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【発明の名称】 追記型光記録媒体
【発明者】 【氏名】針谷 眞人
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式会社リコー内

【氏名】藤井 俊茂
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式会社リコー内

【氏名】影山 喜之
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式会社リコー内

【氏名】梅原 正彬
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式会社リコー内

【要約】 【課題】高密度記録が可能であり、再生信号のC/N比及びコントラストが良好で、記録感度も充分に高く、記録マークの消去の可能性が全くなく、耐候性に優れた追記型光記録媒体の提供。

【解決手段】(1)記録層が二層から成り、基板側の第一の記録層が、In、O(酸素)、及びNi、Mn、Moの中から選ばれた一つの元素を含む合金から成り、第二の記録層が、Se及び/又はTe元素、O(酸素)、及びTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素を含む合金から成る追記型光記録媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電磁波を照射する事により情報を記録し、再生する事ができる光記録媒体であって、記録層が二層から成り、基板側の第一の記録層が、In、O(酸素)、及びNi、Mn、Moの中から選ばれた一つの元素を含む合金から成り、第二の記録層が、Se及び/又はTe元素、O(酸素)、及びTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素を含む合金から成る事を特徴とする追記型光記録媒体。
【請求項2】 第一の記録層の組成式をInxOyMzとする時、x、y、zが次の範囲にある事を特徴とする請求項1記載の追記型光記録媒体。
93≦x≦98、 0.5≦y≦2、 0.1≦z≦5(但し、x、y、zは原子%、x+y+z=100、MはNi、Mn、Moから選ばれた一つの元素である。)
【請求項3】 第二の記録層の組成式をAαOβBγとする時、α、β、γが次の範囲にある事を特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
95≦α≦97、 0.5≦β≦2、 0.1≦γ≦3(但し、α、β、γは原子%、α+β+γ=100、AはSe及び/又はTe、BはTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素である。)
【請求項4】 第一の記録層の酸素濃度分布が、第二の記録層との接触面から基板側に向って減少しており、第二の記録層の酸素濃度分布が、第一の記録層との接触面から基板と反対方向に向って減少している事を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、追記型(ライトワンス型)の光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】ライトワンス型の光記録媒体としては、レーザ照射により媒体にピット(穴)を開ける方法や、相変化や合金化等による構造変化を生じさせて反射率を変化させることにより情報を記録する方法が提案されている。例えばピット方式の場合、Te膜を用いた研究が進み、その中で、耐環境特性を改善する為、Te膜表面に酸化膜を形成する方法が特開昭58−189850号公報に開示されている。同じく、耐環境特性の改善の為に、TeにSeやCを添加する提案や、CS−Te膜の検討も進められた(記録・記憶技術ハンドブックP543〜546、丸善)。また、Te膜の記録感度を向上させる為、Bi、Zn、Cd、In、Sb、Snとの合金化により低融点化を図る方法も提案されている(特開昭58−9234号公報)。一方、相変化方式としては、代表的なものとして、TeOx及びこれにGe、Sn、Pbを添加する案(記録・記憶技術ハンドブックP546)や、BiTeを反射層、SbSeを相変化記録層とする二層タイプのもの(光記録技術と材料、P94〜95、CMC出版)が提案されている。
【0003】また、合金化方式としては、(Ge、Si、Sn)の元素群から選択された少なくとも一種の元素から成る層と、(Au、Ag、Al、Cu)の元素群から選択された少なくとも一種の元素から成る層に、レーザ光を照射して、この二層を合金化させて記録する方法(特開平4−226784号公報)が提案されている。更に二層間の合金化による方法としては、基板上にInを主成分とした第一の記録層と、その上に設けられた周期率表の5B族又は6B族から選ばれた元素より成る第二の記録層から構成される光記録媒体も提案されている(特開平11−34501号公報)。しかしながら、上記ピット方式の場合、記録密度の向上に伴い均一なピットを得る事が困難となる。また、相変化方式の場合、結晶と非晶の間の相転移を利用するものであるため、場合によっては記録マークが消去される危険がある。また、合金化方式の場合、記録マークの再生信号のコントラストが小さいという問題を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技術に鑑みて、高密度対応(例えばDVD−R)の光記録媒体において、再生信号のC/N比及びコントラストが良好で、記録感度も充分に高く、記録マークの消去の可能性が全くなく、耐候性に優れた追記型(ライトワンス型)光記録媒体の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題は、次の1)〜4)の発明によって解決される。
1) 電磁波を照射する事により情報を記録し、再生する事ができる光記録媒体であって、記録層が二層から成り、基板側の第一の記録層が、In、O(酸素)、及びNi、Mn、Moの中から選ばれた一つの元素を含む合金から成り、第二の記録層が、Se及び/又はTe元素、O(酸素)、及びTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素を含む合金から成る事を特徴とする追記型光記録媒体。
2) 第一の記録層の組成式をInxOyMzとする時、x、y、zが次の範囲にある事を特徴とする1)記載の追記型光記録媒体。
93≦x≦98、 0.5≦y≦2、 0.1≦z≦5(但し、x、y、zは原子%、x+y+z=100、MはNi、Mn、Moから選ばれた一つの元素である。)
3) 第二の記録層の組成式をAαOβBγとする時、α、β、γが次の範囲にある事を特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
95≦α≦97、 0.5≦β≦2、 0.1≦γ≦3(但し、α、β、γは原子%、α+β+γ=100、AはSe及び/又はTe、BはTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素である。)
