トップ :: B 処理操作 運輸 :: B43 筆記用または製図用の器具;机上付属具




【発明の名称】 ボールペンチップ及びこれを使用したボールペン
【発明者】 【氏名】高橋 裕一
【住所又は居所】埼玉県草加市吉町4−1−8 ぺんてる株式会社草加工場内

【要約】 【課題】筆記抵抗が少なくて筆跡にカスレやボテがなく良好なボールペンチップを得る。

【解決手段】前記内方突出部の先端部のボールが当接する最外周部の円周長さ総距離をA、ボールの最大外周長さをBとしたときに、0.27≦A/B≦0.56であることを特徴とするボールペンチップを要旨とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筆記部材としてのボールと、このボールの直径よりも小径の先端開口部と内孔に形成した内方突出部とによって前記ボールを抱持するボールホルダーとから少なくともなるボールペンチップにおいて、前記内方突出部の前記ボールに対する接触部の最外径周長さをA、前記ボールの赤道長さをBとしたとき、0.27≦A/B≦0.56であることを特徴としたボールペンチップ。
【請求項2】 平均粒子径が20μm以上100μm以下の反射性着色剤をインキ全量に対して2重量%以上8重量%以下含有するインキを収容したインキ収容管の先端に前記請求項1記載のボールペンチップをインキ接続して備えるボールペン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筆記部材としてのボールと、このボールの直径よりも小径の先端開口部と内孔に形成した内方突出部とによって前記ボールを抱持するボールホルダーとから少なくともなるボールペンチップおよびこのボールペンチップをペン先として備えるボールペンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ステンレスや黄銅、洋白などの金属、合金からなるボールホルダーに、超硬、セラミックス、もしくは金属製のボール備えるボールペンチップが知られている。筆跡を形成するインキが通過するボールホルダーの内孔に配置された筆記部材としてのボールは、ボールホルダーの内孔に形成された内方突出部によって後退規制されており、内方突出部のボールとの接触面(以下ボール受け座という)は、平面状としてボールと線接触状としたものや、ボールを強い力にてボール受け座に押しつけることによってボール表面の曲率を転写し、曲面状に形成したものが知られている。いずれにしても内方突出部の中心部分にインキ通孔を備えているが、このインキ通孔が円形の開口ではボールによって塞がれてインキが流通し難くなるため、このインキ通孔を四角形や三角形などの非円形としたり、放射状にインキ通溝を形成したりしてボールの側部側の空間にインキが流れ出られるようになしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ボールペンを筆記する際の滑らかな筆記感触は、筆記部材としてのボールの回転のし易さに大きく左右される。即ち、このボールとボール受け座との摩擦力がボールと紙面との摩擦よりも大きいと、ボールと被筆記部材である紙等との間でスリップして一時的にでもボールが回転しない状態となり筆跡がかすれてしまうことがあった。
【0004】また、ボールペンにて筆記しているときに「キリキリ」といった感じの不快音がすることがあり問題とされていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、筆記部材としてのボールと、このボールの直径よりも小径の先端開口部と内孔に形成した内方突出部とによって前記ボールを抱持するボールホルダーとから少なくともなるボールペンチップにおいて、前記内方突出部の前記ボールに対する接触部の最外径周長さをA、前記ボールの赤道長さをBとしたとき、0.27≦A/B≦0.56であることを特徴としたボールペンチップを要旨とする。
【0006】
【作用】ボールハウス内のボールとの間に形成される空間は、もとよりインキが通過する道であることから、一定以上の空間体積が必要であるところ、ボールとボール受け座との接触部がボールの赤道に近い位置では、このインキが通過する空間を狭めることになる。これに対して、前記接触部をボールの赤道から遠い位置にすると、筆記具の軸心方向に対して斜めにかかる筆記時の筆圧や筆記方向による力など、ボールにかかる力によってボールの位置が安定せず、ボールハウス内壁に衝突することによって不快音が発生するものと考えられる。ボール受け座のボールに対する接触部の最外径周長さとボールの赤道長さとの比であるA/Bを調整することは、ボール受け座のボールに対する接触部位置を調整することであり、その最適な値が0.27≦A/B≦0.56である。
【0007】
