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【発明の名称】 被記録媒体
【発明者】 【氏名】垣平 洋
【住所又は居所】東京都三鷹市下連雀6丁目3番3号 コピア株式会社内

【氏名】河野 健一
【住所又は居所】東京都三鷹市下連雀6丁目3番3号 コピア株式会社内

【氏名】北 彰
【住所又は居所】東京都三鷹市下連雀6丁目3番3号 コピア株式会社内

【氏名】冨原 隼人
【住所又は居所】東京都三鷹市下連雀6丁目3番3号 コピア株式会社内

【氏名】藤本 幸士
【住所又は居所】東京都三鷹市下連雀6丁目3番3号 コピア株式会社内

【要約】 【課題】インクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターを適用した際に、画像の堅牢性や保存性が向上するとともに、画像くすみがなく鮮明性が高く、インク受容層のインク吸収性にも優れた被記録媒体を提供すること。

【解決手段】基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層のインク受容層を積層してなる被記録媒体において、上記2層のインク受容層が、それぞれ無機微粒子、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物およびホウ素化合物を含有し、最表面層である上層に用いる前記無機微粒子の平均粒子径が、基材と隣接した下層に用いる無機微粒子の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする被記録媒体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層のインク受容層を積層してなる被記録媒体において、上記2層のインク受容層が、それぞれ無機微粒子、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物およびホウ素化合物を含有し、最表面層である上層に用いる前記無機微粒子の平均粒子径が、基材と隣接した下層に用いる無機微粒子の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする被記録媒体。

(式中、R1〜R4は、同一もしくは異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、または−NR56で示される基を表わし、R5およびR6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、または−NR7CSNR89で示される基(ただし、R7〜R9は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基からなり、それぞれ同一もしくは異なっていてもよい)を表わす。また、R1およびR2の何れか一方とR3およびR4の何れか一方とが環を形成してもよい。)

