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【発明の名称】 車両用転がり軸受装置
【発明者】 【氏名】村田 順司
【住所又は居所】大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋精工株式会社内

【要約】 【課題】車両用転がり軸受装置では、転動体としての玉、特に他方列の玉に働く荷重は大きく、その軌道面を有する椀形外輪部材に大きな荷重が働くことになるが、軸部は軽量化のために中空断面に形成されており、このため車両の走行に伴なって軸部に歪が生じるおそれがあった。

【解決手段】車両用転がり軸受装置1において、椀形外輪部材10の軸部9を形成する際に、各列の玉3,4間の径方向の中心線p1と他方列の玉4の接触角延長線p2とで囲まれる範囲内に支持壁35が残るように旋削加工することで、特に他方列の玉4に大きな負荷荷重が働いた場合であっても支持壁35の支持力により椀形外輪部材10に歪が生じるのを防止することができ、長期に亙って玉3,4の転動を円滑に行い得、支持壁35を残してその両側を中空断面とすることで重量の増加を抑え、回転トルクが大きくなることもない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車体側に非回転に支持される外輪部材と、この外輪部材に車両アウタ側列および車両インナ側列の転動体を介して軸心回りに回転自在に支持された内輪部材とを備え、この内輪部材が、外周面が車両アウタ側列の転動体の内輪軌道面とされて、車輪を取付けるための取付けフランジを有する筒状内輪部材と、外周面が車両インナ側列の転動体の内輪軌道面とされるとともに、前記筒状内輪部材の中心穴に挿通する軸部を介して筒状内輪部材と回転一体に組付けられる等速自在継手の椀形外輪部材とから構成された車両転がり軸受装置であって、前記軸部の内周面の、前記各列の転動体間の径方向の中心線と車両インナ側列の転動体の接触角延長線とで囲まれる範囲内に、前記転動体から伝えられる負荷荷重を支持するための径方向に沿った支持部材が設けられ、前記軸部における支持部材の少なくとも車両アウタ側が中空断面とされたことを特徴とする車両用転がり軸受装置。
【請求項2】 支持部材が軸部の内周面に一体的に形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両用転がり軸受装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用転がり軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の車両用転がり軸受装置を図3に示す。これは、車体側にナックル60を介して非回転に組込まれる外輪部材61と、この外輪部材61に2列の玉62,63を介して軸心64回りに回転自在に支持される内輪部材65とを備えている。
【0003】この内輪部材65は、外周面が一方列(車両アウタ側)の玉62の内輪軌道面として用いられるとともに、外周面途中に径方向外向きに突出して車輪(ブレーキディスクロータおよびタイヤホイール)を取付けるためのハブフランジ66を有するハブホイール67と、このハブホイール67の中心穴にスプライン嵌合する軸部68を一体に形成した等速ジョイント69の椀形外輪部材70とから構成されている。この椀形外輪部材70の外周面が他方列(車両インナ側)の玉63の内輪軌道面として用いられている。
【0004】また、前記軸部68は軽量化のために中空断面に形成され、椀形外輪部材70の椀形部71と軸部68との間には、椀形部71内部の潤滑剤が外部に漏れるのを防止するための蓋部材72が嵌着されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の車両用転がり軸受装置において、玉62,63、特に他方列の玉63に働く荷重は大きい。このため椀形外輪部材70には大きな荷重が働くことになるが、上述のように軸部68は軽量化のために中空断面に形成されている。従って、車両の走行に伴なって、軸部68に歪が生じるおそれがあった。
【0006】そこで本発明は、上記課題を解決し得る車両用転がり軸受装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明における課題解決手段は、車体側に非回転に支持される外輪部材と、この外輪部材に車両アウタ側列および車両インナ側列の転動体を介して軸心回りに回転自在に支持された内輪部材とを備え、この内輪部材が、外周面が車両アウタ側列の転動体の内輪軌道面とされて、車輪を取付けるための取付けフランジを有する筒状内輪部材と、外周面が車両インナ側列の転動体の内輪軌道面とされるとともに、前記筒状内輪部材の中心穴に挿通する軸部を介して筒状内輪部材と回転一体に組付けられる等速自在継手の椀形外輪部材とから構成され、前記軸部の内周面の、前記各列の転動体間の径方向の中心線と車両インナ側列の転動体の接触角延長線とで囲まれる範囲内に、前記転動体から伝えられる負荷荷重を支持するための径方向に沿った支持部材が設けられ、前記軸部における支持部材の少なくとも車両アウタ側が中空断面とされている。
