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【発明の名称】 筆記具用インキ逆流防止体組成物
【発明者】 【氏名】中村 浩之
【住所又は居所】愛知県名古屋市昭和区緑町3丁目17番地 パイロットインキ株式会社内

【氏名】北岡 伸之
【住所又は居所】愛知県名古屋市昭和区緑町3丁目17番地 パイロットインキ株式会社内

【氏名】山田 亮
【住所又は居所】愛知県名古屋市昭和区緑町3丁目17番地 パイロットインキ株式会社内

【要約】 【課題】化学的に安定で、筆記具に充填された場合においても、バルクで保管されたときにおいても粘性変化がなく、また、耐逆流性能及び追従性能をともに満足する、筆記具に最適なインキ逆流防止体組成物を提供する。

【解決手段】基油としてシリコーンオイル中に、疎水性微粒子シリカ、末端に水酸基を有するポリブタジエングリコール又はポリブタジエンジカルボン酸を0.1〜10重量%含有してなる、インキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、インキの消費に従い前進する筆記具用インキ逆流防止体組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 インキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、インキの消費に従い前進するインキ逆流防止体であって、前記インキ逆流防止体が基油としてシリコーンオイル中に、疎水性微粒子シリカ、末端に水酸基を有するポリブタジエングリコール又はポリブタジエンジカルボン酸を0.1〜10重量%含有してなる筆記具用インキ逆流防止体組成物。
【請求項2】 前記シリコーンオイルがジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、およびアルキル変性シリコーンオイルから選ばれた単独又は二種以上の混合体である請求項1記載の筆記具用インキ逆流防止体組成物。
【請求項3】 前記疎水性微粒子シリカを1〜10重量%含んでなる請求項1又は2記載の筆記具用インキ逆流防止体組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は筆記具用インキ逆流防止体組成物に関する。更に詳細には、インキ収容管内に収容されたインキ端面に配設される筆記具用インキ逆流防止体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の筆記具用インキ逆流防止体組成物は、正立(チップ上向き)或いは横置き状態で保管又は運搬された時に、インキがインキ収容管後端から漏出することを防止するインキ逆流防止性能、筆記の際インキの減少に伴って、ペン先方向へスムースに移動するインキ追従性能、インキに追従する際にインキ収容管壁面へのインキ及び筆記具本体を落下させたときのインキ飛び散りやインキ流出を防ぐ耐衝撃性能等が要求される。
【0003】従来、高粘度の油性インキを用いた油性ボールペン用のインキ逆流防止体としては鉱油と金属石鹸の混合物であるグリース等が適用されている又、中粘度或いはゲル状の水性インキを用いた水性ボールペンに前記油性ボールペン用インキ逆流防止体を適用すると、インキへの追従不良や温度変化による粘度変化が大きいことによって水性インキの逆流を抑止できない等の不具合を生じるため、液状ポリブテン、鉱油、シリコーンオイル等の難揮発性有機液体に増粘剤を添加してゲル状体としたインキ逆流防止体が多数提案され、広く実用化されおり、例えば、特開平8−300874号公報にはシリコーンオイルに親水性シリカを添加したインキ逆流防止体が開示されている。前記シリコーンオイルに親水性シリカを添加したインキ逆流防止体は、剪断力の付加により粘性構造が破壊され、著しく粘度が低下し、粘度が低下した状態から粘性構造が回復して元の粘度に復元するまでに長時間を要する。