| 【発明の名称】 |
インクジェット記録物及びその製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】金田 秀将 【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内
【氏名】大西 弘幸 【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】光沢感に優れた高品位のインクジェット記録物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録物1は、基材2の少なくとも片面にインク受容層3を設けてなる記録媒体4の該インク受容層3上に、オーバーコート層5を有している。オーバーコート層5は、インク受容層3の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つインク受容層3上に塗布された直後に増粘するオーバーコート液を塗布することにより形成されている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基材の少なくとも片面にインク受容層を設けてなる記録媒体の該インク受容層上に、インクジェット記録を行った後、オーバーコート液を塗布することにより、オーバーコート層が形成されているインクジェット記録物であって、上記オーバーコート液は、上記インク受容層の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つ該インク受容層上に塗布された直後に増粘することを特徴とするインクジェット記録物。 【請求項2】 上記オーバーコート液の上記インク受容層上に塗布される前の液温20℃における粘度が1〜10mPa・sであり、該インク受容層上に塗布された直後の液温20℃における粘度が14mPa・s以上であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録物。 【請求項3】 上記樹脂エマルジョンが、アクリル酸及び/又はアクリルアミドを含む共重合体を水性媒体中に分散させたものであることを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録物。 【請求項4】 上記オーバーコート液が、湿潤剤、浸透剤及び界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録物。 【請求項5】 上記インク受容層が、多孔性無機粒子及びバインダーを含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録物。 【請求項6】 上記インクジェット記録が、顔料インクを用いて行われたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のインクジェット記録物。 【請求項7】 請求項1〜6の何れかに記載のインクジェット記録物の製造方法であって、上記記録媒体の上記インク受容層上にインクジェット記録を行った後、上記オーバーコート液を塗布することを特徴とするインクジェット記録物の製造方法。 【請求項8】 上記インクジェット記録の前に、上記インク受容層上にpH調整剤を塗布することを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録物の製造方法。 【請求項9】 上記オーバーコート液の塗布が、ジェットノズルを用いて行われることを特徴とする請求項7又は8記載のインクジェット記録物の製造方法。 【請求項10】 インク受容層上にインクジェット記録が行われたインクジェット記録物のオーバーコート層形成用のオーバーコート液であって、上記インク受容層の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つ該インク受容層上に塗布された直後に増粘することを特徴とするオーバーコート液。 【請求項11】 上記インク受容層上に塗布される前の液温20℃における粘度が1〜10mPa・sであり、該インク受容層上に塗布された直後の液温20℃における粘度が14mPa・s以上であることを特徴とする請求項10記載のオーバーコート液。 【請求項12】 上記樹脂エマルジョンが、アクリル酸及び/又はアクリルアミドを含む共重合体を水性媒体中に分散させたものであることを特徴とする請求項10又は11記載のオーバーコート液。 【請求項13】 上記樹脂エマルジョン中の樹脂成分を0.1〜30重量%含有することを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載のオーバーコート液。 【請求項14】 湿潤剤、浸透剤及び界面活性剤からなる群から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項10〜13の何れかに記載のオーバーコート液。