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【発明の名称】 転がり軸受装置およびその回転輪
【発明者】 【氏名】増田 善紀
【住所又は居所】大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内

【氏名】山本 和俊
【住所又は居所】大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内

【要約】 【課題】自動車に付設される転がり軸受装置において、ハブホイールの案内部における外周面に、案内部とタイヤホイールとの凝着を防止するために、水溶性常乾燥塗料が塗布されるが、コストが高い。

【解決手段】凝着防止部材25を、その端部を係止部26に相当する位置まで案内部14に被覆するようにし、その後、凝着防止部材25全体を熱収縮させて端部を係止部26の係止面28に密着させる。これにより、タイヤホイール18を案内部14から取外す場合、凝着防止部材25が案内部14から外れてしまうのを防止することができ、案内部14の重量軽減用凹部14Aまで塗装作業を行わなければならなかった従来に対し、本来不要な部分を被覆しなくてすむとともに、塗装作業を行う場合に比べて、作業に必要な時間を大幅に短縮することができ、もってコストの低下を図り得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 固定輪と、この固定輪と同心に配置されるとともに、転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される回転輪とを含み、前記回転輪は、ブレーキディスク取付け用の取付けフランジと、この取付けフランジにブレーキディスクを介してタイヤホイ−ルを重ねて取付ける際に、タイヤホイ−ルに形成された挿通穴の周面を案内する案内部とを含み、前記タイヤホイールの挿通穴の周面と前記案内部の外周面との間に、前記タイヤホイールの挿通穴の周面と前記案内部の外周面との凝着を防止するための凝着防止部材が設けられ、前記案内部の外周面に、前記凝着防止部材を係止するための係止部が形成されている、ことを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項2】 請求項1記載の転がり軸受装置であって、前記係止部が、ブレーキディスクとタイヤホイ−ルとの境界位置に対応する案内部の外周面位置に形成されている、ことを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項3】 固定輪と同心に、かつ転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される転がり軸受装置の回転輪であって、タイヤホイール取付け用の取付けフランジと、この取付けフランジにブレーキディスクを介してタイヤホイ−ルを重ねて取付ける際に、タイヤホイ−ルに形成された挿通穴の周面を案内する案内部とを含み、前記案内部の外周面に、前記案内部と前記タイヤホイールの挿通穴の周面との凝着を防止するための凝着防止部材を係止する係止部が形成されている、ことを特徴とする転がり軸受装置の回転輪。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受装置およびその回転輪に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、自動車に付設される転がり軸受装置は、ハブホイールを有する。このハブホイールは、ハブフランジを有するとともに、このハブフランジにブレーキディスクおよびタイヤホイールを重ねて取付ける際に案内する筒状の案内部(パイロット部ともいう)を有する。
【0003】そして、メンテナンスや交換のためには、タイヤホイールを案内部から取外す必要があるが、タイヤホイールと案内部とが凝着してしまうと取外しが困難になる。このため案内部の外周面に、タイヤホイールと案内部との凝着を防止する機能を有する水溶性常乾燥塗料を塗布している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、案内部とタイヤホイールとの凝着を防止するために、案内部の外周面に水溶性常乾燥塗料を塗布するが、水溶性常乾燥塗料はそれ自体コストが高い。