(nとmはそれぞれアクリルアミドとジアリルアミンのモル分率を示す。n=0.01〜0.9、m=0.1〜0.99である。)
【請求項2】 前記インク受容層の上層と下層に用いられる無機微粒子が、アルミナおよびベーマイトまたは擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の被記録媒体。
【請求項3】 下層に用いる前記無機微粒子の動的光散乱法により測定される平均粒子径(d1)と上層に用いる前記無機微粒子の平均粒子径(d2)が、下記(式1)および下記(式2)の関係であり、かつ上記上層と下層の前記無機微粒子の個数分布(dn)と重量分布(dw)の比が、下記(式3)の関係を満たしている請求項1または2に記載の被記録媒体。
150nm≦d1≦250nm (式1)
80nm≦d2<150nm (式2)
1.0≦dw/dn≦1.8 (式3)
【請求項4】 前記インク受容層が、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂を含んでいる請求項1〜3の何れか1項に記載の被記録媒体。
【請求項5】 前記被記録媒体のJAPAN TAPPI No.49−1:2000に規定される方法で測定したインク受容層の表面pHが5.0〜6.5の範囲である請求項1〜4の何れか1項に記載の被記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクによる記録に好適な被記録媒体に関し、特にインクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターに適用した際に、インク吸収性、画像の堅牢性や保存性が良好で、さらに画像のくすみが抑制され、画像の鮮明性に優れた高光沢の被記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させ、紙などの被記録媒体に付着させることで画像や文字などの記録を行う記録方式である。また、インクジェット記録方式は、高速印字性、低騒音性および記録パターンの融通性に優れ、さらに多色化を容易に行うことができ、現像および画像定着が不要であるといった特徴がある。特に、多色インクジェット方式で形成された画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画と比較しても遜色のない記録を得ることが可能で、作成部数が少ない場合には通常の印刷技術や写真技術より印刷コストが安価に済むという利点もあることから、近年、各種情報機器の画像記録装置として急速に普及している。
【0003】一方、インクジェット記録方式による印刷速度は近年飛躍的に向上し、また、発色性を高めるためにインク吐出量も多くなったことから、被記録媒体におけるインク吸収速度やインク吸収容量といった、いわゆるインク吸収性への要求は年々高くなっている。さらにデジタルカメラなどで得たデータを用いたデジタルフォトの用途においては、画像の堅牢性だけでなく、印字画像の鮮明性といった品質に関しても重要視されるようになってきた。画像の鮮明性は画像のくすみ、すなわち画像に白く霧がかかったような現象が大きく影響しており、特に混色ブラック印字部のくすみの有無が画像品質の良否を決定する。従って、被記録媒体の画像のくすみを抑え、画像鮮明性を向上させることについてはさらに高い水準が求められている。
【0004】また、インクジェット記録装置のめざましい発展により画質が向上する一方で、インクジェット記録方式により記録された画像は短期間のうちに変色や退色してしまうといった欠点がある。特に室内に展示した場合には大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物、あるいはオゾンといったガスによる画像の変退色が著しく、銀塩写真や多色印刷と比べるとインクジェット記録による画像は保存性や堅牢性において問題があるといえる。
【0005】これらの要求に対し、従来から幾つかの提案がなされてきた。例えば、特開昭52−53012号公報には、低サイズ原紙に表面加工用の塗料を薄く塗布し、インクの吸収性を高めた一般紙タイプの被記録媒体が開示されている。特開昭55−51583号公報、特開昭59−230787号公報、および特開昭64−11877号公報には、前記一般紙タイプの欠点となっていたドットの形状、濃度あるいは色調の再現性を改善するために、基材上にシリカなどの含ケイ素系顔料と水系バインダーからなる塗工液を塗布したコートタイプの被記録媒体が開示されている。さらに銀塩写真並みの表面光沢性を得るために、インク受容層にキャストを施したり、あるいはインク受容層に吸水性ポリマーを使用することが試みられたが、前者では十分な光沢性が得られず、後者ではシリカなどの無機顔料微粒子からなるインク受容層に比べ、インクの吸収速度が遅いという欠点があった。
【0006】そこで、インクの吸収性、光沢性および透明性を高めたものとして、微細なアルミナ水和物を水溶性のバインダーとともに支持体上に塗布した被記録媒体が提案された。例えば、特開昭60−232990号公報には、多孔質のカチオン性アルミナ水和物を含有する塗工層を有する被記録媒体が開示されている。また、特開平2−276670号公報、特開平6−48016号公報、特開平6−55829号公報、特開平7−76161号公報、特開平8−22608号公報、特開平10−44585号公報、および特開平11−34484号公報では、擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物を含有する被記録媒体が開示されている。
