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【発明の名称】 塗膜転写具
【発明者】 【氏名】蕨野 陽
【住所又は居所】東京都北区豊島6丁目10番12号 株式会社トンボ鉛筆内

【要約】 【課題】ラチェット機能が確実に働くとともに、使用時におけるラチェット音を低減させ、かつ品質管理も容易な逆転防止機構を備えた塗膜転写具を提供する。

【解決手段】前端が開口するケース内に、供給リール13と巻取リール14を配設し、前記開口より転写ヘッド6を突設させ、供給リール13から繰出した転写テープ15を、転写ヘッド6の尖端で反転させた後に、供給リール13の回転トルクを、供給ギヤ7および巻取ギヤ8を介して伝えることにより駆動される巻取リール14に巻取らせるようにした塗膜転写具1において、ケース内面上に、供給ギヤ7または巻取ギヤ8と同心円状に、かつ半径方向内向きの係合歯16aを有するラチェット歯部16を設けるとともに、供給ギヤ7または巻取ギヤ8の下面に、前記ラチェット歯部16に係合する半径方向外向きのラチェット爪17を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 前端が開口するケース内に、供給リールと巻取リールを配設し、前記開口より転写ヘッドを突設させ、供給リールから繰出した転写テープを、転写ヘッドの尖端で反転させた後に、供給リールの回転トルクを供給ギヤおよび巻取ギヤを介して伝えることにより駆動される巻取リールに巻取らせるようにした塗膜転写具において、ケース内面上に、供給ギヤまたは巻取ギヤと同心円状に、かつ半径方向内向きの係合歯を有するラチェット歯部を設けるとともに、供給ギヤまたは巻取ギヤの下面に、前記ラチェット歯部に係合する半径方向外向きのラチェット爪を設けることによって、供給リールまたは巻取リールの逆転防止機構を形成したことを特徴とする塗膜転写具。
【請求項2】 ラチェット爪を、供給ギヤまたは巻取ギヤに基部を固定し、かつ先端を半径方向外向きに弾性的に付勢させたアームの先端に設けたことを特徴とする請求項1記載の塗膜転写具。
【請求項3】 ラチェット爪を、アームの先端からケース内面向きに突出させて、半径方向外向きに設けたことを特徴とする請求項2記載の塗膜転写具。
【請求項4】 アームの先端をケース内面向きに弾性付勢させ、使用時において、ラチェット爪の底面が、ケース内面上を摺動するようにしたことを特徴とする請求項3記載の塗膜転写具。
【請求項5】 アームを、その中間部に半径方向内向きの湾曲部を設けたものとしたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、把持して、紙面等を押圧しながら後方へ移動させることにより、供給リールから繰出される転写テープに塗着されている修正用または糊料の塗膜を、紙面等に転写する塗膜転写具に関し、特に新規な逆転防止機構を備える塗膜転写具に関する。
【0002】
【従来の技術】塗膜転写具は、使用の際に、誤って転写テープを逆方向に動かしたり、あるいは転写テープを途中まで使用した塗膜転写具を持ち歩く際に、振動等によって転写テープが逆戻りしたりすることを防止するため、供給ギヤまたは巻取ギヤに逆転防止機構が設けられている。
【0003】図7は、従来の塗膜転写具(01)の分解斜視図、図8は、図7に示す塗膜転写具(01)における供給リール側の組立状態の要部平面図、図9は、同じく組立状態の要部縦断面図である。
【0004】扁平な1対の無蓋容器である上下ケース部材(02)(03)の開口面同士を対向させ一体化してケースを形成してある。上下ケース部材(02)(03)の前端は、切欠かれて開口(04)(05)され、この開口から転写ヘッド(06)を突出させてある。
【0005】下ケース部材(03)の内面には、供給ギヤ(07)および巻取ギヤ(08)それぞれの支軸(09)(010)が立設されている。供給ギヤ(07)の支軸(09)には、巻取ボタン(011)が回動可能に外嵌され、この巻取ボタン(011)に、供給ギヤ(07)が、その下面が巻取ボタン(011)の下端の係止爪(011a)に係止されて回動可能に外嵌され、かつ圧縮コイルばね(012)を、巻取ボタン(011)の上部周縁(011b)の下面と供給ギヤ(07)の上面との間に介在させて、巻取ボタン(011)と供給ギヤ(07)間に回転トルクを伝えるとともに、両者間に滑り機構を構成してある。
【0006】巻取ボタン(011)の上部周縁(011b)には、複数の外向係止片(011c)が設けられ、この外向係止片(011c)が、供給リール(013)の内面に設けられた内向係止片(013a)と係止して、巻取ボタン(011)と供給リール(013)間に回転トルクが伝わるようにしてある。
