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【発明の名称】 印刷物
【発明者】 【氏名】宮本 貴志
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【氏名】堀田 泰業
【住所又は居所】滋賀県大津市堅田2丁目1番1号 東洋紡績株式会社総合研究所内

【氏名】賀来 俊行
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号 凸版印刷株式会社内

【氏名】奥山 和紀
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号 東洋インキ製造株式 会社内

【氏名】鈴木 明
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号 東洋インキ製造株式 会社内

【要約】 【課題】生分解性樹脂の廃棄容易性を生かして、使用後の廃棄に際し、環境に係わる負荷を軽減し、環境汚染を防止する印刷物の提供にある。

【解決手段】生分解性を有するポリ乳酸クフィルムを被印刷体10とし、その片面にポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルを主成分とするバインダーでなるインキで印刷層16が形成され、この印刷層16を被覆して設けられ、熱による接着を防止する、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類との混合物からなるオーバーコート層14を備えている印刷物1とするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】生分解性を有するプラスチックフィルムまたは紙を被印刷体とし、その片面または両面に生分解性樹脂を主たるバインダーとするインキによる印刷層が施されていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】前記印刷層を形成するインキのバインダーとなる生分解性樹脂が、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】前記印刷層を形成するインキのバインダーとなる生分解性樹脂が、下記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【化1】

〔式(1)において、Xは炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基または、水素、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アシル基、スルホン酸基、アルコキシル基およびハロゲンを示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。また、m1は0〜3の整数であり、m2は1〜4の整数であって、m1+m2は、1≦m1+m2≦4の関係を満たす。また、n1は1以上の整数を示す。〕
【化2】

〔式(2)において、R1 は炭素数20以下のアルキリデン基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。〕
【化3】

〔式(3)において、R2 、R3 、R4 およびR5 はそれぞれ独立に水素、アルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。〕
【請求項4】前記印刷層を被覆して設けられ、熱による接着を防止する生分解性を有するオーバーコート層を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】前記生分解性を有するオーバーコート層は、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物からなることを特徴とする請求項4記載の印刷物。
【請求項6】前記生分解性を有するオーバーコート層は、下記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルと、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物からなることを特徴とする請求項4記載の印刷物。
【化4】

〔式(1)において、Xは炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基または、水素、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アシル基、スルホン酸基、アルコキシル基およびハロゲンを示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。また、m1は0〜3の整数であり、m2は1〜4の整数であって、m1+m2は、1≦m1+m2≦4の関係を満たす。また、n1は1以上の整数を示す。〕
【化5】

〔式(2)において、R1 は炭素数20以下のアルキリデン基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。〕
【化6】

