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【発明の名称】 電子記録具
【発明者】 【氏名】時田 将義
【住所又は居所】千葉県柏市永楽台1−3−10 テクサス株式会社内

【要約】 【課題】電子ペーパーに対して、その表面に手書き文字を記入したり、印影を表示することができる、電子ペーパー用記録具を提供することである。

【解決手段】電界に応じて色が変化する電子インク層1を備えた電子ペーパーP1に文字や図柄などを記録する電子記録具であって、本体6と、この本体の先端に設けた本体側電極6aと、電源回路7と、この電源回路を介して上記本体側電極に接続した下敷き電極5とからなり、上記本体を、上記下敷き電極に対して移動可能にするとともに、上記下敷き電極上に電子ペーパーを載せて上記電源回路を作動させたときに、上記本体側電極と上記下敷き電極との間に電界を発生させ、この電界に応じて上記電子インク層の色を変化させる構成にした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電界に応じて色が変化する電子インク層を備えた電子ペーパーに文字や図柄などを記録する電子記録具であって、本体と、この本体の端部に設けた本体側電極と、電源回路と、この電源回路を介して上記本体側電極に接続した下敷き電極とからなり、上記本体を、上記下敷き電極に対して移動可能にするとともに、上記下敷き電極上に電子ペーパーを載せて上記電源回路を作動させたときに、上記本体側電極と上記下敷き電極との間に電界を発生させ、この電界に応じて上記電子インク層の色を変化させる構成にした電子記録具。
【請求項2】 本体側電極の表面に特定の文字または図柄形状の導体からなる導体部を備えた請求項1に記載の電子記録具。
【請求項3】 本体側電極の表面に特定の文字または図柄形状の導体部を備えるとともに、下敷き電極の表面に上記特定の文字または図柄形状の鏡像形状の導体部を備え、上記本体側の導体部と、下敷き電極の導体部とを対向する位置に配置した請求項2に記載の電子記録具。
【請求項4】 本体側電極と下敷き電極のいずれか一方または両方が誘電体粒を混入した導電体を備えた請求項1〜3のいずれか1に記載の電子記録具。
【請求項5】 本体電極と下敷き電極との間に、AM変調された電圧を印加するとともに、このAM変調波形を調整する波形調整手段を備えた請求項1〜4のいずれか1に記載の電子記録具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、電子インク層を備えた電子ペーパーに対して、文字や、図柄を記録する電子記録具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、図6に示すような電子ペーパーディスプレイPがあった。これは、電界によって、色を変化させる電子インク層1を透明電極2とTFT(thin film transistor)層3とで挟んで構成されたものである。上記TFT層3は、要素スイッチ4をマトリックス状に配置した層であり、上記透明電極2側がディスプレイの表面になる。上記電子インク層1は、半球ごとに白と黒に着色された2色粒子を樹脂のバインダー中に分散した電子インクからなる層である。上記2色粒子は、電界をかけると電界の方向に応じて向きを変える性質を持っている。そして、上記電極2とTFT層3との間にはコンピュータCを接続して、電荷パターンを生成するようにしている。
【0003】上記2色粒子を、例えば、白側表面は負、黒側表面は正となるようにしておけば、ディスプレイの表面側電極2に負の電荷パターンを与えたとき、この負電荷によって上記粒子の黒側が上に向くので、上記電荷パターンに対応した画像を表示することができる。上記電荷パターンは、上記TFT層3の要素スイッチ4のスイッチングによって制御されるが、このスイッチングは、コンピュータCで作成したデジタルデータに応じて行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような電子ペーパーディスプレイPは、コンピュータ用の超薄型ディスプレイとして利用されている。超薄型で、紙とほとんど変わらない外観をしているので、設置場所をとらず、携帯にも便利である。そのため、コンピュータで作成した回覧文書を表示させた状態で、電子ペーパーディスプレイPだけを回覧することもできる。回覧が終了して、必要がなくなったときには、当然それを消去することもできる。
