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【発明の名称】 ノック式筆記具
【発明者】 【氏名】佐々木 和彦
【住所又は居所】群馬県伊勢崎市長沼町1744−2 株式会社パイロット伊勢崎工場内

【要約】 【課題】ノック式筆記具において、従来のノック機構を踏襲することができ、ポケット等に装着した時に、軽くノック体に触れた程度ではペン先部が軸筒の先端開口部より突出することがなく、かつノック衝撃の少ないノック式筆記具を提供すること、さらに、レフィールを配設することなく、ノック機構の作動確認を行えるノック式筆記具を提供する。

【解決手段】軸筒内に配設した第1のコイルスプリングによりレフィールを軸筒の後端方向へ付勢して摺動自在に配置する。ノック体を操作し、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能なノック機構を備えるとともに、レフィールに当接するノック体又はレフィール押圧部材と軸筒間に、該ノック体又はレフィール押圧部材を軸筒後端方向に付勢する、第2のコイルスプリングを配設する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】筆記具用インキを収容したレフィールを、軸筒内に配設した第1のコイルスプリングにより軸筒の後端方向へ付勢して摺動自在に配置し、ノック体を操作することにより、レフィール後端部に当接するノック体又はノック体に連動するレフィール押圧部材により、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能なノック機構を備えたノック式筆記具であって、前記レフィール後端部に当接するノック体又はレフィール押圧部材と軸筒間に、該ノック体又はレフィール押圧部材を軸筒後端方向に付勢する、第2のコイルスプリングを配設したことを特徴とするノック式筆記具。
【請求項2】前記レフィール押圧部材が、回転カムであることを特徴とする請求項1に記載のノック式筆記具。
【請求項3】前記第1のコイルスプリングが、第2のコイルスプリングのスプリングの弾発力より小さいことを特徴とする請求項1ないし2に記載のノック式筆記具。
【請求項4】前記ノック体の操作荷重を500〜800gに設定したことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のノック式筆記具。
【請求項5】前記筆記具用インキが剪断減粘性を付与したインキであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のノック式筆記具。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軸筒内に摺動自在に配置したレフィールをスプリングにより軸筒の後端方向に付勢し、ノック体を操作することによりレフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能なノック機構を備えたノック式筆記具に関する。
【0002】
【従来技術】従来より、筆記具用インキを収容したレフィールを、軸筒内にスプリングにより軸筒の後端方向へ付勢して摺動自在に配置し、ノック体を操作し、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能なノック式筆記具のノック機構として、軸筒の係止部に、ノック機構部に形成した突部を係止し、ボタンによって解除する係止型のノック機構や回転カムの回転の作用を利用した回転カム機構等はよく知られている。
【0003】こうしたノック式筆記具においては、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より突出した状態にしている場合では、ノック体も軸筒先端方向に移動した状態になる。レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より突出した状態で誤ってノック式筆記具をポケット等に装着したとしても、ノック体が軸筒先端方向に移動した状態であるために、ペン先部が突出した状態を目視で確認することができる。
【0004】その反面、ノック式筆記具においては、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より突出した状態から没入する時に衝撃が発生する。このノック操作による衝撃が強すぎると、空気の飲み込みによるインキの逆流等、レフィールに悪影響を及ぼす。そのため、ノック操作荷重を低く設定する等、ノック操作による衝撃を少なくすることが求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ノック操作荷重を低く設定すると、ノック体に手等が触れ知らぬ間にペン先部が軸筒の先端開口部より突出して、特に筆記具用インキが低粘度である水性インキや低粘度の油性インキの場合には、ポケットの布地等をインキで汚してしまうという問題が間々あった。だからといって、セーフティー機構を設けると、従来のノック機構にさらにセーフティー機構を付加することになり、構造が複雑となるという問題があった。
【0006】また、例えば、軸筒の後端開口部より外側に突出したノック体と、ノック体の先端部に設けたカム部と、回転カムと、軸筒の内壁面に形成したカム溝とで構成した回転カムによるノック機構において、カム溝やカム溝に係合する突起等は、寸法関係を厳密に設定する必要があり、寸法関係によってはノック機構が作動しなかったり、作動感触が悪いなどの問題が発生する恐れがある。