【0007】巻取ギヤ(08)は、供給ギヤ(07)と噛合し、巻取ギヤ(08)の上面には、巻取リール(014)が一体に形成されている。
【0008】供給リール(013)に巻回された転写テープ(015)は、繰出された後に転写ヘッド(06)の尖端で反転して、巻取リール(014)に巻取られる。
【0009】逆転防止機構は、下ケース部材(03)の内面(03a)上に、供給ギヤ(07)の支軸(09)と同心円状に、前記内面(03a)に対して垂直上向きの係合歯(016a)を有するラチェット歯部(016)を設けるとともに、供給ギヤ(07)の下面に下向きのラチェット爪(017)を設け、そのラチェット爪(017)を前記ラチェット歯部(016)に圧接状態で係合させ、供給ギヤ(07)および供給リール(013)が、転写テープ(015)を繰出す方向にのみ回転し、逆方向には回転しないようにしてある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来の逆転防止機構には、次のような問題点がある。
a) ラチェット歯部(016)は、支軸(09)(010)とともに、下ケース部材(03)を成形する際に一体成形されるが、この成形時において、金型を上下方向に脱去する関係から、逆転を防止する際に、ラチェット爪(017)が係合するラチェット歯部(016)の歯面の角度を、下ケース部材(03)の内面に対して鋭角に成形することはできない。そのため、供給リール(013)を逆回転させる向きの負荷が大きい場合、ラチェット爪(017)が上方向に移動して、ラチェット歯部(016)との係合が外れるおそれがある。
【0011】b) 前記係合の外れを防止する目的で、ラチェット歯部(016)の係合歯(016a)の高さを大きくし、かつラチェット爪(017)を、ラチェット歯部(016)に相応の大きさの力で圧接しているため、塗膜転写具(01)の使用時におけるラチェット音が比較的大きく、煩わしい場合がある。
【0012】c) 塗膜転写具(01)の製造工程における品質管理において、ラチェット歯部(016)の係合歯(016a)およびラチェット爪(017)の爪の高さを検査する際、これらが、それぞれ、下ケース部材(03)の内面(03a)、および供給ギヤ(07)の下面に対して垂直方向に設けられているため、視認が容易でなく、検査に手間を要する。
【0013】本発明は、前記の現状に鑑み、供給リールを逆回転させる向きの負荷が大きい場合にも、ラチェット機能が損なわれることがないようにするとともに、使用時におけるラチェット音を低減させ、かつ品質管理も容易な逆転防止機構を備えた塗膜転写具を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 前端が開口するケース内に、供給リールと巻取リールを配設し、前記開口より転写ヘッドを突設させ、供給リールから繰出した転写テープを、転写ヘッドの尖端で反転させた後に、供給リールの回転トルクを供給ギヤおよび巻取ギヤを介して伝えることにより駆動される巻取リールに巻取らせるようにした塗膜転写具において、ケース内面上に、供給ギヤまたは巻取ギヤと同心円状に、かつ半径方向内向きの係合歯を有するラチェット歯部を設けるとともに、供給ギヤまたは巻取ギヤの下面に、前記ラチェット歯部に係合する半径方向外向きのラチェット爪を設けることによって、供給リールまたは巻取リールの逆転防止機構を形成した塗膜転写具とする。
【0015】(2) 上記(1)項において、ラチェット爪を、供給ギヤまたは巻取ギヤに基部を固定し、かつ先端を半径方向外向きに弾性的に付勢させたアームの先端に設ける。
【0016】(3) 上記(2)項において、ラチェット爪を、アームの先端からケース内面向きに突出させて、半径方向外向きに設ける。
【0017】(4) 上記(3)項において、アームの先端をケース内面向きに弾性付勢させ、使用時において、ラチェット爪の底面が、ケース内面上を摺動するようにする。
【0018】(5) 上記(2)項〜(4)項のいずれかにおいて、アームを、その中間部に半径方向内向きの湾曲部を設けたものとする。
【0019】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施形態を示す塗膜転写具の分解斜視図、図2は、図1に示す塗膜転写具における供給リール側の組立状態の要部平面図、図3は、同じく組立状態の要部縦断面図であり、これら図1、図2、図3は、それぞれ図7、図8、図9に相当する図面である。図4は、本発明におけるラチェット爪とラチェット歯部の係合を示す要部斜視図である。なお、図1〜図4においては、図7〜図9において付した符号に対応する部品については、「0」を除いた同数字の符号を付し、その説明は省略する。