〔式(3)において、R2 、R3 、R4 およびR5 はそれぞれ独立に水素、アルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。〕
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙またはプラスチックフィルムを被印刷体としたポスター、カレンダー、雑誌等一般商業印刷物、あるいは包装シート、化粧箱等包装用印刷物に関するものであり、さらに詳しくは、使用後の廃棄に際し、環境に係わる負荷を軽減し、環境汚染を防止する印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポスター、カレンダー、パンフレット、雑誌等一般商業・出版印刷物、あるいは包装シート、化粧箱等包装用印刷物として、紙またはポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等プラスチックフィルムを基材とし、オフセット印刷法やグラビア印刷法などで印刷された印刷物が知られ、各分野で広く利用されている。
【0003】ところが近年において、廃棄物の増加に伴い、上記のような印刷物、特にプラスチックフィルム(シート)を基材としたものでは、使用後の廃棄(焼却処理や埋立処分)に際し、環境に係わる負荷が増大し、環境汚染を引き起こす危惧があるという問題点があったが、この問題点を解消するものとして土中で分解する生分解性を有するプラスチックフィルムを基材としたものも出現している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来技術においては、生分解性を有するプラスチックフィルムまたは紙を被印刷体としても、それらに印刷するインキのバインダーに、例えばグラビア用としてポリウレタン樹脂、ポリアマイド樹脂、塩ビ−酢ビ共重合体、アクリル樹脂等が用いられ、またオフセット用としてロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂等が主に用いられていて、これら樹脂は生分解性を有せず、よって被印刷体の生分解を妨げ、廃棄に際し、環境に係わる負荷が増大し、環境汚染を引き起こすおそれがあるという問題点があった。
【0005】また、印刷後の上記印刷物を多数枚重ねて保管する場合等で、この印刷インキ層が、熱等によって隣接する印刷物に接着するブロッキングや転移現象が生じ易いことから、オーバーコート層を施す場合があるが、このオーバーコート層は、アクリル系やポリウレタン系等の樹脂を主体とした塗布液であり、これら樹脂によるオーバーコート層も上記と同様に、基材の生分解を妨げ、廃棄に際し、環境に係わる負荷が増大し、環境汚染を引き起こすおそれがあるという問題点があった。
【0006】本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、生分解性樹脂の廃棄容易性を生かして、使用後の廃棄に際し、環境に係わる負荷を軽減し、環境汚染を防止する印刷物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に於いて上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、生分解性を有するプラスチックフィルムまたは紙を被印刷体とし、その片面または両面に生分解性樹脂を主たるバインダーとするインキによる印刷層が施されていることを特徴とする印刷物としたものである。
【0008】上記請求項1の発明によれば、生分解性を有する紙は別として、従来のポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムに代えて、生分解性を有するフィルムを被印刷体として利用し、また、印刷インキ層の主たるバインダーとして生分解性樹脂を利用しているため、使用後の廃棄に当たって、これらフィルムまたは紙や印刷層が雑菌(分解性細菌)にさらされて分解され、廃棄物に係わる環境の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0009】また、請求項2の発明では、前記印刷層を形成するインキのバインダーとなる生分解性樹脂が、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の印刷物としたものである。
【0010】上記請求項2の発明によれば、生分解性を有するフィルムあるいは紙の片面または両面に設ける印刷インキ層の主たるバインダーとしてポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルを使用しているため、使用後の廃棄に際し、これら印刷層を有するフィルムや紙等が印刷層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0011】また、請求項3の発明では、前記印刷層を形成するインキのバインダーとなる生分解性樹脂が、下記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルであることを特徴とする請求項1記載の印刷物としたものである。
【化7】

〔式(1)において、Xは炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基または、水素、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アシル基、スルホン酸基、アルコキシル基およびハロゲンを示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。また、m1は0〜3の整数であり、m2は1〜4の整数であって、m1+m2は、1≦m1+m2≦4の関係を満たす。また、n1は1以上の整数を示す。〕
【化8】

〔式(2)において、R1 は炭素数20以下のアルキリデン基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。〕
【化9】

〔式(3)において、R2 、R3 、R4 およびR5 はそれぞれ独立に水素、アルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。〕
【0012】上記請求項3の発明によれば、生分解性を有するフィルムあるいは紙の片面または両面に設ける印刷インキ層の主たるバインダーとして上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルを使用しているため、開封後の廃棄に際し、これら印刷層を有するフィルムや紙等が印刷層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、よって環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0013】また、請求項4の発明では、前記印刷層を被覆して設けられ、熱による接着を防止する生分解性を有するオーバーコート層を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷物としたものである。
【0014】上記請求項4の発明によれば、印刷層を被覆して熱による接着を防止する、生分解性封を有するオーバーコート層を備えることによって、印刷後の多数枚重ねて保管する場合や移送する場合、この印刷層が熱等によって隣接する他の印刷物に接着するブロッキングや転移現象を防止して、長期保管と移送を容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。かつ使用後の廃棄に際し、被印刷体上の印刷層とこのオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する包装材料とすることができる。
【0015】また、請求項5の発明では、前記生分解性を有するオーバーコート層は、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物からなることを特徴とする請求項4記載の印刷物としたものである。
【0016】上記請求項5の発明によれば、印刷層を被覆して熱による接着を防止するオーバーコート層として、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物を使用しているため、使用後の廃棄に際し、この印刷層とそれを被覆しているオーバーコート層を有するフィルムや紙等が、印刷層とオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。また、上記請求項2に係わる発明の脂肪族ポリエステルもしくは請求項3に係わる発明のスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステル樹脂を主たるバインダーとする印刷インキは、一般に、インキ適性(印刷適性)を確保するため種々の補助成分を含有している。そしてこの補助成分のため、印刷後の印刷物を多数枚重ねて保管する場合に、これら印刷層が隣接する印刷物に接着するブロッキングや転移を生じ易い。
【0017】従って、請求項5に係る発明においては、上記請求項2または3に係わる発明の印刷層を被覆して、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートの混合物から成るオーバーコート層を設けているため、これら印刷層による隣接する印刷物等へのブロッキングや転移を防止して、長期の保管と移送とを容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0018】また、請求項6の発明では、前記生分解性を有するオーバーコート層が、下記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルと、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物からなることを特徴とする請求項4記載の印刷物としたものである。
【化10】

