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【発明の名称】 軌道走行移動体用の車輪、これを備えた移動体、レールおよびこのレールを用いた走行設備
【発明者】 【氏名】守田 信稔
【住所又は居所】東京都品川区南大井6丁目28番6号 トモエ電機工業株式会社内

【氏名】望月 政美
【住所又は居所】東京都品川区南大井6丁目28番6号 トモエ電機工業株式会社内

【要約】 【課題】大きな摩擦係数を有すると共に、耐摩耗性に優れ、かつ、大きな耐力を備えた、軌道走行移動体用の車輪、および、これを備えた移動体を提供。

【解決手段】車輪(20)は、本体(23)と、レールの頭部の頂面と接触する踏面形成体(24)と、フランジ(25)とを備えている。踏面形成体(24)は、クロム合金鋼中に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合された複合材により形成される。移動体は、少なくとも駆動輪に、前述した車輪(20)を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レール上を走行する移動体用車輪において、本体と、この本体の外周に設けられ、レールと接触する踏面を形成する踏面形成体とを有し、前記踏面形成体は、クロム合金鋼中に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合された複合材により形成されることを特徴とする移動体用車輪。
【請求項2】 請求項1に記載の移動体用車輪において、前記複合材は、重量パーセントで、チタンを3〜5%、ボロンを0.2〜0.4%含有することを特徴とする移動体用車輪。
【請求項3】 請求項1に記載の移動体用車輪において、前記複合材は、重量パーセントで、Cr(19%)、Ti(8.5%)、Bo(3.7%)、C(0.3%)、Si(0.25%)、Mn(0.4%)、Fe(残部)の組成であることを特徴とする移動体用車輪。
【請求項4】 請求項1、2および3のいずれか一項に記載の移動体用車輪において、前記踏面形成体は、環状に形成され、前記本体外周に装着されていることを特徴とする移動体用車輪。
【請求項5】 請求項1、2および3のいずれか一項に記載の移動体用車輪において、前記踏面形成体は、前記本体の外周に、前記複合材を溶接により肉盛りして設けられたものであることを特徴とする移動体用車輪。
【請求項6】 車輪と、前記車輪のうち、少なくとも1の車輪を駆動する駆動機構とを備え、前記車輪によりレール上を走行する移動体において、前記駆動機構により駆動される車輪が、請求項1、2、3および4のいずれか一項に記載の車輪であることを特徴とする移動体。
【請求項7】 移動体の走行を支持するレールにおいて、底部、腹部および頭部からなり、前記頭部の、少なくとも車輪の踏面と接触する部分に、クロム合金鋼中に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合された複合材により形成される部材を有すること特徴とするレール。
【請求項8】 請求項7に記載のレールにおいて、前記複合材は、重量パーセントで、チタンを3〜5%、ボロンを0.2〜0.4%含有することを特徴とするレール。
【請求項9】 請求項7に記載のレールにおいて、前記複合材は、重量パーセントで、Cr(19%)、Ti(8.5%)、Bo(3.7%)、C(0.3%)、Si(0.25%)、Mn(0.4%)、Fe(残部)の組成であることを特徴とするレール。
【請求項10】 請求項7、8および9のいずれか一項に記載のレールを勾配領域に敷設した移動体走行設備。
【請求項11】 請求項7、8および9のいずれか一項に記載のレールを移動体の停止領域に敷設した移動体走行設備。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レール上を走行する移動体およびその車輪に関し、特に、鋼製レールとの間に高い摩擦係数を有し、かつ、高い耐力特性を備えた移動体用の車輪に関するものである。
【0002】また、本発明は、軌道走行移動体が走行するレールに関し、特に、車輪との間に高い摩擦係数を有し、且つ、高い耐力特性を備えたレールに関するものである。
【0003】
