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【発明の名称】 転がり軸受装置
【発明者】 【氏名】梅川 貴弘
【住所又は居所】大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内

【氏名】脇阪 照之
【住所又は居所】大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内

【氏名】柏木 信一郎
【住所又は居所】大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内

【要約】 【課題】面取りを施した内輪部材の端面にハブ軸の端部をかしめ、内輪部材とハブ軸とを軸心回りに回転一体とした車軸用転がり軸受装置では、面取りの径方向中心と内輪部材の径方向中心とが偏心していると、その偏心量によっては、ハブフランジが軸心に対して傾いて面振れが発生しブレーキジャダやブレーキ鳴きが発生する。

【解決手段】面取り19の径方向中心と内輪部材5,6の径方向中心との偏心量を、0を超えて200μm超えない範囲とした状態で、ハブ軸9の端部を面取り19を施した内輪部材6の端面12に対してかしめて内輪部材5,6とハブ軸9とを軸心7方向および周方向に一体化する。これによりハブフランジ8の面振れの発生が抑えられて、車軸用転がり軸受装置1を車両に組込んで使用した際でもいわゆるブレーキジャダやブレーキ鳴きといった現象の発生を防止できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに外周面に径方向外向きに突出して別部材を取付けるための取付けフランジが形成された軸体の端部を、予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化される転がり軸受装置であって、前記内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されたことを特徴とする転がり軸受装置。
【請求項2】 外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに外周面に径方向外向きに突出してブレーキディスクを取付けるための取付けフランジが形成された軸体の端部を、予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化される転がり軸受装置であって、前記内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されたことを特徴とする転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、転がり軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、転がり軸受装置の例として、図7に示すような車軸用転がり軸受装置1がある。この車軸用転がり軸受装置1は、車体側に非回転に支持される外輪部材2に玉3,4を介して内輪部材5,6を軸心7回りに回転自在に設け、この内輪部材5,6に、ハブフランジ8を形成したハブ軸9を軸心7方向一方側から挿通(圧入)し、このハブ軸9の軸心7方向他方側端部を径方向に拡径するようにして、内輪部材6の予め面取り19を施した端面に、かしめ用治具10を用いてローリングかしめ加工によってかしめる。これにより内輪部材5,6とハブ軸9とが軸心7回りに回転一体となり、また玉3,4に対して所定の予圧が付与される。
【0003】なお、ハブ軸9の軸心7方向他方側端部を内輪部材6の面取り19を施した端面にかしめる際には、ハブ軸9の凹部9aを例えば支持台11に嵌合させた状態で実施する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の車軸用転がり軸受装置1では、内輪部材5,6の、面取り19を施した端面12に対してハブ軸9の軸心7方向他方側端部をかしめ、内輪部材5,6とハブ軸9とを軸心7回りに回転一体とし、玉3,4に対して所定の予圧を付与するようにしている。ところで、図8で示すように、前記面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18(軸心7)とが偏心していると、その偏心量δによっては、内輪部材5,6の端面12にハブ軸9の端部をかしめた際、ハブフランジ8が軸心7に対して傾いてしまう。
【0005】そしてこのハブフランジ8には、ブレーキディスクおよびタイヤホイールを接合するものであるが、ハブフランジ8は軸心7に対して傾いた状態であると、これら部材に面振れが発生し、いわゆるブレーキジャダやブレーキ鳴きといった現象が発生してしまう。