【0005】しかし、この電子ペーパーディスプレイPにおいて、上記電子インクを利用して表示するものは、コンピュータから出力されたデータである。したがって、回覧された上記文書に対して、確認済みのサインを記入したり、加筆をしたりすることはできなかった。また、何も表示されていない電子ペーパーディスプレイPに対しても、手書き文字を電子インクによって表示させることはできなかった。
【0006】もちろん、電子ペーパーディスプレイP表面に、強引に、朱肉を使って捺印したり、ボールペンなどで、加筆したりすることはできる。しかし、これらの印影や、サイン、文章等は、上記電子インクによって表示されたものではない。つまり、通常の紙に対しての記録と同じである。したがって、電子インクによる文章が消去された後でも、特別に薬品等で拭き取らない限り、上記手書き文章や印影だけが残ってしまうことになる。これでは、電子ペーパーディスプレイPを繰り返し利用することができなくなってしまう。
【0007】この発明の目的は、電子ペーパーに対して、その表面に手書き文字を記入したり、印影を表示することができる電子ペーパー用記録具を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、電界に応じて色が変化する電子インク層を備えた電子ペーパーに文字や図柄などを記録する電子記録具であって、本体と、この本体の端部に設けた本体側電極と、電源回路と、この電源回路を介して上記本体側電極に接続した下敷き電極とからなり、上記本体を、上記下敷き電極に対して移動可能にするとともに、上記下敷き電極上に電子ペーパーを載せて上記電源回路を作動させたときに、上記本体側電極と上記下敷き電極との間に電界を発生させ、この電界に応じて上記電子インク層の色を変化させる構成にした点に特徴を有する。
【0009】第2の発明は、本体側電極の表面に特定の文字または図柄形状の導体からなる導体部を備えた点に特徴を有する。第3の発明は、本体側電極の表面に特定の文字または図柄形状の導体部を備えるとともに、下敷き電極の表面に上記特定の文字または図柄形状の鏡像形状の導体部を備え、上記本体側の導体部と、下敷き電極の導体部とを対向する位置に配置した点に特徴を有する。第4の発明は、本体側電極と下敷き電極のいずれか一方または両方が誘電体粒を混入した導電体を備えた点に特徴を有する。誘電体粒の部分には電界が発生しないので、上記誘電体に対応する部分だけ、電圧が印加されない。第5の発明は、本体電極と下敷き電極との間に、AM変調された電圧を印加するとともに、このAM変調波形を調整する波形調整手段を備えた点に特徴を有する。
【0010】
【発明の実施の形態】図1、図2に、この発明の第1実施例を示す。図1は、この発明の電子ペーパー用記録具を用いて、電子ペーパーP1に手書き文字を記録している状態を示している。この電子ペーパーP1は、電子インク層1だけで構成されている。そして、この電子インク層1の着色粒子は、従来例の電子ペーパーディスプレイPと同様に、電子ペーパーP1の表面が裏面に対して負になったとき、この電子ペーパーP1を貫く電界によって上記粒子の黒側が上に向くものとする。
【0011】また、上記電子ペーパーP1に線を記録するこの発明の記録具は、下敷き電極5と、ペン本体6と、電源回路7とからなる。上記ペン本体6の先端は、この発明の本体側電極であるペン電極6aであり、このペン電極6aと上記下敷き電極5との間に、上記電源回路7が電圧を印加するようにしている。上記電源回路7は、例えば、図2の波形■に示すようなAM変調電圧を印加する回路である。つまり、上記電源回路7には、印加電圧の大きさと波形を調整するAM波形調整手段を備えている。ただし、この第1実施例では、上記ペン本体6のペン電極6aが下敷き電極5に対して、負になるような電圧を印加するようにしている。
【0012】次に、上記ペン本体6を用いて上記電子ペーパーP1に線を記録する手順を説明する。線を記録するために、まず、電子ペーパーP1を下敷き電極5に載せる。そして、上記電源回路7を作動させた状態で、上記ペン電極6aを電子ペーパーP1上で矢印方向に移動させ、電子ペーパーP1の表面に線を引く。上記ペン電極6a、つまり、下敷き電極5に対して負電極を表面に近づけることにより、上記電子ペーパーP1には、上記ペン電極6aの軌跡に対応した黒い線が記録される。負のペン電極6aを電子ペーパーP1表面に接触させることにより、上記インク層1内の着色粒子の黒側が表面に向くからである。このようにして、記録された線や文字は、電源を切っても保持される。