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット方式により画像が形成された記録媒体の被記録面上に、オーバーコート層が形成されており、光沢感に優れたインクジェット記録物及びその製造方法並びに該オーバーコート層形成用のオーバーコート液に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】インクジェット方式は、微小なノズルから画像信号に応じてインクの液滴を吐出させ、記録媒体の被記録面に付着させて印刷を行う印刷方式である。銀塩写真に匹敵する高画質のフルカラー画像の形成には、多量のインクが使用されるため、記録媒体には高いインク吸収能が求められる。近年、ハイライトの画像領域の粒状感を低減させてより高画質の画像を形成するために、同じ色調で着色剤濃度の異なる複数の濃淡インクが用いられるようになっており、記録媒体に要求されるインク吸収性のレベルはますます高まっている。そこで、高インク吸収能を有し、銀塩写真に匹敵する高画質のフルカラー画像を形成し得るインクジェット記録用の記録媒体として、紙やフィルム等の基材上に、コロイダルシリカ、気相法シリカ、アルミナ水和物、γ型酸化アルミニウム等の多孔性無機粒子を主成分とする多孔質のインク受容層を設けた構成の記録媒体が開発されている。 【0003】また、従来から、記録物の被記録面に樹脂からなるオーバーコート層を設けて、光沢感、耐光性、耐水性、耐擦性などを向上させる技術が知られている。このオーバーコート層の形成方法として、画像形成後に透明フィルムを被記録面上に転写(ラミネート)する方法が知られている(特開2000-233474号公報等参照)。しかし、この方法は、フィルムにシワがはいったり、被記録面とフィルムとの間に気泡が入ってしまう場合があり、きれいで平滑なオーバーコート層を安定して形成するには限界があった。 【0004】また、オーバーコート層の別の形成方法として、特開平10-86544号公報には、樹脂液を被記録面にインクジェット方式により塗布した後、該樹脂液を硬化させて、該被記録面に樹脂層を形成する方法が開示されている。しかし、この方法は、上述した多孔質のインク受容層に対しては、硬化処理前に樹脂液が速やかに該インク受容層に吸収されてしまうため、良好な光沢感を付与し得る樹脂層を形成できないという問題があった。この問題は、樹脂液の粘度を上げることで解決できるが、高粘度の樹脂液を用いると、塗膜表面にスジなどを発生させ易く、また、インクジェット方式やスプレー方式のような非接触の塗布方式では目詰まりなどの吐出不良を起こすおそれがある。 【0005】従って、本発明の目的は、良好な光沢感を付与し得るオーバーコート層が形成された高品位のインクジェット記録物及びその製造方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、多孔質のインク受容層上に、オーバーコート層を形成する方法について種々検討した結果、オーバーコート層の形成材料として、インク受容層の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つ該インク受容層へ塗布する前は低粘度で塗布性に優れたオーバーコート液を使用し、これを該インク受容層上にインクジェット方式により塗布して、塗布直後に増粘させることにより、該インク受容層中へのオーバーコート液の浸透が抑制され、平滑で光沢感に優れたオーバーコート層を形成できることを知見した。 【0007】本発明は、上記知見に基づきなされたもので、基材の少なくとも片面にインク受容層を設けてなる記録媒体の該インク受容層上に、インクジェット記録を行った後、オーバーコート液を塗布することにより、オーバーコート層が形成されているインクジェット記録物であって、上記オーバーコート液は、上記インク受容層の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つ該インク受容層上に塗布された直後に増粘することを特徴とするインクジェット記録物を提供することにより上記目的を達成したものである。 【0008】また、本発明は、上記インクジェット記録物の製造方法であって、上記記録媒体の上記インク受容層上にインクジェット記録を行った後、上記オーバーコート液を塗布することを特徴とするインクジェット記録物の製造方法を提供するものである。 【0009】また、本発明は、インク受容層上にインクジェット記録が行われたインクジェット記録物のオーバーコート層形成用のオーバーコート液であって、上記インク受容層の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つ該インク受容層上に塗布された直後に増粘することを特徴とするオーバーコート液を提供するものである。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、先ず、本発明のインクジェット記録物について説明する。 