このようなインキ逆流防止体は、筆記具への充填工程で注入ノズルから吐出される際に付加された剪断力によって粘度が低下した状態でインキ収容管内に充填され、充填前の粘度に回復するのに数時間或いは数日間を要する。従って、組み立てられた筆記具は、前記インキ逆流防止体の粘度回復前に横向き或いは正立(チップ上向き)状態で放置されると、インキ収容管後端から前記インキ逆流防止体及びインキが流出してしまうという不具合が発生しがちである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記した従来のインキ逆流防止体の欠点を解消しようとするもであって、即ち、粘性の変化がなく、また耐逆流性能及び追従性能をともに満足する、筆記具に最適な筆記具用インキ逆流防止体を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記した従来の筆記具用インキ逆流防止体の不具合を解消するため鋭意検討した結果、シリコーンオイル、疎水性微粒子シリカ、及び、末端に水酸基を有するポリブタジエングリコール又は末端にカルボキシル基を有するポリブタジエンジカルボン酸を0.1〜10重量%配合したインキ逆流防止体が前記した筆記具用インキ逆流防止体に要求される特性をすべて満足するものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明はインキ収容筒内に直接収容したインキの後端面に配設され、インキの消費に従い前進するインキ逆流防止体であって、前記インキ逆流防止体が基油としてシリコーンオイル中に、疎水性微粒子シリカ、末端に水酸基を有するポリブタジエングリコール又はポリブタジエンカルボン酸を0.1〜5重量%含有してなる筆記具用インキ逆流防止体組成物を要件とする。更には、前記シリコーンオイルがジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、およびアルキル変性シリコーンオイルから選ばれた単独又は二種以上の混合体であること、前記疎水性微粒子シリカを1〜10重量%含んでなること等を要件とする。
【0006】本発明のインキ逆流防止体のベースオイルとして用いられるシリコーンオイルは一種又は二種以上を混合して用いることができ、インキ逆流防止体組成物全量に対し、80〜98.9重量%の範囲で使用できる。好適に用いられるシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、およびアルキル変性シリコーンオイルが挙げられる。これらのシリコーンオイルは、透明性、耐熱性、耐薬品性に優れ、油性インキ及び水性インキのどちらとも混和し難い優れた特性を有する。
【0007】前記シリコーンオイルをインキ逆流防止体に好適な粘度まで増粘させるため、疎水性微粒子シリカが用いられる。前記疎水性微粒子シリカは、微粒子シリカの表面を有機珪素化合物で化学的に変性したもので、市販品としてアエロジルR972、アエロジルR974、アエロジルRX200、アエロジルRY200、アエロジルR202、アエロジルR805、アエロジルR812〔以上、日本アエロジル(株)製〕等を例示することができる。前記疎水性微粒子シリカは組成物中1〜10重量%含有してなることが好ましい。1重量%未満では所望の増粘効果が得られ難く、また、10重量%を越えると、増粘効果が過剰になり、インキ追従性を損なう虞がある。
【0008】本発明に用いられる液状ポリブタジエンは、疎水性微粒子シリカにより形成されたゲル構造を安定化させる効果があり、得られたインキ逆流防止体は製造後にバルクで保管された場合でも、筆記具に充填された状態においても、粘性特性を長期にわたって維持することができる。具体的には、下記一般式(1)で示される数平均分子量が1000〜5000のα,ω−1,2−ポリブタジエングリコール、【化1】

