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【発明の名称】 空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】杉山 昌史
【住所又は居所】東京都小平市小川東町3−1−1 株式会社ブリヂストン技術センター内

【要約】 【課題】空気入りタイヤの転がり抵抗を低減するとともに耐摩耗・耐偏摩耗性の低下を極力防止し、燃費を向上させることができる空気入りタイヤを得る。

【解決手段】タイヤ10を標準リムに装着し100kPaの低内圧状態においてビードコア12のタイヤ径方向内側端部からカーカス14のタイヤ径方向外側端部までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をHとし、カーカス14のタイヤ軸方向最大幅をSとした場合、H/Sを0.750以上0.770以下と低く設定し、ビードコア12のタイヤ径方向内側端部からカーカス14のタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh0とした場合、h0/Hを0.570以上0.590以下に設定することにより、転がり抵抗を低減できる。タイヤ10に標準内圧を充填したときのそれをh1とした場合、h1/h0を0.910以上0.930以下に設定することにより耐偏摩耗性を向上できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右1対のビードコアと、前記ビードコアにトロイド状に跨るカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されるベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に形成されるトレッドゴムと、を有する空気入りタイヤであって、前記空気入りタイヤを標準リムに装着し、約100kPaの低内圧を充填した状態において、前記ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ径方向外側端部までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をHとし、前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅をSとし、前記ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh0とした場合、H/Sは、0.750以上0.770以下であり、h0/Hは、0.570以上0.590以下であり、かつ、前記空気入りタイヤに標準内圧を充填したときの前記ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh1とした場合、h1/h0は、0.910以上0.930以下であることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】 前記トレッドゴムの粘弾性は、室温25℃、2%歪の条件において、動的貯蔵弾性率E’が5.3MPa以上9.3MPa以下であり、損失正接tanδが0.09以上0.19以下の物性値を有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気入りタイヤに係り、特にトラック、バス用の重荷重用の空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】一般路を走行するトラック、バスには、重荷重用空気入りタイヤが用いられている。かかる重荷重用空気入りタイヤでは、タイヤの転がり抵抗の低減という課題に対し、トレッドゴムの内部ロス(歪エネルギー損失)を下げることにより解決していた。
【0003】しかしながら、その一方で、摩耗性、偏摩耗性の低下という問題を発生させていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、上記事実を考慮し、空気入りタイヤの断面形状とトレッドゴムの物性とを組み合わせることにより、空気入りタイヤの転がり抵抗を低減するとともに耐摩耗・耐偏摩耗性の低下を極力防止し、ひいては燃費を向上させることができる空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の空気入りタイヤでは、左右1対のビードコアと、前記ビードコアにトロイド状に跨るカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されるベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に形成されるトレッドゴムと、を有する空気入りタイヤであって、前記空気入りタイヤを標準リムに装着し、約100kPaの低内圧を充填した状態において、前記ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ径方向外側端部までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をHとし、前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅をSとし、前記ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh0とした場合、H/Sは、0.750以上0.770以下であり、h0/Hは、0.570以上0.590以下であり、かつ、前記空気入りタイヤに標準内圧を充填したときの前記ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh1とした場合、h1/h0は、0.910以上0.930以下であることを特徴とする。