【0020】本発明の塗膜転写具(1)における逆転防止機構は、上下ケース部材(2)(3)から形成されるケースの内面上に、供給ギヤ(7)と同心円状に、かつ半径方向内向きの係合歯(16a)を有するラチェット歯部(16)を設けるとともに、供給ギヤ(7)の下面に、前記ラチェット歯部(16)に係合する半径方向外向きのラチェット爪(17)を設けて形成される。なお、逆転防止機構は、巻取ギヤ(8)側に設けてもよいが、供給ギヤ(7)側に設ける方が好ましい。
【0021】供給リール(13)には、未使用の転写テープ(15)が巻回されており、紙面等に塗膜を転写した使用後の転写テープが巻回される巻取リール(14)に比較して、塗膜の厚みを考慮した分だけ、供給リール(13)の径は、巻取リール(14)の径よりも大きくされている。したがって供給ギヤ(7)は、巻取ギヤ(8)よりも径を大きくされている。
【0022】そのため逆転防止機構は、巻取ギヤ(8)側よりも供給ギヤ(7)側に設ける方が、両ギヤの回転比の関係から、逆転防止の効果が大きい。以下、供給ギヤ(7)側に逆転防止機構を設けた場合を例にとり説明する。
【0023】本発明におけるラチェット歯部(16)は、下ケース部材(3)の内面(3a)上に、供給ギヤ(7)の支軸(9)と同心円状に、かつ半径方向内向きの係合歯(16a)を配設して形成されている。図示の実施形態においては、下ケース部材(3)の内面(3a)上に、供給ギヤ(7)の支軸(9)と同心円状に、突出した円条を設け、その内周面に半径方向内向きの係合歯(16a)を均一に配列してラチェット歯部(16)を形成してある。
【0024】他の実施形態としては、たとえば、下ケース部材(3)の内面(3a)上に、供給ギヤ(7)の支軸(9)と同心円状に、凹陥円部を設け、その内周面に係合歯(16a)を設けてもよい。前記のラチェット歯部(16)は、上下ケース部材(2)(3)を合成樹脂で成形する際に、容易に一体成形することができる。
【0025】ラチェット爪(17)は、供給ギヤ(7)に基部を固定したアーム(18)の先端に、前記ラチェット歯部(16)に係合するように、供給ギヤ(7)の半径方向外向きに設けられている。ラチェット爪(17)およびアーム(18)は、同じく合成樹脂で、供給ギヤ(7)と一体成形されている。
【0026】アーム(18)は、図2に示すように、その中間部に、供給ギヤ(7)の半径方向内向きの湾曲部(18a)を設けてあり、この湾曲部(18a)のヒンジ作用によって、アーム(18)の先端が半径方向外向きに弾性的に付勢されている。そのため、アーム(18)の先端に設けられたラチェット爪(17)は、前記ラチェット歯部(16)に、良好に係合する。
【0027】ラチェット歯部(16)は、図4に示すように、ラチェット歯部(16)における係合歯(16a)の向きが、下ケース部材(3)の内面(3a)と平行であるため、ラチェット歯部(16)の歯面(16b)が下ケース部材(3)の内面(3a)に対して垂直となり、金型の上下方向への脱去に支障を生ずることなく、逆転を防止する際に、ラチェット爪(17)が係合するラチェット歯部(16)の歯面(16b)の角度を、ラチェット歯部(16)の円周の接線(16c)方向に対して、鋭角(α)に成形することができる。そのため、供給リール(13)を逆回転させる向きの負荷が大きい場合においても、ラチェット爪(17)とラチェット歯部(16)の係合が外れることがなく、ラチェット機能の確実性を向上させることができる。
【0028】図5は、図2におけるV−V線縦断面図である。図示するように、ラチェット爪(17)は、基部が供給ギヤ(7)の下面に固定されたアーム(18)の先端から下ケース部材(2)の内面(3a)向きに突出されて、半径方向外向きに設けられている。
【0029】ラチェット爪(17)を前記のように突出させてあることにより、これを、ラチェット歯部(16)に容易に、良好に係合させることができる。
【0030】図6は、ラチェット爪(19)およびアーム(20)の、別の実施形態を示し、図5に相当する図面である。図示するように、アーム(20)が、供給ギヤ(7)の内部切欠(7a)の内縁から、供給ギヤ(7)と同一平面上において延出され、その先端に、下ケース部材(3)の内面(3a)向きに突出させて半径方向外向きのラチェット爪(19)が設けられている。