【実施例】図面に基づいて、一例について説明する。図1に示したものは、本発明のボールペンチップを使用したボールペンの一例の要部縦断面図である。ボールペンとしては、所謂リフィルと称され、筆記具外装体(図示せず)の中に収容されて使用されるものを想定している。このリフィルは、ポリプロピレン樹脂の押し出し成形物を適宜長さに切断して得られた中空パイプであるインキ収容管1とボールペンチップ2とをチップホルダー3にて接続し、各部材の内孔をインキ接続している。インキ収容管1の後端は開放されており、インキの消費量に伴って管内に空気を置換し、内圧を維持しているが、インキ4の後端からの漏れだしを抑制するために、アルファオレフィンオリゴマーをゲル化させた逆流防止剤組成物5をインキ4の後端界面に配置している。インキ収容管1の内径が大きい場合には、逆流防止剤組成物5の逆流防止能が比較的弱くなるので、浮子(図示せず)などを配して補強することもできる。尚、インキタンク2内に収容されているインキは、有彩色に着色された粒子径20μm以上100μm以下の反射性着色剤をインキ全量に対して2重量%以上8重量%以下含み、この反射性着色剤が着色された色と異なる色の着色剤とを含有してなる水性インキであり。25℃における粘度は約5500mPa・s(測定条件としては、ELD型粘度計を使用し、STローターを1rpmで10分回転後測定)である。
【0008】図2にボールペンチップの要部縦断面図、図3に図2のI−I’線横断面矢視図(ボール省略;ボール外径は破線にて表示)を示す。ボールペンチップ2は、超硬製のボール6と、このボール6を抱持するステンレス製のボールホルダー7とを有している。ボールホルダー7はインキ通路としての内孔8を有しており、その先端開口部8aは、ボール6を設置した後にかしめ加工を施すことによってボール6の直径より小さい径に縮径化されており、ボール6の抜け止めがなされている。また、内孔8には、複数の内方突出部9(図示のものは3つ)が放射状に形成されており、ボール6の後方移動規制をなすと共に、各内方突出部9の間の空間を中心孔10と連通してインキの通過する放射状溝11を形成している。各内方突出部9の先端(最も中心に近い部位)は、本例のボールペンチップ2における、ボール6とボール受け座12との接触部13であり、ボール受け座12のボールに対する接触部の最外径周長さAを規定する。本例においては、ボール6の直径(r)を1.0mmのものを使用したことを想定しているが、放射状溝10の外接円の直径(s)との関係はs≧rである。
【0009】Aを実測する方法としては、光学顕微鏡などを用いて実測する方法がある。光学顕微鏡の中には試料台を縦横軸に移動させることによって、試料の任意の距離を測ることができる工業用顕微鏡などがあるのでそれを用いても良い。寸法が明確な部分もしくは上記の工業用顕微鏡で寸法測定できる部分を含めて100倍もしくは50倍に拡大して写真を撮り、上記寸法が明確な部分の寸法と写真上の寸法を照らし合わせて何倍になっているのか確認してAの部分を回転型距離測定器(車輪を回転させることで長さを測る距離測定器)やメジャー、ヒモなどでその部分をなぞり測定し、比計算により実際の縮尺に直して距離を算出することができる。
【0010】また、本例の場合ボール受け座12の開き角度は120゜である。ボールは、受け座12の中心孔10にかかる縁に接触することになり、ボール受け座12のボール6に対する接触部の最外径部分の径は、中心孔10の内径と同じとなる。よって、Aの長さは、中心孔の円周長さから放射状溝11(幅は0.27mm)の部分の周長さを除いた長さとなり、A=0.91mmと算出される。ボールの赤道長さ(B)は、B=πr=3.14mm(r:ボールの直径)であるので、A/B=0.91/3.14=0.29と算出される。
【0011】次に、上述の一例におけるボールペンチップの製造方法について説明する。先ず、コイル材を剪断加工によって適切な長さの円柱形に切断し、バレル加工によって角を取り、洗浄後乾燥してボールペンチップとなるワークを得、このワークに対して以下の加工を行いボールペンチップを得る。
【0012】ワークの加工は次の通りである。半月バイトおよびエンドミル等でワーク両端面を平面に切削加工する。半月バイト等で一回または複数回に分けて、図4に示したように、ワークの先端部分の外形を先端方向に縮径したテーパー形円錐状に加工した後、半月バイトおよびドリル等で両端面に後に施す切削加工のガイドとなる中心基準孔14を形成する。次いで、ドリル等で複数回に分ける等して内孔8となる部分の概形を形成し、ボール6が設置される部分の仕上げ加工を半月バイト等で行うとともに、バイト等で先端面を切削加工で平面に仕上げ、同時にバイト等で先端部分の外形部を、図4にて示した状態のテーパー形状よりも角度の開いた形状のテーパー形状に切削加工を行い図5に示す形状のものを得る。ボール6が設置される部分となる部分の仕上げ加工と先端面の仕上げ加工、先端部分の外径のテーパ−形状の切削加工を1度の工程で行うことにより先端面の均一な肉厚を得ることができる。次に、チップホルダーに圧入される部分を小径部として形成するが、その後端部分はチップホルダーへの挿入を円滑にするため、面取りを施すことが望ましい。該部分の加工は、後穴と中心孔が連通した後でも、後穴を加工する前でも、後穴を加工している途中でも良いが、上述のボール6が設置される部分となる部分の仕上げ加工をしている時に同時加工することは寸法精度が低下する恐れがあるため好ましくない。また、この段部が必要なければ加工する必要はない。その後に、内方突出部となっている部分に中心孔形成後に後穴が連通するように切削加工し、図6に示した形状のものを得る。
