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【発明の名称】 ボールペンチップの製造方法
【発明者】 【氏名】高橋 裕一
【住所又は居所】埼玉県草加市吉町4−1−8 ぺんてる株式会社草加工場内

【要約】 【課題】筆記の際にボテや筆記カスレなどの吐出不良が発生し、違和感のある筆記となってしまっていた。

【解決手段】筆記部材としてのボールと、このボールを先端開口部より一部突出してボール抱持室に保持するボールペンチップであって、前記ボール抱持室はその先端部をカシメ加工によって内方変形されてなるボールペンチップにおいて、予め切削加工によって前記ボール抱持室の前端に斜面部を形成し、次いで、その斜面部の外周側壁部をカシメ加工によって内方変形させたボールペンチップの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筆記部材としてのボールと、このボールを先端開口部より一部突出してボール抱持室に保持するボールペンチップであって、前記ボール抱持室はその先端部をカシメ加工によって内方変形されてなるボールペンチップにおいて、予め切削加工によって前記ボール抱持室の前端に斜面部を形成し、次いで、その斜面部の外周側壁部をカシメ加工によって内方変形させたことを特徴とするボールペンチップの製造方法。
【請求項2】 前記斜面部を前端に向かい順次縮径させたことを特徴とする請求項1記載のボールペンチップの製造方法。
【請求項3】 前記斜面部と、ボール抱持室側壁部および、ボールの受座となるすり鉢状のテーパー面と、ボールホルダー外周のテーパー面とを複数の加工具によって同時に加工したことを特徴とする請求項1、或いは、請求項2に記載のボールペンチップの製造方法。
【請求項4】 前記斜面部をテーパー面とし、そのテーパー面の外周側壁部からのカシメ加工を行った後の、そのテーパー面の開き角度を100度〜170度にしたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載のボールペンチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筆記部材としてのボールと、このボールを先端開口部より一部突出してボール抱持室に保持するボールペンチップの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】筆記部材としてボールを使用したボールペンは、ボールの回転によって紙などの被筆記面にインキを塗布転写するものであり、回転するボールによって滑らかな筆記感が得られる。また、筆記時にはボールペンを傾斜させた状態で把持し筆記しているが、このボールペンの傾斜角度は人によって様々である。しかし、ボールペンを斜めにする角度には限界がある。即ち、ボールペンの傾斜角度を大きく(被筆記面とボールペンとのなす角度を小さく)してしまった場合には、突出しているボール以外の部分が被筆記面に当接してしまい、その結果、引っかかり感が感じられたり、また、紙面を破いてしまったり、筆記線がかすれたりするなどして筆記性能を著しく低下させてしまっていた。そこで、ボール以外の部分が、仮に被筆記面に当接したとしても滑らな筆記できる構造が採られるようになってきた。その例が、特開2000−6571号や特開2000−127685号などである。即ち、ボール突出部近傍の先端部に角度を付与することによって、被筆記面への引っかかりを少なくしているのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記何れの従来技術も2回のカシメ加工を行ってチップを形成している。即ち、第1カシメ角を形成した後に、第2カシメ角を形成している。しかしこの様な方法であっては、第2カシメ角を形成する際に、前工程で形成した第1カシメ角に第2カシメ角の圧力が作用してしまい、折角、正確に形成した第1カシメ角を不正確な角度にしてしまう危険性があった。ちなみに、2回目のカシメ加工による過度な圧力で、前記ボール抱持室前端部とボールの隙間が狭くなってしまい、適切なインキの吐出量が確保できないという問題点が発生してしまう。また、第1カシメ角を形成する際の工具の中心と、第2カシメ角を形成する工具の中心がずれてしまう場合があり、正確なチップを形成することができなかった。何れにしても、筆記の際にボテや筆記カスレなどの吐出不良が発生し、違和感のある筆記となってしまっていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、筆記部材としてのボールと、このボールを先端開口部より一部突出してボール抱持室に保持するボールペンチップであって、前記ボール抱持室はその先端部をカシメ加工によって内方変形されてなるボールペンチップにおいて、予め切削加工によって前記ボール抱持室の前端に斜面部を形成し、次いで、その斜面部の外周側壁部をカシメ加工によって内方変形させたことを要旨とする。
