トップ :: B 処理操作 運輸 :: B60 車両一般




【発明の名称】 アクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造
【発明者】 【氏名】柏井 幹雄
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】一瀬 英美
【住所又は居所】三重県鈴鹿市平田町1907番地 本田技研工業株式会社鈴鹿製作所内

【氏名】高木 久光
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】渡辺 進一
【住所又は居所】埼玉県狭山市新狭山1丁目10番1号 ホンダエンジニアリング株式会社内

【要約】 【課題】アクスルハブに対するタイヤホイールの脱着を容易にしながら、アクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯との芯出し精度を向上させる。

【解決手段】アクスルハブ14のハブ部14bの外周面とタイヤホイール21のハブ穴21aの内周面との間に隙間αを形成し、ハブ部14bの外周面に固定した環状の弾性体28をハブ穴21aの内周面に接触させる。ハブ部14bにハブ穴21aを嵌合させるとき、前記隙間αの作用でコジリの発生を防止して両者をスムーズに嵌合させることができ、またハブ部14bの外周面とハブ穴21aの内周面との間に弾性体28が介在することで前記隙間αが全周に亘って均一に保たれ、両者の軸芯が自動的に一致して走行時における振動の発生が抑制される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクスルハブ(14)のハブ部(14b)とタイヤホイール(21)に形成したハブ穴(21a)との嵌合によりアクスルハブ(14)とタイヤホイール(21)とを同芯に芯出しする、アクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造であって、ハブ部(14b)とハブ穴(21a)との間の隙間(α)に環状の弾性体(28)を介在させたことを特徴とするアクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造。
【請求項2】 弾性体(28)を電気絶縁体で構成し、その弾性体(28)でハブ部(14b)とハブ穴(21a)との間の隙間(α)を埋めたことを特徴とする、請求項1に記載のアクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクスルハブのハブ部とタイヤホイールに形成したハブ穴との嵌合によりアクスルハブとタイヤホイールとを同芯に芯出しする、アクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車のタイヤの取り付けは、そのタイヤの中心に装着したタイヤホイールを、車体側に回転自在に支持したアクスルハブにボルトで固定することにより行われる。その際に、アクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯とのずれはシミー(走行時にタイヤがキングピンまわりに振動してハンドルの回転振動や車体振動を伴う現象)の原因となるため、前記軸芯間のずれを小さくする必要がある。
【0003】アクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯とのずれを防止する構造として、従来は以下の二つのうちの何れかが採用されていた。
■ アクスルハブに取り付けたハブボルト(4〜5カ所)が通過するタイヤホイールのボルト穴と、ハブボルトにねじ締めされるホイールナットとに、各々テーパー締付面を形成し、ボルト穴の締付面とホイールナットの締付面との面接触により軸芯調整機能を持たせる。
■ アクスルハブのハブ部の外周面とタイヤホイールのハブ穴の内周面との嵌合により軸芯調整機能を持たせる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記■の構造では、ハブボルトとホイールナットとがねじ締めされる4〜5カ所の各々が軸芯調整機能を持つため、全てのホイールナットを均等に締め付けていかないと全体として芯出しが上手くできない場合がある。
【0005】また上記■の構造では、アクスルハブに対するタイヤホイールの脱着を容易にするため、ハブ部とハブ穴との間に多少の隙間を形成する必要があり、この隙間によりアクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯との芯出し精度が低下する問題がある。
【0006】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、アクスルハブに対するタイヤホイールの脱着を容易にしながら、アクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯との芯出し精度を向上させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、アクスルハブのハブ部とタイヤホイールに形成したハブ穴との嵌合によりアクスルハブとタイヤホイールとを同芯に芯出しする、アクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造であって、ハブ部とハブ穴との間の隙間に環状の弾性体を介在させたことを特徴とするアクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造が提案される。