【0006】そこで本発明は、上記課題を解決し得る転がり軸受装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明における転がり軸受装置は、外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに外周面に径方向外向きに突出して別部材を取付けるための取付けフランジが形成された軸体の端部を、予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化され、前記内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されている。
【0008】上記構成の転がり軸受装置のように、内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量を、0を超えて200μmを超えない範囲に設定することにより、軸体の端部を、曲面状に面取りを施した内輪部材の端面に対して拡径してかしめた際に、軸体に形成された取付けフランジの面振れが20μm以下に抑えられる。
【0009】さらに上記課題を解決するために、本発明の転がり軸受装置は、外輪部材に内輪部材が転動体を介して軸心回りに回転自在に支持され、前記内輪部材の中心穴に挿通されるとともに外周面に径方向外向きに突出してブレーキディスクを取付けるための取付けフランジが形成された軸体の端部を、予め曲面状に面取りを施した前記内輪部材の端面に対して拡径してかしめることで、前記内輪部材と軸体とが一体化され、前記内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されている。
【0010】上記構成の車軸用転がり軸受装置において、内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量を、0を超えて200μmを超えない範囲に設定することにより、軸体の端部を、曲面状に面取りを施した内輪部材の端面に対して拡径してかしめた際に、軸体に形成された取付けフランジの面振れが20μm以下に抑えられ、ブレーキジャダやブレーキ鳴きを抑えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態に係る転がり軸受装置を、車両における車軸用転がり軸受装置に適用させた場合について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態を示す車両用の転がり軸受装置1の全体構成を示す断面図、図2はかしめ加工を行う際の説明図である。なお図例の車軸用転がり軸受装置1は、車両の従動輪側に用いられる構成を有している。
【0012】そして図示のように、この車軸用転がり軸受装置1は、車両に組込まれた支持部材(例えばナックル)に非回転に取付けられる外輪部材2と、この外輪部材2に二列の玉(転動体の一例)3,4を介して軸心7回りに回転自在に支持される内輪部材5,6と、この内輪部材5,6の中心穴13に圧入により挿通されるハブ軸(軸体の一例)9とを備えている。なお、前記各列の玉3,4は、それぞれ冠形保持器25のポケットに装着されて円周方向等配位置に転動自在に保持されている。図の符号26は、外輪部材2と内輪部材5,6の間の環状軸受空間27を一方側(車両アウタ側)Aで密封する密封部材を示す。
【0013】なお前記外輪部材2には、径方向外向きに突出する支持フランジ14が形成され、この支持フランジ14が、図示しない前記支持部材に取付けボルトで固定されることで、外輪部材2が車体側に非回転支持される。
【0014】前記内輪部材5,6は軸心7方向に沿って一対で設けられ、一方側Aの内輪部材5の外周面に前記一方列の玉3の内輪軌道面が形成され、他方側(車両インナ側)Bの内輪部材6の外周面に前記他方列の玉4の内輪軌道面が形成され、前記外輪部材2の内周面に両列の玉3,4の外輪軌道面が形成されている。
【0015】前記ハブ軸9は、前記内輪部材5,6の中心穴13に圧入される胴部15が中実断面であって、前記一方列の内輪部材5から軸心7方向に突出したハブ軸9の突出部分の外周面に、径方向外向きに突出したハブフランジ(取付けフランジ)8が形成され、このハブフランジ8には、その盤面に圧入されるハブボルト16に、図示しないブレーキディスクおよびタイヤホイールが重ねて固定される。
【0016】そして、前記他方側の内輪部材6における端面12の内周面側に、曲面状の面取り19が形成され、前記内輪部材5,6の径方向中心(図8参照)18と前記面取り19の径方向中心17との径方向の偏心量δ(μm)が、0を超えて200μmを超えない範囲に設定されている。
【0017】前記ハブ軸9の他方側Bの端部にかしめ用凹部20が形成され、このかしめ用凹部20の外周部分が拡径されるようにして前記面取り19を施した内輪部材6の端面12に対してかしめられ、これにより前記内輪部材5,6とハブ軸9とが軸心7方向および周方向に一体化されるとともに、前記両列の玉3,4に対して所定の予圧が付与されている。