【0007】特に、特開平7−76161号公報や特開2000−239578公報には、擬ベーマイト構造のアルミナゾルと、ホウ酸またはホウ酸塩を含有する被記録媒体が開示されている。しかしながら、このような無機微粒子を含有した被記録媒体では、光やオゾンなどによって記録された画像が退色したり、特定の条件によっては未印字部や白地も黄色く着色することがあった。
【0008】上記のような画像の変退色を改善するために、各種硫黄化合物を含有させた被記録媒体が提案されている。例えば、特開昭61−154989号公報ではヒドラジド系化合物が、そして特開平1−115677号公報ではチオエーテル系化合物を含有した被記録媒体がそれぞれ提案されている。また、特公平4−34953号公報および特開平7−314883号公報には、チオ尿素誘導体、チオセミカルバジド誘導体、チオカルボヒドラジド誘導体などを含有させた被記録媒体が開示されている。
【0009】また、特開平8−25796号公報では、チオ尿素誘導体、チオセミカルバジド誘導体およびチオカルボヒドラジド誘導体からの1種類と、ヨウ素、ヨウ化物、ジチオカルバミン酸、チオシアン酸塩およびチオシアン酸エステルからの1種類とをそれぞれ含有させた被記録媒体が開示されている。しかしながら、このような硫黄化合物を被記録媒体に含有させた場合、画像の変退色に関して一応の効果は認められるものの、画像のくすみが発生しやすい。特にブラックの印字部では白く霧がかかったような画像になり、鮮明性に欠けるといった問題がある。また、印字後に高温多湿環境に曝された場合においては、染料のマイグレーションが発生しやすく、画像が滲んでしまうなどの弊害もあり、実用的でないのが現状であった。
【0010】一方、画像のくすみを改善する方法としては、例えば、被記録媒体のインク受容層を形成する樹脂成分の吸水性を高める方法や、無機微粒子の比表面積を大きくしたり、インク受容層中の空隙率を高くすることで、インク吸収性を高める方法が開示されている。しかし、上記の方法でインク吸収性を向上させた場合、インク受容層のガスの吸着能も同時に高くなるため、耐ガス性などの堅牢性については悪化する傾向があり、また、インクとともに染料分子がインク受容層の奥まで入りこんでしまい、その結果、印字濃度が低下して鮮明性の高い画像が得られにくい場合がある。
【0011】また、印字後の染料のマイグレーションを防止する方法としては、3級または4級アンモニウム塩を有するカチオン性ポリマーやアルキルケテンダイマーあるいはアルケニル無水コハク酸などのサイズ剤をインク受容層中に添加する方法が多く開示されているが、前述した硫黄系化合物はカチオン性ポリマーやサイズ剤と併用すると、マイグレーションの防止効果が無くなったり、画像の退色に関しては効果が無くなるだけではなく、かえって悪化する場合もあるなど、弊害が多い。
【0012】従って、インクジェット記録装置を用いて被記録媒体に記録を行った場合、耐ガス性などの堅牢性と染料のマイグレーションなどの保存性を向上させると同時に、画像くすみを抑制し、画像の鮮明性やインク受容層のインク吸収性を向上させることは困難であった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、インクジェット記録方式を利用したプリンターやプロッターを適用した際に、画像の堅牢性や保存性が向上するとともに、画像くすみがなく鮮明性が高く、インク受容層のインク吸収性にも優れた被記録媒体を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、画像の堅牢性、保存性および画像くすみの無い鮮明性に優れた画像を形成し得る被記録媒体を提供するために鋭意検討を重ねた結果、特定の材料からインク受容を2層構成に形成することによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】すなわち、本発明は、基材の少なくとも一方の面に少なくとも2層のインク受容層を積層してなる被記録媒体において、上記2層のインク受容層が、それぞれ無機微粒子、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物およびホウ素化合物を含有し、最表面層である上層に用いる前記無機微粒子の平均粒子径が、基材と隣接した下層に用いる無機微粒子の平均粒子径よりも小さいことを特徴とする被記録媒体を提供する。
【0016】

(式中、R1〜R4は、同一もしくは異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、または−NR56で示される基を表わし、R5およびR6は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、または−NR7CSNR89で示される基(ただし、R7〜R9は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基からなり、それぞれ同一もしくは異なっていてもよい)を表わす。また、R1およびR2の何れか一方とR3およびR4の何れか一方とが環を形成してもよい。)
【0017】