【0008】上記構成によれば、アクスルハブのハブ部とタイヤホイールに形成したハブ穴との間の隙間に環状の弾性体を介在させたので、前記隙間によってアクスルハブに対するタイヤホイールの脱着を容易にしながら、弾性体の作用で前記隙間を円周方向に均一化してアクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯との芯出し精度を向上させることができる。アクスルハブに対してタイヤホイールを脱着するとき、弾性体がハブ部の外周面あるいはハブ穴の内周面に対して擦れるが、弾性体が弾性変形することで前記脱着が難しくなることはない。
【0009】また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、弾性体を電気絶縁体で構成し、その弾性体でハブ部とハブ穴との間の隙間を埋めたことを特徴とするアクスルハブとタイヤホイールとの嵌合構造が提案される。
【0010】上記構成によれば、電気絶縁体よりなる弾性体でハブ部とハブ穴との間の隙間を埋めたので、アクスルハブおよびタイヤホイールを異種の金属で構成した場合でも、前記隙間に電解水が浸入するのを弾性体により阻止してアクスルハブおよびタイヤホイール間に迷走電流が流れ難くし、かつ弾性体そのものを介して迷走電流が流れ難くすることで、電食の発生を防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0012】図1〜図4は本発明の第1実施例を示すもので、図1は前輪駆動車両の前輪部分の縦断面図、図2は図1の2部拡大図、図3はアクスルハブおよびブレーキディスクの斜視図、図4は弾性体の斜視図である。
【0013】図1に示すように、アッパーアーム11およびロアアーム12を介してナックル13が車体に上下動可能に支持されており、このナックル13にボールベアリング15を介して支持した金属製(実施例では鉄製)のアクスルハブ14に、駆動輪である前輪Wfが回転自在に支持される。前輪Wfを転舵すべく、ナックル13がタイロッド19を介してステアリングホイールに接続される。アクスルハブ14の中心には車軸16がスプライン嵌合してナット17で固定されており、エンジンの駆動力が車軸16からアクスルハブ14を経て前輪Wfに伝達される。アクスルハブ14の軸部14aの外端には短い円筒状のハブ部14bが同軸かつ一体に形成されるとともに、軸部14aおよびハブ部14b間に円板状のフランジ14cが一体に形成される。
【0014】前輪Wfはゴム製のタイヤ20と金属製(実施例ではアルミニウム製)のタイヤホイール21とからなり、タイヤホイール21の中心に形成した円形のハブ穴21aの周囲を同軸に取り囲むように、複数個(実施例では5個)のボルト穴21b…が形成される。ハブ穴21aを覆うセンターキャップ22は、その裏面に設けた複数本の係止爪22a…をハブ穴21aに設けた係止溝21cに係止することで固定される(図2参照)。アクスルハブ14のバブ部14aには、ブレーキキャリパ18(図3参照)により制動されるブレーキディスク23の中心に形成した円形のハブ穴23aと、タイヤホイール21のハブ穴21aとが嵌合しており、アクスルハブ14のフランジ14cの内面側から挿入した5本のハブボルト24…が、ブレーキディスク23とタイヤホイール21の5個のボルト穴21b…とを貫通して5個のホイールナット25…で締め付けられる。
【0015】図2〜図4から明らかなように、アクスルハブ14のハブ部14bの外径はタイヤホイール21のハブ穴21aの内径よりも若干小さくなっており、従ってアクスルハブ14のハブ部14bの外周面とタイヤホイール21のハブ穴21aの内周面との間に隙間αが形成される。アクスルハブ14のバブ部14bの外周面に環状溝14dが形成されており、この環状溝14dに例えばゴムで形成されたリング形状の弾性体28が装着される。弾性体28の厚さは環状溝14dの深さよりも大きくなっている。
【0016】しかして、アクスルハブ14にタイヤホイール21を装着すべくハブ部14bにハブ穴21aを嵌合させるとき、ハブ部14bの外周面とハブ穴21aの内周面との間に隙間αが形成されていることから、コジリの発生を防止して両者をスムーズに嵌合させることができる。このとき、前輪Wfが重力で下方に付勢されるためにハブ部14bの軸芯に対してハブ穴21aの軸芯が下方にずれ易くなるが、ハブ部14bの外周面とハブ穴21aの内周面との間に弾性体28が介在することで前記隙間αが全周に亘って均一に保たれ、両者の軸芯が自動的に一致して走行時における振動の発生が抑制される。尚、アクスルハブ14に対してタイヤホイール21を脱着するとき、弾性体28がハブ穴21aの内周面に対して擦れるが、弾性体28が弾性変形するのでスムーズな脱着が妨げられることはない。
【0017】次に、図5および図6に基づいて本発明の第2実施例を説明する。
【0018】第2実施例の弾性体28は、短い円筒状をなす本体部28aと、この本体部28aの内周面から半径方向内向きに突出する環状の凸部28bとを有しており、この凸部28bがアクスルハブ14のハブ部14bに形成した環状溝14dに保持される。アクスルハブ14にタイヤホイール21を装着した状態で、弾性体28はハブ部14bの外周面とハブ穴21aの内周面との間の隙間αの範囲βを全て埋めるように配置される。弾性体28は電気を伝えない材質、つまり電気絶縁体で構成される。
【0019】本第2実施例によれば、第1実施例と同様に、隙間αの作用でアクスルハブ14に対してタイヤホイール21をスムーズに脱着することを可能にしながら、弾性体28の作用でハブ部14bの軸芯に対してハブ穴21aの軸芯を精密に一致させるという効果に加えて、以下のような効果を達成することができる。