【0007】しかし、従来のノック機構の作動確認は、回転カム等、レフィールの後端部に当接する押圧部材を後端に付勢しなければ行うことができなかった。すなわちノック機構の作動確認は、押圧部材を後端に付勢するレフィールを配設した後でなければできない。
【0008】本発明者は上記問題を鑑み、ノック式筆記具において、従来のノック機構を踏襲することができ、ポケット等に装着した時に、軽くノック体に触れた程度ではペン先部が軸筒の先端開口部より突出することがなく、かつノック衝撃の少ないノック式筆記具を提供すること、さらに、レフィールを配設することなく、ノック機構の作動確認を行えるノック式筆記具を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、筆記具用インキを収容したレフィールを、軸筒内に配設した第1のコイルスプリングにより軸筒の後端方向へ付勢して摺動自在に配置し、ノック体を操作することにより、レフィール後端部に当接するノック体又はノック体に連動するレフィール押圧部材により、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能なノック機構を備えたノック式筆記具であって、前記レフィール後端部に当接するノック体又はレフィール押圧部材と軸筒間に、該ノック体又はレフィール押圧部材を軸筒後端方向に付勢する、第2のコイルスプリングを配設するものである。
【0010】さらには、前記レフィール押圧部材が、回転カムであることを特徴とするものである。
【0011】さらには、前記第1のコイルスプリングが、第2のコイルスプリングのスプリングの弾発力より小さいものである。
【0012】さらには、前記ノック体の操作荷重を500〜800gに設定するものである。
【0013】さらには、前記筆記具用インキを剪断減粘性を付与したインキと特定するものである。
【0014】本発明において、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能なノック機構は、軸筒の係止部に、ノック機構部に形成した突部を係止し、ボタンによって解除する係止型のノック機構や回転カムの回転の作用を利用した回転カム機構等、ノック体を操作することによりペン先部を軸筒の先端開口部より出没可能な機構のことであり、特に限定するものではない。
【0015】また、ノック体の操作荷重とは、ノック体を操作してペン先部の突出状態を維持させるのに必要な押圧荷重で、ペン先部を備えたレフィールを軸筒の後端方向に付勢しているスプリングを縮める荷重と、レフィール押圧部材を軸筒の後端方向に付勢しているスプリングを縮める荷重と、ノック操作時のノック機構部に生じる部品間の摩擦力等とを総合した荷重である。操作荷重は、スプリングの弾発力に左右されるところが大きいので、現実問題としては、スプリングの弾発力を選定することにより、操作荷重を設定すればよい。操作荷重の測定は、プッシュプルスケールを用いて行い、計測軸端に先端が平坦なアタッチメントを取付けてノック体を押圧し、ペン先部の突出状態を維持させるのに必要な最大荷重を操作荷重とする。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1から図3に示す第1の実施の形態のノック式筆記具1は、後軸3に、後軸3の後端開口部3aより外側に突出するように、ノック体(レフィル押圧部材)4を配設し、さらにボタン5を後軸3から突出するように順次配設する。また、第2のコイルスプリング8の一端部をノック体4の先端面4bに当接、他端部を後軸3に連設したスプリング受け部材6に当接させ、ノック体4を後軸3の後端開口部3a方向に付勢して収納する。ノック体4の先端外径はレフィール9の後端部の外径より大きく、さらに第2のコイルスプリング8の内径をレフィール9の後端部の外径より大きく設定し、第2のコイルスプリング8がレフィール9に当接しないようにしてある。後軸3には、クリップ12を一体に設けてある。また、この状態で第2のコイルスプリング8、ノック体4、係止部4a、被係止部5a、によるノック機構H1を構成するので、ノック機構H1の作動確認を行うことができる。
【0017】さらに、前軸2内に、内部に剪断減粘性インキ(図示せず)を直詰めして収容し、先端にボールを回転自在に抱持したボールペンチップからなるペン先部10を有したレフィール9を、第1のコイルスプリング7により前軸2の後端方向に付勢し摺動自在に配置する。前軸2には、グリップ部材11を一体に設けてある。この前軸2と前記後軸3を螺合し、第1の実施の形態のノック式筆記具1を得ている。
【0018】ノック体4を押圧することにより、レフィール9が第1のコイルスプリング7の弾発力に抗して前進し、ノック体4に連設した係止部4aが被係止部5aに係止するノック機構Hが作用し、図2に示すようにペン先部10が前軸2の先端開口部2aより突出し、その状態を維持して筆記可能となる。さらに、ボタン5を押圧することにより、被係止部5aに係止していた係止部4aが解除され、ペン先部10は前軸2の先端開口部2aより没入する。ペン先部10を維持するのに必要なノック体4の操作荷重は、プッシュプルスケ−ルで測定した結果、600gであった。
【0019】ノック体4を押圧する時には、レフィール9を後方に付勢する第1のコイルスプリング7と、ノック体4を後端に付勢する第2のコイルスプリング8を圧縮する必要がある。そのためノック体4を押圧する操作荷重は少なくとも、第1のコイルスプリング7と第2のコイルスプリング8の総和となる。しかしながらペン先部10を前軸2の先端開口部2aより突出した状態から没入する時にレフィール9に加わる衝撃は、レフィール9が第1のコイルスプリング7のみで付勢されているため、コイルスプリング7のみに依存する。第2のコイルスプリング8を取り外し、第1のコイルスプリング7のみの状態でプッシュプルスケ−ルで測定した結果、ノック体4の操作荷重は150gであった。