(nとmはそれぞれアクリルアミドとジアリルアミンのモル分率を示す。n=0.01〜0.9、m=0.1〜0.99である。)
【0018】また、本発明は、前記インク受容層の上層と下層に用いられる無機微粒子が、アルミナおよびベーマイトまたは擬ベーマイト構造を有するアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含む前記の被記録媒体を提供する。
【0019】また、本発明は、下層に用いる前記無機微粒子の動的光散乱法により測定される平均粒子径(d1)と上層に用いる前記無機微粒子の平均粒子径(d2)が、下記(式1)および下記(式2)の関係であり、かつ上記上層と下層の前記無機微粒子の個数分布(dn)と重量分布(dw)の比が、下記(式3)の関係を満たしている前記の被記録媒体を提供する。
150nm≦d1≦250nm (式1)
80nm≦d2<150nm (式2)
1.0≦dw/dn≦1.8 (式3)
【0020】また、本発明は、前記インク受容層が、水溶性樹脂および/または水分散性樹脂を含んでいる前記の被記録媒体、および前記被記録媒体のJAPAN TAPPI No.49−1:2000に規定される方法で測定したインク受容層の表面pHが5.0〜6.5の範囲である前記の被記録媒体を提供する。
【0021】前記構成からなるインク受容層を基材の少なくとも一方の面に設けることにより、本発明の被記録媒体は、インク受容層のインク吸収性が良好で、画像を形成した場合、該画像の退色、変色および染料のマイグレーションが抑制され、かつ画像くすみの無い、堅牢性、保存性および鮮明性に優れた多色画像を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明において使用する基材としては、例えば、フィルム、キヤストコート紙、バライタ紙、レジンコート紙(両面がポリオレフィンなどの樹脂で被覆された樹脂皮膜紙)などの紙類からなるものなどが好ましく使用される。前記フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリアセテート、ポリ塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレートおよびポリカーボネートなどの透明な熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。
【0023】また、その他にも、適度のサイジングが施された紙、無サイズ紙、コート紙、無機物の充填または微細な発泡により不透明化されたフィルムからなるシート状物質(合成紙など):さらにはガラスまたは金属などからなるシートなどを使用してもよい。また、これら基材とインク受容層との接着強度を向上させるため、基材表面にコロナ放電処理や各種アンダーコート処理を施すことも可能である。
【0024】本発明において2層のインク受容層の形成に使用する無機微粒子としては、インク吸収能が高く、発色性に優れ、高品位の画像が形成可能な無機微粒子であることが好ましい。このような無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、ケイソウ土、アルミナ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、ベーマイト構造のアルミナ水和物、および擬ベーマイト構造のアルミナ水和物、リトポン、ゼオライトなどを挙げることができ、これらを単独あるいは複数種併用することができる。中でも好ましく用いられるのはアルミナ、ベーマイト構造のアルミナ水和物、および擬ベーマイト構造のアルミナ水和物である。
【0025】本発明においてインク受容層の上層に用いる無機微粒子の形態としては、画像くすみが無く、耐ガス性に優れたインク受容層を得るために、動的光散乱法による平均粒子径(以下単に「平均粒子径」と呼ぶ場合がある)が80nm〜150nm未満であることが好ましく、より好ましくは100nm〜150nm未満である。無機微粒子の平均粒子径がこの範囲であれば、被記録媒体表面(インク受容層表面)の光沢および透明性が高く、画像を形成した場合、画像のくすみや耐ガス性に優れたインク受容層とすることができる。無機微粒子の平均粒子径が80nm未満の場合には、インク受容層のインク吸収性が著しく悪化し、インク受容層がインクをはじいてしまったり、あるいはインク受容層表面にインクが溢れて染料の定着性が悪化する恐れがある。また、平均粒子径が150nmを越える場合には、インク受容層の光沢および透明性が低下し、画像を形成した場合、画像のくすみや耐ガス性の効果が期待できなくなる。
【0026】一方、本発明においてインク受容層の下層に用いる無機微粒子の形態としては、高光沢、かつインク吸収性に優れたインク受容層を得るために、平均粒子径が150nm〜250nmの範囲であることが好ましい。使用する無機微粒子の平均粒子径が150nmより小さい場合には、インク受容層全体のインク吸収性が低下し、印字時にビーディングや滲みが発生することがある。また、無機微粒子の平均粒子径が250nmより大きい場合には、上層に80nm〜150nm未満の無機微粒子を含む層を設けても、インク受容層表面に十分な光沢が得られないことがある。
【0027】さらにインク受容層の上層および下層に用いる無機微粒子(好ましくはアルミナ、ベーマイトおよび擬ベーマイト構造を有する無機微粒子)は、いずれも重量分布(dw)と個数分布(dn)の比(dw/dn)が1.0〜1.8であることが好ましく、より好ましくは1.0〜1.5の範囲である。(dw/dn)が1.8を超える場合にはインク受容層の透明性や光沢が損なわれたり、画像を形成した場合、画像の耐ガス性が損なわれる場合がある。
【0028】なお、本発明でいう平均粒子径は動的光散乱法によって測定され、「高分子の構造(2)散乱実験と形態観察 第1章 光散乱」(共立出版 高分子学会編)、あるいはJ.Chem.Phys.,70(B),15 Apl.,3965(1979)に記載のキュムラント法を用いた解析から求めることができる。また、個数分布(dn)と重量分布(dw)は動的光散乱から得られた時間相関関数をヒストグラム法を用いて解析することで求めることができる。
【0029】従って、個数分布(dn)と重量分布(dw)の比で表される(dw/dn)は、無機微粒子の粒径の分布を意味している。なお、本発明では以下特に断らない限り、(dw/dn)を粒子径分布と呼ぶ。本発明で定義される平均粒子径および粒子径分布は、例えば、レーザー粒径解析装置 PARIII(大塚電子株式会社製)などを用いて容易に測定することができる。
【0030】本発明においては、前記無機微粒子とともに前記一般式(1)で示される化合物を用いて上層と下層とからなるインク受容層を形成することを特徴としている。一般式(1)で表わされる化合物において、R1〜R9は前記と同意義であり、R1〜R4がアルキル基である場合は、炭素数1〜10のものが好ましく、アリール基である場合はフェニル基、またはナフチル基が好ましい。これらのアルキル基およびアリール基は何れも未置換でもよいし、置換基を有してもよい。
【0031】前記一般式(1)で表わされる化合物としては、具体的には、以下のようなものが挙げられる。まず、R1〜R4が、水素原子、アルキル基、アリール基などである化合物としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。