【0020】アクスルハブ14とタイヤホイール21とが異種の金属で構成されている場合、例えば本第2実施例の如くアクスルハブ14が鉄製であり、タイヤホイール21がアルミニウム製である場合、両者間に電位差が発生して迷走電流が流れることでアルミニウム製のタイヤホイール21に電食が発生する場合がある。この電食は、自動車が海岸付近の道路や融雪剤を撒いた道路を走行して塩分を含む水(電解水)がハブ部14bの外周面とハブ穴21aの内周面との間の隙間αに浸入したような場合に顕著に発生する。
【0021】しかしながら、本第2実施例によれば、前記隙間αが弾性体28によって埋められているため、そこに電解水が浸入するのを抑制して電食の発生を防止することができる。また隙間αに電解水が存在しない場合でも、弾性体28自体が導電性材料で構成されていると、その弾性体28を介して迷走電流が流れることでまれに電食が発生するが、本第2実施例では弾性体28を電気絶縁体で構成したことでこうした電食の発生も防止することができる。その結果、電食によるタイヤホイール21の耐久性低下を防止することができるだけでなく、腐食したタイヤホイール21がアクスルハブ14に固着して取り外しが困難になるといった不具合を解消することができる。
【0022】次に、図7および図8に基づいて本発明の第3実施例を説明する。
【0023】第3実施例の弾性体28は第2実施例の弾性体28の改良であって、その本体部28aの一方の側縁に断面三角形の厚肉部28cを環状に形成したものである。弾性体28の厚肉部28cは、アクスルハブ14のハブ部14b、ブレーキディスク23およびタイヤホイール21のハブ穴21aの先端部に囲まれた環状の空間29(図2参照)に隙間無く嵌合し、そこに電解水が浸入するのを阻止する働きをする。
【0024】このように、環状の空間29に電解水が浸入し難くなると、その空間29に連なる隙間αにも電解水が浸入し難くなり、電食の発生を一層効果的に防止することができる。
【0025】次に、図9〜図11に基づいて本発明の第4実施例を説明する。
【0026】第4実施例の弾性体28は、アクスルハブ14にタイヤホイール21を脱着する作業を一層容易化することを狙ったもので、その本体部28aの外周面に軸方向に線状に延びる多数の突起28d…を一体に形成したものである。
【0027】本第4実施例によれば、アクスルハブ14にタイヤホイール21を脱着すべくハブ部14bに対してハブ穴21aを摺動させるとき、ハブ穴21aの内周面は弾性体28の突起28c…だけに接触して本体部28aに接触しないため、摺動抵抗を減らして脱着作業を更に容易に行うことができる。
【0028】次に、図12に基づいて本発明の第5実施例を説明する。
【0029】第5実施例は前記第3実施例の変形であって、第3実施例でアクスルハブ14のハブ部14b側に固定されていた弾性体28を、タイヤホイール21のハブ穴21aの内周面に焼付あるいは接着により固定したものである。
【0030】この第5実施例によっても、前記第3実施例と同様の効果を達成することができる。
【0031】以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0032】例えば、アクスルハブ14の材質およびタイヤホイール21の材質は実施例に限定されず、適宜の材質を選択することが可能である。
【0033】また実施例では弾性体28の材質としてゴムを例示したが、ゴム以外に種々の合成樹脂等を採用することができる。
【0034】また予め成形した弾性体28を係止、焼付、接着等の手段でアクスルハブ14あるいはタイヤホイール21に固定する代わりに、アクスルハブ14あるいはタイヤホイール21に弾性体28を塗布することも可能である。
【0035】また実施例では自動車の駆動輪のアクスルハブ14に対するタイヤホイール21の嵌合構造を説明したが、本発明は従動輪についても同様に適用することができる。
【0036】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明によれば、アクスルハブのハブ部とタイヤホイールに形成したハブ穴との間の隙間に環状の弾性体を介在させたので、前記隙間によってアクスルハブに対するタイヤホイールの脱着を容易にしながら、弾性体の作用で前記隙間を円周方向に均一化してアクスルハブの軸芯とタイヤホイールの軸芯との芯出し精度を向上させることができる。アクスルハブに対してタイヤホイールを脱着するとき、弾性体がハブ部の外周面あるいはハブ穴の内周面に対して擦れるが、弾性体が弾性変形することで前記脱着が難しくなることはない。
【0037】また請求項2に記載された発明によれば、電気絶縁体よりなる弾性体でハブ部とハブ穴との間の隙間を埋めたので、アクスルハブおよびタイヤホイールを異種の金属で構成した場合でも、前記隙間に電解水が浸入するのを弾性体により阻止してアクスルハブおよびタイヤホイール間に迷走電流が流れ難くし、かつ弾性体そのものを介して迷走電流が流れ難くすることで、電食の発生を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成14年2月12日(2002.2.12)
【代理人】 【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開2003−237301(P2003−237301A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−34075(P2002−34075)