【0005】
【作用】ボール抱持室の先端部が1回のカシメ加工によって形成され、そのカシメ加工の後には外力が付与されないため、前記カシメ加工された部分が変形することがない。また、外側と内側とから同時に形成するため、各々の加工中における反作用が相殺され、変形が防止されるとともに、チップや加工具の移動に伴う中心の位置ずれが無くなる。
【0006】
【実施例】以下、図面に基づき1例を説明する。図1に示したものは、ボールペンチップの要部を拡大した縦断面図であり、筆記部材として超硬材やセラミックスなどからなるボール1を、ステンレスや黄銅、洋白などの金属,合金からなるボールホルダー2が回転自在に保持している。そのボールホルダー2は、貫通したインキの通り路としての中心孔2aを有しており、その中心孔2aの先端部分が前記ボール1を保持するボール抱持室3となっている。そのボール抱持室3は、カシメ加工によって縮径化された先端開口部3aと、ボール受座3bにて前記ボール1の移動し得る範囲を区画している。また、そのボール受座3bには、ボール1と同等の曲率形状の曲面3cが形成されているが、この曲面3cは。ボール1を先端側から押圧して形成したものである。尚、その曲面3cはボール1の回転を滑らかにする効果があるほか、筆記時にボール1を曲面3cに位置させてインキ吐出を安定させるなどの効果があるが、インキの種類如何によっては曲面3cを形成しなくても良い。また、切削時に形成されてしまった円周状の筋目を無くすために、前記曲面3cに略同角度のテーパー形状ピンを押し付け、該部分を鏡面状に塑性変形させても良い。ここで、前記中心孔2aには、後方から順に、後孔4と、その後孔4に連通した中孔5と、中孔5およびボール受座3bに連通した複数の放射状溝6が形成されている。尚、本実施例における放射状溝6は前記後孔4に連通していないが、貫通させて後孔4と連通させても良い。前記放射状溝6は、その最も外側に位置する部分がボール1とボール受座3bとが接触する部分よりも外側に向かって開口している。筆記時にボール1が筆記圧を受けて後退し、その後退動作によってボール1がボール受座3bに接触するが、前記放射状溝6によって塞がれることなく、ボール抱持室3内にインキが供給されるようになっている。
【0007】次いで、前記ボールペンチップの製造方法について説明する。先ず、コイル材を剪断加工によって適切な長さ切断し、バレル加工によって端部の角やバリを取り、洗浄後乾燥してボールペンチップの基となるワークWを得る。そのワークWから、ボールペンチップへの加工方法を次に説明する。最初に、バイトなどの切削具によって、前記ワークWの前方テーパー部2cを、1回または複数回に分けて形成すると共に、バイトおよびエンドミルでワークWの先端部に平面部2dを切削・形成する。次いで、バイトおよびドリルでワークWの先端面より後方に向けて切削加工のガイドとなる中心基準孔(下孔)を形成する。次いで、ドリルで中孔5を形成し、ボール抱持室3の下孔をドリルまたはバイトで切削加工する。尚、上記一連の切削加工と同時にワークWの後方から前方に向けて、前記中孔5と連通するように後孔加工を複数回に分けて徐々に縮径させて施す。また、必要に応じて、インキ収容部材または連絡部材との圧入位置決めのために、ワークWの後端外形部に縮径部2eを形成しても良い(図2参照)。