〔式(1)において、Xは炭素数20以下のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基または、水素、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アシル基、スルホン酸基、アルコキシル基およびハロゲンを示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。また、m1は0〜3の整数であり、m2は1〜4の整数であって、m1+m2は、1≦m1+m2≦4の関係を満たす。また、n1は1以上の整数を示す。〕
【化11】

〔式(2)において、R1 は炭素数20以下のアルキリデン基を示し、Mはリチウム、ナトリウム、カリウムまたは下記式(3)で表されるアミンを示す。〕
【化12】

〔式(3)において、R2 、R3 、R4 およびR5 はそれぞれ独立に水素、アルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。〕
【0019】上記請求項6の発明によれば、印刷層を被覆して熱による接着を防止するオーバーコート層として、上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルと、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物を使用しているため、使用後の廃棄に際し、その印刷層とそれを被覆しているオーバーコート層を有するフィルムや紙等が、印刷層とオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。また、上記請求項2に係わる発明の脂肪族ポリエステルもしくは請求項3に係わる発明のスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステル樹脂を主たるバインダーとする印刷インキは、一般に、インキ適性(印刷適性)を確保するため種々の補助成分を含有している。そしてこの補助成分のため、印刷後の印刷物を多数枚重ねて保管する場合に、これら印刷層が隣接する印刷物に接着するブロッキングや転移を生じ易い。
【0020】従って、請求項6に係る発明においては、上記請求項2または3に係わる発明の印刷層を被覆して、上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルと、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物から成るオーバーコート層を設けているため、これら印刷層による隣接する印刷物へのブロッキングや転移を防止して、長期の保管と移送とを容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を説明する。本発明は、例えば図1の積層側断面図に示すように、生分解性を有するフィルムを被印刷体(10)とし、この被印刷体(10)の片面に、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルを主たるバインダーとする印刷インキを用いた印刷層(16)を備え、その印刷層(16)を被覆して熱による接着を防止し、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類の混合物からなるオーバーコート層(14)を備えている印刷物(1)である。
【0022】上記印刷物の被印刷体(10)が上質紙等でなる雑誌等の場合のように特に長期保存等を要せず、船による輸送等がない印刷物では、熱によるブロッキングや転移を防止するためのオーバーコート層(16)を必要としないことが多い。
【0023】上記本発明に係る被印刷体(10)である紙としては、用途により種々の紙が対象になり、特に限定するものではなく、例えば石油系の樹脂等で被覆あるいは含浸されて生分解性に劣るもの以外は好適に使用できる。
【0024】また上記本発明に係る被印刷体(10)である生分解性を有するフィルムとしては、任意のものが使用できるが、その製膜加工性、透明性、生分解性能などの理由から、ポリ乳酸系フィルムが好適に利用できる。なお、ポリ乳酸系フィルムは温度と湿度の双方が一定の条件以上で整った場合に加水分解を始める。さらに加水分解によって小さくなった分子を微生物が摂取することで分解が促進されるものである。
【0025】従って、ポリ乳酸フィルムは、通常の包装材料の保管条件では加水分解が開始されず、従って、この点からも製品工場に対して、安定した品質の印刷物を供給することができる。また、製品としての印刷物とした後も、加水分解が開始されないため、店舗等における製品販売の際にも品質の劣化がない。このため、長期間の流通過程に乗せられる印刷物に適している。そして、このポリ乳酸フィルムは、印刷物として使用した後、コンポスト内に放置した場合に速やかに分解される。
【0026】このポリ乳酸フィルムとしては、例えば、ユニチカ(株)製テラマック、三菱樹脂(株)製エコロージュ、東セロ(株)製パルグリーンLCなどが挙げられる。これら市販のポリ乳酸フィルムは、例えばフィルムでなるグラビアカレンダーや包装用シート等用に好適なフィルムである。
【0027】次に、本発明に係わる印刷層(16)としては、着色剤と、この着色剤を生分解性フィルム上に固定するバインダーとを主成分とし、これにインキ適性(印刷適性)を向上させる各種補助成分を添加した印刷インキから構成することができる。上記着色剤としては、着色顔料または染料が利用できるが、その耐光性などの点から顔料が好適である。
