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【発明の名称】 空気入りラジアルタイヤ
【発明者】 【氏名】兼平 尚樹
【住所又は居所】神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム株式会社平塚製造所内

【要約】 【課題】高速耐久性とロードノイズの大幅な改善を可能にした空気入りラジアルタイヤを提供する。

【解決手段】左右一対のビード部3,3間にカーカス層4を装架し、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側にベルト層6を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層6の外周側に、下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる繊維コードを用いたベルトカバー層7を配置し、その繊維コードのタイヤ中の伸張率を2.5%以下にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側にベルト層を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層の外周側に、下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる繊維コードを用いたベルトカバー層を配置し、該ベルトカバー層を構成する繊維コードのタイヤ中の伸張率が2.5%以下である空気入りラジアルタイヤ。
−(CH2 −CH2 −CO)n−(R−CO)m− ・・・(1)
ここで、1.05≧(n+m)/n≧1.00、Rは炭素数が3以上のアルキレン基である。
【請求項2】 前記ベルトカバー層は少なくとも1本の繊維コードを引き揃えてゴム被覆してなるリボン材をタイヤ周方向に対して実質的に0°で連続的に巻回したものであり、該ベルトカバー層を構成する繊維コードの1.0%伸張時の強度が0.77g/D以下で、2.0%伸張時の弾性率が50〜170g/Dである請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】 前記ベルトカバー層を構成する繊維コードの切断伸度が4%以上である請求項1又は請求項2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィンケトンの繊維コードをベルトカバー層に用いた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、高速耐久性とロードノイズを改善するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】近年の車両の高級化及び高速化に伴って、走行時のロードノイズを低減し、更にはタイヤの高速耐久性を改善することが要求されている。このような要求に答えるために、空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層の外周側に配置するベルトカバー層に所定の強度及び弾性率を有するポリオレフィンケトンの繊維コードを使用することが提案されている。
【0003】しかしながら、ベルトカバー層にポリオレフィンケトンの繊維コードを用いた場合、その繊維コードが持つ弾性率が十分に活かされず、ロードノイズの改善レベルとして満足できるものではなかった。つまり、ポリオレフィンケトン繊維は、ナイロン繊維等に比べて切断伸度が相対的に低く、加硫時のリフト変形に追従し難いのである。そのため、コード破断や食い込みが発生し易く、タイヤ中で繊維コードが持つ弾性率を最大限に発揮することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高速耐久性とロードノイズの大幅な改善を可能にした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側にベルト層を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層の外周側に、下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる繊維コードを用いたベルトカバー層を配置し、該ベルトカバー層を構成する繊維コードのタイヤ中の伸張率が2.5%以下であることを特徴とするものである。
【0006】
−(CH2 −CH2 −CO)n−(R−CO)m− ・・・(1)
ここで、1.05≧(n+m)/n≧1.00、Rは炭素数が3以上のアルキレン基である。
【0007】このようにベルト層の外周側に特定の条件を満足するポリオレフィンケトンの繊維コードを用いたベルトカバー層を配置し、該ベルトカバー層を構成する繊維コードのタイヤ中の伸張率を2.5%以下にしたことにより、ポリオレフィンケトンの繊維コードが持つ弾性率を最大限に発揮することを可能にし、それにより高速耐久性とロードノイズを従来に比べて大幅に改善することができる。
【0008】本発明では、高速耐久性とロードノイズについて十分な改善効果を得るために、ベルトカバー層は少なくとも1本の繊維コードを引き揃えてゴム被覆してなるリボン材をタイヤ周方向に対して実質的に0°で連続的に巻回したものであり、該ベルトカバー層を構成する繊維コードの1.0%伸張時の強度が0.77g/D(0.68cN/dtex)以下で、2.0%伸張時の弾性率が50〜170g/D(44.1〜150.0cN/dtex)であることが好ましい。また、ベルトカバー層を構成する繊維コードの切断伸度は4%以上であることが好ましい。
【0009】本発明では、便宜上、繊維コードの太さとしてデニールを用いているが、このデニールは1D=1.111dtexの関係に基づいてデシテックスに変換することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0011】図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層6,6が埋設されている。これらベルト層6,6はコードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間でコードが互いに交差するように配置されている。
【0012】上記空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層6,6の外周側には、ポリオレフィンケトンの繊維コードをタイヤ周方向に配向してなるベルトカバー層7が配置されている。このベルトカバー層7は少なくとも1本の繊維コードを引き揃えてゴム被覆してなるリボン材をタイヤ周方向に対して実質的に0°で連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルトカバー層7は、ベルト層6,6を全幅にわたって覆うフルカバーと、ベルト層6,6の両端部だけを覆うエッジカバーとから構成すると良い。