【0008】次に、前記ボール1の保持されるボール受座3bと、ボール抱持室3の側壁部を1つのバイトによって切削加工すると共に、そのボール抱持室3の外形先端近傍に前記前方テーパー部2cよりも角度の開いたカシメ用テーパー部2fを切削・形成する。さらに、同時にボール抱持室3の先端である、前記平面部2dを後端側に広がる先端テーパー面2gとなるよう切削・加工するが、この時のテーパー角度αとする(図3参照)。これらの加工を図4に示すような、3種の加工具が取り付けられた加工具で同時に加工することによって、切削工程におけるボールホルダー2の先端近傍の偏肉や中心ずれなどが防止される。次に、放射状の切削刃が形成された剪断加工具によって、前記中孔5に放射状溝6を形成する(図5参照)。この際、その中孔5内に前記剪断加工によるバリが発生するが、必要に応じて同径または多少大径のドリルで再び切削加工を施せば、前記バリを除去することができる。尚、放射状溝6は、所望により後孔4まで貫通させて形成しても良い。
【0009】次いで、ボール1をボール抱持室3に配置し、前記ボールホルダー2の先端部をかしめる。そのかしめ加工具7は、回転自在であるが、その下端には自転可能なローラー8が対向した位置に、且つ、前記ボールホルダー2の先端近傍を挟み込むように設置されており、そのローラー8にはテーパー面8aが形成されている。このカシメ工具7によって、ボールホルダー2の先端部、具体的には、前記ローラ8をカシメ用テーパー部2fに押し当て、該部分近傍を多少のスプリングバックを伴いながらも内方に向かって塑性変形させる。このカシメ加工によって、前記ボール1のボールホルダー2(ボール抱持室3)からの抜け止めがなされると共に、前記先端テーパー部2gのテーパー角度αがより大きくなる(図6参照)。次に、平滑なハンマーによって前記ボール1をハンマーリングし、その際の塑性変形によってボール1と同等の曲率形状の曲面3cを前記ボール受座3bに形成する。
【0010】以上、本実施例においては、ボール1に直径1.0mm使用しているが、前記先端テーパー部2gの肉厚tを0.075mmとし、また、その先端テーパー面2gのテーパー角度αを120度に形成した後に、カシメテーパー部2fのカシメ角度βを80度にすることによって、そのカシメ加工後における先端テーパー部2hのテーパー角度γを140度〜150度にしている。本例においては直径1.0mmボールを使用しているが、ボール径が直径0.5mmなど小さい場合には前記肉厚tを0.02mm〜0.05mmにすることが望ましいが、角度においてはボール径が変化しても上記角度が望ましい。しかし、この例に限ることなく、種々の角度に設定できるが、カシメ行程における組成変形の容易性、並びに、カシメ加工後におけるテーパー部2gの形状や角度を考慮すると、 テーパー部2gの肉厚tは0.02mm〜0.10mmの範囲が好ましく、また、テーパー角度αは90度〜160度が好ましく、更に、カシメ角度βは60度〜90度、カシメ加工後のテーパー角度γは100度〜170度の範囲が好ましい。つまり、肉厚tは厚いほど被筆記面に当たりやすくなるため、先端テーパー部2hによる筆記時の滑らかさ向上の効果が大きくなるが、0.1mm以上に設定してしまうと塑性変形量が大きくなるためカシメ加工が困難となる。また、テーパー角度αが大き過ぎるとそのテーパー面が逆向きとなってしまい、小さ過ぎる先端部に線状のバリが残りやすくなってしまう。更に、カシメ加工後におけるテーパー角度γにあっては170度以上に設定してしまうと被筆記面に引っかかりやすくなってしまい、100度以下では前記カシメテーパー部2iと先端テーパー部2hの稜線部2jが被筆記面に当接しないでテーパー部2hの先端角部が被筆記面に当たってしまう。
【0011】
【発明の効果】本発明は、筆記部材としてのボールと、このボールを先端開口部より一部突出してボール抱持室に保持するボールペンチップであって、前記ボール抱持室はその先端部をカシメ加工によって内方変形されてなるボールペンチップにおいて、予め切削加工によって前記ボール抱持室の前端に斜面部を形成し、次いで、その斜面部の外周側壁部をカシメ加工によって内方変形させているので、ボール以外の部分が紙面に当接した際においても、筆記感を損なうことなく、良好な筆記性能を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋小網町7番2号
【出願日】 平成14年5月28日(2002.5.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−341274(P2003−341274A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−154772(P2002−154772)