4) 第一の記録層の酸素濃度分布が、第二の記録層との接触面から基板側に向って減少しており、第二の記録層の酸素濃度分布が、第一の記録層との接触面から基板と反対方向に向って減少している事を特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0006】以下、上記本発明について詳細に説明する。上述の様に本発明は、追記型光記録媒体であって、その記録層が二層から成り、基板側に設けられる第一の記録層が、In、O(酸素)、及びNi、Mn、Moの中から選ばれた一つの元素を含む合金層から成り、第一の記録層上に設けられる第二の記録層が、Se及び/又はTe、O(酸素)、及びTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素を含む合金層から成ることを特徴とするものである。この層構成により本発明の光記録媒体は、その記録モードがハイ・トゥー・ロー(high to low)となり、未記録部の反射率が45%以上、記録前後のコントラストが0.6以上、記録マークの再生信号のC/N比(キャリアー・トゥー・ノイズ比)が60dB(デシベル)以上の良好な特性を実現し、無機材料の記録層でDVD−Rの規格を満足するに至った。また、本発明の光記録媒体を80℃、85%の温湿下に300時間保持しても再生信号の劣化は認められなかった。
【0007】この様に本発明の光記録媒体が良好な特性を示す理由は、レーザ光を記録層に照射して情報の記録を行った時、第一及び第二の記録層の光吸収によって発生した熱による第一の記録層と第二の記録層の溶融に伴なう合金化並びに基板の変形という二つの記録原理に基づく複合効果により、記録マークの再生信号のコントラストが大きく取れ、またC/N比も60dB以上の良好な値になるものと考えられる。更に、Inを含む第一の記録層を基板側に配置する為に、未記録時の反射率が高くなるものと考えられる。また、第一の記録層と第二の記録層にはO(酸素)が含まれ、しかもその酸素濃度が第一の記録層と第二の記録層の接触面(境界面)で大きく、第一の記録層では基板側に進むほど酸素濃度が低下し、第二の記録層では、基板側と反対方向に進むほど酸素濃度が低下する様に成膜する場合には、あたかも第一の記録層と第二の記録層の間に酸化物層が設けられているような層構造となり、その結果、接触面近傍の酸素濃度の大きな部分が酸化膜としての光学的な層として作用し、再生信号のコントラストの向上や未記録時の反射率を高くする因子となっているものと思われる。
【0008】更に、この酸素濃度分布は、本発明の光記録媒体の外部環境による酸化を防止し、耐候性の向上に役立っているものと思われる。また、第一の記録層に添加されているNi、Mn、Moは、In膜の機械的な強度を向上させており、第二の層に添加されているTi、Pd、Zrは、Se、Te或いはSe−Te合金の耐食性を高め、酸素と共に本記録媒体の耐候性を向上させている。また、第一の記録層のIn、及び第二の記録層のSeとTeは、共に融点が低い為、記録時の感度を高める事ができる。
【0009】ここで、第一の記録層の組成式を、InxOyMz(但し、x、y、zは原子%、x+y+z=100、MはNi、Mn、Moから選ばれた一つの元素)とすると、93≦x≦98、0.5≦y≦2、0.1≦z≦5の範囲とすることが好ましい。上記組成はInが主成分であり、酸素と、Ni、Mn、Moは添加元素として機能すると考えられるが、xが93より小さいと記録感度が低下し、xが98より大きいと耐候性が劣化する。また、yが0.5より小さいと、反射率、再生信号のコントラストが低下し、耐候性もやや劣下する。また、yが2より大きいと記録感度が低下する。更に、zが0.1より小さいと耐候性がやや低下し、5より大きいと記録感度が低下することが実験で確認されている。一方、第二の記録層の組成式を、AαOβBγ(但し、α、β、γは原子%、α+β+γ=100、AはSe及び/又はTe元素、BはTi、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素)とすると、95≦α≦97、0.5≦β≦2、0.1≦γ≦3の範囲とすることが好ましい。この組成は、Se及び/又はTe元素が主成分となっており、酸素と、Ti、Pd、Zrの中から選ばれる一つの元素は添加元素として働く。そして、αが95より小さいと記録感度が低下し、97より大きいと耐候性が劣下する。また、βが0.5より少ないと再生信号のコントラストが低下し、耐候性も劣化する。また、βが2より多いと未記録部の反射率が低下する。更に、γが0.1より少ないと耐候性が劣下し、3より多いと記録感度が低下することが実験で確認されている。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について、図1を参照しつつ具体的に説明する。図1は、本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示したもので、案内溝を有する基板1の上に、第一の記録層2、第二の記録層3、環境保護層4が順次設けられている。基板1の材料は、通常、ガラス、セラミックス又は樹脂が用いられ、樹脂基板が成形性の点で好ましい。代表例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられるが、加工性、光学特性などの点からポリカーボネート樹脂が好ましい。また、基板の形状は、ディスク状、カード状、シート状などであってもよい。
【0011】記録層は、ポリカーボネート基板上に、Inと、Ni、Mn、Moの中から選ばれた一つの元素を含む合金から作られたターゲットを用いて第一の記録層を成膜し、次いで、Se及び/又はTe元素と、Ti、Pd、Zrの中から選ばれた一つの元素を含む合金から作られたターゲットを用いて第二の記録層を設ける。酸素はガスの形でスパッタ時に導入し、第一の記録層と第二の記録層の界面で膜中の酸素濃度分布が最大になる様に酸素ガス流量を制御する。ここで、第一の記録層の膜厚は、50〜300Å、好ましくは100〜200Åの範囲が良い。50Åよりも薄いと、未記録部の反射率が45%以下に低下し、DVD−Rの規格外となる。また、300Åよりも厚いと記録感度が低下する。一方、第二の記録層の膜厚は、50〜400Å、好ましくは、100〜300Åの範囲が良く、50Åより薄いとC/N比が低下し、400Åより厚いと記録感度が低下する。また、第二の記録層の上には、環境保護層をスピンコート法により設ける。この保護層材料としては、通常、紫外線硬化型樹脂を用いる。
【0012】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0013】実施例1〜10、比較例1〜6ピッチ0.74μm、深さ400Åの溝付き、厚さ0.6mm、直径120mmφのポリカーボネート基板上に、表1に示す構成の第一の記録層と第二の記録層から成る二層記録層を順次スパッタ法により設けた。また、得られた記録媒体の信号特性は、C/N比、記録前反射率、記録前後のコントラストで評価した。記録信号はEFM(8−14変調)ランダムパターン、記録パワーは、8mW、10mW、12mW、記録線速は6m/sであり、再生信号のC/N比は3T信号で評価した。記録再生光源は波長650nmの半導体レーザを用いた。また、耐候性としての保存特性は、80℃、85%の温湿度下で記録済みの記録媒体を300時間保持した後の記録マーク(10mW記録)の再生信号(C/N比)と未記録部の反射率、そして記録部と未記録部のコントラストで評価した。この評価結果を表3、表4に示す。また、表2に、第一及び第二の記録層中の酸素の濃度分布をオージェ電子分光で解析した結果を示す(但し、実施例1の場合の濃度分布)。なお、比較例1は記録層としてTeSe記録膜を用いた単層の従来技術による光記録媒体、比較例2は第一の記録層にIn、第二の記録層にTeを用いた二層型の従来技術(合金方式)の記録媒体である。また、比較例3は、本発明の第一の記録層中に酸素が導入されていない光記録媒体、比較例4は本発明の第二の記録層に酸素が導入されていない光記録媒体、比較例5は、本発明の第一の記録層にNi、Mn、Moから選ばれた一つの元素が含まれていない光記録媒体、比較例6は、本発明の第二の記録層にTi、Pd、Zrから選ばれた一つの元素が含まれていない光記録媒体である。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
【表3】