【0013】次に、図7に示すように、放射状に切削刃15aの出た剪断加工刃物15によって、剪断加工を行い、中心孔11に連通した放射状溝10を形成する。剪断加工は一度に行っても、複数回に分けて行っても良い。尚、放射状溝10は、所望により内方突出部9を貫通させずに途中までの段状に形成することもできる。この後、中心孔11と同径または少し大径のドリル等により剪断加工時のバリを除去する切削加工を行っても良い。
【0014】次に、図8に示すように、内方突起の先端側の面を、略同一角度の超硬またはハイス製のテーパーピン16で5μm〜100μm押し付けることによって、少量の塑性変形をさせる。こうすることによってボール受座表面の切削目を平滑にして、ボールの回転に対する摩擦抵抗を極力抑制して筆記感触を滑らかにすることができる。
【0015】次いで、図9に示すように、ボール6を内孔8に配置し、自転可能な圧接面17aを持った2つのローラー17が回転軸に対して偏心した位置に対角上に取り付けられているかしめ加工具にて、先端部を多少のスプリングバックを伴った塑性加工によって縮径し(かしめ加工)、ボールホルダー7の先端開口部8aを形成し前記ボール6の抜け止めをなす。以上にて、図2、図3に示した如きボールペンチップが出来上がるものである。
【0016】図10に他の一例を示す。上述の図3に相当する図として示してある。前例のように内方突起の先端面を、略同一角度の超硬またはハイス製のテーパーピンで5μm〜100μm押し付けることをせずに、ボール6を挿入後、かしめ加工の前でも後でも良いが、ボール6を先端側から押しつける(ハンマーリング)ことによって、各内方突出部9の先端面のボール6と接触する面にボールと略同一の曲率の面を押圧形成したものである。ボール6(図示省略)は、各内方突出部9の先端面に形成された曲面部12aに見かけ上面状に接触する。その場合の最外周部は、この曲面部12aの最も外側の縁部分でありF部となる。本例の場合F部の直径φfは0.59mmである。使用ボールφ1.0mm、インキ流通溝の幅が0.30mmで3ヶ所となるので、ボール受け座12のボールに対する接触部の最外径周長さA、またボールの最大外周長さBは以下のようになる。
A=0.91mm。
B=3.14mmよって、A/B=0.91/3.14=0.29mmとなる。
【0017】尚、いずれの一例においても、ボールホルダー7の先端開口部8aとボール6との隙間部分よりインキが洩れ出すのを抑制するために、ボールホルダー7内にコイルスプリング等の弾撥部剤を配してボール6をボールホルダー7の先端開口部内縁部分に周状密着するようになすこともできる。
【0018】
【発明の効果】図2、図3に示した一例の形状を有するボールペンチップについて、筆記部材であるボールを直径約1.0mm、内孔8のボール6が抱持されている範囲内(ボールハウス)の直径(t)を1.075mm、放射状溝10の幅(h)を0.27mm、放射状溝10の外接円の直径(s)を1.04mmとして、中心孔11の直径の寸法を変えて試験サンプルを複数作成し、自動筆記機による筆記試験を行なった。結果を表1に示す。A/Bの値を変化させた試験サンプルを得るためには、ボール6の各内方突起9への接触位置を変化させることで得ることができる。自動筆記機による筆記条件は、70゜の筆記角度、筆記荷重100gf、筆記速度2mm/sec、JIS S6054に記載の筆記用紙を用いて直線筆記試験を行い、その時の筆記方向にかかる筆記抵抗値(g)、筆記線かすれ、音鳴き等を評価した。
【0019】筆跡状態の不良としては次のものが挙げられる。
かすれ不良:筆跡が途中で途切れる。筆跡が形成されない部分が発生しているもの。
音鳴き不良:筆記時にキリキリと金属音が発生するもの。
【0020】また、試験に使用したインキは、エルジー Red Gold #325 4.50重量%NKW−2107(ピンク色蛍光顔料分散体、日本蛍光(株)製) 12.00重量%アルカガム(伯東(株)製) 0.18重量%エチレングリコール(水溶性有機溶剤) 7.00重量%グリセリン(水溶性有機溶剤) 8.00重量%ジョンクリル1535(スチレンアクリル共重合体のエマルジョン、ジョンソンポリマー(株)製) 6.00重量%TSA732 0.15重量%プロクセルGXL 0.20重量%水 61.97重量%を配合し、粘度が5,500mPa・s(測定条件としては、ELD型粘度計を使用し、STローターを1rpmで10分回転)のものである。
【0021】
【表1】

【0022】以上の通り、本発明は、筆記時にボールの位置を安定させることによって、筆記時の音鳴きを防止して良好な筆記感を得るとともに、ボールの回転を円滑にしてカスレを防止し、良好な筆跡が得られるものである。
【出願人】 【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋小網町7番2号
【出願日】 平成13年11月15日(2001.11.15)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−145981(P2003−145981A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−349718(P2001−349718)