【0011】図1は、本発明のインクジェット記録物の一実施形態の断面模式図である。このインクジェット記録物1は、基材2の片面にインク受容層3を設けてなる記録媒体4の該インク受容層3上に、インクジェット方式により画像(図示せず)が形成され、更に、該画像を被覆するオーバーコート層5が形成されている。 【0012】オーバーコート層5について説明する。オーバーコート層5は、インク受容層3の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つインク受容層3上に塗布された直後に増粘するオーバーコート液を塗布することにより、形成されている。このオーバーコート液は、インク受容層上に塗布される前は、低粘度の水性液であり、塗布性、レベリング性、取扱性に優れ、インクジェット方式などの非接触方式で塗布してもノズルの目詰まりを起こすおそれがない一方、塗布された直後は、増粘してある程度の粘性を有する流動体となる。このような特徴を有するオーバーコート液から形成されたオーバーコート層5は、塗布ムラなどがなく、きれいで平滑な表面を有しており、光沢付与効果にも優れている。尚、本明細書において、「表面pH」は、日本紙パルプ技術協会の定める紙及び板紙の表面pH試験方法のA法(塗布法)に従い測定された表面pHを意味する。 【0013】オーバーコート層5は、インクの打ち込みの有無に拘わらず、記録媒体4の被記録面の全面に形成されることが好ましいが、要は、必要な光沢感を得ることができればよく、形成箇所は特に制限されない。例えば、画像形成部分(インクの打ち込み部分)のみに形成することもできるし、白地部分(インクが打ち込まれていない部分)のみに形成することもできる。 【0014】オーバーコート層5の厚みは、光沢付与効果とオーバーコート液の乾燥時間のバランスの観点から、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは2〜5μmである。 【0015】オーバーコート層5の形成材料である上記オーバーコート液について、以下に更に詳述する。 【0016】上記オーバーコート液の必須成分である上記樹脂エマルジョンとしては、通常は、ほぼ球形の樹脂の微粒子が分散した低粘度の水性液であり、pHが特定範囲(インク受容層の表面pH)において増粘してある程度の粘度を有する流動体となるものが使用できる。このようなpH変化により増粘する樹脂エマルジョンとしては、pHが7超で増粘するアルカリ増粘タイプ、pHが7未満で増粘する酸増粘タイプがあり、何れも使用できる。 【0017】上記樹脂としては、アクリル酸及び/又はアクリルアミドを含む共重合体であって、上述の増粘効果が得られるものであれば特に制限されない。特に、ポリアクリル酸ソーダ又はポリアクリルアミドは、pH変化による増粘効果が高いため、好ましい。 【0018】また、上記樹脂の平均粒子径は、光沢付与効果、透明性、インクジェット方式により塗布する場合の吐出安定性等の観点から、好ましくは20〜1000nm、更に好ましくは50〜500nmである。 【0019】また、上記樹脂エマルジョンの最低造膜温度(JIS K6800に準拠)は、特に制限されないが、オーバーコート層の表面耐擦性の向上とブロッキング防止の観点から、好ましくは−20〜90℃、更に好ましくは0〜70℃である。 【0020】上記樹脂エマルジョンは、上記オーバーコート液中における上記樹脂(成分)の含有量が、該オーバーコート液の重量に対して0.1〜30重量%、特に1〜20重量%となるように含有されることが好ましい。オーバーコート液の樹脂濃度が0.1重量%未満では、光沢感や画像堅牢性の向上等の効果に乏しく、30重量%超では、インクジェット方式により塗布する場合に吐出安定性が低下するおそれがある。 【0021】上記オーバーコート液には、上記樹脂エマルジョン以外に、必要に応じ、下記の如き各種添加剤の1種又は2種以上を含有させることができる。 【0022】上記オーバーコート液には、インクジェット方式により塗布する場合の吐出安定性の確保のため、湿潤剤を含有させることが好ましい。湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類;マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等が挙げられる。 【0023】上記湿潤剤の含有量は、上記オーバーコート液の重量に対して、好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。 【0024】また、上記オーバーコート液には、記録媒体への浸透性、インクジェット方式により塗布する場合の吐出安定性の観点から、浸透剤を含有させることが好ましい。浸透剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール等の低級アルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。 