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【発明の名称】 空気入りラジアルタイヤ
【発明者】 【氏名】兼平 尚樹
【住所又は居所】神奈川県平塚市追分2番1号 横浜ゴム株式会社平塚製造所内

【要約】 【課題】タイヤ重量を低減しつつ、耐久性と乗り心地の改善を可能にした空気入りラジアルタイヤを提供する。

【解決手段】左右一対のビード部3,3間にスチールコードを用いた少なくとも1層のスチールカーカス層4を装架し、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側に複数層のベルト層6a,6bを埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、ベルト層6bに下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる繊維コードを用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右一対のビード部間にスチールコードを用いた少なくとも1層のスチールカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、少なくとも1層のベルト層に下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる繊維コードを用いた空気入りラジアルタイヤ。
−(CH2 −CH2 −CO)n−(R−CO)m− ・・・(1)
ここで、1.05≧(n+m)/n≧1.00、Rは炭素数が3以上のアルキレン基である。
【請求項2】 前記ベルト層の外周側に、前記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる少なくとも1本の繊維コードを引き揃えてゴム被覆したリボン材をタイヤ周方向に対して実質的に0°で連続的に巻回してなるベルトカバー層を配置した請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィンケトンの繊維コードをベルト層に用いた空気入りラジアルタイヤに関し、更に詳しくは、スチールコードをカーカス層に用いた場合の不都合を解消するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、超高張力のスチールコードをカーカス層に用いた空気入りラジアルタイヤが上市されている。このような空気入りラジアルタイヤは、その性能面において特に転がり抵抗が小さいという利点がある。しかしながら、上記タイヤはカーカス層を構成するスチールコードに起因して重量増加を伴うばかりでなく、剛性の増加が大きくなるため乗り心地の悪化が懸念される。
【0003】このような不都合を解消するために、トレッド部に埋設するベルト層にスチールコードの替わりにアラミド繊維のような有機繊維コードを使用することが考えられる。しかるに、空気入りラジアルタイヤにおいて、トレッド部は走行時の変形が大きいため、アラミド繊維ではゴムに対する接着性が不十分であり、実用上好ましいものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、タイヤ重量を低減しつつ、耐久性と乗り心地の改善を可能にした空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビード部間にスチールコードを用いた少なくとも1層のスチールカーカス層を装架し、トレッド部における前記カーカス層の外周側に複数層のベルト層を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、少なくとも1層のベルト層に下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる繊維コードを用いたことを特徴とするものである。
【0006】
−(CH2 −CH2 −CO)n−(R−CO)m− ・・・(1)
ここで、1.05≧(n+m)/n≧1.00、Rは炭素数が3以上のアルキレン基である。
【0007】このようにスチールコードからなるカーカス層を備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、特定の条件を満足するポリオレフィンケトンの繊維コードからなるベルト層を用することにより、タイヤ重量の低減しつつ、耐久性と乗り心地を改善することができる。
【0008】本発明では、耐久性と乗り心地について十分な改善効果を得るために、ベルト層の外周側に、前記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトンのフィラメントからなる少なくとも1本の繊維コードを引き揃えてゴム被覆したリボン材をタイヤ周方向に対して実質的に0°で連続的に巻回してなるベルトカバー層を配置することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0010】図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には少なくとも1層のカーカス層4が装架され、そのカーカス層4の端部がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されている。このカーカス層4は複数本のスチールコードをタイヤ径方向に延長するように引き揃えたものである。カーカス層4に用いるスチールコードは、1×Nの撚り構造を有するものであることが好ましい。上記スチールコードは素線径が0.10〜0.25mmで、炭素含有量が0.9〜1.1重量%であると良い。
【0011】トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には2層のベルト層6a,6bが埋設されている。タイヤ内側に位置するベルト層6aは複数本のスチールコードを引き揃えたものであり、タイヤ外側に位置するベルト層6bは複数本のポリオレフィンケトンの繊維コードを引き揃えたものである。これらベルト層6a,6bはコードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間でコードが互いに交差するように配置されている。
【0012】但し、本発明では少なくとも1層のベルト層をポリオレフィンケトンの繊維コードから構成すれば良く、全てのベルト層にポリオレフィンケトンの繊維コードを用いたり、必要に応じてベルト層の総数を増やすことも可能である。いずれの場合も、従来から使用されているベルト層のスチールコードをゴムに対する接着性が優れているポリオレフィンケトンの繊維コードに置き換えることで、スチールカーカス層を有するタイヤの軽量化と乗り心地の改善が可能になる。