【0032】また、一般式(1)において、R1〜R4少なくとも1個が、−NR56で表わされる基である化合物としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。

【0033】さらに一般式(1)で表わされる化合物において、R1およびR2の何れか一方とR3およびR4の何れか一方とが環を形成している化合物としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。

【0034】本発明ではさらに下記一般式(2)で示される化合物を用いることを特徴としている。一般式(2)で示される化合物はアクリルアミドとジアリルアミン塩酸塩を構成成分とする共重合体である。ジアリルアミンのモル分率(m)は、一般的には0.1〜0.99の範囲であり、好ましくは0.15〜0.95の範囲である。また、アクリルアミドのモル分率(n)は、一般的には0.01〜0.9の範囲であり、好ましくは0.05〜0.85の範囲である。ジアリルアミンのモル分率が0.1未満になると、インクジェット記録後の画像の耐水性やマイグレーション防止の効果が充分に発揮されないため、ジアリルアミンの量を極端に少なくすることはあまり現実的ではない。

【0035】上記共重合体の高分子鎖中のモノマー配列は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、マルチブロック共重合体などいずれの構造でもよい。また、特に分子量や分子量分布も限定されるものではないが、水溶液にした時の粘性を考慮すると分子量は5,000〜200,000の範囲が好ましいといえる。
【0036】本発明では、下層と上層とからなるインク受容層の形成に、前記一般式(1)および一般式(2)で示される化合物とともに、ホウ素化合物を使用する。本発明で使用するホウ素化合物とは、ホウ酸もしくはホウ酸塩などのようなホウ素原子を中心とした酸素酸またはその塩であり、具体的には、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
【0037】一般に、ホウ酸は親水性ポリマーによって形成される皮膜の造膜性、耐水性および皮膜強度を改善するための硬膜剤として使用されている。硬膜剤は、使用するポリマーが持つ反応性基の種類によって様々なものが選択されるが、例えば、ポリビニルアルコール系の樹脂であれば、エポキシ系硬膜剤や、ホウ酸あるいは水溶性アルミニウム塩などの無機系硬膜剤が用いられる。また、前記一般式(2)のアクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩は、一般に被記録媒体の耐水性を改善する目的で染料固着剤として使用される。このような染料固着剤はアニオン性の基を持つインクジェット用染料と塩を形成し、水に対して染料を不溶化することで画像の耐水性を向上させる。しかし、本発明におけるホウ素化合物と前記一般式(2)で表される化合物の役割は、被記録媒体中に特に一般式(1)で表わされる化合物とともに含有させた場合に、画像の退色防止効果および変色防止効果を増大することにあり、硬膜剤や染料固着剤としての作用に限定した用途とは異なる。
【0038】なお、本発明で使用する前記一般式(1)で表される化合物(B)、ホウ素化合物(D)および一般式(2)で表される化合物(C)の使用量は、インク受容層を構成する下層と上層ともに、下記式4の範囲であることが好ましい。
B/D:C=0.1:5〜15:0.1 (式4)
一般式(1)の化合物とホウ素化合物の使用量の比、すなわち、B/Dと一般式(2)で表される化合物の比が上記の範囲にある場合、本発明の被記録材に画像を形成した場合、画像の変退色防止の効果をさらに向上させると同時に、染料のマイグレーション防止にも効果がある。
【0039】ホウ素化合物や前記一般式(2)で表わされる化合物の使用量は、下層および上層ともに、無機微粒子(A)やバインダーとして用いる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂の量によって大きく変化するが、前記一般式(1)で表される化合物(B)、前記一般式(2)で表わされる化合物(C)および前記ホウ素化合物(D)の混合質量比、すなわち、B/D:C=0.1:5〜15:0.1(式4)となる範囲において、4×(B+C+D)≦A(式5)、すなわち、B、CおよびDの合計量を無機微粒子100質量部当たり25質量部以下の割合で添加することが好ましい。好ましくは無機微粒子100質量部当たり(B+C+D)が1.55〜25質量部の範囲である。(B+C+D)の含有量が25質量部を超える場合は、インク受容層を形成するための塗工液粘度の経時変化が大きくなり、塗工安定性が劣る場合がある。また、(B+C+D)が1.55質量部未満では本発明の目的である画像の変退色防止効果とマイグレーションの抑制効果が十分ではない場合がある。
【0040】本発明の被記録媒体は、以上の成分を含有する上層用および下層用の2種の塗工液を調製し、該2種の塗工液を基材の表面に下層および上層の順に塗工して、少なくとも2層からなるインク受容層を形成することで得られるが、この2層からなるインク受容層は、いずれの層も、前記無機微粒子と少量の水溶性樹脂および/または水分散性樹脂から形成される空隙を有するものが好ましい。より微細な空隙が形成できるという点では、無機微粒子としてアルミナ、ベーマイト構造および擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を用いるのが好ましい。特に、BET比表面積が50m2/g以上の、アルミナ、ベーマイト構造または擬ベーマイト構造のアルミナ水和物が好ましい。
【0041】本発明に用いられるアルミナ水和物としては、下記一般式(3)により表されるものを使用できる。
Al23-n(OH)2n・mH2O 一般式(3)
式中、nは0、1、2または3の整数の内のいずれかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。mH2Oは多くの場合結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表すものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、この種のアルミナ水和物をか焼するとmは0の値に達することがありうる。
【0042】一般にベーマイト構造を示すアルミナ水和物の結晶は、その(020)面が巨大平面を形成する層状化合物であり、X線回折図形に特有の回折ピークを示す。ベーマイト構造としては、完全ベーマイトの他に擬ベーマイトと称する、過剰な水を(020)面の層間に含んだ構造を採ることもできる。この擬ベーマイトのX線回折図形は完全なベーマイトよりも幅広な回折ピークを示す。完全ベーマイトと擬ベーマイトは明確に区別できるものではないので、以下特に断らない限り両者を含めてベーマイト構造を示すアルミナ水和物という。
【0043】本発明で被記録媒体のインク受容層に好ましく含有されるベーマイト構造を有するアルミナ水和物の製造方法としては、特に限定されないが、ベーマイト構造をもつアルミナ水和物を製造できる方法であれば、例えば、アルミニウムアルコキシドの加水分解、またはアルミン酸ナトリウムを加水分解するなどの公知の方法で製造することができる。
