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【発明の名称】 装飾体
【発明者】 【氏名】小玉 英俊
【住所又は居所】埼玉県草加市吉町4−1−8 ぺんてる株式会社草加工場内

【要約】 【課題】非鉄金属基材上に漆塗膜を形成し、装飾効果を高めた装飾体を提供すること。また漆塗膜を非鉄金属基材に強固に密着させることにより耐久性の高い装飾体を提供すること。

【解決手段】銅又は銅合金若しくはアルミニウム又はアルミニウム合金よりなる非鉄金属基材上に、黒色クロム皮膜、黒色ニッケル皮膜、アルミニウムの陽極酸化皮膜といった単一金属からなる金属酸化物層を形成し、この金属酸化物層の上に漆塗膜を形成した装飾体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 非鉄金属基材上に単一金属の酸化物層を形成し、該金属酸化物層の上に漆塗膜を形成してなる装飾体。
【請求項2】 非鉄金属基材の材質が銅又は銅合金若しくはアルミニウム又はアルミニウム合金である請求項1記載の装飾体。
【請求項3】 金属酸化物層が黒色クロム皮膜、黒色ニッケル皮膜又はアルミニウムの陽極酸化皮膜である請求項1又は2記載の装飾体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、装飾の目的で、非鉄金属からなる基材表面に天然の漆塗膜を形成した装飾体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の漆器製品は、木材や樹脂材料の表面に直接漆を塗布し漆風呂と呼ばれるところで自然乾燥により塗膜が形成されていた。また金属基材の漆器製品は、鉄瓶などの鉄製基材に直接漆を塗布し焼き付け法により漆塗膜が形成されていた。
【0003】また筆記具・化粧具などの軸筒に用いられる基材金属は、アルミニウム又はアルミニウム合金若しくは銅又は銅合金である。これらの金属基材上に直接漆を塗ったもの、また該金属基材上に合成樹脂塗膜を形成してから漆を塗ったものがあった。
【0004】さらに基材金属への漆塗膜の密着性を改善するため、金属表面を機械的に荒らしてアンカ−効果を狙ったり、クロメ−ト皮膜の形成などの表面改質を行ったり、プライマーと呼ばれる合成樹脂層を形成し漆を塗布する方法が取られていた。
【0005】
【発明が解消しようとする課題】金属表面は、自然酸化皮膜が存在する。この自然酸化皮膜は、めっき及び塗装の際に基材金属と形成皮膜の密着性の低下を招く原因となることが知られている。基材の装飾性を高めるため形成された漆塗膜が基材から剥離することは、装飾効果が著しく損なわれると同時に基材の防錆効果も低下することになるので避けなければならない事故である。
【0006】また、銅及び銅合金並びにアルミニウム及びアルミニウム合金上に直接漆を塗布した場合、漆塗膜の前記金属への密着性は不十分であった。また漆塗膜の密着性は、自然乾燥より焼き付け乾燥の方が良くなる傾向にあることも知られている。しかしながら、長期の使用環境において汗や水分が漆塗膜に浸透し基材金属まで達したとき、基材金属と漆塗膜の界面で汗や水分により接着構造が破壊されることにより、漆塗膜が剥離するという問題があった。
【0007】また、基材金属上に合成樹脂層を形成し、その後、漆塗膜を形成する場合は、基材金属と合成樹脂層間そして合成樹脂層と漆塗膜間の密着力のバランスが取れている必要がある。基材金属と合成樹脂層間そして合成樹脂層と漆塗膜間の密着力は、塗膜の破壊強度と同等かこれを超える強度が必要である。この両者の密着力のバランスを取るために合成樹脂は、基材金属そして漆の両者に密着する材質を選定する必要があった。密着力のバランスがくずれると基材から合成樹脂と漆塗膜が同時に剥離したり、合成樹脂層の上から漆塗膜が剥離したりという事故が発生していた。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点に鑑み鋭意研究の結果得られたものであって、非鉄金属基材上に単一金属の酸化物層を形成し、該金属酸化物層の上に漆塗膜を形成してなる装飾体を要旨とするものである。
【0009】以下、図面に基づき本発明を詳細に説明する。1は、基材である。基材金属の材質は銅および銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、チタンおよびチタン合金などの市販の金属が用いられる。これらの金属の内、機械加工性、金属酸化物の形成のしやすさおよびコストの点で銅および銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金が好ましい。
【0010】2は、金属酸化物層である。金属酸化物層は、めっき及び陽極酸化により基材金属上に形成される。金属酸化物は、チタンやアルミニウムの陽極酸化皮膜,クロムやニッケルの酸化皮膜などが挙げられる。金属酸化物層は、基材金属と同一かまたは基材金属と異なる単一の金属よりなる酸化物の層である。この金属酸化物層は、めっき及び陽極酸化により形成されていることから基材から剥離することはない。またこの金属酸化物層は、漆との親和性が高く強い密着力が得られる。金属酸化物層は、黒色クロム皮膜、黒色ニッケル皮膜、アルミニウムの陽極酸化皮膜を用いる方が好ましい。これらの単一金属酸化物皮膜はミクロ孔あるいは凹凸を多数有している。また漆は水溶性の樹脂であり極性を有する表面には良く拡散する性質を有する。このことから漆がミクロ孔あるいは凹凸へ浸透・拡散しアンカー効果が得られ、密着力が高まるものであ。またこの金属酸化物皮膜表面には水酸基(−OH)を初めとする多数の官能基が存在する。漆中のウルシオール等の高分子化合物が有する酸素の2重結合基(C=O)が、この金属皮膜表面の水酸基(−OH)と水素結合あるいは共有結合を形成し、漆塗膜の密着性を高めるものである。またこの前記金属酸化皮膜は金属の自然酸化皮膜や表面改質のための皮膜と比較し、化学的に非常に安定である。このことから漆塗膜の塗布条件、乾燥条件等のバラツキや環境条件によらず安定した接着力の漆塗膜が得られるものである。
【0011】3は、漆塗膜である。漆塗膜は、従来の漆塗り技法により形成される。漆塗膜上には、装飾性をさらに高めるために蒔絵・螺鈿処理を行っても良い。