【従来の技術】レール上を走行する移動体としては、人、物等を搭載して搬送する車両、位置を変えて作業を行うための作業機等がある。これらの移動体には、自走するため、レール上を走行するための駆動力を受ける駆動輪を備えているものがある。通常、この種の自走式の移動体、例えば、機関車は、機関車の重量と車輪の摩擦係数との積が牽引力となる。
【0004】ところで、レールおよびレール上を走行する移動体、例えば、機関車の車輪は、双方とも鋼製であることが一般的である。その場合、車輪とレールとの摩擦係数(以下、場合によっては「μ」と表記する。)は、0.2ないし0.3未満である。しかし、この程度の摩擦係数では、必要とする牽引力を生じるには十分でない場合がある。例えば、急勾配を走行する移動体である機関車等の牽引車の場合、登坂能力を大きくするため、牽引力を高める必要がある。しかし、レールと車輪との間の摩擦係数の大きさに限界がある。このため、牽引力を大きくするには、機関車の重量を増加させなければならない。しかし、重量の大きな移動体の場合、慣性が大きいため、加速に時間がかかると共に、停止する際にも、長い制動距離を必要とする。
【0005】これに対して、レールと車輪との間の摩擦係数を高めることで、牽引車の重量を増加させることなく、牽引力を大きくすることが可能である。このため、車輪について、レールと接触する踏面の摩擦係数を高くすることが考えられる。例えば、μが0.4程度のウレタンゴムを、車輪の踏面に装着することが考えられる。しかしながら、ウレタンゴムがその踏面に形成された車輪を使用する場合に、ウレタンゴムが発熱し、その寿命が短いという問題がある。
【0006】一方、車輪自体の材質を変えて、摩擦係数を向上することが考えられる。例えば、アルミニウム合金を用いて車輪を形成することが考えられる。これによれば、μを増大することができる。しかし、車輪とレールとの接触面積が小さいため、高い圧力が接触面に加わり、これにより、耐磨耗性が低く、寿命も短いという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この問題の解決策として、本出願人は、「本体と、この本体の外周に装着されて、レールと接触する踏面を形成する踏面形成体とを有し、この踏面形成体は、少なくともレールと接触する部分に、アルミニウム中にセラミック粒子を含有するセラミック粒子分散強化アルミニウム基複合材料を有する移動体用車輪」を提案している(WO98/26944)。この移動体用車輪は、高い摩擦係数と、高い耐摩耗性とを有する。そのため、自走台車、自走作業機、機関車等のように、大きな牽引力と、短い制動距離とが必要な移動体の車輪として好適なものといえる。
【0008】ところで、移動体として、貨車、台車等を牽引するための機関車、特に、工事用機関車、急勾配登坂用機関車等の特種な車両の場合、急勾配、重負荷、長時間稼働等の過酷な使用状態を考慮すると、車輪ができる限り高い強度、すなわち、高い耐力を有することが望まれる。
【0009】本発明は、このような事情に鑑み、大きな摩擦係数を有すると共に、耐摩耗性に優れ、かつ、大きな耐力を備えた、軌道走行移動体用の車輪、および、これを備えた移動体を提供することにある。
【0010】また、本発明の第2の目的は、大きな摩擦係数を有すると共に、耐摩耗性に優れ、かつ、大きな耐力を備えた、レールおよびこのレールを用いた走行設備を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記第1の目的を達成するため、本発明の第1の態様によれば、レール上を走行する移動体用車輪において、本体と、この本体の外周に設けられ、レールと接触する踏面を形成する踏面形成体とを有し、前記踏面形成体は、クロム合金鋼中に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合された複合材により形成されることを特徴とする移動体用車輪が提供される。
【0012】また、本発明の第2の態様によれば、車輪と、前記車輪のうち、少なくとも1の車輪を駆動する駆動機構とを備え、前記車輪によりレール上を走行する移動体において、前記駆動機構により駆動される車輪が、前述した第1の態様による車輪であることを特徴とする移動体が提供される。