【0028】上記印刷インキを構成するバインダーとして使用するポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルとしては、ポリ乳酸セグメント中に乳酸残基を80モル%以上含んでいるものが望ましく、また、L−乳酸残基とD−乳酸残基とをL/Dモル比が1〜9の範囲となるように含んでいることが望ましい。また、ポリグリセリンセグメントの重合度は3〜20の範囲にあることが望ましい。また、上記脂肪族ポリエステルとしては、還元粘度が0.3〜1.0dl/g、ガラス転移点が40〜60℃の範囲にあることが望ましい。
【0029】このような脂肪族ポリエステルは、乳酸の二量体であるラクチドに乳酸とポリグリセリンとを溶融混合し、公知の開環重合触媒を使用して加熱開環重合させたり、加熱と減圧により直接脱水重合させる方法などで得ることができる。また、高分子量ポリ乳酸や乳酸セグメントを製造した後、ウレタン基やエポキシ基などを利用して、ポリグリセリンセグメントを反応させて得ることもできる。乳酸としては、L―乳酸、D−乳酸、DL−乳酸などが使用できる。
【0030】さらにまた、バインダーとして使用する上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルとしては、例えば上記式(1)で表されるスルホン酸含有化合物とヒドロオキシ酸との共重合で得られ、例えば、乳酸の二量体であるラクチドと、上記スルホン酸含有化合物とを溶融混合し、公知の開環重合触媒、例えば、オクチル酸、アルミニウムアセチルアセトナート等を使用して加熱開環重合させる方法や加熱および減圧による直接脱水重縮合を行う方法等が挙げられる。
【0031】上記のようにして得られるポリヒドロキシ酸系ポリエステルとしては、ポリエステル中のスルホン酸塩の濃度が5〜100当量/106 gであることが望ましく、またポリヒドロキシ酸系ポリエステルが乳酸系ポリエステルである場合には、乳酸系ポリエステル中に乳酸残基が80モル%以上含まれていることが望ましい。また、上記乳酸系ポリエステルがL−乳酸残基とD−乳酸残基とを含んでいる場合には、L−乳酸残基のモル数(L)とD−乳酸残基モル数(D)のモル比(L/D)が1〜9の範囲であることが望ましい。なお乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸のいずれも用いることができる。
【0032】また、上記のようにして得られたポリヒドロキシ酸系ポリエステルの還元粘度は、0.3〜1.5dl/gの範囲であることが好ましく、またガラス転移点が35〜60℃の範囲であることが好ましい。
【0033】次に、印刷インキ中の上記各種補助成分としては、印刷層(16)に耐摩擦性や滑り性を与えるワックス、印刷層(16)に柔軟性を与え、また、インキの生分解性フィルム上への転移性を向上させる可塑剤や消泡剤、あるいは、顔料分散剤、粘度調整剤、皮膜調整剤、乾燥調整剤などがある。これら補助成分は印刷方式や条件に応じて、適切なものを適量添加すれば良い。これら印刷インキは、例えば、グラビア印刷で印刷することができる。多色の印刷インキを重ね刷りすることによりカラーの印刷層(16)を構成することも可能である。
【0034】また、図1に示すように、本発明に係るオーバーコート層(14)は、印刷層(16)による隣接する他の印刷物等とのブロッキングや転移を防止するもので、必要に応じてこの印刷層(16)を被覆して設けることができる。このオーバーコート層(14)に使用されるポリ乳酸系樹脂としては、ポリ乳酸セグメント中に乳酸残基を80モル%以上含んでいるものが望ましく、また、L−乳酸残基とD−乳酸残基とをL/Dモル比が1〜9の範囲となるように含んでいることが望ましい。また、還元粘度が0.3〜1.0dl/g、ガラス転移点が40〜60℃の範囲にあることが望ましい。
【0035】このようなポリ乳酸系樹脂は、乳酸の二量体であるラクチド及びポリグリセリン等の添加物を溶融混合し、加熱開環触媒の存在下で加熱開環重合させたり、加熱と減圧により直接脱水重合させる方法などで得ることができる。
【0036】また、オーバーコート層(14)に使用される上記有機溶剤可溶性多糖類としては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、エステル化デンプンなどが例示できる。これらの混合比としては、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し有機溶剤可溶性多糖類5〜40重量部が好ましい。
【0037】また、オーバーコート層(14)に使用される上記多官能イソシアネートとしは、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添TDI、水添MDI、などの2官能イソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体などの3官能イソシアネート、などが挙げられる。これらの混合比としては、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し多官能イソシアネート0.5〜20重量部が好ましい。
【0038】また、オーバーコート層(14)に使用される上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルとしては、上記印刷層(16)の項で述べたものと同様なので省略する。さらにこのポリヒドロキシ酸系ポリエステルと混合される有機溶剤可溶性多糖類および多官能イソシアネートについても、上記ポリ乳酸系樹脂との混合のものと同様なので省略する。