【0013】ベルト層6a,6bの外周側には、ポリオレフィンケトンの繊維コードをタイヤ周方向に配向してなるベルトカバー層7が配置されている。このベルトカバー層7は少なくとも1本の繊維コードを引き揃えてゴム被覆してなるリボン材をタイヤ周方向に対して実質的に0°で連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルトカバー層7は、ベルト層6a,6bを全幅にわたって覆うフルカバーと、ベルト層6a,6bの両端部だけを覆うエッジカバーとから構成すると良い。
【0014】ここで用いるポリオレフィンケトン繊維は、特開平1−124617号公報、特開平2−112413号公報、米国特許第5194210号公報、特開平9−324377号公報、特開2001−115007号公報、特開2001−131825号公報などで開示された溶融紡糸や湿式紡糸によって得ることができるが、下記(1)式で表される構造を有するポリオレフィンケトン繊維を用いることが必要である。
【0015】
−(CH2 −CH2 −CO)n−(R−CO)m− ・・・(1)
ここで、1.05≧(n+m)/n≧1.00、Rは炭素数が3以上のアルキレン基である。
【0016】(1)式において、mの分率(エチレン以外のアルキレンユニット)が増えると、タイヤの走行成長が大きくなり、耐久性が低下する。これは、紡糸繊維の結晶構造がmユニットの増加により変化し、分子鎖間の二次結合力が低下するためと考えられる。また、該繊維の強度が低くなると撚りコードとした時に更に強度が低下するので、タイヤの破壊強度を確保するためにコードの使用量を多くする必要があり、軽量で経済性の高いタイヤの提供が困難となる。ここでより好ましくはm=0である実質的にエチレンと一酸化炭素だけからなる交互共重合ポリマーを用いるのが良い。このような繊維を製造するには湿式紡糸を用いるのが好適である。
【0017】更に、ポリオレフィンケトンの繊維コードとしては、引張り強度が8.83cN/dtex以上で、1.99cN/dtex時の伸び率が3.5%以下である繊維コードを用いることが好ましい。引張り強度が8.83cN/dtex未満であると繊維コードの打ち込み本数を増加させたり、コードの太さを太くする必要がある。ところが、打ち込み数が多過ぎるとコード間のゴムが実質的に存在しない状態となり、ベルト層(或いは、ベルトカバー層)と周りのゴムと間での接着破壊が生じ易くなり耐久性が低下する。一方、コードが太くなるとベルト層(或いは、ベルトカバー層)が厚くなり軽量性の確保が困難となる。また、1.99cN/dtex時の伸び率が3.5%を超えるとベルト層の剛性確保が難しく操縦安定性に不利を招くことになる。
【0018】また、ポリオレフィンケトンの繊維コードは、K=T√(D/1.111)で表される撚り係数Kが1000〜3500の範囲であることが好ましい。ここでKは撚り係数、Tはコードの上撚り数(回/10cm)、Dはコードの総デシテックス数である。撚り係数Kが1000未満であると耐疲労性の確保が困難となるばかりでなく、破断伸びが低下して耐外傷性が悪化する。撚り係数Kが3500を超えるとモジュラスの低下が大きく操縦安定性の確保が困難となる。
【0019】
【実施例】タイヤサイズ205/55R16 89VA041とし、図1のタイヤ構造を有する空気入りラジアルタイヤにおいて、カーカス層にスチールコードを使用する一方で、ベルト層及びベルトカバー層を構成するコードの種類を表1のように種々異ならせた実施例1〜3及び比較例1〜4の空気入りラジアルタイヤをそれぞれ製作した。なお、ポリオレフィンケトンの繊維コードには、以下のものを使用した。
【0020】POK繊維1:ポリオレフィンケトン (n+m)/n=1.07撚り係数1500、強度9.27cN/dtex、1.99cN/dtex時の伸び率2.9%POK繊維2:ポリオレフィンケトン (n+m)/n=1.00撚り係数3500、強度10.68cN/dtex、1.99cN/dtex時の伸び率3.5%POK繊維3:ポリオレフィンケトン (n+m)/n=1.00撚り係数1500、強度12.71cN/dtex、1.99cN/dtex時の伸び率1.6%これら試験タイヤについて、下記の方法により、乗り心地及び耐水圧強度を評価し、またベルト層間剥離面を観察し、その結果を表1に示した。
【0021】乗り心地:実車乗り心地評価(フィーリング相対評価)を5名のドライバーにより行った。評価結果は、基準タイヤ(比較例4)との相対比較にて、以下の判定基準をもとに5点法で採点し、最高点と最低点を除いた3名の平均点で表した。
【0022】耐水圧強度:試験タイヤの内部に水圧を負荷し、その水圧を増大させてタイヤが破壊したときの圧力を測定した。評価結果は、基準タイヤ(比較例4)を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐水圧強度が大きいことを意味する。
【0023】ベルト層間剥離面観察:試験タイヤを標準リムに装着し、内圧300kPaとして、周上3か所に高さ10cmの突起を設けたドラム上を速度50km/hで3000km走行させた後、タイヤからベルト層を取り出し、これらベルト層に対して層間剥離試験を行い、その剥離面の状態を観察した。評価結果は、剥離面がゴム破壊である場合もしくは突起乗り越し部分と非乗り越し部分との差が認められない場合を「OK」で示し、コード部分が露出している場合もしくは突起乗り越し部分のコード露出が非乗り越し部分に比べて増加している場合を「NG」で示した。
【0024】
【表1】

【0025】この表1から明らかなように、実施例1〜3はスチールベルト層を使用した比較例1に比べて乗り心地に優れ、しかも耐水圧強度やベルト層間剥離面観察については比較例4に比べて良好な結果が得られ、耐久性も優れていた。一方、ベルト層にポリオレフィンケトン以外の有機繊維コードを用いた比較例2,3は、耐水圧強度やベルト層間剥離面観察の結果が不十分であった。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、左右一対のビード部間にスチールコードを用いた少なくとも1層のスチールカーカス層を装架し、トレッド部におけるカーカス層の外周側に複数層のベルト層を埋設した空気入りラジアルタイヤにおいて、少なくとも1層のベルト層に特定の条件を満足するポリオレフィンケトンの繊維コードを用いたから、タイヤ重量を低減しつつ、耐久性と乗り心地を改善することができる。
【出願人】 【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
【住所又は居所】東京都港区新橋5丁目36番11号
【出願日】 平成13年11月12日(2001.11.12)
【代理人】 【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一 (外2名)
【公開番号】 特開2003−146011(P2003−146011A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−345862(P2001−345862)