【0013】さらに、本発明の第2の目的を達成するため、本発明の第3の態様によれば、移動体の走行を支持するレールにおいて、底部、腹部および頭部からなり、前記頭部の、少なくとも車輪の踏面と接触する部分に、クロム合金鋼中に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合された複合材により形成される部材を有すること特徴とするレールが提供される。
【0014】また、本発明の第4の態様によれば、前述した第3の態様のレールを勾配領域に敷設した移動体走行設備が提供される。
【0015】さらに、本発明の第5の態様によれば、前述した第3の態様のレールを移動体の停止領域に敷設した移動体走行設備が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。以下の説明では、本発明を、トンネル工事などの工事現場において、資材等の搬送に用いられるバッテリー式機関車、および、レールに適用した例についてそれぞれ説明する。もちろん、本発明は、これらに限定されるものではない。機関車、電車等の各種車両、掘削、荷役等を行う自走式作業機、資材等を搬送する自走式搬送機等の種々の、レール上を移動する種々の移動体、および、それらの走行を支持するレールに適用することができる。なお、本発明は、工事現場、工場等において、工事、作業等に用いられる仮設作業用の移動体に限られない。例えば、旅客用の車両にも拡張して適用が可能である。具体的には、急勾配区間を走行する車両、制動距離を短くする必要のある高速走行車両、それらの走行を支持するレール等に適用され得る。
【0017】図6に示すように、本発明が適用される車輪を用いたバッテリー機関車10は、トンネル掘削工事において、縦坑100と切羽120間の横坑130内において、資材Mや作業員(図示せず)などを運搬するためのトンネル内工事用の牽引車である。横坑130内には、レール150が敷設されており、機関車10は、このレール150上を走行する。
【0018】レール150は、いわゆるT型レールであり、底部、底部のほぼ中央から起立する腹部、および、腹部の上に設けられ、その頂面で車輪と接触する頭部を備えている。また、このレールは、複数の枕木に載置され、ボルト、イヌ釘などにより枕木に固定されている。
【0019】上述したようなバッテリー機関車に使用される、第1の実施形態に係る車輪につき、以下に説明する。図1Aは、第1の実施の形態に係る車輪の部分断面側面図、図1Bは、車輪の部分正面図である。
【0020】図1Aおよび図1Bに示すように、この実施の形態では、車輪20は、本体23と、本体23の周囲に設けられ、レールの頭部の頂面と接触する踏面形成体24とを有している。本体23の中央の貫通孔22に、車軸(図示せず)が取り付けられるようになっている。本体23は、実施の形態では、タイヤと輪芯とを一体に形成して構成されている。
【0021】踏面形成体24は、後に詳述するように、クロム合金鋼中に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合された複合材(以下、鋼複合材と称する)により形成される。この踏面形成体24は、図1A、図1Bに示す実施形態では、鋼複合材を本体23の外周面に、不活性ガス雰囲気中で連続溶接により肉盛りして形成されている。具体的には、鋼複合材からなる溶接棒を本体外周に複数層に溶接して肉盛りし、表面を詮索および研磨して仕上げることにより形成される。肉盛り厚さは、例えば、本体表面から約10mm程度とすることができる。肉盛りの層は、例えば、2から4層程度である。図1Aに示す例では、2層の肉盛りがなされている。この肉盛り技術は、踏面形成体24が摩滅して薄くなったときに、1層乃至数層、新たに肉盛りすることで、踏面形成体24をリフレッシュすることにも使用できる。
【0022】また、図1Aに示すように、踏面形成体24は、レールの頭部の頂面と接触するための接触面34を備えている。接触面34は、JIS規格で、1/20の勾配をなしている。この勾配は、機械加工で仕上げる。
【0023】本体23は、鋼からなり、軸を受け入れて、これを固定する貫通孔22を備えている。また、本体23の外周部には、フランジ25が形成され、踏面形成体24の接触面34(すなわち、レールとの踏面)と滑らかに連なるようになっている。なお、本実施形態では、フランジ25の部分まで肉盛りがなされている。もちろん、フランジ25の部分を除いて肉盛りするようにしてもよい。