【0012】
【実施例】<実施例1>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmの真鍮パイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、公知の方法でめっき前処理を行い、市販の黒色クロムめっき液を用いて黒色クロム皮膜を0.5μm形成した。水洗・乾燥の後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0013】<実施例2>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmの真鍮パイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、公知の方法でめっき前処理を行い、市販の黒色ニッケルめっき液を用いて黒色ニッケル皮膜を0.5μm形成した。水洗・乾燥の後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0014】<実施例3>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmのアルミニウムパイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、30℃,10%水酸化ナトリウム液に30秒間浸漬した。水洗の後、室温,10%硝酸液に30秒間浸漬した。その後20℃,180ml/L硫酸液中で電流密度1.5A/dm2,10分の条件で陽極酸化を行い5μmの陽極酸化皮膜を形成した。水洗の後50℃,イオン交換水に5分間浸せきし、水を切って乾燥した。その後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0015】<実施例4>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmのアルミニウムパイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、公知の無電解ニッケルめっき法でニッケル皮膜を5μm形成した。次に市販の黒色クロムめっき液を用いて黒色クロム皮膜を0.5μm形成した。水洗・乾燥の後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0016】<比較例1>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmの真鍮パイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0017】<比較例2>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmの真鍮パイプを基材として用いた。100μmの無定型の炭化珪素粒子を用いて10kg/cm2 の圧力で炭化珪素粒子を基材表面に吹き付け表面を荒らした。基材を溶剤で脱脂後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0018】<比較例3>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmのアルミニウムパイプを基材として用いた。100μmの無定型の炭化珪素粒子を用いて10kg/cm2 の圧力で炭化珪素粒子を基材表面に吹き付け表面を荒らした。基材を溶剤で脱脂後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0019】<比較例4>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmの真鍮パイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、硫酸・クロム酸の混酸液に浸漬し、クロメ−ト皮膜を形成した。水洗・乾燥の後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0020】<比較例5>外径φ10.0mm×内径φ9.4mm×長さ50mmの真鍮パイプを基材として用いた。基材を溶剤で脱脂後、硫酸・クロム酸の混酸液に浸漬し、クロメ−ト皮膜を形成した。水洗・乾燥の後、市販のアクリル系合成樹脂塗料(MG1000黒,関西ペイント(株)製)を用いてスプレ−塗装し、乾燥により10μmの合成樹脂皮膜を形成した。その後、黒漆を10μmの厚さに塗布し乾燥した。円筒形の軸に黒漆が塗布された装飾体が得られた。
【0021】上記実施例、比較例で得た装飾体を用いて漆層の密着性を試験した。結果を表1に示す。
試験条件試験片の数 :n=5碁盤目テ−プ法:JISK5400,8.5.2碁盤目テ−プ法による沸騰水試験 :沸騰したイオン交換水中に試験片を25分間浸せきし、乾燥の後碁盤目テ−プ法を行った。
【0022】
【表1】

【0023】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、非鉄金属基材と漆塗膜の間にポ−ラスな金属酸化物層を形成するようになしたため、長期の使用にも耐え、かつ使用環境によっても漆塗膜が剥離しない信頼性の高い装飾体が得られる。また漆と基材金属との密着性が確保されることから漆塗膜をダイヤカットした装飾品、漆塗膜を絞り加工した装飾品など様々な形状・加工方法の漆器製品が提供できる。さらに漆塗膜上に蒔絵処理や螺鈿処理を行うことにより、いっそう装飾性の高い装飾体が得られる。
【出願人】 【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋小網町7番2号
【出願日】 平成14年5月30日(2002.5.30)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−341296(P2003−341296A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−156861(P2002−156861)