【0008】このように、軸部の内周面の、各列の転動体間の径方向の中心線と、車両インナ側列の転動体の接触角延長線とで囲まれる範囲内に、径方向に沿った支持部材を設け、軸部における支持部材の少なくとも車両アウタ側を中空断面としたことによれば、軸部の重量を特別に大きくすることがないとともに転動体から伝わる荷重負荷を支持部材で受けて軸部の歪変形を防止することができる。
【0009】また、前記支持部材が軸部の内周面に一体的に形成されたことによれば、転動体から伝わる荷重負荷を支持するために特別な部材を設ける必要がない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態に係る車両用転がり軸受装置を説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係る車両用転がり軸受装置の全体構成を示す断面図である。
【0011】この車両用転がり軸受装置1は、車体側に非回転に組込まれる外輪部材2と、この外輪部材2に、冠形保持器(符号省略)によって円周方向等配位置にそれぞれ保持された2列の玉(転動体の一例)3,4を介して軸心5回りに回転自在に支持される内輪部材6とを備えている。
【0012】前記外輪部材2の外周面途中には、径方向外向きに突出する支持フランジ21が形成され、この支持フランジ21が車体側に組込まれたナックルに結合されることで外輪部材2が車体に非回転に支持される。
【0013】前記内輪部材6は、外周面が一方列(車両アウタ側)の玉3の内輪軌道面として用いられるハブホイール(筒状内輪部材)8と、このハブホイール8の中心穴にスプライン25を介して挿通する軸部9を椀形部10aの車両アウタ側に一体形成した等速ジョイント(等速自在継手)Jの椀形外輪部材10とから構成されている。
【0014】この等速ジョイントJは、ツェッパタイプ(バーフィールド型)と呼ばれるものが用いられており、前記椀形外輪部材10と、その内部に、駆動シャフト50の端部を挿通固定した内輪部51、前記ハブホイール8を駆動シャフト50に対して傾動案内するための玉52、およびその保持器53を備えている。
【0015】前記ハブホイール8は、その外周面途中に、車輪(ブレーキディスクロータおよびタイヤホイール)を取付けるための径方向外向きに突出したハブフランジ(取付けフランジ)7が形成されている。
【0016】前記外輪部材2と内輪部材6の間の環状軸受空間26を、軸心5方向両側で密封するための密封装置27,28が設けられ、車両インナ側の密封装置27は、外輪部材2の内周面に嵌着された芯金29と、この芯金29に固定されて、椀形外輪部材10の外周曲面に3箇所で接触するリップ部を有する弾性シール体31とを有し、前記芯金29の外周部は軸心5方向(車両インナ側)に延長されて延長部32が形成され、椀形外輪部材10の外周面に嵌着されて前記延長部32を囲繞することで延長部32との間でラビリンス用隙間を形成する断面コ字形の環体33を有している。
【0017】車両アウタ側の密封装置28は、外輪部材2の内周面に嵌着された芯金29aと、この芯金29aに固定されて、ハブホイール8の円筒外周面からハブフランジ7の壁面に連続する湾曲面部分に接触するリップ部を有する弾性シール体31aとから構成されている。
【0018】前記ハブホイール8の内周面には、雌スプラインが軸心5方向長さのほぼ全域に亙って形成され、この雌スプラインとほぼ同じ長さで雄スプラインが前記軸部9の外周面に形成され、この軸部9は、雌スプラインに雄スプラインが圧入されるようにしてハブホイール8に嵌合(内嵌)され、軸部9の車両アウタ側端部は径方向外向きに拡径されて、ハブホイール8の端面に対してかしめられることで、椀形外輪部材10とハブホイール8とが軸心5回りに回転一体に連結されている。
【0019】前記軸部9の内方の、前記各列の玉3,4間の径方向の中心線p1と他方列の玉4の接触角延長線p2とで囲まれる範囲内に、玉3,4から伝わる負荷荷重を支持するための、径方向に沿った支持壁(支持部材の一例)35が、軸部9の内周面に一体的に形成され、前記軸部9における、支持壁35の車両アウタ側および車両インナ側は中空断面とされている(支持壁35の車両インナ側は切削加工されている)。
【0020】また前記支持壁35は、その外径側すなわち基部35aの幅(軸心5方向の長さ)が最も広く、軸心5に近付くに従って順次幅が狭くなるよう形成され、支持壁35の軸心5方向の中心でかつ径方向の中心に位置する中心部35bが最も狭い幅に形成されることで、車両用転がり軸受装置1の重量を増加させないような形状に形成されている。なお、この実施形態では支持壁35の基部35aの車両アウタ側は、前記中心線p1と接触角延長線p2とで囲まれる範囲からわずかにはみ出ているが、支持壁35の実質的な支持力に悪影響を与えることはない。