【0039】なお、上記オーバーコート層(14)は、適切な有機溶剤に溶解または分散させて印刷または塗布することができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が使用できる。
【0040】次に、一事例により、本発明をさらに具体的に説明する。図2に示すように、被印刷体(10)としての生分解性フィルムとして、ユニチカ(株)製ポリ乳酸フィルムを利用した。このポリ乳酸フィルムの融点は170℃であり、二軸延伸して厚みは25μmのフィルムとした。
【0041】次に、グラビア印刷を利用して、被印刷体(10)の裏面側(図面では上面)に、4色の印刷層(16)と白色の印刷層(16a)を形成した。これら印刷層(16、16a))に適用したインキは、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルから成るバインダー100重量部に各着色顔料10重量部と有機溶剤として酢酸プロピル200重量部を混合し、各種補助成分を添加してその印刷適性を調整したものである。
【0042】上記バインダーは、次の方法で合成したものである。すなわち、DLラクチド1000部、重合度が10であるポリグリセリン10部、開環重合触媒としてアルミニウムアセチルアセテート1重量部をフラスコに仕込み、窒素雰囲気中で180℃、3時間の条件で加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、上記バインダーを製造した。このバインダー中の乳酸残基は99モル%、L−乳酸残基とD−乳酸残基とのL/Dモル比は1、還元粘度は0.49dl/g、ガラス転移点が49℃であった。
【0043】次に、この印刷層(16)を被覆してオーバーコート層(14)を塗布した。このオーバーコート層(14)はポリ乳酸セグメントと、ポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、有機溶剤可溶性のニトロセルロース20重量部を混合したもので、有機溶剤に溶解させ、グラビア印刷法により塗布した。このポリ乳酸系樹脂は、次の方法で合成したものである。すなわち、DLラクチド1000重量部、重合度が10であるポリグリセリン10重量部、開環重合触媒としてアルミニウムアセチルアセテート1重量部をフラスコに仕込み、窒素雰囲気中で180℃、3時間の条件で加熱溶融させることにより開環重合させ、残留ラクチドを減圧下留去させることにより、上記バインダーを製造した。このポリ乳酸系樹脂中の乳酸残基は99モル%、L−乳酸残基とD−乳酸残基とをL/Dモル比は1、還元粘度は0.49dl/g、ガラス転移点は49℃であった。
【0044】こうして得られた印刷物(1)を、所定の枚数丁合して綴じ、高級グラビアカレンダーとした。
【0045】この印刷物(1)の使用後、生分解性能を確認したところ、被印刷体(10)フィルム、印刷層(16)、オーバーコート層(14)のいずれも良好な生分解性能を示し、短期間のうちに分解するものであった。
【0046】
【発明の効果】本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。即ち請求項1に係わる発明においては、生分解性を有する紙は別として、従来のポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムに代えて、生分解性を有するフィルムを被印刷体として利用し、また、印刷層を形成するインキの主たるバインダーとして生分解性樹脂を利用しているため、使用後の廃棄に当たって、これらフィルムまたは紙や印刷層が雑菌(分解性細菌)にさらされて分解され、廃棄物に係わる環境の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0047】また、上記請求項2に係わる発明においては、生分解性を有するフィルムあるいは紙の片面または両面に設ける印刷インキ層の主たるバインダーとしてポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとから成る脂肪族ポリエステルを使用しているため、使用後の廃棄に際し、これら印刷層を有するフィルムや紙等が印刷層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0048】また、上記請求項3に係わる発明においては、生分解性を有するフィルムあるいは紙の片面または両面に設ける印刷インキ層の主たるバインダーとして上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルを使用しているため、開封後の廃棄に際し、これら印刷層を有するフィルムや紙等が印刷層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、よって環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0049】また、上記請求項3に係わる発明においては、印刷層を被覆して熱による接着を防止する、生分解性封を有するオーバーコート層を備えることによって、印刷後の多数枚重ねて保管する場合や移送する場合、この印刷層が熱等によって隣接する他の印刷物に接着するブロッキングや転移現象を防止して、長期保管と移送を容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。かつ使用後の廃棄に際し、基材上の印刷層とこのオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する包装材料とすることができる。