【0017】
【表4】

【0018】以上の結果(表2、3、4)から、本発明の光記録媒体は、従来技術である比較例1〜2に比べて、8mWの低記録パワーでも、C/N比が60dB以上、コントラストが0.64以上、未記録部の反射率が45%以上の値を示し、DVD−R用の光記録媒体として使用できる。また、耐候性も80℃、85%温湿下に300時間保持した後もC/N比、コントラスト、反射率の劣下は殆んど認められず極めて優れた記録媒体と言える。比較例3〜4は、実施例1の第一又は第二の記録層に酸素が導入されていない場合であり、第一又は第二の記録層に酸素が導入されていないと、コントラスト及び反射率が低下する傾向にある事が分る。また、比較例5は、実施例1の第一の記録層にNiが添加されていない場合、比較例6は、実施例1の第二の記録層にTiが添加されていない場合であり、このような場合には耐候性が劣化する事が分る。第一の記録層に添加されるMnやMo、また、第二の記録層に添加されるPdやZrについても、Ni又はTiと同様な結果となることを確認した。
【0019】また、表2は、実施例1の第一及び第二の記録層について、膜中の酸素の深さ方向の濃度分布を%表示により示したもので、第一の記録層と第二の記録層の界面で酸素濃度が大きくなっている事が分る。そしてこの時に優れた特性を示す。比較例1、2についてはデータを示していないが、第一及び第二の記録層の酸素が膜の厚み方向に均一に入ると、反射率が30%程度、コントラストが0.4程度と大幅に低下する。
【0020】
【発明の効果】本発明によれば、高密度記録が可能で、記録感度が高く、情報記録マークの再生信号のC/N比及びコントラストが良好であり、未記録部の反射率が高く、記録マークの消去の可能性が全くなく、耐候性にも優れたDVD−R対応の追記型光記録媒体を提供する事ができる。
【出願人】 【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号
【出願日】 平成14年5月10日(2002.5.10)
【代理人】 【識別番号】100094466
【弁理士】
【氏名又は名称】友松 英爾
【公開番号】 特開2003−326848(P2003−326848A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−135775(P2002−135775)