【0025】上記浸透剤の含有量は、上記オーバーコート液の重量に対して、好ましくは0.1〜15重量%、更に好ましくは3〜10重量%である。 【0026】また、同様の観点から、上記オーバーコート液には、界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等の非イオン性界面活性剤;サーフィノール82、104、440、465、485(以上、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)、オルフィンSTG、オルフィンE1010(以上、日信化学社製)等のアセチレングリコ−ル系界面活性剤;カチオン性界面活性剤;両イオン性界面活性剤等が挙げられる。 【0027】上記界面活性剤の含有量は、上記オーバーコート液の重量に対して、好ましくは0.1〜3重量%、更に好ましくは0.2〜1重量%である。 【0028】上記オーバーコート液には、その他の添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有させることができる。 【0029】上記オーバーコート液は、水に、上記樹脂エマルジョンの他、、必要に応じ、湿潤剤、浸透剤、界面活性剤その他の各種添加剤を適宜添加することにより、調製することができる。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。 【0030】上記オーバーコート液は、インク受容層上に塗布される前の液温20℃における粘度が1〜10mPa・s、特に2〜8mPa・sであることが、きれいで平滑なオーバーコート層を形成し得る塗布性及びレベリング性、優れた取扱性、インクジェット方式により塗布する場合の吐出安定性などを確保する点で好ましい。また、同様の観点から、上記オーバーコート液の表面張力は、15〜45mN/m、特に25〜35mN/mの範囲にあることが好ましい。 【0031】上記オーバーコート液は、インク受容層上に塗布される前は、上記のような低粘度の液体であることが好ましいが、インク受容層上に塗布された直後の液温20℃における粘度は、14mPa・s以上、特に20mPa・s以上であることが、優れた光沢付与効果を得る点で好ましい。上記樹脂エマルジョンは、上記オーバーコート液のインク受容層上への塗布前後の粘度が、それぞれこのような範囲になるように、選択されることが好ましい。 【0032】尚、上記オーバーコート液の「インク受容層上に塗布された直後の液温20℃における粘度」の好ましい範囲が14mPa・s以上であることは、下記〔実験〕の結果に基づくものである。 【0033】〔実験〕下記組成のオーバーコート液1を調製した。 ・アルカリ増粘エマルジョン「シックナーSN630」サンノプコ製 10重量%・グリセリン 5重量%・エタノール 5重量%・界面活性剤「オルフィンSTG」日信化学製 0.4重量%・純水 バランス 計100重量%【0034】上記オーバーコート液1(pH6)に、水酸化ナトリウム5重量%水溶液を適宜添加して、そのpHを7、7.5、8及び9にそれぞれ調整し、粘度測定器MCR300(PHYSICA Messtechnik GmbH社製)を用いて、各pH値における粘度(液温20℃、せん断速度10(1/S))を測定した。 【0035】また別途、表面pHを、6、7、7.5、8及び9に調整した記録媒体をそれぞれ用意した。該記録媒体として、セイコーエプソン製のPMマット紙(表面pH6)を用いた。また、該記録媒体の表面pHの調整は、該記録媒体のインク受容層上に、水酸化ナトリウム5重量%水溶液をワイヤーバーを用いて塗布し、乾燥することにより行った。 【0036】そして、インクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクをpH未調整の上記オーバーコート液1(液温20℃、pH6)と入れ替え、表面pHを調整した各記録媒体の表面に対して、シアンOD=1ベタパターンで該オーバーコート液1を打ち込み、オーバーコート層を形成した。 【0037】(光沢付与効果の評価試験)上記のようにして形成された各記録媒体のオーバーコート層の表面を目視で観察し、強い光沢感があるものをA、面質に変化が観られるが光沢感低いものをB、面質に変化が観られないものをCとした。また、表面の60度光沢度(JISZ8741に準拠)を測定して、オーバーコート層形成前の記録媒体(ブランク)の表面の60度光沢度との差を算出することにより、光沢度増加量(%)を求めた。これらの結果を総合して、下記評価基準により評価した。その結果を下記表1に示す。 評価基準A:目視で強い光沢感を確認することができ、且つブランクからの光沢度増加量が30%以上である。 B:目視で面質に変化があったことは確認できるが、光沢感低い。又は、ブランクからの光沢度増加量が10%以上30%未満である。 C:目視で面質に変化があったことを確認できない。又は、ブランクからの光沢度増加量が10%未満である。 【0038】 【表1】