【0044】特開昭56−120508号公報に開示されているように、X線回折的に無定形のアルミナ水和物を、水の存在下50℃以上で加熱処理することによってベーマイト構造に変えて用いることもできる。特に好ましく用いることができる方法は、長鎖のアルミニウムアルコキシドに対して酸を添加して加水分解・解膠を行うことによってアルミナ水和物を得る方法である。
【0045】ここで、長鎖のアルミニウムアルコキシドとは、例えば、炭素数が5以上のアルコキシドであり、さらに炭素数12〜22のアルコキシドを用いると、後述するようにアルコール分の除去、およびアルミナ水和物の形状制御が容易になるため好ましい。
【0046】添加する酸としては有機酸および無機酸の中から1種または2種以上を自由に選択して用いることができるが、加水分解の反応効率および得られたアルミナ水和物の形状制御や分散性の点で硝酸が最も好ましい。この工程の後に水熱合成などを行って粒子径を制御することも可能である。硝酸を含むアルミナ水和物分散液を用いて水熱合成を行うと、水溶液中の硝酸がアルミナ水和物表面に硝酸根として取り込まれてアルミナ水和物の水分散性を向上させることができる。
【0047】アルミニウムアルコキシドの加水分解による方法は、アルミナヒドロゲルやカチオン性アルミナを製造する方法と比較して、各種イオンなどの不純物が混入しにくいという利点がある。さらに長鎖のアルミニウムアルコキシドは、加水分解後のアルコールが除去し易いため、アルミニウムイソプロポキシドなどの短鎖のアルコキシドを用いる場合と比較して、アルミナ水和物の脱アルコールを完全に行なうことができるという利点がある。
【0048】また、前記方法で合成された無機微粒子の分散液をさらに粉砕分散機などを用いた物理的な手段で所望とする粒径にすることも可能である。本発明で用いることのできる粉砕分散機としては、公知の様々な分散機を使用することが可能で、例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型分散機、超音波分散機などが挙げられる。具体的にはマントンゴーリンホモジナイザー、ソノレータ(同栄商事社製)、マイクロフルイタイザー(みずほ工業社製)、ナノマイザー(月島機械社製)、アルティマイザー(伊藤忠産機社製)、パールミル、グレンミル、トルネード(浅田鉄鋼社製)、ビスコミル(アイメックス社製)、マイティーミル、RSミル、SΓミル(井上製作所製)、荏原マイルダー(荏原製作所製)、ファインフローミル、キャビトロン(大平洋機工社製)などが挙げられる。
【0049】本発明の被記録媒体は、前記無機微粒子、前記一般式(1)で表わされる化合物、前記一般式(2)で表される化合物、およびホウ素化合物からなる組成物を、必要に応じた量の水溶性樹脂および/または水分散性樹脂と水性媒体とともに混合して下層用および上層用の塗工液を調製し、これらを基材の表面に無機微粒子の平均粒子径の大きい塗工液の順に、下層と上層の2層に分けて塗布を行い、乾燥させてインク受容層を形成することで得られる。
【0050】本発明の被記録媒体の構成としては、コート紙およびコートフィルムのように、基材上にインク受容層を設けたもの、基材の表面近傍に塗工液の一部もしくは大部分が含浸されてインク受容層が形成されたもの、あるいは塗工液を基材表面に微量塗工してインク受容層を形成させた構成などが選択できる。本発明では、これらの構成も「基材の表面にインク受容層が形成された」ものとして包含する。
【0051】前記塗工液に含有させる水溶性樹脂および/または水分散性樹脂としては、例えば、澱粉、ゼラチン、カゼインおよびそれらの変性物、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはその変性物(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性など)、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸またはその共重合体、アクリルアミド系樹脂、無水マレイン酸系共重合体、ポリエステル系樹脂、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、およびこれらの各種重合体ラテックスにカチオン性基またはアニオン性基を付与した官能基変性重合体ラテックス類などが挙げられる。好ましいのは、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールで、平均重合度が300〜5,000のものである。ケン化度は70〜100%未満のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。また、これらの水溶性または水分散性樹脂は単独あるいは複数種混合して用いることができる。
【0052】下層用および上層用の塗工液中の無機微粒子と水溶性樹脂および/または水分散性樹脂の混合質量比は、好ましくは1:1〜30:1、より好ましくは3:1〜20:1の範囲である。水溶性樹脂や水分散性樹脂の量がこれらの範囲内であれば、形成されたインク受容層のひび割れや粉落ちが発生し難くなり、インク吸収性も良い。
【0053】また、塗工液の水性媒体としては、水、または水と水に混合可能な有機溶剤との混合溶液であれば特に制限はない。水に混合可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類:エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類:アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類:テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられる。
【0054】インク受容層を形成するための塗工液中の固形分濃度は、基材上にインク受容層を形成できる程度の粘度であれば特に制限はないが、塗工液全重量に対して5〜50質量%が好ましい。固形分濃度が5質量%未満の場合は、インク受容層の膜厚を厚くするのに塗工量を増やす必要があり、乾燥に多くの時間とエネルギーを必要とすることから非経済的となる場合がある。また、50質量%を越えると塗工液の粘度が高くなり、塗工適性が悪化する恐れがある。
【0055】また、前記塗工液には、本発明の効果を妨げない範囲内で各種添加剤を配合することができる。このような添加剤としては、界面活性剤、顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、インク定着剤、ドット調整剤、着色剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、pH調整剤などを挙げることができる。