【0031】前記アーム(20)の先端は、下ケース部材(3)の内面向きに弾性的に付勢されており、ラチェット爪(19)の底面(19a)が、使用時において、下ケース部材(3)の内面(3a)上を摺動するようにしてある。そのため、ラチェット爪(19)が上方に浮き上り、ラチェット歯部(16)との係合が外れることを、一層良好に防止することができる。
【0032】図10は、図8におけるX−X線縦断面図である。従来の塗膜転写具(01)におけるラチェット爪(017)とラチェット歯部(016)との係合は、下ケース部材(03)の内面(03a)と垂直方向であり、特に塗膜転写具(01)の使用時においては、ラチェット爪(017)は、仮想線と実線で示す範囲において作動するため、下ケース部材(03)の内面(03a)から上向きに、符号Hで示す高さの空間を必要とする。
【0033】一方、本発明におけるラチェット爪(17)(19)とラチェット歯部(16)との係合は、下ケース部材(3)の内面(3a)と平行な方向であるとともに、塗膜転写具(1)の使用時においても、ラチェット爪(17)(19)は、前記内面(3a)と平行な方向に作動するため、前記内面(3a)と垂直方向の空間的広がりは余り必要でなく、そのため、上下ケース部材(2)(3)からなるケースの厚さを、従来の塗膜転写具(01)における上下ケース部(02)(03)からなるケースの厚さに比較して小さくすることができる。
【0034】
【発明の効果】本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(1) 請求項1記載の発明によれば、下記の効果を奏する。
a)ラチェット歯部は、下ケース部材を成形する際に一体成形されるが、ラチェット歯部における係合歯の向きが、下ケース部材の内面と平行であるため、金型の上下方向への脱去に支障を生ずることなく、逆転を防止する際に、ラチェット爪が係合するラチェット歯部の歯面の角度を、ラチェット歯部の円周の接線方向に対して、鋭角に成形することができる。そのため、供給リールを逆回転させる向きの負荷が大きい場合においても、ラチェット爪とラチェット歯部の係合が外れることがなく、ラチェット機能の確実性を向上させることができる。
【0035】b)前記のようにラチェット機能の確実性を向上させることができるためラチェット歯部における係合歯を小さくし、その歯丈を低くすることができる。歯丈を低くすることにより、使用時におけるラチェット音を低減させることができる。
【0036】c)ラチェット歯部における係合歯の下側側面が、その基部から先端に至るまで下ケース部材の内面に固定されているため、従来の係合歯におけるように、基部のみが固定されている形態のものに比較して、係合歯の歯先が欠落するおそれが格段に少ない。
【0037】d)ラチェット爪とラチェット歯部との係合方向が、上下ケース部材の内面と平行であるため、ケースの厚みを薄くした塗膜転写具を得ることができる。
【0038】e)ラチェット爪と、ラチェット歯部の係合歯とが、下ケース部材の内面と平行な向きであるため、上方から爪丈や係合歯の歯丈を容易に視認することができ、塗膜転写具の製造工程における品質管理が能率的に実施できる。
【0039】(2) 請求項2記載の発明によれば、ラチェット爪がラチェット歯部に常に圧接状態で係合されるため、係合が確実に行われ、ラチェット機能の確実性が向上する。
【0040】(3) 請求項3記載の発明によれば、ラチェット歯部への係合が、容易かつ確実なラチェット爪が得られ、ラチェット機能の確実性が向上する。
【0041】(4) 請求項4記載の発明によれば、供給リールを逆回転させようとする大きな負荷に対しても、ラチェット爪とラチェット歯部との係合が外れることのない逆転防止機構が得られる。
【0042】(5) 請求項5記載の発明によれば、湾曲部のヒンジ作用により、ラチェット爪がラチェット歯部に、適度の力で圧接され、使用時におけるラチェット機構の回転抵抗の低減、およびラチェット音の低減を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
【住所又は居所】東京都北区豊島6丁目10番12号
【出願日】 平成13年11月14日(2001.11.14)
【代理人】 【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一 (外2名)
【公開番号】 特開2003−145996(P2003−145996A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−348852(P2001−348852)