【0039】表1に示したように、表面pHが7.5以上に調整された記録媒体上に形成されたオーバーコート層が、光沢付与効果に優れていた。表1によれば、オーバーコート液1(液温20℃、pH6、粘度1.5mPa・s)は、表面pHが7.5に調整された記録媒体上に塗布された直後にpHが7.5に変化し、14mPa・sに増粘したと考えられる。 【0040】以上の結果から、本発明に係るオーバーコート液としては、「インク受容層上に塗布された直後の液温20℃における粘度」が、14mPa・s以上に増粘するものが好ましいと言える。 【0041】記録媒体4について説明する。記録媒体4を構成する基材2としては、インクジェット記録で使用できるものであればよく、特に制限されない。例えば、上質紙、再生紙、サイズ処理紙等の紙;アート紙、コート紙、キャストコート紙、樹脂被覆紙、樹脂含浸紙等の加工紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムやシート状プラスチック基材;不織布、布、織物、金属フィルム、金属板;これらを貼り合わせた複合基材などを用いることができる。これらのなかでも、特に、紙又は樹脂被覆紙を用いることが好ましい。樹脂被覆紙は、紙のの少なくとも片面を樹脂で被覆した構成の加工紙で、レジンコート紙などとも呼ばれる。 【0042】また、記録媒体4を構成するインク受容層3としては、多孔性無機粒子を主成分とする、いわゆる空隙型のインク受容層が好ましい。多孔性無機粒子としては、多孔性非晶質シリカ、多孔性炭酸マグネシウム、多孔性アルミナ等が好ましく用いられる。多孔性無機粒子の含有量は、インク受容層の乾燥重量に対して、好ましくは40〜90重量%である。 【0043】インク受容層3には、多孔性無機粒子のバインダーとして、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、アクリル系共重合体ラテックス等のバインダーが含有される。バインダーの含有量は、上記多孔性無機粒子100重量部に対して、好ましくは5〜60重量部である。 【0044】インク受容層3には、必要に応じ、染料定着剤、蛍光増白剤、防かび剤、防腐剤、界面活性剤、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、保水剤、硬膜剤、着色染料、着色顔料、顔料の分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の1種又は2種以上を含有させることができる。 【0045】また、インク受容層3の厚みは、粉落ち防止等の観点から、好ましくは10〜50μmである。また、インク受容層3の質感、風合いなど(表面性)は、特に制限されず、マット調でもよく、キャスト法などにより鏡面光沢仕上げされた光沢調のものでもよい。 【0046】本発明のインクジェット記録物は、インクジェット記録用インクにより、画像が形成されている。インクジェット記録用インクは、水に染料や顔料などの着色剤を含有させたものが一般的であり、通常、保湿や浸透調整等のため、更に各種有機溶剤や界面活性剤等が含有されている。インクジェット記録用インクのなかでも、特に顔料インクは、染料インクに比して記録画像の耐光性や耐水性などに優れており、オーバーコート層による画像の物理的・化学的保護効果と相俟って、画像の長期保存が可能となるため、好ましい。カラー画像の場合は、イエロー、マゼンタ、シアンの減法混色の3原色のインク、あるいはこれにブラックその他の色のインクを加えた4色以上のインクが用いられる。 【0047】次に、本発明のインクジェット記録物の製造方法について説明する。本発明のインクジェット記録物の製造方法は、上記記録媒体の上記インク受容層上にインクジェット記録を行った後、上記オーバーコート液を塗布することを特徴とするもので、必要に応じ、該インクジェット記録の前に、該インク受容層上にpH調整剤を塗布する。インク受容層の表面pHが、既にオーバーコート液を適度に増粘させ得る範囲にある場合は、pH調整剤を塗布する必要はない。 【0048】上記pH調整剤としては、水に、適当な酸やアルカリを溶解させたものを用いることができる。例えば、使用する樹脂エマルジョンが、pH7.5で14mPa・sに増粘するアルカリ増粘型である場合、pH調整剤として、適当な濃度の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。そして、該pH調整剤をインク受容層上に塗布し、乾燥させて、記録媒体の表面pHを7.5に調整する。 【0049】上記pH調整剤の塗布方法は、特に制限されず、例えば、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、フレキソグラビアコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、フローティングナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター、ゲートロールコーター、サイズプレス装置等の公知の塗工装置を用いて接触方式で塗布する方法や、スプレーやジェットノズル等を用いて非接触方式で塗布する方法等を採ることができる。 