【0021】上記構成において、図示しない駆動力伝達軸が駆動すると、その駆動力が椀形外輪部材10(等速ジョイントJ)に伝達され、これに回転一体に取付けられたハブホイール8が軸心5回りに回転し、車輪が回転する。
【0022】ところで、このような車両用転がり軸受装置1では、両列の玉3,4のうち特に他方列の玉4に大きな負荷荷重が働く。そこで椀形外輪部材10の軸部9を形成する際に、各列の玉3,4間の径方向の中心線p1と他方列の玉4の接触角延長線p2とで囲まれる範囲内に支持壁35が残るように旋削加工する。なおこの支持壁35は、他方列の玉4の中心を通る径方向面上にほぼ一致する。
【0023】このような位置に支持壁35を形成することにより、両列の玉3,4のうち特に他方列の玉4に大きな負荷荷重が働いた場合であっても、この支持壁35の支持力により、椀形外輪部材10に歪が生じるのを防止することができ、玉3,4の転動を円滑に行い得る。また軸部9には支持壁35を残してその両側は中空断面であるので、椀形外輪部材10の重量が著しく増加するのが抑えられており、これにより内輪部材6の回転トルクを特に大きくすることもない。
【0024】さらにこの支持壁35によって、椀形外輪部材10の椀形部10a内の潤滑剤が外部(車両アウタ側)に漏れるのを防止することができる。
【0025】次に本発明の第二の実施形態を、図2の断面図に基づいて説明する。この車両用転がり軸受装置1が、上記第一の実施形態に係る車両用転がり軸受装置1と異なる構成を説明する。上記第一の実施形態に係る車両用転がり軸受装置1では、支持壁35は、他方列の玉4の中心を通る径方向面上にほぼ一致する位置に形成したが、本発明の第二の実施形態における車両用転がり軸受装置1では、支持壁35の外径側の基部35a、および中心部35bの全てが各列の玉3,4間の径方向の中心線p1と、他方列の玉4の接触角延長線p2とで囲まれる範囲内に位置している点で異なる。他の構成は上記第一の実施形態と同様であるので、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0026】そしてこの構成によれば、上記第一の実施形態の場合に比べて基部35aの幅を狭くしてあっても、支持壁35の実質的な支持力に悪影響を与えることなく軽量化することができる。他の作用効果は上記第一の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0027】なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では、支持壁35は軸部9における車両インナ側および車両アウタ側の内部を旋削加工して一部を残すことで形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、軸部9を全て中空断面に形成(切削加工)し、各列の玉3,4間の径方向の中心線p1と他方列の玉4の接触角延長線p2とで囲まれる範囲内に、可及的に軽量で充分な支持力を有する、軸部9とは別部材の例えば円板状に形成した支持壁35を軸部9に嵌着(内嵌)するようにしてもよい。この場合も上記各実施形態と同様の作用効果を奏し得る。
【0028】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明は、車体側に支持される外輪部材に車両アウタ側列および車両インナ側列の転動体を介して回転自在に支持された内輪部材を備え、内輪部材を、車両アウタ側列の転動体の内輪軌道面を有して車輪を取付けるための筒状内輪部材と、車両インナ側列の転動体の内輪軌道面を有するとともに筒状内輪部材の中心穴に挿通する軸部を介して筒状内輪部材と回転一体に組付けられる椀形外輪部材とから構成し、軸部の内周面の、各列の転動体間の径方向の中心線と車両インナ側列の転動体の接触角延長線とで囲まれる範囲内に径方向に沿った支持部材を設け、軸部における支持部材の少なくとも車両アウタ側を中空断面としたので、軸部の重量を特別に大きくすることがないとともに転動体から伝わる荷重負荷を支持部材で受けて軸部の歪変形を防止することができ、転動体の転動を長期に亙って円滑に行い得る。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区南船場3丁目5番8号
【出願日】 平成13年11月8日(2001.11.8)
【代理人】 【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
【公開番号】 特開2003−146004(P2003−146004A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−343159(P2001−343159)