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【発明の名称】 平版印刷方法および平版印刷原版
【発明者】 【氏名】大橋 秀和
【住所又は居所】静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写真フイルム株式会社内

【要約】 【課題】明室で取り扱える平版印刷版用原版に対して、デジタル画像情報に対応する画像をレーザー光で走査露光し、明室に置かれた印刷機上で製版し直ちに印刷を行う。

【解決手段】親水性支持体上に、光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子が分散している画像形成層が設けられている平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光重合開始剤を励起し、励起された光重合開始剤により重合性化合物を重合させ、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより露光していない部分の画像形成層を除去し、これにより平版印刷版を製版し、そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、平版印刷版で印刷する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 親水性支持体上に、光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子が分散している画像形成層が設けられている平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光重合開始剤を励起し、励起された光重合開始剤により重合性化合物を重合させる工程、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより露光していない部分の画像形成層を除去し、これにより平版印刷版を製版する工程、そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
【請求項2】 親水性支持体上に、光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子が分散している画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、該光重合開始剤が、多光子吸収によって励起され、重合性化合物の重合を開始することを特徴とする平版印刷原版。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタル信号に基づいたレーザー光の走査露光によって画像を記録し、印刷機により現像して印刷する平版印刷方法およびそれに用いる平版印刷原版に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、平版印刷版は、印刷過程でインクを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とから成る。従来の平版印刷版は、親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けたPS版に、リスフイルムを介してマスク露光した後、非画像部を現像液によって溶解除去することにより製版することが普通であった。近年では、コンピュータを用いて画像情報をデジタル情報として電子的に処理し、蓄積して、出力する。従って、デジタル画像情報に応じた画像形成処理は、レーザー光の様な指向性の高い活性放射線を用いる走査露光により、リスフイルムを介することなく、平版印刷版用原版に対して直接画像形成を行うことが望ましい。このようにデジタル画像情報からリスフイルムを介さずに印刷版を製版する技術は、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)と呼ばれている。従来のPS版による印刷版の製版方法を、コンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術で実施しようとすると、レーザー光の波長領域と感光性樹脂の感光波長領域とが一致しないとの問題がある。
【0003】また、従来のPS版では、露光の後、非画像部を溶解除去する工程(現像処理)が不可欠である。さらに、現像処理された印刷版を水洗したり、界面活性剤を含有するリンス液で処理したり、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で処理する後処理工程も必要であった。これらの付加的な湿式の処理が不可欠であるという点は、従来のPS版の大きな検討課題となっている。前記のデジタル処理によって製版工程の前半(画像形成処理)が簡素化されても、後半(現像処理)が煩雑な湿式処理では、簡素化による効果が不充分である。特に近年は、地球環境への配慮が産業界全体の大きな関心事となっている。環境への配慮からも、湿式の後処理は、簡素化するか、乾式処理に変更するか、さらには無処理化することが望ましい。
【0004】処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷版用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインクを供給することによって、印刷版用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。このような機上現像に適した平版印刷版用原版は、湿し水やインク(またはインク溶剤)に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。従来のPS版では、このような要求を満足することは、実質的に不可能であった。