【0013】なお、上記電源回路7による印加電圧は、先に説明したように、AM変調させることができる。上記電子ペーパーP1の着色粒子に図2の波形■のような電圧を印加すれば、上記着色粒子を励振させて、その動きをよりスムーズに行うことができる。このことは、ペン本体6の移動に着色粒子の動きが追従しやすくなるということで、より正確な手書き文字や図柄を表示することができる。そして、上記AM変調波形は、電子インクの着色粒子の易動度に応じて調整する必要がある。以上のように、この発明の記録具を用いれば、電子ペーパーP1に手書き文字を表示させることができる。
【0014】また、上記下敷き電極5に、誘電体粒を混入させて、その誘電体粒の配置パターンを各下敷き電極5の固有のパターンにしておけば、そのパターンが、透かしの役割を果たす。上記下敷き電極5の誘電体粒部分は電界を発生させないので、上記ペン本体6で電子ペーパーP1上に線を引いても、上記誘電体粒部分で線がとぎれるはずである。つまり、黒色の線の中に白抜けができてしまう。一方、表面を黒色にしたペーパーに対して、白文字を記入する場合には、白文字の中に、黒ぽちが残ることになる。
【0015】そして、これらの白抜けや黒ぽちの配置パターンが、下敷き電極5固有のものである。つまり、下敷き電極5の中の誘電体粒の配置パターンによって、その下敷き電極5を用いて文字などを入力した表示のなかに、上記パターンに対応した透かしが含まれることになる。上記誘電体粒は、電子インクの着色粒子に比べて大きいが、黙視では気にならない大きさにしておけば、透かしをまねされることもないし、透かしによって表示された文字などが読めなくなるようなこともない。ただし、上記誘電体粒の大きさは、電子インク層や、ペン本体6の特性によって選択する必要がある。誘電体粒が大き過ぎると、表示された文字や図柄がとぎれて見にくくなるし、小さ過ぎた場合には、周囲の電界の漏れによって透かしパターンが不明確になってしまうからである。
【0016】そして、各記録具の誘電体粒パターン、すなわち、予め、透かし情報を各記録具と対応づけてコンピュータに記憶しておけば、記録済みの電子ペーパーに表示された透かしから、どの記録具を用いて記録したのかを判定することができる。例えば、データを表示した電子ペーパーに対し、データの改竄が行われたとしても、そのことを発見できる。なぜなら、電子ペーパーには、最後に利用した記録具の透かしが表示されるので、はじめにデータを記録したときに利用した記録具とは異なる装置を用いてデータの改竄を行うと、改竄後には、初期の透かしと異なる透かしが表示されるからである。したがって、その透かしを初期の装置の透かしと対比すれば、データが改竄されたことがわかる。
【0017】図3、図4に示す第2実施例は、電子ペーパー上に、印影を表示させるための記録具としての電子印鑑である。この電子印鑑は、下敷き電極5と、これに電源回路7を介して接続した印鑑本体8とを備えている。上記印鑑本体8は、本体側電極を備え、その電極面9には、図4(a)に示すような円9bの中に「花」の鏡像を形成している。この電極面9を電子ペーパーP1に押し付けると、電子ペーパーP1には、図4(b)のように円とその中の「花」の文字が印影として形成される。厳密には、電極面9は、導電体で形成された文字部9aと円9b(図4(a)参照)と、非導電性のゴムで形成されたその他の部分10とからなる。この第2実施例では、上記文字部9aと円9bが、この発明の導体部である。そして、部分10は、空隙にしておいてもかまわない。つまり、電極面9において導体部以外の誘電体からなる部分は、どのような材料で形成されていてもかまわない。そして、上記電源回路7によって印加される電圧は、文字部9aと円9bとからなる導体部とその部分に対応する下敷き電極5との間に電界を発生させる。
【0018】電子ペーパーP1に印影を表示させる手順は以下の通りである。電子ペーパーP1を下敷き電極5に載せ、電源回路7をオンにした状態で、上記印鑑本体8の電極面9を電子ペーパーP1面に押し付ける。あるいは、上記印鑑本体8を押し付けた状態で、電源回路7をオンにしてもよい。そして、上記下敷き電極5を正電極、本体側電極を負電極にする。電極面9が、負電極となると、電子インク層1の着色粒子の黒側が上を向く。電気的には、上記電極面9の中の文字部9aと円9bとが負電極になる。したがって、上記電子ペーパーP1上には、図4(b)の「花」の印影が表示される。なお、この第2実施例においても、電源回路7が、電子ペーパーP1への印加電圧をAM変調可能にすれば、より明確な印影を表示させることができる。上記印加電圧のAM変調波形は、電子インクの着色粒子の易動度に応じて調整する必要がある点は、上記第1実施例と同様である。