【0018】上記構成の車軸用転がり軸受装置1は、外輪部材2に両列の玉3,4を組込み、これら玉3,4を介して外輪部材2に軸心7方向両側からそれぞれ内輪部材5,6を組込み、一方側Aからハブ軸9の胴部15を内輪部材5,6の中心穴13に圧入するよう組付けられる。
【0019】そして図2に示すように、ハブ軸9の一方側Aに形成した凹部9aを支持台11に嵌合するようにし、ハブ軸9の他方側Bの端部に形成したかしめ用凹部20にかしめ用治具10を嵌合して、このかしめ用治具10を、軸心7を中心にローリングさせて、他方側Bの内輪部材6の、面取り19を施している端面12に対してハブ軸9の端部を拡径するようにローリングかしめを行う。
【0020】ところで、前記面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18との偏心量δは、上記のようにしてローリングかしめ加工を行った場合、ハブフランジ8の基準面21からの振れ量とのあいだに下記表(1)の関係があることが、実験によりわかった。
【0021】
【表1】

上記(表1)から、ローリングかしめ加工を行った場合にハブフランジ8の基準面21からの振れ量を20μm以内におさめようとするのであれば、面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18との偏心量δを200μm以下、すなわち0を超えて200μmを超えない範囲に抑えることで可能となる。
【0022】そしてこの実施形態では、面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18との偏心量δを、0を超えて200μmを超えない範囲に設定して車軸用転がり軸受装置1を製作することで、ハブフランジ8の振れ量の小さい車軸用転がり軸受装置1となり、これにより、車軸用転がり軸受装置1を車両に組込んで使用した際でも、ハブフランジ8の面振れの発生を抑えて、いわゆるブレーキジャダやブレーキ鳴きといった現象の発生を防止できる。
【0023】なお、偏心量δを所定量以下に抑えるためには、内輪部材5,6の加工精度を確保することで実現する。
【0024】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、下記(1)〜(5)に示すように、本発明の範囲内で多くの応用や変形が可能である。
【0025】(1)図3に示した従動輪側に用いられる車軸用転がり軸受装置1は、転動体として玉3,4を用いる代わりに、保持器30によって円周方向等配位置に保持された円錐ころ31,32を用いており、他方の内輪部材6における端面12の内周面側に曲面状の面取り19が形成され、内輪部材5,6の径方向中心と面取り19の径方向中心との径方向の偏心量が0を超えて200μmを超えない範囲に設定されている。他の構成は上記実施形態と同様である。この車軸用転がり軸受装置1においても、内輪部材5,6(特に内輪部材6)の径方向中心と面取り19の径方向中心との径方向の偏心量を0を超えて200μmを超えない範囲に設定して内輪部材6の端面12にハブ軸9の端部をかしめることで、振れのないハブフランジ8を有した車軸用転がり軸受装置1を提供できる。
【0026】(2)図4に示した従動輪側に用いられる車軸用転がり軸受装置1は、外輪部材2に、保持器25で円周方向等配位置に保持された二列の玉3,4を介して、ハブホイール33とこのハブホイール33の他方側B端部に嵌着された筒状部材34とが軸心7回りに回転自在に支持されている。この車軸用転がり軸受装置1では、前記ハブホイール33と筒状部材34とで内輪部材が構成されている。そして、ハブホイール33の外周面の途中および筒状部材34の外周面に内輪軌道面が形成され、外輪部材2の内周面に玉3,4の外輪軌道面が形成されている。そして筒状部材34の端面12に曲面状の面取り19が形成され、ハブホイール33の端部が筒状部材34の端面12に対してかしめられている。
【0027】外輪部材2の外周面には、径方向外向きに突出する支持フランジ14が形成され、ハブホイール33には、径方向外向きに突出したハブフランジ8が形成されている。外輪部材2と内輪部材の間の環状軸受空間27の一方側Aには密封部材26が設けられている。
【0028】このような構成の車軸用転がり軸受装置1においても、ハブホイール33の径方向中心と面取り19の径方向中心との径方向の偏心量を0を超えて200μmを超えない範囲に設定して、筒状部材34の端面12にハブホイール33の端部をかしめることで、振れのないハブフランジ8を有した車軸用転がり軸受装置1を提供できる。