【0005】特許第2938397号公報には、親水性バインダーポリマー中に熱可塑性疎水性重合体微粒子を分散させた感熱層を親水性支持体上に設けた平版印刷原版が記載されている。同公報の記載によると、製版において、赤外線レーザー露光して熱可塑性疎水性重合体微粒子を熱により合体(融着)させて画像形成した後、印刷機の版胴上に版を取り付け、湿し水またはインクを供給することにより機上現像できる。この平版印刷版用原版は感光域が赤外領域であることにより、明室での取り扱い性も有している。特許第2938397号公報記載の方法では、光熱変換によって、本来は感熱材料である平版印刷原版を感光材料として利用する。この平版印刷原版は、現像のラチチュードが狭く、現像条件の厳密な管理が必要である。また、感熱材料を利用した平版印刷原版には、長期間の保存における安定性に関する問題も指摘されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開2001−166467号公報に、感光性製版材料を変調を加えた超短パルスレーザー光で走査して、レーザー光照射部において2光子吸収現象による光重合反応を生じさせ画像を記録する工程および画像を現像する工程からなる製版方法が開示されている。2光子吸収現象を利用すると、明室で取り扱える印刷原版に、レーザーフレアの影響を受けにくい鮮鋭な画像を記録することができる。しかし、特開2001−166467号公報に記載の印刷原版を、印刷機上で現像することは実質的に不可能である。本発明の目的は、明室で取り扱える平版印刷原版に対して、デジタル画像情報に対応する画像をレーザー光で走査露光し、明室に置かれた印刷機上で製版し直ちに印刷を行うことである。また、本発明の目的は、明室に置かれた印刷機上で製版し直ちに印刷を行うことができる平版印刷原版を提供することでもある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記(1)〜(17)の平版印刷方法および(18)〜(33)の平版印刷原版を提供する。
(1)親水性支持体上に、光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子が分散している画像形成層が設けられている平版印刷原版を、レーザー光で走査露光し、多光子吸収により光重合開始剤を励起し、励起された光重合開始剤により重合性化合物を重合させる工程、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させ、湿し水、油性インク、または擦りにより露光していない部分の画像形成層を除去し、これにより平版印刷版を製版する工程、そして、さらに湿し水と油性インクとを供給し、平版印刷版で印刷する工程からなる平版印刷方法。
(2)光重合開始剤が、下記式(Ia)または(Ib)で表される(1)に記載の平版印刷方法:【0008】
【化1】

【0009】[式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が3乃至20のアシルオキシアルキル基または炭素原子数が6乃至20のアリール基であり;R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれシアノであるか、あるいは、R5 とR6 またはR7 とR8 とが結合して複素環を形成し;ベンゼン環A、BおよびCは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロおよび炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよく;m1およびm2は、それぞれ独立に、1または2であり;そして、nは、0または1である]。
(3)光重合開始剤が、微粒子(全固形分)の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(1)に記載の平版印刷方法。
【0010】(4)重合性化合物が、複数のエチレン性不飽和基を有する化合物である(1)に記載の平版印刷方法。
(5)複数のエチレン性不飽和基を有する化合物が、不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステルである(4)に記載の平版印刷方法。
(6)重合性化合物が、画像形成層の5乃至70質量%の範囲で含まれている(1)に記載の平版印刷方法。
(7)微粒子の外部の画像形成層中にも、光重合開始剤と重合性化合物とが存在している(1)に記載の平版印刷方法。
(8)画像形成層が、微粒子分散液中に溶解する機能、微粒子を膨潤させる機能および光重合開始剤と重合性化合物とを溶解させる機能を有する溶剤を添加した微粒子分散液を塗布して形成した層である(7)に記載の平版印刷方法。
【0011】(9)微粒子が、光重合開始剤および重合性化合物を含むコアを、シェルで覆ったコア/シェル構造を有する(1)に記載の平版印刷方法。
(10)コア/シェル構造がマイクロカプセルである(9)に記載の平版印刷方法。
(11)マイクロカプセルの外部の画像形成層中にも、光重合開始剤と重合性化合物とが存在している(10)に記載の平版印刷方法。
(12)画像形成層が、マイクロカプセル分散液中に溶解する機能、マイクロカプセルのシェルを膨潤させる機能および光重合開始剤と重合性化合物とを溶解させる機能を有する溶剤を添加したマイクロカプセル分散液を塗布して形成した層である(11)に記載の平版印刷方法。
(13)画像形成層が、さらに親水性ポリマーを含む(1)に記載の平版印刷方法。
【0012】(14)親水性支持体が、アルミニウム板である(1)に記載の平版印刷方法。
(15)平版印刷原版が、画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(1)に記載の平版印刷方法。
(16)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(15)に記載の平版印刷方法。
(17)走査露光に用いるレーザー光の波長が、600乃至1200nmの範囲である(1)に記載の平版印刷方法。