加えて塗装作業の都合上、不要な部分まで塗装しなければならなく、いっそうコストが高くなっている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明における転がり軸受装置は、固定輪と、この固定輪と同心に配置されるとともに、転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される回転輪とを含み、前記回転輪は、ブレーキディスク取付け用の取付けフランジと、この取付けフランジにブレーキディスクを介してタイヤホイ−ルを重ねて取付ける際に、タイヤホイ−ルに形成された挿通穴の周面を案内する案内部とを含み、前記タイヤホイールの挿通穴の周面と前記案内部の外周面との間に、前記タイヤホイールの挿通穴の周面と前記案内部の外周面との凝着を防止するための凝着防止部材が設けられ、前記案内部の外周面に、前記凝着防止部材を係止するための係止部が形成されている。
【0006】また、前記係止部は、ブレーキディスクとタイヤホイ−ルとの境界位置に対応する案内部の外周面位置に形成されている。
【0007】また、本発明は、固定輪と同心に、かつ転動体を介して軸心回りに回転自在に支持される転がり軸受装置の回転輪であって、タイヤホイール取付け用の取付けフランジと、この取付けフランジにブレーキディスクを介してタイヤホイ−ルを重ねて取付ける際に、タイヤホイ−ルに形成された挿通穴の周面を案内する案内部とを含み、前記案内部の外周面に、前記案内部と前記タイヤホイールの挿通穴の周面との凝着を防止するための凝着防止部材を係止する係止部が形成されている。
【0008】上記構成において、案内部の外周面に合成樹脂製の凝着防止部材を被覆し、この凝着防止部材を熱収縮させることで、案内部に形成した係止部に凝着防止部材の一部を係止させ、その後、案内部にタイヤホイールを装着する。このように、案内部と前記タイヤホイールの挿通穴の周面との凝着を防止するために合成樹脂製の凝着防止部材を用いることにより、凝着防止のために水溶性常乾燥塗料を用いた場合よりも安価なコストで対応することができる。
【0009】また、案内部に凝着防止部材の一部を係止させる係止部を形成することにより、例えばメンテナンスとしてタイヤホイールを取外しても、凝着防止部材がタイヤホイールとともに外れてしまうことを防止できる。
【0010】前記凝着防止部材として、所定の厚みを有して熱収縮可能な樹脂材が用いられる。前記係止部は、案内部の外周面に凹没するよう形成される。前記回転輪は、転がり軸受装置における外輪部材および内輪部材のうちの一方であり、固定輪は外輪部材および内輪部材のうちの他方である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態に係る転がり軸受装置を、図面に基づいて説明する。図1はブレーキディスクおよびタイヤホイールを取付けた状態の転がり軸受装置の全体構成を示す断面図、図2は凝着防止部材の熱収縮前の装着状態を示す要部拡大断面図、図3は凝着防止部材の熱収縮後の装着状態を示す要部拡大断面図である。
【0012】図1に示すように、この転がり軸受装置1は、車両の車輪支持のために用いられる。この転がり軸受装置1は、車体側に軸心回りに非回転に支持される固定輪としての外輪部材2と、この外輪部材2に径方向で同心に配置される回転輪としての内輪部材3と、外輪部材2と内輪部材3との間に配置される転動体としての二列の玉4,5とを備えている。外輪部材2の外周面に、固定用フランジ6が形成されている。外輪部材2は、固定用フランジ6を介して車体に軸心回りに非回転に支持される。
【0013】内輪部材3は、ハブ軸7と、このハブ軸7の車両インナ側(図1における左側)端部外周面に形成された環状凹部8に嵌着された環状部材9とから構成されている。ハブ軸7は、軸部10と、この軸部10の車両アウタ側(図1における右側)に一体的に形成される取付け部11とから一体的に形成されている。環状凹部8は、軸部10の車両インナ側端部に形成されている。環状部材9の端面に対して軸部10の車両インナ側端部が拡径されてかしめられている。これにより、両列の玉4,5に対して所定の予圧が付与されるとともに、ハブ軸7と環状部材9とが軸心周りに回転一体に取付けられる。なお、各列の玉4,5は、それぞれ保持器4a,5aによって円周方向等配位置に保持されている。
【0014】軸部10の車両アウタ側外周面に、一方列の玉4の内輪軌道面が形成され、環状部材9の外周面に、他方列の玉5の内輪軌道面が形成されている。外輪部材2の内周面の、両内輪軌道面と径方向で対向する位置に、各列の玉4,5の外輪軌道面が形成されている。なお、図中の符号12A,12Bは、外輪部材2と内輪部材3との間の環状空間を両側で密封するシール装置である。