【0006】次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0007】発明者が行った実験の結果、ビードコアのタイヤ径方向内側端部からカーカスのタイヤ径方向外側端部までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をHとし、カーカスのタイヤ軸方向最大幅をSとした場合、H/Sを下げることにより、転がり抵抗発生の主要因となる歪エネルギー損失が低減することを判明した。
【0008】このため、本発明では、H/Sを0.750以上0.770以下と比較的低く設定し、かつ、ビードコアのタイヤ径方向内側端部からカーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh0とした場合、h0/Hは、0.570以上0.590以下に設定することにより、歪エネルギー損失を低減させることができ、転がり抵抗を低減させることができる。
【0009】一方、発明者が行った実験の結果、ビードコアのタイヤ径方向内側端部から前記カーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh0とし、空気入りタイヤに標準内圧を充填したときのビードコアのタイヤ径方向内側端部からカーカスのタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh1とした場合、h1/h0を0.910以上0.930以下に設定すると、偏摩耗性にとって最適となり、耐偏摩耗性が向上することが判明した。
【0010】そこで、本発明では、h1/h0を0.910以上0.930以下とすることにより、耐偏摩耗性を向上できる。
【0011】また、耐摩耗性に対しては、ベルトの張力を増加させることにより向上させることができる。
【0012】なお、本明細書において、「ビードコアのタイヤ径方向内側端部」とは、ビードコアのタイヤ径方向内側端部のうち、最もタイヤ径方向内側に位置する点をいう。
【0013】「カーカスのタイヤ径方向外側端部」とは、カーカスのタイヤ径方向外側端部のタイヤ径方向厚さの中心点を意味する。
【0014】また、「カーカスのタイヤ軸方向最大幅」とは、カーカスのタイヤ軸方向最大幅部のタイヤ軸方向厚さの中心点間距離を意味する。
【0015】また、標準リムとは、JATMA(日本)、TRA(米国)及びETRTO(欧州)などが発行する規格に定められたリムを意味する。
【0016】また、標準内圧とは、規格に定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重に対する空気圧を意味する。
【0017】請求項2に記載の空気入りタイヤでは、前記トレッドゴムの粘弾性は、室温25℃、2%歪の条件において、動的貯蔵弾性率E’が5.3MPa以上9.3MPa以下であり、損失正接tanδが0.09以上0.19以下の物性値を有することを特徴とする。
【0018】次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0019】トレッドゴムの粘弾性は、室温25℃、2%歪の条件において、動的貯蔵弾性率E’が5.3MPa以上9.3MPa以下であり、損失正接tanδが0.09以上0.19以下の物性値を有するようにしたことにより、歪エネルギー損失を低減できる。
【0020】この結果、タイヤの耐摩耗性及び耐偏磨耗性を維持した状態で、より効果的にタイヤの転がり抵抗を低減できる。
【0021】なお、「動的貯蔵弾性率」とは、複素弾性率の実数部で、単位の正弦波のひずみを加えたときの同位相の応力成分の大きさを意味する。
【0022】ここで、「複素弾性率」とは、動的粘弾性において、最大応力と最大ひずみとの比で、ベクトルとして複素数演算したものを意味する。「動的粘弾性」とは、材料に定常的な正弦波のひずみを与えたときの粘性と弾性との組合せの挙動をいう。これは、ひずみに対する応力、又は応力に対するひずみを測定して求められる。
【0023】一方、「損失正接」とは、損失角δの正接を意味する。「損失角」とは、ひずみと応力との間の位相角を意味する。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。
【0025】図1に示すように、空気入りタイヤ10は、1対のビードコア12を備えている。このビードコア12は、六角形断面に形成されている。
【0026】この左右のビードコア12間には、カーカス14がトロイド状に跨っている。
【0027】また、カーカス14のタイヤ径方向外側には、ベルト16が配置されている。
【0028】また、ベルト16のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム18が配置されている。