【0013】(18)親水性支持体上に、光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子が分散している画像形成層が設けられている平版印刷原版であって、該光重合開始剤が、多光子吸収によって励起され、重合性化合物の重合を開始することを特徴とする平版印刷原版。
(19)親水性支持体上に、前記式(Ia)または(Ib)で表される光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子が分散している画像形成層が設けられている平版印刷原版。
(20)光重合開始剤が、微粒子(全固形分)の1乃至50質量%の量で画像形成層に含まれている(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
(21)重合性化合物が、複数のエチレン性不飽和基を有する化合物である(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
(22)複数のエチレン性不飽和基を有する化合物が、不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステルである(21)に記載の平版印刷原版。
(23)重合性化合物が、画像形成層の5乃至70質量%の範囲で含まれている(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
【0014】(24)微粒子の外部の画像形成層中にも、光重合開始剤と重合性化合物とが存在している(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
(25)画像形成層が、微粒子分散液中に溶解する機能、微粒子を膨潤させる機能および光重合開始剤と重合性化合物とを溶解させる機能を有する溶剤を添加した微粒子分散液を塗布して形成した層である(24)に記載の平版印刷原版。
(26)微粒子が、光重合開始剤および重合性化合物を含むコアを、シェルで覆ったコア/シェル構造を有する(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
(27)コア/シェル構造がマイクロカプセルである(26)に記載の平版印刷原版。
(28)マイクロカプセルの外部の画像形成層中にも、光重合開始剤と重合性化合物とが存在している(27)に記載の平版印刷原版。
(29)画像形成層が、マイクロカプセル分散液中に溶解する機能、マイクロカプセルのシェルを膨潤させる機能および光重合開始剤と重合性化合物とを溶解させる機能を有する溶剤を添加したマイクロカプセル分散液を塗布して形成した層である(28)に記載の平版印刷原版。
【0015】(30)画像形成層が、さらに親水性ポリマーを含む(18)または(19)または(19)に記載の平版印刷原版。
(31)親水性支持体が、アルミニウム板である(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
(32)平版印刷原版が、画像形成層の上にさらに水溶性オーバーコート層を有する(18)または(19)に記載の平版印刷原版。
(33)水溶性オーバーコート層が、波長600nm未満の光を吸収する色素を含む(32)に記載の平版印刷原版。
【0016】
【発明の効果】本発明者の研究の結果、光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子を画像形成層に分散すれば、多光子吸収により励起された光重合開始剤により重合性化合物を重合させた平版印刷原版を、印刷機上で現像できることが判明した。n個の多光子吸収では、n個の光子を同時に吸収することにより、照射した光のn倍のエネルギー(波長は1/n)に相当する吸収が生じる。そのため、多光子吸収による露光では、高いエネルギーを必要とする。従って、高エネルギーのレーザー光で走査露光する場合、多光子吸収により励起される光重合開始剤は、明室内で取り扱える低感度であってもよい。また、長波長レーザーが使用できるため、短波長レーザーで問題となっているレーザーフレアの影響を受けにくいとの効果もある。
【0017】光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子を画像形成層に分散した平版印刷原版では、レーザー光で走査露光後、平版印刷原版を印刷機に装着した状態で印刷機を稼動させるだけで、湿し水、油性インク、または擦りにより露光していない部分の画像形成層を除去することができる。すなわち、微粒子の状態で、光重合開始剤と重合性化合物とを画像形成層に添加することにより、印刷機上での現像が可能になる。本発明の印刷方法によれば、明室で取り扱える印刷原版に、デジタル信号に基づいたレーザー光の走査露光によって、レーザーフレアの影響を受けにくい鮮鋭な画像を記録したのち、明室に置かれた印刷機上で製版し、直ちに印刷を行うことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】[平版印刷原版の基本構成]図1は、好ましい平版印刷原版の基本構成を示す断面模式図である。図1に示す平版印刷原版は、親水性支持体(1)上に、画像形成層(2)が設けられている。画像形成層(2)では、微粒子(21)が親水性ポリマー(22)中に分散している。微粒子(21)は、コア(21c)とシェル(21s)とからなるマイクロカプセルを形成している。コア(21c)は、光重合開始剤と重合性化合物とを含む。微粒子(21)の外部の画像形成層(2)中にも、光重合開始剤と重合性化合物とが存在していてもよい。微粒子(21)の外部の光重合開始剤と重合性化合物は、微粒子の表面及び表面付近に存在していることが好ましい。