【0024】次に、図2Aおよび図2Bに、本発明に係る車輪の第2の実施形態を示す。この実施の形態では、車輪20は、本体23と、本体23の周囲に設けられ、レールの頭部の頂面と接触する踏面形成体24とを有している。踏面形成体24の構造、および、踏面形成体24を取り付けるための構造の他は、前述した図1Aおよび図1Bに示す車輪と同様の構造を有する。
【0025】本実施形態における踏面形成体24は、本体23の回りを取り囲むようなリング形状に形成される。このような構造としている理由は、踏面形成体を本体23の外周に焼き嵌めにより装着するためである。焼き嵌めにより踏面形成体24が装着された車輪20は、装着された踏面形成体24がレール150と接触することとなる。
【0026】本体23には、後述するように、踏面形成体24が焼き嵌めされたときに、それを受け入れる踏面形成体受入部23aが設けられている。踏面形成体受入部23aには、踏面形成体24の内周面と密着するような焼き嵌め嵌合公差が設けられている。勾配面33は、圧入を容易にするため、締め代が設けられている。
【0027】さらに、本体23には、裏側、すなわち、軸が延びる側に、一定の角度間隔で、複数箇所、ねじ孔45が配置されている。これは、踏面形成体24を取り外す際に、図示していないボルトにて、これを押出すために設けられている。なお、図2Bにおいては、ねじ孔45を一つだけ図示している。
【0028】なお、この実施の形態において、フランジの端部の間で測った車輪の外径は、約470mmであり、踏面形成体24の外周において測った車輪の外径は、約420mm、踏面形成体24の半径方向の厚みは、約55mmである。また、軸の径は、約80mmである。
【0029】次に、この実施の形態に係る踏面形成体24の構成および製造につき説明する。この実施の形態においては、踏面形成体24は、不活性ガス雰囲気において、溶解炉中にて、クロム合金鋼に、鉄−チタン、鉄−ボロンを投入することにより、クロム合金鋼の母地(matrix)に、鉄−チタン、鉄−ボロンが混合物(composite)として混合された組織を有する鋼複合材が形成される。この鋼複合材は、重量パーセントで、チタンを3〜5%、ボロンを0.2〜0.4%含有する。その代表的な組成は、重量パーセントにより、次の通りに表される。すなわち、Cr(19%)、Ti(8.5%)、Bo(3.7%)、C(0.3%)、Si(0.25%)、Mn(0.4%)、Fe(残部)の組成である。この組成を有する鋼複合材の材料特性は次の通りである。
【0030】
弾性率 :260×104kg/cm2硬さ :HRB=120伸び :7%引っ張り強さ:70kg/mm2以上降伏点 :70kg/mm2【0031】また、本発明において重要な数値である摩擦係数は、レール鋼との間の摩擦係数を乾式により実測したものである。
【0032】
鋼複合材とレール鋼:面圧100kg/cm2……0.51 :面圧200kg/cm2……0.48 ScMnとレール鋼:面圧100kg/cm2……0.32 :面圧200kg/cm2……0.38【0033】このように、これまでの車輪の摩擦係数に比べて大きな値となっている。従って、機関車に装着した場合、高い牽引力を期待することができる。
【0034】ところで、摩擦係数については、WO98/26944において出願人が既に提案したアルミニウム合金基複合材料に比べると小さい。しかし、強度においてはそれより勝っている。従って、重負荷がかかる機関車、耐久性が要求される移動体等においては、このような鋼複合材料を用いることが好ましいといえる。
【0035】ところで、前述した鋼複合材は、硬く、容易には変形しにくい。そのため、重負荷で長時間稼働させても、変形しにくいという利点がある。従って、車輪の踏面形成体の材料としては好ましい特性を有するといえる。しかし、踏面形成体の形成においては、加工しにくいという問題もある。そこで、鋼複合材により踏面形成体の製造方法について説明する。
【0036】踏面形成体の製造方法の一つについては、前述したように、溶接棒を肉盛りする方法がある。一方、リング状の踏面形成体は、例えば、図10Aから図10Dに示すようにして製造することができる。
【0037】すなわち、まず、鋼複合材のインゴット2401を、前述したように、不活性ガス雰囲気意中で、溶解炉を用いて製造する(図10A)。その後、得られたインゴット2401を据え込み(スウェジ)鍛造して、円盤状部材2402を形成する(図10B)。次に、この円盤状部材2402の中心部2405を打ち抜いて、リング状部材2403を形成する(図10C)。この状態で、円盤状部材には、中空部2404が形成され、リング状部材2403となる。
