに毛細管現象によって水の吸い上げ効果が期待できる前記略半円状が望ましい。このような微細溝9は、縦溝3の溝縁付近の剛性を低下させることがないため、乾燥路面における操縦安定性の悪化を防止しうる。 【0022】なお内の縦溝3の内側の溝壁面6iは、特に限定されず種々の態様で実施することができる。本例では外側部分4が斜壁部8だけからなる態様を示す。また内側の溝壁面6iの斜壁部8の角度θiは、外側の斜壁部8の角度θoよりも小に設定されている。このような構成により、中央リブL1の剛性を確保し乾燥路面での操縦安定性を維持しつつ、内の縦溝3a内への水の流入量に差を設け、これによって内の縦溝3a内でさらに好適に前記渦の発生が期待できる。そして、さらに好ましくは角度差|θo−θi|を例えば10〜30゜、より好ましくは20〜30゜程度とするのが望ましい。 【0023】また図2(B)、図4に示すように、外の縦溝3bのタイヤ軸方向外側の溝壁面6oは斜壁部8を有しているが、タイヤ軸方向内側の溝壁面6iには斜壁部8を設けることなく形成している。ただし、このような態様に限定されず、外の縦溝3bについても内の縦溝3aと同様の構成を採用することも勿論可能である。また縦壁部10を形成することもできる。 【0024】また本発明の空気入りタイヤは、図1、図7に示す如く、トレッド面2に、前記内の縦溝3aのタイヤ軸方向外側の陸部である中の陸部L2に急傾斜溝11がタイヤ周方向に隔設されている。急傾斜溝11は、内の縦溝3aのタイヤ軸方向外側の溝縁3eから小距離δをタイヤ軸方向外側に隔てる位置に内方端部11iを有しかつタイヤ周方向に対して5〜30゜の角度βで傾いてタイヤ軸方向外側にのびている。なお急傾斜溝11が滑らかに湾曲するとき、前記角度βは平均の角度を採用する。また急傾斜溝11の内方端部11iと、内の縦溝3aのタイヤ軸方向外側の溝縁3eとの間の前記小距離δは、トレッド接地巾TWの1〜5%とする。 【0025】中央領域Crの排水性を向上するためには、このような急傾斜溝11の内方端部11iを前記内の縦溝3aに連通させることないしその近傍に位置させることが望ましいものである、しかしながら、単にこのような方法を採用した場合、中央領域Crのパターン剛性、とりわけ、急傾斜溝11と内の縦溝3aとの間に形成される巾の狭い陸部の剛性が低下し、操縦安定性や偏摩耗において不利となる。そこで本発明では、図7のD−D線拡大断面である図8に示すように、前述のように内の縦溝3aのタイヤ軸方向外側の溝壁面6oに前記斜壁部8を設け、小距離δをより小さく設定しても内の縦溝3aと急傾斜溝11とで挟まれる陸部15の内方部分の厚さを大きく確保できるため剛性を損ねることがない。これにより、乾燥路面での操縦安定性を損ねることなく、急傾斜溝11の内方端部11iを内の縦溝3aにより近づけて排水性能を向上しうる。 【0026】このように、タイヤ周方向に対して小さな角度βで傾く急傾斜溝11は、中の陸部L2と路面との間の水膜を切断して排水するのにより効果的なものとなる。なお前記小距離δがトレッド接地巾TWの1%未満であると、斜壁部8を設けていてもこの内方端部11iと外の縦溝3bとの間に形成される陸部の剛性が著しく小となり、この部分を起点としたゴム欠けや偏摩耗性が生じ易く、また乾燥路面での操縦安定性をも悪化させ易い。また急傾斜溝11を内の縦溝3aに連通させると、中央領域Crのパターン剛性が低下し易くなるため好ましくない。他方、小距離δがトレッド接地巾TWの5%を超えると、この内方端部11iと内の縦溝3bの溝縁3eとの間に巾が大の陸部が形成され排水性の悪い部分を形成するため好ましくない。このような観点より、前記小距離δは、より好ましくはトレッド接地巾TWの1〜5%、さらに好ましくは3〜5%とするのが望ましい。 