【0019】[多光子吸収型の光重合開始剤]本発明では、多光子吸収により励起され、励起状態において重合性化合物を重合させる機能を有する物質を光重合開始剤として用いる。多光子吸収は、通常は2光子吸収である。なお、光重合開始剤は、単一の物質である必要はなく、複数の物質(例えば、増感色素と開始剤)の混合物であってもよい。多光子吸収現象の利用については、WO98/21521号、WO99/53242号の各明細書、特開2001−166467号公報、Brian H. Cumpstonet al, Two-photon polymerization initiators for three-dimensional optical data storage and microfabrication, Nature, vol.398, 4 March, 1999, pp.51-54 およびMarius Albota et al, Design of Organic Molecules with LargeTwo-Photon Absorbing Cross Sections, Science, vol.281, 11 September, 1998, pp.1653-1656 に記載がある。
【0020】多光子吸収型の光重合開始剤は、下記式(Ia)または(Ib)で表される化合物であることが好ましい。
【0021】
【化2】

【0022】式(Ia)において、R1 、R2 、R3 およびR4 は、それぞれ独立に、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が3乃至20のアシルオキシアルキル基または炭素原子数が6乃至20のアリール基である。アルキル基の炭素原子数は、1乃至15であることが好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも直鎖状アルキル基の方が好ましい。アシルオキシアルキル基の炭素原子数は、3乃至15であることが好ましく、3乃至12であることがさらに好ましく、3乃至10であることが最も好ましい。アシルオキシアルキル基のアルキル部分は、環状よりも鎖状の方が好ましく、分岐を有する鎖状よりも直鎖状の方が好ましい。アシルオキシアルキル基のアシル部分の例には、ベンゾイル、p−メトキシベンゾイル、p−シアノベンゾイル、p−ニトロベンゾイル、アクリロイルおよびメタクリロイルが含まれる。アリール基の炭素原子数は、6乃至15であることが好ましく、6乃至12であることがさらに好ましく、6乃至10であることが最も好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロおよび炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基が含まれる。
【0023】式(Ib)において、R5 、R6 、R7 およびR8 は、それぞれシアノであるか、あるいは、R5 とR6 またはR7 とR8 とが結合して複素環を形成する。形成する複素環は、5員環または6員環であることが好ましい。複素環のヘテロ原子の例には、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が含まれる。複素環に、他の複素環、脂肪族環または芳香族環が縮合していてもよい。複素環およびその縮合環は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、炭素原子数が1乃至20のアルキル基、炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基、ジシアノメチレン(=C(CN)2 )、オキソ(=O)およびチオ(=S)が含まれる。
【0024】式(Ia)および(Ib)において、ベンゼン環A、BおよびCは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、および炭素原子数が1乃至20のアルコキシ基からなる群より選ばれる置換基を有していてもよい。式(Ia)および(Ib)において、m1およびm2は、それぞれ独立に、1または2である。m1およびm2は、それぞれ、1であることが好ましい。式(Ia)および(Ib)において、nは、0または1である。nは、1であることが好ましい。式(Ia)および(Ib)において、二重結合は、シス型よりもトランス型の方が好ましい。以下に、式(Ia)または(Ib)で表される光重合開始剤の例を示す。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
【化7】

【0030】
【化8】

【0031】
【化9】

【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
【化14】

【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

【0040】二種類以上の光重合開始剤を併用してもよい。光重合開始剤の使用量は、微粒子(全固形分)の1乃至50質量%が好ましく、2乃至45質量%がさらに好ましく、3乃至40質量%が最も好ましい。
【0041】[重合性化合物]重合性化合物は、重合性基としてエチレン性不飽和基を有することが好ましく、複数のエチレン性不飽和基を有することがさらに好ましい。化合物は、オリゴマーまたはポリマーであってもよい。複数のエチレン性不飽和基を有する化合物は、不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステルまたは不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドであることが好ましい。
【0042】不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸が含まれる。アクリル酸およびメタクリル酸が特に好ましい。多価アルコールの例には、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、テトラエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールが含まれる。脂肪族多価アミンの例には、メチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、キシリレンジアミンが含まれる。