【0029】このトレッドゴム18の粘弾性は、室温25℃、2%歪の条件において、動的貯蔵弾性率E’が5.3MPa以上9.3MPa以下であり、損失正接tanδが0.09以上0.19以下となる物性値を有している。
【0030】ここで、本発明の要部である空気入りタイヤ10の断面形状について説明する。
【0031】図2に示すように、空気入りタイヤ10を標準リムに装着し、約100kPaの低内圧を充填した状態において、ビードコア12のタイヤ径方向内側端部からカーカス14のタイヤ径方向外側端部までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をHとし、カーカス14のタイヤ軸方向最大幅をSとし、ビードコア12のタイヤ径方向内側端部からカーカス12のタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh0とした場合、H/Sは、0.750以上0.770以下に設定されており、h0/Hは、0.570以上0.590以下に設定されている。
【0032】また、空気入りタイヤ10に標準内圧を充填したときのビードコア12のタイヤ径方向内側端部からカーカス14のタイヤ軸方向最大幅までのタイヤ径方向に沿って測定した距離をh1とした場合、h1/h0は、0.910以上0.930以下に設定されている。
【0033】次に、本実施形態に係る空気入りタイヤ10の作用及び効果について説明する。
【0034】図3に示すように、発明者が行った実験で、転がり抵抗とH/Sとの関係は曲線Aに示す関係となる。この関係から、H/Sを下げることにより、ベルト16の張力を増加させ、トレッド部の変形を小さくし、上記した物性値の低内部ロスでかつ高弾性のトレッドゴム18を使用することにより、転がり抵抗発生の主要因となる空気入りタイヤ10の歪エネルギー損失を低減できることが判明した。
【0035】そこで、H/Sを0.750以上0.770以下(図3中領域B)と比較的低く設定し、かつ、h0/Hを0.570以上0.590以下に設定することにより、歪エネルギー損失を低減させることができ、転がり抵抗を低減させることができる。
【0036】一方、発明者が行った実験の結果、h1/h0を0.910以上0.930以下に設定すると、偏摩耗性にとって最適となり、耐偏摩耗性が向上することが判明した。
【0037】そこで、本発明の空気入りタイヤ10では、h1/h0を0.910以上0.930以下とすることにより、耐偏摩耗性を向上できる。このように、走行成長によるフットプリントの変化率をh1/h0でコントロールすることにより、耐偏摩耗性を向上できる。
【0038】また、低内部ロス(歪エネルギー損失の小さい)のトレッドゴム18を用いた場合でも、ベルト16の張力(強度)を増加させることにより、耐摩耗性を向上させることができる。
【0039】以上のように、本発明の空気入りタイヤ10では、転がり抵抗を低減するとともに、耐摩耗・耐偏摩耗性の低下を極力防止し、ひいては燃費を向上させることができる。
(試験例)次に、本発明の空気入りタイヤを用いて、転がり抵抗、耐摩耗性及び耐偏摩耗性についての試験を行った。
【0040】試験にはタイヤサイズTBR12R22.5 16PRのタイヤを使用し、従来タイヤ、本発明タイヤ■及び本発明タイヤ■の3種類のタイヤについて試験した。
【0041】ここで、従来タイヤの条件を、H/Sを0.790に設定し、h1/h0を0.900に設定し、動的貯蔵弾性率E’を7.3MPaに設定し、損失正接tanδを0.17となるように設定した。
【0042】本発明タイヤ■の条件を、H/Sを0.760に設定し、h1/h0を0.920に設定し、動的貯蔵弾性率E’を7.3MPaに設定し、損失正接tanδを0.17となるように設定した。
【0043】本発明タイヤ■の条件を、H/Sを0.760に設定し、h1/h0を0.920に設定し、動的貯蔵弾性率E’を7.3MPaに設定し、損失正接tanδを0.14となるように設定した。
【0044】本試験の結果は、以下の表1に示すとおりになった。
【0045】本試験の評価として、従来タイヤの評価を基準(100)とし、従来タイヤの評価に対する評価を指数表示として示した。なお、表1中の数値は小ほど良好であることを意味している。
【0046】
【表1】

上記表1に示すとおり、本発明タイヤ■及び本発明タイヤ■では、従来タイヤと比較して、転がり抵抗が向上したことが判明した。
【0047】また、耐摩耗性及び耐偏摩耗性において、本発明タイヤ■及び本発明タイヤ■では、従来タイヤのそれと比較して数値的には少し低下したが、この程度の低下であれば、耐摩耗性及び耐偏摩耗性の機能において特に問題はなく、耐摩耗性及び耐偏摩耗性を維持しているといえる。
【0048】
【発明の効果】本発明の空気入りタイヤによれば、転がり抵抗を低減するとともに耐摩耗・耐偏摩耗性の低下を極力防止し、ひいては燃費を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目10番1号
【出願日】 平成13年11月8日(2001.11.8)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外3名)
【公開番号】 特開2003−146012(P2003−146012A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−343329(P2001−343329)