【0050】また、上記請求項4に係わる発明においては、印刷層を被覆して熱による接着を防止する、生分解性封を有するオーバーコート層を備えることによって、印刷後の多数枚重ねて保管する場合や移送する場合、この印刷層が熱等によって隣接する他の印刷物に接着するブロッキングや転移現象を防止して、長期保管と移送を容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。かつ使用後の廃棄に際し、被印刷体上の印刷層とこのオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。
【0051】また、上記請求項5に係わる発明においては、印刷層を被覆して熱による接着を防止するオーバーコート層として、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物を使用しているため、使用後の廃棄に際し、この印刷層とそれを被覆しているオーバーコート層を有するフィルムや紙等が、印刷層とオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境問題の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。また、上記請求項2に係わる発明の脂肪族ポリエステルもしくは請求項3に係わる発明のスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステル樹脂を主たるバインダーとする印刷インキは、一般に、インキ適性(印刷適性)を確保するため種々の補助成分を含有している。そしてこの補助成分のため、印刷後の印刷物を多数枚重ねて保管する場合に、これら印刷層が隣接する印刷物に接着するブロッキングや転移を生じ易い。
【0052】従って、請求項5に係る発明においては、上記請求項2または3に係わる発明の印刷層を被覆して、ポリ乳酸セグメントとポリグリセリンセグメントとを有するポリ乳酸系樹脂と、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートの混合物から成るオーバーコート層を設けているため、これら印刷層による隣接する印刷物等へのブロッキングや転移を防止して、長期の保管と移送とを容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0053】さらにまた、上記請求項6に係る発明においては、印刷層を被覆して熱による接着を防止するオーバーコート層として、上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルと、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物を使用しているため、使用後の廃棄に際し、その印刷層とそれを被覆しているオーバーコート層を有するフィルムや紙等が、印刷層とオーバーコート層とともに雑菌(分解性細菌)に曝されて分解され、廃棄物に係わる環境の負荷を低減し、環境汚染を防止する印刷物とすることができる。また、上記請求項2に係わる発明の脂肪族ポリエステルもしくは請求項3に係わる発明のスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステル樹脂を主たるバインダーとする印刷インキは、一般に、インキ適性(印刷適性)を確保するため種々の補助成分を含有している。そしてこの補助成分のため、印刷後の印刷物を多数枚重ねて保管する場合に、これら印刷層が隣接する印刷物に接着するブロッキングや転移を生じ易い。
【0054】従って、請求項6に係る発明においては、上記請求項2または3に係わる発明の印刷層を被覆して、上記式(1)および/または(2)で表されるスルホン酸塩含有構造を分子鎖に含むポリヒドロキシ酸系ポリエステルと、有機溶剤可溶性多糖類もしくは多官能イソシアネートとの混合物から成るオーバーコート層を設けているため、これら印刷層による隣接する印刷物へのブロッキングや転移を防止して、長期の保管と移送とを容易にして、品質に対する信頼性の向上を図ることができる。
【0055】従って本発明は、紙またはプラスチックフィルムを被印刷体としたポスター、カレンダー、雑誌等一般商業印刷物、あるいは包装シート、化粧箱等包装用印刷物とする用途において、優れた実用上の効果を発揮する。
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【住所又は居所】東京都台東区台東1丁目5番1号
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡績株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区堂島浜2丁目2番8号
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキ製造株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号
【出願日】 平成13年12月14日(2001.12.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−182266(P2003−182266A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−381159(P2001−381159)