【0043】エチレン性不飽和重合性化合物については、特公昭48−41708号、同49−43191号、同52−30490号、特開昭48−64183号、同51−37193号の各公報に記載がある。日本接着協会誌Vo1.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に記載の「光硬化性モノマーおよびオリゴマー」も重合性化合物として使用できる。重合性化合物は、画像形成層の5乃至70質量%の範囲で使用することが好ましく、10乃至50質量%の範囲で使用することがさらに好ましい。
【0044】[微粒子]光重合開始剤と重合性化合物とを含む微粒子は、光重合開始剤と重合性化合物とを含むコアを、シェルで覆ったコア/シェル構造を有することが好ましい。コア/シェル構造を有する微粒子は、マイクロカプセルが代表的である。
【0045】マイクロカプセルは、公知のコアセルベーション法(米国特許2800457号、同2800458号の各明細書記載)、界面重合法(英国特許990443号、米国特許3287154号の各明細書、特公昭38−19574号、同42−446号、同42−711号の各公報記載)、ポリマー析出法(米国特許3418250号、同3660304号の各明細書記載)、イソシアネート・ポリオール壁形成法(米国特許3796669号明細書記載)、イソシアネート壁形成法(米国特許3914511号明細書記載)、尿素・ホルムアルデヒド壁もしくは尿素・ホルムアルデヒド−レゾルシノール壁形成法(米国特許4001140号、同4087376号、同4089802号の各明細書記載)、メラミン−ホルムアルデヒド壁もしくはヒドロキシセルロース壁形成法(米国特許4025445号明細書記載)、モノマー重合によるin situ 法(特公昭36−9163号、同51−9079号の各明細書記載)、スプレードライング法(英国特許930422号、米国特許3111407号の各明細書記載)、あるいは電解分散冷却法(英国特許952807号、同967074号の各明細書記載)により製造できる。マイクロカプセル壁は、3次元架橋を有し、溶剤によって膨潤することが好ましい。そのためには、マイクロカプセルの壁材として、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドおよびこれらの混合物を用いることが好ましい。ポリウレアおよびポリウレタンが特に好ましい。マイクロカプセル壁を溶剤により膨潤させることで、マイクロカプセルの外部の画像形成層中(好ましくは、マイクロカプセルの表面及び表面付近)にも、光重合開始剤と重合性化合物とを存在させることができる。なお、マイクロカプセルの外部の画像形成層中にも、光重合開始剤と重合性化合物とを存在させることについては、特許第2639748号公報に記載がある。
【0046】微粒子の平均粒径は、0.01乃至20μmが好ましく、0.05乃至2.0μmがさらに好ましく、0.10乃至1.0μmが最も好ましい。粒子サイズ分布は、なるべく均一であることが好ましい。二種類以上の微粒子を併用してもよい。微粒子の画像形成層への添加量は、固形分換算で、10乃至95質量%であることが好ましく、15乃至90質量%であることがさらに好ましい。
【0047】[親水性ポリマー]画像形成層は、親水性ポリマーを含むことが好ましい。親水性ポリマーは、画像形成層において微粒子のバインダーとして機能させることが好ましい。親水性ポリマーの親水性基としては、ヒドロキシル、カルボキシルまたはアミノが好ましい。親水性ポリマーとしては、様々な天然または半合成ポリマーあるいは合成ポリマーが使用できる。天然または半合成ポリマーとしては、多糖類(例、アラビアゴム、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、そのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム)またはタンパク質(例、カゼイン、ゼラチン)を用いることができる。
【0048】ヒドロキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシプロピルアクリレート、ポリヒドロキシブチルメタクリレート、ポリヒドロキシブチルアクリレート、ポリアリルアルコール、ポリビニルアルコールおよびポリ−N−メチロールアクリルアミドが含まれる。カルボキシルを親水性基として有する合成ポリマーの例には、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸およびそれらの塩が含まれる。その他の親水性基(例、アミノ、多数のエーテル結合、親水性複素環基、アミド結合、スルホ)を有する合成ポリマーの例には、ポリエチレングリコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドおよびポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびその塩が含まれる。親水性ポリマーは、その側鎖にエチレン不飽和基を有することもできる。エチレン性不飽和基の定義および例は、前述した重合性化合物のエチレン性不飽和基の定義および例と同様である。