【0029】(3)図5に示した駆動輪側に用いられる車軸用転がり軸受装置1は、ハブホイール35およびこのハブホイール35の他方側の外周面に嵌着された筒状部材36が内輪部材37とされ、ハブホイール35の途中外周面および筒状部材36の外周面に両列の玉3,4の内輪軌道面が形成され、外輪部材2の内周面に玉3,4の外輪軌道面が形成されている。ハブホイール35には、このハブホイール35に駆動力を伝達するとともに軸心7に対して傾動自在に支持する等速ジョイント38の軸部39が圧入される中心穴13が形成されている。そしてハブホイール35の端部が曲面状の面取り19を形成した筒状部材36の端面12に対してかしめられる。この車軸用転がり軸受装置1においても、ハブホイール35の径方向中心と面取り19の径方向中心との径方向の偏心量を0を超えて200μmを超えない範囲に設定して筒状部材36の端面12にハブホイール35の端部をかしめることで、振れのないハブフランジ8を有した車軸用転がり軸受装置1を提供できる。
【0030】(4)図6に示した駆動輪側に用いられる車軸用転がり軸受装置1は、ハブホイール35と等速ジョイント38の椀形外輪部材40とが内輪部材37とされた構成であり、前記ハブホイール35の外周面に一方の玉3の内輪軌道面が形成され、等速ジョイント38の椀形外輪部材40の外周面に他方の玉4の内輪軌道面が形成され、外輪部材2の内周面に両列の玉3,4の外輪軌道面が形成され、前記ハブホイール35に等速ジョイント38の軸部39が、スプライン部41を介して圧入されている。そして、ハブホイール35の一方端部内周面側に曲面状の面取り19が形成され、等速ジョイント38の軸部39の端部がハブホイール35の一方端面に対してかしめられている。この車軸用転がり軸受装置1においては、ハブホイール35の径方向中心と面取り19の径方向中心との径方向の偏心量を、0を超えて200μmを超えない範囲に設定して、ハブホイール35の端面12に軸部39の端部をかしめることで、振れのないハブフランジ8を有した車軸用転がり軸受装置1を提供できる。
【0031】(5)ところで図1および図2に示した上記実施形態において、面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18との偏心量δは、上記のようにしてローリングかしめ加工を行った場合、ハブフランジ8の基準面21からの振れ量とのあいだに上記表(1)の関係があることが、実験によりわかっている。そこで上記実施形態では、ローリングかしめ加工を行った場合にハブフランジ8の基準面21からの振れ量を20μm以内におさめるために、面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18との偏心量δを200μm以下、すなわち0を超えて200μmを超えない範囲に抑えた。
【0032】しかし本発明はこれに限定されるものではなく、ハブフランジ8の基準面21からの振れ量を15μm以内あるいは10μm以内に抑える必要がある場合には、上記(表1)から、面取り19の径方向中心17と内輪部材5,6の径方向中心18との偏心量δをそれぞれ、150μm以下(0を超えて150μmを超えない範囲),100μm以下(0を超えて100μmを超えない範囲)に抑えるようにすることで実現できる。
【0033】そしてこのことは、上記(1)〜(4)に示した構成の車軸用転がり軸受装置1にも適用できることは勿論である。
【0034】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明は、内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量を、200μm以下すなわち0を超えて200μmを超えない範囲に設定した転がり軸受装置であるので、軸体の端部を、曲面状に面取りを施した内輪部材の端面に対して拡径してかしめた際に、軸体に形成された取付けフランジの面振れを20μm以下に抑えることができる。
【0035】また、内輪部材の径方向中心と面取りの径方向中心との径方向の偏心量を、0を超えて200μmを超えない範囲に設定した車軸用転がり軸受装置であるので、軸体の端部を、曲面状に面取りを施した内輪部材の端面に対して拡径してかしめた際に、軸体に形成された取付けフランジの面振れを20μm以下に抑えることができ、従って、取付けフランジにブレーキディスクを取付けて使用した場合に、ブレーキジャダやブレーキ鳴きを抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目5番8号
【出願日】 平成14年1月18日(2002.1.18)
【代理人】 【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
【公開番号】 特開2003−211908(P2003−211908A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−9623(P2002−9623)