一般式(2)で示される数平均分子量が1000〜5000の水素添加型α,ω−1,2−ポリブタジエングリコール、【化2】

一般式(3)で示される数平均分子量が1000〜3000のポリブタジエンジカルボン酸、【化3】

一般式(4)で示される数平均分子量が1000〜3000の水素添加型ポリブタジエンジカルボン酸、【化4】

一般式(5)で示される数平均分子量が1000〜5000のα,ω−1,4−ポリブタジエングリコール、【化5】

(式中nは50〜55の整数の示す)等を例示することができる。
【0009】前記液状ポリブタジエンはインキ逆流防止体組成物全量に対し0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、更に好ましくは0.2〜5重量%の範囲で用いられる。本発明のインキ逆流防止体組成物の増粘機構は明らかではないが、前記液状ポリブタジエンが疎水性微粒子シリカの表面を被覆し、該液状ポリブタジエンの水酸基とシリコーンオイルとが三次元構造を形成するものと推測される。従って前記液状ポリブテンの添加量が0.1重量%未満では前記疎水性微粒子シリカの表面が十分に被覆されず、シリコーンオイルとの間で安定な三次元構造を形成することができないため、インキ逆流防止体に求められる粘性が得られなかったり、シリコーンオイルと疎水性微粒子シリカが分離してインキ逆流防止体として機能しなくなる不具合を生じる。
【0010】また、前記液状ポリブタジエンの添加量が10重量%を超えると、過剰の液状ポリブタジエンがインキ逆流防止体組成物中に存在することにより、疎水性微粒子シリカとシリコーンオイルの間の三次元構造を徐々に破壊するためにインキ逆流防止体が経時により軟化して逆流防止性能が失われてしまう。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のインキ逆流防止体組成物はベースオイルとして用いられるシリコーンオイルに、液状ポリブタジエンを添加し、ディスパー等の攪拌機で均一になるように分散した後、所定量の疎水性微粒子シリカを配合して三本ロール、ニーダー、バスケットミル等の分散機で混練することにより得られる。以下の実施例及び比較例は、配合物をそれぞれ三本ロールミルで混練して作成した。
【0012】
【実施例】以下に実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例、比較例中の部は重量部を表わす。
【0013】
実施例1 ジメチルシリコーンオイル 95.9部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 4.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR972〕
α,ω−ポリブタジエングリコール 0.1部 〔日本曹達(株)製、商品名:GI−1000〕
【0014】
実施例2 ジメチルシリコーンオイル 95.7部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 4.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR972〕
α,ω−ポリブタジエングリコール 0.3部 〔日本曹達(株)製、商品名:GI−1000〕
【0015】
実施例3 ジメチルシリコーンオイル 95.0部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 4.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR972〕
α,ω−ポリブタジエングリコール 1.0部 〔日本曹達(株)製、商品名:GI−1000〕
【0016】
実施例4 ジメチルシリコーンオイル 95.5部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 3.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR974〕
α,ω−ポリブタジエングリコール 1.5部 〔日光石油(株)製、商品名:R−45HT〕
【0017】
実施例5 ジメチルシリコーンオイル 91.0部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 3.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR974〕
α,ω−ポリブタジエングリコール 5.0部 〔日本曹達(株)製、商品名:GI−1000〕
【0018】
比較例1 ジメチルシリコーンオイル 95.0部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 5.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR972〕
【0019】
比較例2 ジメチルシリコーンオイル 96.0部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF96H−6000CS〕
疎水性微粒子シリカ 4.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR974〕
【0020】
比較例3 メチルフェニルシリコーンオイル 96.0部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF50−3000〕
疎水性微粒子シリカ 3.0部 〔日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルR974〕
ポリブタジエン 1.0部 〔日光曹達(株)製、商品名:B−1000〕
【0021】性能試験先端に0.7mmの超硬合金製ボールを抱持したステンレススチール製のボールペンチップを取付けた内径3.8mmのポリプロピレン製パイプに、下記組成のボールペン用水性インキを注入し、該インキの後端面に前記実施例1乃至6及び比較例1、2のインキ逆流防止体を接触配置したものを性能試験用ボールペンとした。それぞれの試験用ボールペンについて作製直後と、50℃で30日間放置後に以下の性能試験を行った。
【0022】
ボールペン用水性インキの組成(部は重量部を表わす)
黒色加工顔料 30.0部 〔大日精化工業(株)製、商品名:WAカラーブラック A−250〕
ポリエーテル変性シリコーン 0.2部 〔信越化学工業(株)製、商品名:KF−615A〕
リン酸エステル系界面活性剤 1.0部 〔第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフM208B〕
キサンタンガム 0.3部 〔大日本製薬(株)製、商品名:エコーガム〕
エチレングリコール 10.0部 水 58.5部以上の成分を混合攪拌したものを濾過し、ボールペン用水性インキを調製した。
【0023】インキ逆流試験(衝撃安定性試験)
初期、及び、50℃で30日間放置した各試験用ボールペンをチップ上向き(正立)状態で4フィート(約1.22m)の高さから3回落下させ、インキ逆流防止体及びインキ逆流防止体−インキ界面の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
【0024】追従性試験初期、及び、50℃で30日間放置した各試験用ボールペンについて筆記荷重100g、筆記角度70度に調整した螺旋式筆記試験機を用い、筆記速度4m/分(通常筆記)と10m/分(速書き筆記)の二条件で筆記試験を行ない、筆跡の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。性能比較試験の結果を以下の表に示す。
【0025】
【表1】

【0026】なお、表中に性能比較試験結果の記号に関する説明は以下のとおり。
インキ逆流試験◎:インキとインキ逆流防止体界面に変化が認められない。
○:インキとインキ逆流防止体界面にやや崩れが認められものの、実用上問題ない。
×:インキの逆流が認められる。
追従性試験◎:4m/分、10m/分共に正常に筆記可能。
○:4m/分では筆記可能であるが、10m/分では僅かに筆跡がかすれる。
×:4m/分、10m/分共に筆跡がかすれる。
【0027】
【発明の効果】本発明はシリコーンオイルに疎水性微粒子シリカと液状ポリブタジエンを配合することにより、化学的に安定で、筆記具に充填された場合においても、バルクで保管されたときにおいても粘性変化がなく、また、耐逆流性能及び追従性能をともに満足する、筆記具に最適なインキ逆流防止体組成物を提供できる。
【出願人】 【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
【住所又は居所】愛知県名古屋市昭和区緑町3−17
【出願日】 平成14年2月18日(2002.2.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−237280(P2003−237280A)
【公開日】 平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願番号】 特願2002−39845(P2002−39845)