【0049】親水性合成ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。親水性合成ポリマーの繰り返し単位と、疎水性合成ポリマー(例、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン)の繰り返し単位とを含むコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマーおよびビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)が含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は60%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。親水性ポリマーは、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)およびケン化度が60%以上のポリビニルアルコールが好ましく、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドおよびポリメタクリルアミドがさらに好ましい。二種類以上の親水性ポリマーを併用してもよい。
【0050】親水性ポリマーは、架橋構造を有していてもよい。架橋構造は、架橋剤の使用により親水性ポリマーに導入することが好ましい。架橋剤の例には、アルデヒド(例、グリオキザール)、アルデヒド樹脂(例、メラミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂)、メチロール化合物(例、N−メチロール尿素、N−メチロールメラミン、メチロール化ポリアミド樹脂)、活性ビニル化合物(例、ジビニルスルホン、ビス(β−ヒドロキシエチルスルホン酸))、エポキシ化合物(例、エピクロルヒドリン、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアミド・ポリアミン・エピクロロヒドリン付加物、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂)、エステル(例、モノクロル酢酸エステル、チオグリコール酸エステル)、ポリカルボン酸(例、ポリアクリル酸、メチルビニルエーテル/マレイン酸共重合物)、無機酸(例、ほう酸)、チタニルスルフェート、金属塩(例、銅塩、アルミニウム塩、スズ塩、バナジウム塩、クロム塩)および変成ポリアミドポリイミド樹脂が含まれる。架橋剤に加えて、架橋触媒(例、塩化アンモニウム、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤)を用いてもよい。画像形成層中に親水性ポリマーは、2乃至40質量%含まれることが好ましく、3乃至30質量%含まれることがさらに好ましい。
【0051】[画像形成層の他の任意成分]画像形成層には、画像形成後の画像部と非画像部との区別を目的として、着色剤を添加することができる。着色剤としては、可視領域に大きな吸収を有する染料または顔料を用いる。着色剤の例には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)およびメチレンブルー(CI52015)が含まれる。着色剤として用いられる染料については、特開昭62−293247号公報に記載がある。酸化チタンのような無機顔料も着色剤として用いることができる。着色剤の添加量は、画像形成層の0.01乃至10質量%であることが好ましい。
【0052】画像形成層には、機上現像の安定性を広げるため、ノニオン界面活性剤(特開昭62−251740号、特開平3−208514号の各公報記載)または両性界面活性剤(特開昭59−121044号、特開平4−13149号の各公報記載)を添加することができる。ノニオン界面活性剤の例には、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリドおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルが含まれる。両性界面活性剤の例には、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよびN−テトラデシル−N,N−ベタイン型界面活性剤(アモーゲンK、第一工業(株)製)が含まれる。ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤は、画像形成層に0.05乃至15質量%含まれることが好ましく、0.1乃至5質量%含まれることがさらに好ましい。
【0053】画像形成層に柔軟性を付与するため、可塑剤を添加してもよい。可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルおよびオレイン酸テトラヒドロフルフリルが含まれる。
【0054】[画像形成層の形成]画像形成層は、各成分を適当な液状媒体中に溶解、分散または乳化して塗布液を調製し、親水性支持体上に塗布し、および乾燥して液状媒体を除去することにより形成することができる。微粒子がマイクロカプセルである場合は、前述した各種方法により、塗布液段階でマイクロカプセルのシェルを形成できる。塗布液に使用する液状媒体の例には、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエンおよび水が含まれる。溶剤は、微粒子分散液中に溶解する(一般には水と混和する)機能、微粒子を膨潤させる機能および光重合開始剤と重合性化合物とを溶解させる機能を有することが好ましい。具体的には、微粒子(マイクロカプセルを含む)、光重合開始剤および重合性化合物の種類に応じて、上記の溶剤の例から選択すればよい。二種類以上の液体を混合して用いてもよい。塗布液の全固形分濃度は、1乃至50質量%であることが好ましい。
【0055】塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤を添加することができる。フッ素系界面活性剤(特開昭62−170950号公報記載)が特に好ましい。界面活性剤の添加量は、塗布液の固形分量に対して0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.05乃至0.5質量%であることがさらに好ましい。画像形成層の乾燥塗布量は、0.5乃至5.0g/m2 であることが好ましい。