【0019】また、上記下敷き電極5に誘電体粒を混入させれば、上記第1実施例と同様に、電界を発生しない部分を作り、透かしパターンを形成することができる。さらに、印鑑本体8の本体側電極面9側に、誘電体粒を混在させて、そのパターンを透かし機能として利用することもできる。さらに、下敷き電極5側に、誘電体と導体部とによって文字や図柄形状を形成することもできる。この場合、本体側電極の電極面9には文字などを形成しなくても、その本体側電極を上記下敷き電極5に対向させて電源回路7をオンすれば、下敷き電極5に形成された文字や図柄形状を電子ペーパーP1に表示させることができる。また、下敷き電極5と本体側電極面9との両方にそれぞれ文字または図柄形状を有する導体部を備え、両者の文字または図柄を組み合わせることもできる。
【0020】図5に示す第3実施例は、印鑑本体8の本体側電極面9に対向する印影の鏡像を形成した下敷き電極11を備えた点が上記第2実施例と異なる。印鑑本体8は、第2実施例のものと同じでなので説明は省略する。一方、下敷き電極11は、本体側電極面9に対応する位置に設けられ、その電極面12は、印影文字の形状をした導体部を備えている。そして、上記本体側電極面9と下敷き電極面12とは、両面で、電子ペーパーP1を挟んだときに、両者に形成されている「花」の文字が一致するような位置関係を保っている。
【0021】したがって、両電極間に電子ペーパーP1を挟んで、電源回路7をオンすると、本体側電極が負電極、下敷き電極が正電極となり、本体電極面9の導体部と下敷き電極面12の導体部との間に電界が発生する。したがって、上記電子ペーパーP1表面に黒色の「花」の印影を表示させる。この第3実施例の場合には、下敷き電極も文字の形状をしているので、文字の外部への電界の漏れが少なくなり、第2実施例のように平面の下敷き電極5を用いた場合と比べて、よりくっきりした印影を表示させることができる。
【0022】また、この第3実施例の本体側電極面9の導体部と、下敷き電極面12の導体部のいずれか一方、または両方に、誘電体粒を混在させて、透かし機能を持たせることもできる。いずれか一方の電極面に誘電体粒を設ければ、その部分には電界が発生しないので、白抜けや黒ぽちとなるが、両電極の対応位置に誘電体粒を設ければ、より確実に透かしが形成されることになる。
【0023】上記第1〜第3実施例のように、この発明の記録具を用いれば、電子ペーパーに対して、通常の紙のように、手書き文字を記入したり、捺印したりすることができる。なお、上記実施例の電子ペーパーP1は、電子インク層1のみからなる。図6に示した従来例の電子ペーパーディスプレイPのように、一対の電極層を必要としない分、従来の電子ペーパーディスプレイPと比べて、製造コストを非常に低く抑えることができる。ただし、従来からある電極層を備えた電子ペーパーに対しても上記と同様に、手書き文字や印影を表示させることはできる。
【0024】さらに、この発明の記録具を用いて、コンピュータのディスプレイとして使用し、コンピュータで作成したデータを表示させた電子ペーパーディスプレイPに追記することもできる。例えば、上記電子ペーパーディスプレイPに、コンピュータでデータを表示させ、その状態でディスプレイPの電源を切る。電源を切った電子ペーパーディスプレイPを上記第1実施例の下敷き電極に載せれば、ペン本体6によって手書きで追記することもできる。また、上記電子ペーパーディスプレイPに第2、第3実施例の電子印鑑8で捺印することもできる。
【0025】
【発明の効果】第1〜第5の発明によれば、電子ペーパーに、通常の紙のようにして手書き文字を記入したり、印影を表示させたりすることができる。第2、第3の発明によれば、捺印するようにして、電子ペーパーに印影を表示させることができる。特に、第3の発明によれば、より明確な印影を表示させることができる。第4の発明によれば、どのような電子インク層の電子ペーパーに対しても、手書き文字や印影を明確に表示させることができる。第5の発明によれば、電子ペーパーへの記録に用いた記録具を特定することができる。これにより、電子ペーパーに記録したデータに対しての改竄が行われたときに、それを発見することができる。
【出願人】 【識別番号】301076094
【氏名又は名称】テクサス株式会社
【住所又は居所】千葉県柏市永楽台1−3−10
【識別番号】301076566
【氏名又は名称】沖山 美知子
【住所又は居所】東京都練馬区富士見台3丁目43−14
【出願日】 平成14年2月20日(2002.2.20)
【代理人】 【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
【公開番号】 特開2003−237294(P2003−237294A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−43653(P2002−43653)