【0038】次に、リング状部材2403の、内外周を固定ローラ241aおよび駆動ローラ241bで挟み、かつ、厚さ方向を固定ローラ242aおよび駆動ローラ242bで挟み、内外周および厚さ方向の両者について加圧して高密度化するロール鍛造を行う(図10D)。このようにして、高密度化したリング状部材2403について、内外周、および、厚さについて、切削加工により仕上げを行う。その後、熱処理を施して、最終的な仕上げ加工を行う。
【0039】このようにして得られたリング形状の踏面形成体24を、勾配面33に沿って圧入して、本体23の踏面形成体受入部23aに嵌め込む。その際、焼き嵌めによって装着する。
【0040】このような構成とすることにより、高価な鋼複合材を、車輪の踏面にのみ使用するため、車輪のコストをそれほど増大させることはない。また、リング形状の踏面形成体24を交換することにより、磨耗時の車輪の再生が容易に実現できる。
【0041】次に、本発明の第3の実施形態に係る車輪について説明する。図3は、第3の実施形態に係る車輪の部分断面側面図である。
【0042】図3に示す第3の実施形態に係る車輪120は、第1の実施の形態に係る車輪と比較すると、踏面形成体124の構造に相違がある。すなわち、踏面形成体124の半径方向の厚みが厚い点に相違がある。その他の点については、基本的に同じである。この実施の形態において、踏面形成体124の半径方向の厚みは、70mm強である。その他のサイズは、第2の実施形態のものと同様である。また、第2の実施の形態に係る踏面形成体124も、第1の実施の形態とほぼ同様に製造することができる。
【0043】図9Aおよび図9Bに、前記第3の実施形態に係る車輪の変形例を示す。これらの図に示す車輪は、フランジ125の部分に孔(図3に示す145a)を設けていないこと、および、本体の輪芯部分の形状がスポーク形状であることを除いては、基本的には、第3の実施形態と同じ構造である。
【0044】図4は、このような車輪を利用したバッテリー機関車の車輪部分を示す部分略断面図である。図4に示すように、車輪20の踏面形成体24は、レール150の頭部151の頂面と接触している。レール150は、枕木160に取り付けられるための底部152、底部のほぼ中央から起立する腹部153および腹部の上に設けられた頭部151から構成されている。
【0045】この鋼複合材からなる踏面形成体24を有する車輪は、踏面形成体24を用いているため、摩擦係数μが大きく、耐磨耗性が大きく、耐力も大きい。この特徴の第1のメリットは、制動距離の短縮があげられ、安全に大きく貢献する。例えば、工事用のバッテリー機関車の場合、制御モータであるサーボモータの速度制御による電気的制動を用い、一般に用いられるブレーキシューにより車輪を抑えて停止する方法は行わない。この場合には、車輪のμにより、停止距離が決まる。このため、アルミ複合材からなる踏面形成体24を有する車輪を、バッテリー機関車に搭載した場合、車輪のμの増大により、鋼製の車輪の場合に比べて、停止距離が30%ないし40%短縮される。
【0046】また、軸Sに固定されている円盤161と、円盤161を両側から挾み込むブレーキパッド162,162と、これらブレーキパッド162,162を駆動させる作動機構(図示されていない。)とを有したディスクブレーキ163が備えられ、停車時の駐車ブレーキとして使用される。なお、作動機構としては、例えば、油圧、空気圧等が用いられる。この場合にも、本発明の車輪は、レール150との間の摩擦係数μが大きいので、勾配の途中で静止している場合でも、滑りにくい。
【0047】次に、図5を参照して、前述した本発明の車輪を備えた機関車の使用形態について説明する。図5には、図4に示すような車輪を用いたバッテリー機関車10、および、バッテリー機関車10に連結された台車140を示す。
【0048】図5に示すように、機関車10は、一方が主駆動輪、他方が従駆動輪である二対の車輪20,20と、これらの車輪により支持されるボディ170と、各々の駆動輪を回転させるための2個のモータ(図示せず)と、2個のモータを駆動するためのバッテリー171と、2個のモータを制御して機関車を運転するための操作パネル172とを有している。ここで、機関車10は、駆動機構として、前記モータの外に、動力伝達機構、制御装置等を有している。また、機関車10は、資材Mなどが積載された台車140を連結している。