【0056】[親水性支持体]親水性支持体としては、金属板、プラスチックフイルムまたは紙を用いることができる。具体的には、表面処理されたアルミニウム板、親水処理されたプラスチックフイルムまたは耐水処理された紙が好ましい。さらに具体的には、陽極酸化処理されたアルミニウム板、親水性層を設けたポリエチレンテレフタレートフイルムまたはポリエチレンでラミネートされた紙が好ましい。
【0057】陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用のアルミニウム板を用いてもよい。アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0058】アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0059】アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2 、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2 であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2 であることがさらに好ましい。
【0060】[水溶性オーバーコート層]親油性物質による画像形成層表面の汚染防止のため、画像形成層の上に、水溶性オーバーコート層を設けることができる。水溶性オーバーコート層は、印刷時に容易に除去できる材料から構成する。そのためには、水溶性の有機ポリマーから水溶性オーバーコート層を構成することが好ましい。水溶性の有機ポリマーの例には、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルローズ)、デキストリンおよびその誘導体(例、ホワイトデキストリン、酵素分解エーテル化デキストリン、プルラン)が含まれる。水溶性の有機ポリマーの繰り返し単位を二種類以上有するコポリマーを用いてもよい。コポリマーの例には、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマー(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化ポリマー)およびビニルメチルエーテル−無水マレイン酸コポリマーが含まれる。ポリ酢酸ビニルの部分ケン化により、ビニルアルコール−酢酸ビニルコポリマーを合成する場合は、ケン化度は65%以上であることが好ましい。二種類以上の水溶性有機ポリマーを併用してもよい。
【0061】水溶性有機ポリマーとして、酸素の透過率が低いポリマーを用いることも好ましい。酸素は重合禁止作用があるため、オーバーコート層に酸素の透過率の低いポリマーを用いると、画像形成層の重合反応を促進できる。酸素の透過率の低いポリマーとしては、ケン化度が高い(65%以上の)ポリビニルアルコールが代表的である。オーバーコート層に、染料を添加してもよい。染料は、光重合開始剤の吸収波長(600nm以下)の光を吸収することが好ましい。n個の多光子吸収では、光重合開始剤はn倍の波長の光によって励起される。従って、オーバーコート層の染料が600nm以下の光を吸収すると、走査露光における多光子吸収に問題を生じることなく、画像形成とは無関係で不都合な一光子吸収を防止できる。
【0062】オーバーコート層の塗布液には、ノニオン界面活性剤(例、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル)を添加することができる。オーバーコート層の塗布量は、0.1乃至2.0g/m2 であることが好ましい。
【0063】[走査露光]走査露光は、レーザーを用いて実施する。レーザーは、赤外線レーザーを用いることが好ましい。赤外線の波長は、600乃至1200nmであることが好ましく、700乃至1100nmであることがさらに好ましい。赤外線は、固体高出力赤外線レーザー(例えば、半導体レーザー、YAGレーザー)が好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましい。露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。照射される光エネルギーは10乃至500mJ/cm2 であることが好ましい。反応を促進するため、加熱しながらレーザーを照射してもよい。
【0064】[製版および印刷工程]走査露光した平版印刷原版は、現像処理を実施することなく、直ちに印刷機に装着し、インクと湿し水を用いて通常の手順で印刷するだけで、製版と印刷を連続して実施することができる。すなわち、平版印刷原版を印刷機に装着して、印刷機を稼動させると、湿し水、インク、または擦りにより加熱した部分の画像形成層を除去することができる。なお、レーザー露光装置を有する印刷機(特許第2938398号公報記載)を用いると、平版印刷原版を印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水又はインクをつけて機上現像する(露光〜印刷を連続して処理する)ことも可能である。
【0065】
【実施例】[実施例1]
(親水性支持体の作製)99.5質量%以上のアルミニウムと、Fe0.30質量%、Si0.10質量%、Ti0.02質量%、Cu0.013質量%を含むJIS−A−1050に従うアルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、アルミニウム板を鋳造した。清浄化処理では、溶湯中の水素などの不要なガスを除去するために脱ガス処理し、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊を、表面から10mm面削し、金属間化合物が粗大化しないように、550℃で10時間均質化処理を行った。次いで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中で500℃60秒中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、板圧0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均表面粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。