【0020】図4から図6に示す第2の実施の形態のノック式筆記具21は、後軸23に、後軸の後端開口部23aより外側に突出するように、先端にカム部(図示せず)を有するノック体24を配設し、さらに回転カム(レフィール押圧部材)25を、回転カム25の突起25aが後軸23内に形成したカム溝(図示せず)に係合するように順次配設する。また、第2のコイルスプリング28の一端部を回転カム25の先端面25bに当接、他端部を後軸23に連設したスプリング受け部材26に当接させ、回転カム25を後軸23の後端開口部23a方向に付勢して収納する。また、この状態で第2のコイルスプリング28、ノック体24、カム部(図示せず)、カム溝(図示せず)、回転カム25によるノック機構H2を構成するので、ノック機構H2の作動確認を行うことができる。
【0021】さらに、前軸2内に、内部に剪断減粘性インキ(図示せず)を直詰めして収容し、先端にボールを回転自在に抱持したボールペンチップからなるペン先部10を有したレフィール9を、第1のコイルスプリング27により前軸2の後端方向に付勢し摺動自在に配置する。前軸2には、グリップ部材11を一体に設けてある。この前軸2と前記後軸23を螺合し、第2の実施の形態のノック式筆記具21を得ている。
【0022】ノック体24を押圧することにより、回転カム25を用いたノック機構H2が作動し、レフィール9が第1のコイルスプリング27の弾発力に抗して前進し、図5に示すようにペン先部10が前軸2の先端開口部2aより突出し、その状態を維持して筆記可能となる。さらに、再度ノック体24を押圧することにより、ペン先部10は前軸2の先端開口部2aより没入する。ペン先部10を維持するのに必要なノック体24の操作荷重は、プッシュプルスケ−ルで測定した結果、600gであった。
【0023】ノック体24を押圧する時には、レフィール9を後方に付勢する第1のコイルスプリング27と、回転カム25を後端に付勢する第2のコイルスプリング28を圧縮する必要がある。そのためノック体24を押圧する操作荷重は少なくとも、第1のコイルスプリング27と第2のコイルスプリング28の総和となる。しかしながらペン先部10を前軸2の先端開口部2aより突出した状態から没入する時にレフィール9に加わる衝撃は、レフィール9がコイルスプリング27のみで付勢されているため、コイルスプリング27のみに依存する。第2のコイルスプリング28を取り外し、第1のコイルスプリング27のみの状態でプッシュプルスケ−ルで測定した結果、ノック体24の操作荷重が150gであった。
【0024】ところで、前述したように回転カムによるノック式筆記具においては、カム溝やカム溝に係合する突起等は、寸法関係を厳密に設定する必要があり、寸法関係によってはノック機構が作動しなかったり、作動感触が悪いなどの問題が発生し易いので本発明の効果は特に顕著である。
【0025】尚、操作荷重は、従来のノック式筆記具においては、ノック体の操作荷重がノック機構における操作性から、200g以上、300g以下にだいたい設定されていた。ノック操作荷重について検討した結果、500gより低いとノック体に軽く手等が触れた程度でペン先部が突出してしまう恐れがあり、800gより高い荷重ではノック体の操作性が悪くなり、またペン先部を軸筒内に没入させる際の衝撃により、空気の飲み込みによるインキの逆流等、レフィールに悪影響を及ぼす恐れがあるので、500〜800gに設定するほうが好ましい。また、ノック作動による衝撃を少なくするため第1のコイルスプリングのみの操作荷重は200g未満に設定するほうが好ましい。
【0026】本発明に使用する筆記具用インキは特に限定されるものではないが、静的には粘度が高く、筆記時にボールの回転等により粘度が低くなる剪断減粘性を付与したインキ、いわゆるゲルインキと呼ばれているインキは、レフィール内に水性インキの時のように中綿状のインキ収蔵体等を用いずに直詰めして収容する。従って、ノック式筆記具として提供した場合、前述したように知らぬ間にペン先部が軸筒の先端開口部より突出して、ペン先部のボールがポケットの布地等に擦られて回転すること等により、ペン先部に存する剪断減粘性を付与したインキの粘度が低下してしまうので布地への染み込みは、著しいものがあり、本発明は特に効果が顕著である。
【0027】本発明のノック式筆記具に用いるノック機構は特に限定されるものではないが、レフィール押圧部材の先端にコイルスプリングを配設し、レフィール先端のペン先部を軸筒の先端開口部より突出した時に、ノック体も軸筒先端方向に移動した状態になることが肝要である。
【0028】
【発明の効果】本発明のノック式筆記具は前述した構成なので、従来のノック機構を踏襲することができ、ポケット等に装着した時に、軽くノック体に触れた程度ではペン先部が軸筒の先端開口部より突出することがなく、かつノック衝撃の少ないノック式筆記具を提供すること、さらに、レフィールを配設することなく、ノック機構の作動確認を行えるノック式筆記具を提供することができた。
【出願人】 【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
【住所又は居所】東京都中央区京橋二丁目6番21号
【出願日】 平成14年5月14日(2002.5.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−326890(P2003−326890A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−138311(P2002−138311)