【0056】調製された塗工液を基材上に塗布する方法としては、公知の任意の塗工法が適用でき、例えば、ブレードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、スロットダイコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ロールコーティング法などの塗布方式により塗布される。その後、熱風乾燥機、熱ドラム、遠赤外線乾燥機などの乾燥装置を用いて乾燥することで、下層と上層とからなるインク受容層が形成されるが、該インク受容層は、無機微粒子と樹脂およびその他の添加剤の組成比を変更して形成してもよく、基材の片面もしくは両面に形成することも可能である。また、画像の解像度および搬送性などを向上させる目的で、スーパーカレンダーやソフトカレンダーなどの装置を用いて表面平滑化処理をしてもよい。
【0057】塗工液の基材上への塗工量として好ましい範囲は、上層と下層を合わせた総塗工量が固形分換算で5〜60g/m2であり、より好ましい範囲は10〜55g/m2である。また、下層と上層の塗工量の比は1:1〜1:0.01であり、より好ましくは1:1〜1:0.05の範囲である。総塗工量が5g/m2未満の場合は、形成されたインク受容層がインクの水分を十分に吸収できず、インクが流れたり画像が滲んだりする場合があり、60g/m2を超えると、乾燥時に被記録媒体にカールが発生したり、印字性能に期待されるほど顕著な効果が現れない場合がある。また、上層と下層の塗工量の比が、上記の範囲を超える場合には、2層に分けたことにより発現する本発明の効果が期待できなくなる。
【0058】前記の方法で作製される被記録媒体のインク受容層の表面pHは5.0〜6.5の範囲が好ましく、より好ましくは5.0〜6.0の範囲である。一般にアルミナ水和物を水媒体中に分散する場合、解膠剤として無機酸や有機酸を使用するが、塗布および乾燥後のインク受容層中に酸が残留して表面pHが5未満となる場合、印字後の染料のマイグレーションがひどくなる傾向がある。また、pHが6.5を越えると、インク受容層に形成される画像の堅牢性が低下するなどの弊害を引き起こす場合がある。また、pHを6.5を越えると解膠剤として使用した酸をインク受容層から蒸発させる必要があり、乾燥工程に多大な負荷がかかるため非経済的である。
【0059】インク受容層の表面pHの制御は、塗工液に添加する解膠剤の量で概ね制御可能で、具体的にはアルミナ水和物固形分に対して酸を1〜5質量%加えた時に、塗工液のpHを3〜6とすることが好ましい。通常の乾燥工程で表面pHが上記の範囲に入らない場合には、さらに乾燥を行うことで、残留した酸を蒸発させて所望のpHにすることも可能である。なお、本発明のインク受容層の表面pHは、JAPAN TAPPI No.49−1:2000に規定された方法で測定された値と定義する。
【0060】以上の如き本発明の被記録媒体に画像を形成した場合、その画像のくすみが抑制された理由については明確ではないが、上層の無機微粒子の平均粒子径を80nm〜150nm未満とし、また、下層の平均粒子径を150nm〜250nmにすることで、インク吸収速度とインク吸収容量のバランス上手く制御され、インク受容層表面に定着する染料分子の量が増加して発色性が向上したのではないかと推測される。
【0061】また、長期保存における画像の退色および変色に対し優れた抑制効果を示した理由については、おそらく前記一般式(1)、前記一般式(2)で表わされる化合物およびホウ素化合物との間で何らかの相互作用が生じたこと、上層の無機微粒子の平均粒子径を80nm〜150nm未満、粒子径分布を1.0〜1.8にしたことでインク受容層へのガス吸着能あるいはガス透過性が低下した結果ではないかと考えられる。さらにマイグレーション防止効果が向上した理由については恐らくインク受容層表面pHを5.0〜6.5に制御したことで、このような効果を発現したものと考えられる。
【0062】インクジェット記録に用いるインクとしては、水性媒体に、染料や顔料などの色材を含有させたものなど、インクジェット記録方式に適用できるものであればよい。カラー記録を行う場合は、常法に従って、シアン、マゼンタおよびイエロー、さらには必要に応じてブラックを用いた減色混合によりフルカラー画像を形成することができる。
【0063】前記被記録媒体に上記インクを付与して画像形成を行う方法としては、インクジェット記録方法が特に好適であり、このインクジェット記録方法としてはインクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であればいかなる方法でもよい。特に特開昭54−59936号公報などに記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式は有効に使用することができる。
【0064】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の文中の「部」および「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
<アルミナ水和物の製造>米国特許明細書第4,242,271号に記載された方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に米国特許明細書第4,202,870号に記載された方法で、前記アルミニウムアルコキサイドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをベーマイト構造を有するアルミナ水和物の固形分が7.7%になるまで水を加えた。この時のアルミナスラリーのpHは9.4であった。その後、3.9%の硝酸溶液を加えてpH調整を行った。
【0065】次にオートクレーブを用いて、熟成前のpH:6.0、熟成温度:150℃、熟成時間:6時間にて熟成を行いコロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを87℃でスプレードライすることにより、ベーマイト構造を有するアルミナ水和物粉末を得た。さらにイオン交換水中に、前記ベーマイト構造を有するアルミナ水和物を濃度が19%になるように添加混合することにより、アルミナ水和物分散液を調製した。
【0066】前記方法で得られた分散液を超音波ホモジナイザーMUS−600CCVP−12(株式会社日本精機製作所製)の超音波発振ユニット中を流速約1L/minで通すことにより再分散した。この再分散操作を1〜5回繰り返し後、遠心分離操作により粗大粒子を取り除き、最後にイオン交換水を加えて固形分濃度を17%に調製することで、それぞれの平均粒径および粒子径分布を有するアルミナ水和物分散液A〜Cを得た。
【0067】アルミナ水和物分散液Dについては流速を約1L/minで超音波発振ユニット中を通し、その後遠心分離操作を行わず、イオン交換水を加えて濃度17%に調製した。また、アルミナ水和物分散液E、F、Gについては超音波発振ユニット中をそれぞれ流速約2.5、3および5L/minで通すことにより再分散し、遠心分離操作後にイオン交換水を加えて固形分を17%に調製した。
【0068】アルミナ水和物分散液Hについては、超音波ホモジナイザーによる再分散と遠心分離操作を行わず、イオン交換水を加えて濃度17%に調製した。このようにして得られたアルミナ水和物分散液A〜Hの平均粒径と粒子径分布はレーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子株式会社製)を用いて測定した。表1にその結果を示す。
【0069】