【0049】さて、このようなバッテリー機関車10において、前述したように機関車の重量とμとの積が牽引力に対応する。μがせいぜい0.1ないし0.2未満の従来の車輪を用いたバッテリー機関車においては、法規上の最大指定値50/1000の勾配を登坂することができる程度の登坂力が得られるに過ぎなかった。これに対して、この実施の形態においては、実際に、μを0.3〜0.5まで大きくすることが可能となる。したがって、従来の勾配の略1.5倍(すなわち、0.3/0.2倍)である、75/1000あまりの勾配を登坂することが可能となる。
【0050】すなわち、従来、約50/1000以上の勾配を登坂する場合には、法規上、いわゆるアプト式登坂装置を備えた機関車および軌道が用いられていたが、本実施の形態によれば、技術的には、75/1000程度の勾配までは、高価なアプト式登坂装置を設けることなく、急勾配を登坂できる機関車を実現できる。もちろん、本発明は、機関車に限らず、その他の自走式台車、自走式の作業機等の移動体の場合においても、登坂能力を高めることができる。
【0051】さらに、上記実施形態によれば、第3のメリットとして、μの増大により、移動体の牽引力を、重量を増やさずに増大させることが可能となる。したがって、小さな移動体で、出力さえ上げれば、従来不可能であった大きな負荷に対応することができる。例えば、機関車の場合には、より大きな荷重の台車を牽引できる。
【0052】また、踏面形成体が鋼複合材料で形成されているため、耐力が大きい。そのため、アルミニウム合金基複合材料を使用する場合に比べて、摩擦係数では若干下回るものの、耐久性ではより優れている。従って、重負荷により使用する場合、長時間駆動する場合等の、過酷な条件で車輪を使用する場合に、好適といえる。
【0053】本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0054】本発明に係る車輪において、踏面形成体は、少なくともレールとの接触面に形成されていれば良い。踏面形成体の形状は、限定されるものではない。また、車輪や軸の外径、踏面形成体の厚みは、前記実施の形態のものに限定されない。
【0055】また、本発明は、バッテリー機関車に適用することに限定されるものではないことも明らかである。さらに、機関車に使用するのみならず、面圧の高い、高負荷重での、人や資材を運搬する自走式台車、作業を行う自走式作業車に使用できることも明らかである。
【0056】サーボモータの電気制御によるよるブレーキ効果は、踏面とレールとの摩擦係数によって決まるので、μが大きいことは、そのまま制動距離の短縮となり、安全性が増大する。例えば、サーボモータ駆動によるバッテリー機関車および自走台車等のサーボモータ駆動車の場合、その制動は、サーボモータの速度制御による制動によるため、踏面とレールとの摩擦係数μが大きいことが、制動距離の短縮につながる。従って、鋼車輪よりμの大きい、鋼複合材車輪は、鋼車輪より、停止距離短縮、牽引力増大等に対する寄与が大きい。
【0057】次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図7Aは、本実施の形態に係るレールの断面図、および、図7Bは、側面図である。
【0058】図7A、図7Bに示すように、この実施の形態に係るレール200は、頭部210、腹部220および底部230から構成されている。頭部210は、後述する材料で形成され、腹部220および底部230は、鋼などにより一体に形成されている。底部230には、所定の間隔(たとえば、約1m)で、貫通孔231が設けられ、ボルト240、犬釘などにより、枕木(図示せず)に固定されるようになっている。また、腹部220にも、所定の間隔(たとえば、500mm〜600mm)で、ねじ孔221が設けられている。
【0059】このレールの頭部210の高さHは、30mmないし50mm、幅Wは50mmないし60mmである。また、腹部220の高さは約50mm、幅は頭部210のものとほぼ同一である。底部230の高さは、約20mmである。