【0050】また、上記オーバーコート液の塗布方法は、特に制限されず、上記pH調整剤の塗布方法と同様の方法を採ることができる。 【0051】ジェットノズルを用いた上記オーバーコート液の塗布(打ち込み)は、インクの打ち込みと同様に、公知のインクジェットプリンタを用いて行うことができる。インクジェット方式には、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式と、画像データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式とがあり、何れの方式でもよいが、細かい打ち込み制御が可能、廃液量が少ない等の点で、オンデマンド方式が好ましい。また、インク吐出制御方式には、圧電素子を用いて電圧により制御する方式や、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、特に制限されない。 【0052】ジェットノズルを用いて上記オーバーコート液を打ち込む場合、1台のインクジェットプリンタを用いて、インクジェット記録及びオーバーコート液の塗布を1パスで行ってもよく、2台のインクジェットプリンタを用いてそれぞれ別個に行ってもよい。前者の場合、インク及びオーバーコート液の吐出制御は、プリンタドライバを適宜プログラミングすることにより行うことができる。 【0053】上記オーバーコート液の塗布量は、オーバーコート層の厚みが上述した範囲になるように調整することが好ましい。好ましい範囲は、固形分換算で1〜15g/m2である。 【0054】尚、上記オーバーコート液は、速乾性に優れており、塗布後速やかに自然乾燥するので、赤外線式加熱装置や熱風加熱装置などの乾燥装置を用いての強制乾燥処理は特に必要ないが、塗布量が多い場合などは、必要に応じ、強制乾燥処理を行うことにより、記録物表面のべたつきやそれによるスタッキングなどを確実に防止することができる。また、オーバーコート層の透明性の向上も期待できる。 【0055】本発明のインクジェット記録物の製造方法は、例えば、次のようにして実施することができる。 【0056】図2は、本実施形態の製造方法の実施に使用するインクジェットプリンタの要部の斜視図である。図2に示すプリンタ10は、紙送りモータ11で駆動されるプラテンローラ12により記録媒体4を矢標A方向に搬送し、キャリッジ13上に搭載された記録ヘッド20が、記録媒体4の被記録面に、インクタンク30から供給される各色インク及びオーバーコート液をそれぞれ吐出した後、これを搬出するようになしてある。キャリッジ13は、キャリッジベルト14を介してキャリッジモータ15に連結されており、ガイドレール16上を摺動して、矢標A方向と直交する矢標B1又はB2方向に往復走査するようになっている。 【0057】図3は、記録ヘッド20のノズル面20aの拡大図である。図3中、21及び26はオーバーコート液を吐出するノズル列であり、22,23,24,25は、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを吐出するノズル列である。 【0058】記録ヘッド20の動作について説明する。矢標B1方向に走査される場合は、先ず、記録媒体4の被記録面に対し、受信した画像データに基づき、ノズル列22,23,24,25より各色インクを打ち込んでインクジェット記録を行い、続いて、ノズル列26よりオーバーコート液をベタ打ちする。矢標B1方向に走査される場合は、ノズル列21は使用しない。記録ヘッド20は、記録領域の矢標B1方向終端に到達し、記録媒体4が矢標A方向に所定量搬送された後、矢標B2方向に走査される。矢標B2方向に走査される場合は、先ず、ノズル列25,24,23,22より各色インクを打ち込んでインクジェット記録を行い、続いて、ノズル列21よりオーバーコート液をベタ打ちする。矢標B2方向に走査される場合は、ノズル列26は使用しない。このような記録ヘッド20の双方向(B1及びB2)走査と、各走査終了時の記録媒体4の搬送とが繰り返されることにより、目的とするインクジェット記録物が得られる。 【0059】尚、本発明のインクジェット記録物の製造方法は、上記記録媒体の上記インク受容層上にインクジェット記録を行った後、上記オーバーコート液を塗布すればよく、使用するインクの数や種類、インクジェットプリンタの具体的構成、インク及びオーバーコート液の打ち込みパターン等は、上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記プリンタ10において、プラテンローラ12の内部や排紙口付近などに、上述した乾燥装置を設けて、オーバーコート液塗布後の強制乾燥処理を行うようにしてもよい。 