【0015】取付け部11は、その外周面に径方向外向きに拡径された取付けフランジ13(ハブフランジともいう)を有し、取付け部11はまた、取付けフランジ13の車両アウタ側に、円筒状の案内部(パイロット部ともいう)14を有する。この案内部14は、取付けフランジ13に、ブレーキディスク15を介してタイヤホイール18を重ねて取付ける際に、ブレーキディスク15の中心部に形成された挿通穴16、およびタイヤホイール18の中心部に形成された挿通穴17を案内する機能を有する。
【0016】取付けフランジ13の円周方向所定箇所に、ブレーキディスク15およびタイヤホイール18を取付けフランジ13に重ねて取付けるためのハブボルト19が圧入されている。ブレーキディスク15およびタイヤホイール18には、ハブボルト19が挿通するボルト穴20a,20bがそれぞれ形成されている。図の21は、ハブボルトに螺合する取付けナットを示す。
【0017】案内部14の径は、ブレーキディスク15が嵌合する車両インナ側の外周面22と、タイヤホイール18が嵌合する車両アウタ側の外周面23とで異なり、車両インナ側の外周面22は、車両アウタ側の外周面23に比べてわずかに大径に形成されている。車両インナ側の外周面22と車両アウタ側の外周面23とは円錐面24を介して連続されている。
【0018】案内部14の車両アウタ側の外周面23に、案内部14とタイヤホイール18の挿通穴17周壁部との凝着を防止するための凝着防止部材25が設けられている。案内部14の車両アウタ側の外周面23に、凝着防止部材25が係止する係止部26が形成されている。この係止部26は、円錐面24用いて形成されることで、ブレーキディスク15とタイヤホイ−ル18との境界位置に対応する案内部14の外周面位置に形成されている。
【0019】この係止部26の、最も小径の位置となる底部27は、車両アウタ側の外周面23の径より小径に形成されている。係止部26には、底部27から径方向に拡径する係止面28が形成されている。この係止面28は、車両アウタ側の外周面23に連続する。
【0020】凝着防止部材25は、合成樹脂材を熱収縮させることで、係止面28、案内部14の車両アウタ側の外周面23、および案内部14の車両アウタ側の端面29の一部に被覆して固着されている。
【0021】凝着防止部材25の材料として、PVC系樹脂,PO系樹脂,PET系樹脂,ふっ素系樹脂などの合成樹脂が好適に用いられる。このうち、環境性、耐熱性、耐衝撃性、引張強度、耐候性、材料コストを考慮すると、PET系樹脂が最も好適である。このPET系樹脂としは、飽和ポリエステル樹脂を押出し成型し、特殊加工により製造したチューブ状のものが用いられる。その厚みは例えば、25μm〜50μmに形成されている。これを熱収縮させると、従来行っていた塗装厚と同等の30μm〜60μmの厚みとなる。
【0022】上記のような転がり軸受装置1は、外輪部材2とハブ軸7とを両列の玉4,5を介して組込み、環状部材9を環状凹部8に嵌合してハブ軸7の端部を拡径してかしめることで組立てる。その後、チューブ状の凝着防止部材25を案内部14に、その車両アウタ側から装着する。このとき、図2に示すように、凝着防止部材25は、その端部を係止部26に相当する位置まで挿入して装着する。
【0023】この状態に続いて案内部14、すなわち凝着防止部材25を80°Cの湯に潜らせる。あるいは凝着防止部材25に熱風をあてる。そうすると、凝着防止部材25は全体が収縮して、図3に示すように一方の端部が係止部26の係止面28に密着して係合し、他方の端部が案内部14の端面29に密着し、両端部間は案内部14の車両アウタ側の外周面23に密着する。このようにした後、ブレーキディスク15を、その挿通穴16を案内部14に通すようにして案内させ、続いてタイヤホイール18を、その挿通穴17を案内部14に通すようにして案内させ、ブレーキディスク15およびタイヤホイール18を取付けフランジ13に重ねて取付ける。
【0024】このとき、ハブボルトがボルト穴20に挿通するよう位置合わせする。その後、取付けナット21をハブボルトに螺着することで、ブレーキディスク15およびタイヤホイール18を取付けフランジ13に固定する。
【0025】ところでメンテナンス時に、タイヤホイール18を案内部14から取外す場合、まず取付けナット21をハブボルトから取外し、続いてタイヤホイール18を案内部14から取外す。このとき、タイヤホイール18と案内部14との間には、凝着防止部材25が介装されているので、タイヤホイール18と案内部14との凝着は防止されている。