【0060】頭部210は、この実施の形態においては、前述した踏面形成体24に用いたものと同様の鋼複合材により形成される。この鋼複合材によれば、鋼製車輪に対する摩擦係数は、サンプル実験では、約0.3〜0.5程度である。これは、従来のレールと車輪との間の摩擦係数と比較して大きい値である。
【0061】この実施形態においては、図7Aに示すような断面形状を形成するように、材料を押出加工して、所定の長さの細長い角材を作成した上、熱処理後、孔を機械加工している。所定の間隔で、孔211を穿孔することにより、頭部210が完成する。頭部210を、対応する位置にねじ孔221を設けた腹部220の上に載せ、ボルト250で締め付けることにより、レール200が完成する。
【0062】移動体の走行を支持するレールとして、本実施の形態のレールを全領域において用いることができる。ただし、本実施の形態のレールは、材料が高価であるため、必要な領域、例えば、急勾配領域、停止領域等に優先的に敷設するようにしてもよい。本実施の形態のレールが敷設されている線区では、通常の鋼製の車輪を用いる場合でも、短い制動距離を実現することができる。もちろん、本実施の形態のレールを敷設した領域で、前述した実施の形態の車輪を有する移動体を走行させることもできる。
【0063】従来の鋼製レールおよび鋼製の車輪を用いた移動体の走行設備においては、法規上、約50/1000を超える勾配路においては、いわゆるアプト登坂装置を備えた移動体および軌道が用いる必要がある。例えば、機関車の場合、2本のレール間にラックレールを配設し、機関車側のピニオンギヤと噛合させて機関車を登坂させるアプト登坂装置が用いられている。これに対して、本実施の形態に係る走行設備においては、たとえば、75/1000程度までの勾配路に、レール200を敷設することによって、技術的には、高価なアプト式登坂装置を使用せずに、移動体の走行が可能となる。
【0064】また、本実施形態に係るレール200を、特別の領域、例えば、機関車等の移動体を停止させるべき位置を含む所定の長さの領域にだけ敷設するようにしてもよい。これにより、移動体の制動距離を30%ないし40%短縮することができて、安全性を向上させることが可能となる。
【0065】このように、鋼複合材からなる頭部を有するレールを、勾配路、および/または、車両停止位置の近傍に配置し、他の路線には、従来の鋼製レールを配置することにより、コストをそれほど増大させることなく、安全性の高い走行システムを構築することができる。
【0066】次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図8Aは、本実施の形態に係るレールの断面図である。図8Bはその側面図である。
【0067】これらの図に示すように、本実施形態に係るレール300は、頭部310、腹部320、底部330および頭部形成体350から構成されている。また、この実施の形態に係るレール300の頭部310ないし底部330は、鋼製の22kgレール(1m当たりの重量が22kgの規格標準値)と同一であり、頭部形成体350が、22kgレールであるレール本体305の上に取り付けられている。頭部形成体350は、後述する材料で形成されている。
【0068】底部330は、抑え部材331や、犬釘(図示せず)などにより、枕木(図示せず)に固定されるようになっている。また、頭部310には、所定の間隔(たとえば、500mm〜600mm)で、ねじ孔311が設けられている。
【0069】この実施の形態に係るレール300の頭部形成体350の高さHは30mmないし50mm、幅Wは50mmないし60mmである。幅Wは、22kgレールの(頭部310の)幅とほぼ一致していることが好ましい。
【0070】頭部形成体350は、第4の実施形態の頭部210と同様に、鋼複合材により形成されている。
【0071】この実施形態においては、図8Aに示すような断面形状を有するように、材料を押出加工して、所定の長さの細長い角材を製作した上、熱処理後、孔を機械加工している。所定の間隔で、貫通孔351を穿孔することにより、頭部形成体350が完成する。頭部形成体350を、対応する位置にねじ孔311を設けたレール本体305の上に載せ、ボルト352をねじ孔311にねじ込んで締め付けることにより、頭部形成体350をレール300に固定する。これにより、レール300が完成する。なお、頭部形成体350を取り付けたレールの高さが、レール本体305の高さよりも高くなる。このため、レール本体305のみを設置する路線と、頭部形成体付きのレール300を設置した路線(たとえば、勾配路)との間に、レール本体305上にテーパー付きの部材を載せたレールを配置して、車両が円滑に走行できるようになっている。