【0027】また急傾斜溝11の前記角度βが5゜未満であると、この急傾斜溝11と内の縦溝3aとで挟まれる陸部の剛性が大幅に低下し、乾燥路面での操縦安定性を低下させる他、偏摩耗を発生させやすくなる。逆に急傾斜溝11の前記角度βが30゜を超えると、中の陸部L2において十分な水膜除去効果が得られず、耐ハイドロプレーニング性能を高め得ない。このような観点より、前記角度βは、より好ましくは5〜20゜、さらに好ましくは5〜15゜とするのが望ましい。 【0028】また本例の急傾斜溝11は、外の縦溝3bに連通することなく終端する外方端部11oを有している。このため、巾の広い外の縦溝3bの溝縁付近の剛性低下を防止でき、さらに乾燥路面での操縦安定性の低下を抑制しうる。しかし、急傾斜溝11の外方端部11oと前記外の縦溝3bのタイヤ軸方向内側の溝縁3eとの間のタイヤ軸方向の距離Kが大きすぎると、中の陸部L2における排水性能の低下が生じやすく、逆に小さすぎても外の縦溝3bの溝縁付近の剛性が低下し、操縦安定性の悪化を招きやすい。このような観点より、前記距離Kは、トレッド接地巾TWの3〜8%、さらに好ましくは4〜6%とするのが望ましい。 【0029】また図1に示すように、タイヤ周方向に前記内方端部11iが隣り合う急傾斜溝11、11は、各々、タイヤ周方向に延在することによりタイヤ軸方向に互いに重なる重複部20を形成している。これにより、中の陸部L2において、バランス良く排水性能を高め得る。この重複部20のタイヤ周方向の長さLは、好適にはトレッド接地巾TWの5〜15%程度とすることが望ましい。なお急傾斜溝11の溝巾は特に限定はされないが、例えばトレッド面2で測定される溝巾gw(図7に示す)が縦溝3の溝巾GWの50〜90%、より好ましくは60〜80%程度とするのが望ましい。また溝深さについては、例えば縦溝3と同程度が望ましい。 【0030】また本例のトレッド面2には、急傾斜溝11のタイヤ周方向の略中間部と前記外の縦溝3bとの間を継ぐとともに、前記急傾斜溝11と同向きかつタイヤ周方向に対する角度ηが前記急傾斜溝11の前記角度βよりも大きい緩傾斜溝13を設けたものを例示している。中の陸部L2のタイヤ軸方向の外側部分の領域(換言すれば外の縦溝3bのタイヤ軸方向内側の溝縁近傍)は、乾燥路面での旋回走行時に大きな横力が生じるためこの部分の剛性は操縦安定性能に大きな影響を与える。一方、耐ハイドロプレーニング性能を高めるためには、中の陸部L2と路面との間の水膜の一部を外の縦溝3bを使って排水させる必要がある。 【0031】そこで本実施形態では、傾斜がきつい急傾斜溝11を外の縦溝3bに連通させることなく、傾斜が緩やかな緩傾斜溝13を別途用いて急傾斜溝11と外の縦溝3bとを連通することにより、中の陸部L2の剛性を大幅に損ねることなく排水性能を高める。緩傾斜溝13は、急傾斜溝11よりもタイヤ周方向に対する角度ηを大とするが、より好ましくは30〜50゜、さらに好ましくは35〜45゜とするのが望ましい。前記角度ηが30゜未満になると、急傾斜溝11との差が小さくなって、急傾斜溝11との間に剛性の低い陸部が形成され、この部分を起点に偏摩耗が生じやすくなる傾向があり、逆に50゜を超えると、急傾斜溝11に対する相対角度が大きくなり排水抵抗が大となる傾向がある。より好適には角度差(η−β)を10〜30°程度とするのが望ましい。 【0032】また緩傾斜溝13は、前記急傾斜溝11のタイヤ周方向長さの略中間部に接続されることが望ましい。例えば緩傾斜溝13を急傾斜溝11の前記外方端部11o付近に接続することも可能ではあるが、この場合、急傾斜溝11から流れる水流は緩傾斜溝13との接続部で大きく流れ角度が変化するため、排水抵抗が増す傾向がある。これに対して、緩傾斜溝13を急傾斜溝11の前記略中間部で接続した場合には、流水の一部を取り込むため、前記排水抵抗の増大を防ぐことができる。