【0013】ここで用いるポリオレフィンケトン繊維は、特開平1−124617号公報、特開平2−112413号公報、米国特許第5194210号公報、特開平9−324377号公報、特開2001−115007号公報、特開2001−131825号公報などで開示された溶融紡糸や湿式紡糸によって得ることができるが、下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトン繊維を用いることが必要である。
【0014】
−(CH2 −CH2 −CO)n−(R−CO)m− ・・・(1)
ここで、1.05≧(n+m)/n≧1.00、Rは炭素数が3以上のアルキレン基である。
【0015】(1)式において、mの分率(エチレン以外のアルキレンユニット)が増えると、タイヤの走行成長が大きくなり、耐久性が低下する。これは、紡糸繊維の結晶構造がmユニットの増加により変化し、分子鎖間の二次結合力が低下するためと考えられる。また、該繊維の強度が低くなると撚りコードとした時に更に強度が低下するので、タイヤの破壊強度を確保するためにコードの使用量を多くする必要があり、軽量で経済性の高いタイヤの提供が困難となる。ここでより好ましくはm=0である実質的にエチレンと一酸化炭素だけからなる交互共重合ポリマーを用いるのが良い。このような繊維を製造するには湿式紡糸を用いるのが好適である。
【0016】上記ポリオレフィンケトンの繊維コードのタイヤ中の伸張率は2.5%以下、更に好ましくは1.4%以下である。この伸張率が2.5%を超えると、たとえ切断伸度が大きく、低伸張時の高いポリオレフィンケトンの繊維コードであっても、その繊維コードが持つ弾性率を十分に活かすことができなくなり、ロードノイズの改善効果が得られなくなる。
【0017】繊維コードのタイヤ中の伸張率は、以下のようにして求めることができる。即ち、タイヤトレッドを剥がし、ベルトカバー層が埋め込まれた状態でそのコード長手方向のスパン長さをX(例えば、500mm)とする印を付ける。その後、スパン長さXに相当する部分のコードを丁寧に取り出し、取り出した状態でのコード長さX’を測定する。このとき、伸張率Rは、R=(X−X’)/X’から求められる。
【0018】ポリオレフィンケトンの繊維コードとしては、1.0%伸張時の強度が0.77g/D以下で、2.0%伸張時の弾性率が50〜170g/Dである繊維コードを用いることが好ましい。1.0%伸張時の強度が0.77g/Dを超えると、加硫時にタイヤがブラダーに押されて膨張する際に、ベルトカバー層の繊維コードがベルト層に食い込み易くなり、その結果として、高速耐久性の改善効果が得られなくなる。また、2.0%伸張時の弾性率が50g/D未満であると、走行時にベルト層の振動を十分に抑えることができないためロードノイズの改善効果が得られず、逆に170g/Dを超えると高速耐久性の改善効果が得られなくなる。
【0019】1.0%伸張時の強度及び2.0%伸張時の弾性率は、以下のようにして求めることができる。即ち、200mm/minの引張り速度にてコードを引張り、応力−歪み曲線(S−Sカーブ)を測定する。そして、所定の伸度における強度及び弾性率(傾き)は上記応力−歪み曲線から求められる。
【0020】上記ポリオレフィンケトンの繊維コードは、切断伸度が4%以上、更に好ましくは6%以上であることが望ましい。この切断伸度が4%未満であると、高速耐久性が不十分になる。
【0021】また、ポリオレフィンケトンの繊維コードは、K=T√Dで表される撚り係数Kが1000〜2500の範囲であることが好ましい。ここでKは撚り係数、Tはコードの上撚り数(回/10cm)、Dはコードの総デニール数である。撚り係数Kが1000未満であると耐疲労性の確保が困難となるばかりでなく、破断伸びが低下して耐外傷性が悪化する。撚り係数Kが2500を超えるとモジュラスの低下が大きく高速耐久性の確保が困難となる。
【0022】
【実施例】タイヤサイズ225/60R16 98HY390とし、図1のタイヤ構造を有する空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルトカバー層を構成する繊維コードの種類、タイヤ中の伸長率、1.0伸張時の強度、2.0%伸張時の弾性率及び切断伸度を表1のように種々異ならせた実施例1〜4及び比較例1〜4の空気入りラジアルタイヤをそれぞれ製作した。なお、ポリオレフィンケトン(POK)の繊維コードには、(n+m)/n=1.00のものを使用した。
【0023】これら試験タイヤについて、下記の方法により、高速耐久性及びロードノイズを評価し、その結果を表1に示した。
【0024】高速耐久性:試験内圧210kPa、速度81km/hの条件にて、JATMAで規定された空気圧条件に対応する荷重の88%で120分間ならし走行する。次いで3時間以上放冷した後、空気圧を再調整し、121km/hの速度から試験を開始し、30分毎に速度を8km/hづつ段階的に上昇させ、故障が発生するまで走行する。タイヤの故障が発生するまでの距離を、基準タイヤ(比較例2)の故障距離を100として指数で表した値を高速耐久性とする。この指数値が大きいほど高速耐久性が優れている。
【0025】ロードノイズ:運転席窓側の耳位置にマイクロフォンを設置し、粗い路面のテストコースを速度60km/hで定常走行した際の音圧を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、基準タイヤ(比較例2)を100とする指数で示した。この指数値が大きいほどロードノイズが少ないことを意味する。
【0026】
【表1】

【0027】この表1から明らかなように、実施例1〜3は比較例2に比べて高速耐久性に優れ、しかもロードノイズについて大幅な改善効果が得られた。実施例4は高速耐久性を維持しつつ、ロードノイズについて大幅な改善効果が得られた。一方、比較例1はベルトカバー層にポリオレフィンケトンの繊維コードを用いているものの、高速耐久性及びロードノイズの改善効果が殆どなかった。他の材料を用いた比較例3,4においても実施例1〜4に優る結果は得られなかった。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、左右一対のビード部間にカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側にベルト層を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層の外周側に、特定の条件を満足するポリオレフィンケトンの繊維コードを用いたベルトカバー層を配置したから、ポリオレフィンケトンの繊維コードが持つ弾性率を最大限に発揮することを可能にし、高速耐久性とロードノイズを大幅に改善することができる。
【出願人】 【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
【住所又は居所】東京都港区新橋5丁目36番11号
【出願日】 平成13年11月12日(2001.11.12)
【代理人】 【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一 (外2名)
【公開番号】 特開2003−146014(P2003−146014A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−345854(P2001−345854)