【0072】第4の実施形態と同様に、第5の実施形態に係るレール300を所定の長さだけ直列に接続して、所定の勾配以上の勾配路や、機関車が停車すべき位置の近傍に配置し、他の路線には、通常の22kgレールを配置するのが好ましい。このように走行設備を構築することにより、コストをそれほど増大させることなく、安全性の高い走行システムを構築することができる。
【0073】本発明は、以上の各実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、第4の実施形態において、頭部210が、鋼複合材で形成されているが、そのサイズ、形状は、これに限定されるものではなく、少なくとも、車輪の踏面と接触する部分を含むように、鋼複合材からなる頭部形成体を設ければ足りる。
【0074】また、第5の実施形態においては、22kgレールの上に、頭部形成体350を載置しているが、これに限定されるものではなく、15kgレール、30kgレール、37kgレールなどの上に、頭部形成体を載置しても良い。なお、この場合に、頭部形成体の幅と、レールの幅とがほぼ一致していることが好ましい。
【0075】さらに、上記実施形態に係るレールを含む走行設備上を走行する移動体は、機関車に限定されるものではない。例えば、μが大きく、耐力値の大きい踏面形成体を有する車輪により、高荷重で、人や資材を運搬する自走式台車であってもよい。また、車輪踏面に高荷重がかかる状態で作業を行う自走式作業機等であっても良い。
【0076】また、本明細書において、一つの部材の機能が、二つ以上の部材により実現されても、若しくは、二つ以上の部材の機能が、一つの部材により実現されてもよい。例えば、前述した踏面形成体と本体とは、別個の部材を組み合わせたものであるが、踏面形成体を本体と一体に設けることも可能である。
【0077】本発明によれば、レールとの踏面に、鋼複合材料からなる踏面形成体を設けたため、ウレタンゴムなどと比べて耐磨耗性に優れ、レールとの間に高い摩擦係数をもつ車輪を得ることが可能となる。しかも、大きな耐力を有するため、耐久性のよい車輪を得ることができる。
【0078】本発明の好ましい実施態様においては、車輪およびレールの少なくとも一方について、両者の接触面に、鋼複合材を設けている。これにより、レール鋼と車輪(踏面形成体)との間の摩擦係数を、実験で約0.3〜0.5程度にすることができ、移動体の重量を増大させることなく、この車輪を有する移動体の牽引力、あるいは、ブレーキ性能をより向上させることが可能となる。例えば、そのような材料を設けたレールを、勾配領域、停止領域に敷設することで、移動体を特別大きな重量とすることなく、短距離制動を実現することができる。
【0079】このように、本発明によれば、高い耐磨耗性、耐寿命性を備えつつ、レールとの間に高い摩擦係数を有する、移動体用車輪および移動体を実現することができる。また、高い耐圧力性、耐寿命性を備えつつ、従来通りの鋼製の車輪との間に高い摩擦係数を有するレールを実現することができる。
【0080】
【発明の効果】本発明によれば、高い摩擦係数と、耐久性の大きな車輪を得ることができる。また、それを用いた移動体を実現することができる。さらに、高い摩擦係数と、耐久性の大きなレールを得ることができる。また、それを用いた層好設備を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】591267350
【氏名又は名称】トモエ電機工業株式会社
【住所又は居所】東京都品川区南大井6丁目28番6号
【出願日】 平成14年1月24日(2002.1.24)
【代理人】 【識別番号】100084032
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 岩男 (外2名)
【公開番号】 特開2003−211904(P2003−211904A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−16101(P2002−16101)