なお急傾斜溝11のタイヤ周方向の略中間部に緩傾斜溝13を接続するとは、図7に示す如く、急傾斜溝11のタイヤ周方向長さSの中間位置を基準とし周方向前後に前記長さSの15%の巾を含む領域内に溝中心線の交わり部jを有するものとする。 【0033】また本実施形態では、前記外の陸部L3に、一端が外の縦溝3bに連通しかつ他端が接地端eで開口する横溝14と、この横溝間に設けられかつ接地端eからタイヤ軸方向内側にのびて前記外の縦溝3bに連通することなく終端するラグ状溝15とが設けられる。これにより、外の陸部L3において、接地端e及び外の縦溝3bを利用して効果的な排水性能が得られる。 【0034】以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。例えば縦溝3を屈曲させる態様や、図9に示すように急傾斜溝11、緩傾斜溝13をタイヤ赤道Cを挟んでハ字状に配した方向性パターンとする態様、トレッド面2に適宜サイピングを付設する態様など種々の実施態様を含むことができる。 【0035】 【実施例】タイヤサイズが195/65R15の乗用車用ラジアルタイヤを図1のパターンで試作するとともに、ウエット性能、乾燥路面における操縦安定性、耐偏摩耗性能をテストし評価を行った。また比較のために、図10に示したパターンを有する同サイズのタイヤ(比較例)についても併せて試験を行った。なおランド比をはほぼ同程度とし、内部構造も実質的に同一としている。テストの方法は下記の要領で行った。 【0036】<ウエット性能>半径100mのアスファルト路面に、水深5mm、長さ20mの水たまりを設けたコース上を、速度を段階的に増加させながら供試タイヤを装着した車両(排気量2000cm3 、リム6J、内圧180kPa)を進入させ、横加速度(横G)を計測し、50〜80km/hの速度における前輪の平均横Gを算出した(ラテラル・ハイドロプレーニングテスト)。結果は、従来例を100とする指数で表示した。数値が大きい程良好である。 【0037】<操縦安定性能>上記車両にてタイヤテストコースのドライアスファルト路面上をテスト走行し、ハンドル応答性、剛性感、グリップ等に関する特性をドライバーの官能評価により比較例1を100とする指数で表示している。指数の大きい方が良好である。 【0038】<耐偏摩耗性能>上記車両にて高速道路、市街地、山岳路を合計3000km走行し、トレッド面の摩耗状況を目視により観察した。テスト結果などを表1に示す。 【0039】 【表1】
【0040】テストの結果、実施例のものは、ウエット性能、操縦安定性能、耐偏摩耗性能をバランス良く向上していることが確認できた。 【0041】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の空気入りタイヤは、偏摩耗や乾燥路面での操縦安定性を損ねることなく耐ハイドロプレニング性能を向上しうる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000183233 【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社 【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区脇浜町3丁目6番9号
|
| 【出願日】 |
平成13年11月14日(2001.11.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100082968 【弁理士】 【氏名又は名称】苗村 正 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−146018(P2003−146018A) |
| 【公開日】 |
平成15年5月21日(2003.5.21) |
| 【出願番号】 |
特願2001−349192(P2001−349192) |
|