【0026】従って、取付けナット21を取外すことで、タイヤホイール18は容易に案内部14から取外すことができる。そして、凝着防止部材25の端部は、係止部26の係止面28に密着して係合しているため、タイヤホイール18を案内部14から引くようにして取外しても、凝着防止部材25が案内部14から外れてしまうのを防止することができる。このため、仮にタイヤホイール18を交換した場合でも、凝着防止部材25の再使用が可能である。
【0027】また、従来タイヤホイール18と案内部14との凝着防止手段として塗装を行う場合は、塗装作業の都合上案内部14の重量軽減用凹部14Aまでその作業を行わなければならなかった。この重量軽減用凹部14Aの塗装は、本来不要であり、その分コストが高くなっていたのに加え、塗料そのものが高価であった。しかし、本発明の実施形態では、凝着防止部材25を安価な樹脂でチューブ状に形成することで、本来不要な部分を被覆しなくてすむ。また、凝着防止手段として塗装作業を行う場合に比べて作業に必要な時間を大幅に短縮することができる。このため、従来の塗装作業に比べてコストの低下を図り得る。
【0028】上記実施形態では、円錐面24を介して異なった径の案内部14を有する転がり軸受装置1の例を示した。しかし本発明はこれに限定されるものではない。例えば図4および図5の拡大断面図に示すように、案内部14は同一径の外周面を有した転がり軸受装置1の場合にも適用可能である。
【0029】この場合も係止部26は、上記実施形態と同様の軸心方向位置に形成するようにする。凝着防止部材25は、上記実施形態と同様の形状に、かつ同様の材質で形成する。凝着防止部材25をこのように構成して案内部14に装着し、これを熱収縮させることで案内部14に密着させる。そうすると、タイヤホイール18を案内部14から取外した際であっても、凝着防止部材25がタイヤホイール18とともに案内部14から外れてしまうのを防止でき、再利用が可能となる。他の部分の構成は上記実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0030】なお各実施形態では、係止部26は環状凹部8形状に形成したがこれに限定されない。例えば係止部26は円周方に所定間隔置きに配置することも考えられる。この係止部26は、凝着防止部材25を熱収縮させることでその一部が係止するような構成であれば、特にその形状は問わない。
【0031】さらに上記実施形態では、係止部26は、ブレーキディスク15とタイヤホイ−ル18との境界位置に対応する案内部14の外周面位置に形成した。しかし本発明はこれに限定されず、凝着防止部材25を熱収縮させた際に、その一部が係止するのであれば、案内部14の車両アウタ側の外周面23上、任意の位置に形成してもよい。
【0032】上記各実施形態では、凝着防止部材25は、案内部14の車両アウタ側の外周面23、および案内部14の車両アウタ側の端面29の一部を被覆する幅に形成した。しかし場合によっては、凝着防止部材25は、熱収縮させた際に、案内部14の外周面全体を被覆する幅に形成して、これを用いてもよい。この場合、凝着防止部材25は、ブレーキディスク15の挿通穴16の周面と案内部14の外周面との間に介装されることになるので、ブレーキディスク15の挿通穴16の周面と案内部14との凝着もあわせて防止することができる。
【0033】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明によれば、塗装の代わりに凝着防止部材を用いてタイヤホイールと案内部の凝着を防ぐようにしたので、塗装の場合に比べてコストが安価となり、案内部に設けた係止部に凝着防止部材を熱収縮によって係止させることで、タイヤホイールの取外し時にも凝着防止部材が外れてしまうのを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目5番8号
【出願日】 平成14年5月15日(2002.5.15)
【代理人】 【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
【公開番号】 特開2003−326909(P2003−326909A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−139823(P2002−139823)