【0070】本発明における被記録媒体の諸物性の評価を下記の要領で行った。
<評価1:画像くすみの評価>インクジェット記録装置(BJ−F8500、キヤノン株式会社製)でシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)およびブラック(Bk)の4色混合ベタ印字を行い、印字部のくすみの程度を以下の基準で目視評価した。なお、4色混合ベタ部がくすむと、画像を印字した際に全体的にくすむ傾向がある。
○:くすみがなく良好。
△:くすみが認められる。
×:くすみが著しい。
【0071】<評価2:退色・変色抑制効果についての評価>オゾン暴露による退色・変色をインクジェット記録装置(BJ−F8500、キヤノン株式会社製)を用いてY、M、CおよびBkインクをそれぞれ単色でベタ印字した被記録媒体をオゾン暴露試験機(スガ試験機社製、特注品)に入れて、40℃・55%RHの条件下で濃度3ppmのオゾンに2時間暴露し、保存前後で印字部の色味変化を目視評価した。各色で色味に差異が認められない場合は○、色味に差異が僅かに認められた場合は△、色味に大きな差異が認められた場合は×とした。
【0072】<評価3:マイグレーション防止効果についての評価>インクジェット記録装置(BJ−F8500、キヤノン株式会社製)を用いてY、M、CおよびBkインクをそれぞれ単色でベタ印字した被記録媒体を30℃・80%RHの環境に1週間保存した時に、保存前後で染料がマイグレーションした度合いを目視評価した。各色でマイグレーションが起きていないものを〇、マイグレーションが僅かに起きているものを△、マイグレーションが著しく起きているものを×とした。
【0073】<評価4:インク吸収性評価>インクジェット記録装置(BJ−F8500、キヤノン株式会社製)を用いて単色から4色までのベタ印字を行った。印字後の被記録媒体表面のインクの乾燥状態を記録部に指で触れてインク吸収性を調べた。単色ベタ印字でのインク量を100%とした。インク量300%(3色混合)でインクが指に付着しないものを◎、インク量200%(2色混合)でインクが指に付着しないものを○、インク量100%でインクが指に付着しないものを△、同100%でインクが指に付着すれば×とした。
【0074】<実施例1>表1のアルミナ水和物分散液G100部と、ポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)1.7部を水15.3部に溶解したものを混合し、これにチオ尿素0.51部(アルミナ水和物に対して3%)および3%−ホウ酸水溶液を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)およびアクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体として、スミレーズレジン1001(住友化学株式会社製)を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)加えて塗工液を調製した。次に、レジンコート紙を基材とし、この基材上に先程調製した塗工液を乾燥塗布量30g/m2となるようにバーコート法にて塗工し、100℃で30分間熱風乾燥して下層を形成させた。
【0075】次にアルミナ水和物A100部に下層の場合と同様にポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)1.7部を水15.3部に溶解したものを混合し、これにチオ尿素0.51部(アルミナ水和物に対して3%)および3%−ホウ酸水溶液を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)およびアクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体として、スミレーズレジン1001(住友化学株式会社製)を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)加えて塗工液を調製した。先に30g/m2塗工したものをベースにし、さらに先程調製した塗工液を乾燥塗布量15g/m2となるようにバーコート法にて塗工し、100℃で30分間熱風乾燥して上層を形成させた。このようにして得られた下層および上層の2層からなるインク受容層を有する被記録媒体を用い、前記評価1〜4の試験を行った。結果を表2に示す。
【0076】<実施例2>実施例1において、下層に用いるアルミナ水和物分散体Gの代わりに、アルミナ水和物分散体Fを、上層に用いるアルミナ水和物分散体Aの代わりにアルミナ水和物分散体Bを用いた以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製し、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】<実施例3>実施例1において、下層に用いるアルミナ水和物分散体Gの代わりに、アルミナ水和物分散体Eを、上層に用いるアルミナ水和物分散体Aの代わりにアルミナ水和物分散体Cを添加した以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製し、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】<実施例4>実施例1において、チオ尿素の代わりにN,N’−ジエチルチオ尿素を0.88部(アルミナ水和物に対して5.18%)添加した以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製し、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】<実施例5>実施例1において、上層に用いるアルミナ水和物分散体Aの代わりに、アルミナ水和物分散体Dを用いた以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製して前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0080】<実施例6>実施例1において、下層に用いるアルミナ水和物分散体Gの代わりに、アルミナ水和物分散体Hを用いた以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製して前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】<実施例7>実施例1において、下層と上層のインク受容層形成時の乾燥時間をそれぞれ15分間と10分間にした以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製して前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0082】<比較例1>表1のアルミナ水和物分散液A100部と、ポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)1.7部を水15.3部に溶解したものを混合し、これにチオ尿素0.51部(アルミナ水和物に対して3%)および3%−ホウ酸水溶液を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)およびアクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体として、スミレーズレジン1001(住友化学株式会社製)を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)加えて塗工液を調製した。次に、レジンコート紙を基材とし、この基材上に先程調製した塗工液を乾燥塗布量45g/m2となるようにバーコート法にて塗工し、100℃で30分間熱風乾燥して単層のインク受容層を形成させた。
【0083】<比較例2>表1のアルミナ水和物分散液G100部と、ポリビニルアルコール(PVA−235、クラレ社製)1.7部を水15.3部に溶解したものを混合し、これにチオ尿素0.51部(アルミナ水和物に対して3%)および3%−ホウ酸水溶液を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)およびアクリルアミド−ジアリルアミン塩酸塩共重合体として、スミレーズレジン1001(住友化学株式会社製)を固形分換算で0.34部(アルミナ水和物に対して2%)加えて塗工液を調製した。次に、レジンコート紙を基材とし、この基材上に先程調製した塗工液を乾燥塗布量45g/m2となるようにバーコート法にて塗工し、100℃で30分間熱風乾燥して単層のインク受容層を形成させた。
【0084】<比較例3>実施例1において、下層に用いるアルミナ水和物分散体Gの代わりに、アルミナ水和物分散体Aを、上層に用いるアルミナ水和物分散体Aの代わりにアルミナ水和物分散体Gを用いた以外は、実施例1と同様にして被記録媒体を作製し、前記評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】

【0086】
【発明の効果】以上の実施例および比較例から明らかなように、本発明によれば、特定の化合物を組み合わせて使用し、かつ平均粒子径の異なる無機微粒子を用いて、少なくとも2層からなるインク受容層を形成した被記録媒体に、インクジェット記録方式による画像記録を行った場合、インク吸収性が良好であり、画像のくすみ、画像の変色や退色、および高温多湿環境下における印字後の染料のマイグレーションを許容範囲とすることができる(実施例1〜7)。さらに上記インク受容層に含まれる無機微粒子の平均粒子径、粒子径分布を適当な範囲にすること、およびインク受容層の表面pHを適当な範囲に調整することによって、全ての性能を一層顕著に向上させることができる(実施例1〜4)。これに対して本発明の構成を有さない比較例1〜3では、特に画像くすみ、および変褪色が顕著である。
【出願人】 【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテック株式会社
【住所又は居所】茨城県水海道市坂手町5540−11
【出願日】 平成14年5月10日(2002.5.10)
【代理人】 【識別番号】100077698
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 勝広 (外2名)
【公開番号】 特開2003−326834(P2003−326834A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−136160(P2002−136160)