【0060】また、本発明のインクジェット記録物は、基材の少なくとも片面にインク受容層を設けてなる記録媒体の該インク受容層上に、インクジェット記録を行った後、オーバーコート液を塗布することにより、オーバーコート層が形成されているインクジェット記録物であって、上記オーバーコート液は、上記インク受容層の表面pHにおいて増粘する樹脂エマルジョンを含有し且つ上記インク受容層上に塗布された直後に増粘するものであればよく、前記実施形態に何等制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、インク受容層及びオーバーコート層は、基材の両面にそれぞれ設けてもよい。 【0061】 【実施例】以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。 【0062】(実施例1)前記〔実験〕で調製したオーバーコート液1を用いた。オーバーコート液1の各種データは次の通り。pH6; 粘度1.5mPa・s(液温20℃); pH8に調整したときの粘度30.6mPa・s(液温20℃); 樹脂濃度10重量%【0063】また、記録媒体(「PMマット紙」セイコーエプソン製、表面pH6)のインク受容層の全面に、水酸化ナトリウム10重量%水溶液を、乾燥後の塗布量が2g/m2となるようにバーコートした後、130℃で2分間乾燥して、表面pHを8に調整した。 【0064】上記のようにして表面pHを調整した記録媒体に対して、6色顔料インクジェットプリンタ(「MC2000」セイコーエプソン製)を用いて、各色の100%カラーパッチを印刷した。 【0065】次いで、上記カラーパッチが印刷された上記インク受容層の全面に対して、インクジェットプリンタ(「EM930C」セイコーエプソン製)のシアンインクと上記オーバーコート液1とを入れ替えたものを用いて、シアンOD=1となるベタパターンで該オーバーコート液1を打ち込んだ。尚、オーバーコート液1の打ち込みは、ノズルの目詰まり等のトラブルを起こすことなく、スムーズに行うことができた。このようにして得られたインクジェット記録物を、実施例1のサンプルとした。 【0066】(比較例1)実施例1において、上記オーバーコート液1に代えて、下記組成のオーバーコート液2を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を製造し、これを比較例1のサンプルとした。 【0067】 (オーバーコート液2の組成) ・樹脂エマルジョン「ケミパールS100」三井化学製 10重量%・グリセリン 5重量%・エタノール 5重量%・界面活性剤「オルフィンE1010」日信化学製 0.4重量%・純水 バランス 計100重量%オーバーコート液2の各種データは次の通り。 pH6; 粘度4mPa・s(液温20℃); pH8に調整したときの粘度3mPa・s(液温20℃); 樹脂濃度10重量%【0068】(比較例2)実施例1において、表面pH未調整の記録媒体(PMマット紙)を使用した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録物を製造し、これを比較例2のサンプルとした。 【0069】このようにして得られた実施例1及び比較例1〜2の上記各サンプルのオーバーコート層について、前記(光沢付与効果の評価試験)に従い、光沢付与効果を評価した。その結果を下記表2に示す。 【0070】 【表2】
【0071】 【発明の効果】本発明のインクジェット記録物は、オーバーコート液をインク受容層に塗布した直後に増粘させてオーバーコート層が形成されているので、記録面の平滑性及び光沢感に優れている。また、オーバーコート層の作用により、耐光性、耐水性、耐ガス性、耐擦性等にも優れており、長期保存が可能である。また、その製造時において、ジェットノズルなどを用いて非接触でオーバーコート液を塗布しても、ノズルの目詰まりなどを起こすおそれがなく、簡易な工程で比較的安価に製造することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002369 【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿2丁目4番1号
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| 【出願日】 |
平成14年3月19日(2002.3.19) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095728 【弁理士】 【氏名又は名称】上柳 雅誉 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−266915(P2003−266915A) |
| 【公開日】 |
平成15年9月25日(2003.9.25) |
| 【出願番号】 |
特願2002−77332(P2002−77332) |
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