【0066】次に平版印刷版用支持体とするための表面処理を行った。まず、アルミニウム板表面の圧延油を除去するため10質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を行い、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間中和およびスマット除去処理を行った。次いで支持体と画像形成層との密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理を行った。1質量%の硝酸と0.5質量%の硝酸アルミニウムを含有する水溶液を45℃に保ち、アルミウェブを水溶液中に流しながら、間接給電セルにより電流密度20A/dm2 、デューティー比1:1の交番波形でアノード側電気量240C/dm2を与えることで電解砂目立てを行った。その後、10質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を用いて50℃で30秒間エッチング処理を行い、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間中和およびスマット除去処理を行った。さらに、耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を設けた。電解質として20質量%硫酸水溶液を用いて35℃でアルミウェブを電解質中に通搬しながら、間接給電セルにより14A/dm2の直流で電解処理を行い、2.5g/m2 の陽極酸化皮膜を形成した。そして、印刷版非画像部としての親水性を確保するため、シリケート処理を行った。処理は1.5質量%3号ケイ酸ナトリウム水溶液を用い、70℃でアルミウェブの接触時間が15秒となるように通搬し、さらに水洗した。Siの付着量は10mg/m2 であった。作製したアルミニウム支持体のRa(中心線表面粗さ)は0.25μmであった。
【0067】(マイクロカプセル液の調製)下記の成分を混合して油相を調製した。
【0068】
──────────────────────────────────── 油相──────────────────────────────────── ジペンタエリスリトールペンタアクリレート 25g 光重合開始剤(5) 2.5g ジクロロメタン 5g イソシアナート(タケネートD110N) 20g────────────────────────────────────【0069】水相として、4質量%ポリビニルアルコール水溶液30gを用いた。水相に油相を加え、ホモジナイザーによって8000回転/分にて10分間攪拌し、乳化した。この乳化液を、室温で500回転/分攪拌しつつ3.5質量%のジエチレントリアミン水溶液30gを加え、引き続き攪拌した。30分後、60℃まで昇温し、さらに3時間攪拌後、室温に冷却した。このようにしてマイクロカプセル液を調製した。得られたマイクロカプセルの平均粒子サイズは1.7μmであった。
【0070】(画像形成層の形成)下記の成分を、下記の順序で混合することにより、画像形成層塗布液を調製した。画像形成層塗布液を親水性支持体上に塗布し、60℃にて乾燥した。乾燥後の塗布重量は2.1g/m2 であった。以上のようにして平版印刷原版を作製した。
【0071】
──────────────────────────────────── 画像形成層塗布液組成──────────────────────────────────── 水 40g マイクロカプセル液 10g アラビアガム 0.15g エチレングリコールの平均重合度が600であるポリエチレングリコールジアクリレート(A600、新中村化学工業(株)製) 0.1g プロピレングリコールモノメチルエーテル 20g フッ素系界面活性剤(メガファックF171、大日本インキ化学工業(株)製) 0.1g────────────────────────────────────【0072】(製版および印刷)得られた平版印刷原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したクレオ社製トレンドセッター3244VFSにて、外面ドラム回転数100rpm、版面エネルギー200mJ/cm2 、解像度2400dpiの条件で露光した後、水道水により洗浄した。その結果、版上に良好な画像が確認された。そして、、同じ条件で露光した平版印刷原版を、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製SOR・M印刷機に装着し、通常どおり印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【0073】[実施例2]実施例1で得られた平版印刷原版を、波長830nm、パルス幅5ピコ秒のレーザーにより露光した後、水道水により洗浄したところ、版上に良好な画像が確認された。そして、、同じ条件で露光した平版印刷原版を、現像処理することなく、ハイデルベルグ社製SOR・M印刷機に装着し、通常どおり印刷したところ、良好な印刷物が得られた。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地
【出願日】 平成14年5月15日(2002.5.15)
【代理人】 【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
【公開番号】 特開2003−326867(P2003−326867A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−139998(P2002−139998)