| 【発明の名称】 |
インクジェット記録媒体およびインクジェット記録方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】宮林 利行 【住所又は居所】長野県諏訪市大和3丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】印字濃度および発色性に優れ、かつインクの滲み防止性能が高く、高品位の画像印刷が可能で、しかも、製造工程の削減によって生産性を向上させ得るインクジェット記録媒体およびインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】インクジェット記録方法として“アニオン性顔料インクの使用”を前提とするインクジェット用記録紙であって、その表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位(好ましくは5〜15mV範囲の正電位)に調整したインクジェット記録媒体。この記録媒体にアニオン性顔料インクを用いて記録するインクジェット記録方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 原料パルプとカチオン性基を有する化合物とを主材とした紙料からシート状に形成され、該表面がアニオン性顔料インクを用いたインクジェット記録面となるインクジェット記録媒体であって、前記表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整してなることを特徴とするインクジェット記録媒体。 【請求項2】 前記カチオン性基を有する化合物の添加量を調整することで、前記表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整してなる請求項1に記載のインクジェット記録媒体。 【請求項3】 前記ゼータ電位を0.1〜50mVの正電位に調整してなる請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録媒体。 【請求項4】 前記ゼータ電位を5〜15mVの正電位に調整してなる請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録媒体。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体にアニオン性顔料インクを用いて記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット記録媒体およびインクジェット記録方法に関し、さらに詳しくは、アニオン性顔料インクを用いたインクジェット記録方法によって印刷した場合に、印字濃度や発色性などの画像品質に優れた特性を有するインクジェット記録媒体およびインクジェット記録方法に関する。 【0002】 【従来の技術】インクジェット記録方法は、例えば紙等によるシート状の記録媒体の表面に、インクの小滴(以下“インク滴”と呼ぶ)を発射・着弾させることで、文字や画像の記録を行う印刷方法である。この印刷方法は、インク滴の粒径の微細化や、着弾位置のコントロールの高精度化によって、高解像度化や高品位化が急速に進み、近年では、銀塩写真等と同等以上の高品位のカラー画像を安価且つ高速に印刷処理できる印刷方法として、注目されている。 【0003】インクジェット記録方法に用いるインクとしては、彩度や色再現性等の画像品質上での性能を制御し易いという点、更には、印刷ヘッド等における目詰まりの防止等によりインクジェット記録における動作信頼性を確保し易いという点で、着色剤として水溶性染料を用いた染料インクが主流であった。しかしながら、水溶性染料を用いた染料インクによる印刷物は、染料インクの特性上、耐水性や耐光性,耐ガス性を向上させることが難しいという問題があった。そのため、最近では、耐水性や耐光性,耐ガス性に優れる顔料を着色剤として使用した顔料インクに主流が移りつつある。 【0004】ところで、当初、顔料を用いたインクの多くは、主に浸透性を抑えることで、記録紙表面に対するインクの濡れを抑え、それによって記録紙の表面近くにインク滴を留めて印字品質を確保していた。しかし、上記方法では、紙種に依存して適応性が低いという問題が生ずることがあった。すなわち、一般市場には、インクジェット記録が可能な記録紙として、普通紙や再生紙など多種の記録紙が市販されている。そして、これら多種の記録紙は、成分組成の相違等に起因して多様な吸水特性を示す。そのため、浸透性を抑えた顔料インクを使用しても、紙種の違いによる滲み等に差異が生じ、安定した画像を得ることが難しいという問題があった。また、上記顔料インクでは、浸透性が抑えられているため、印刷した箇所(インク滴の着弾箇所)の乾燥に時間がかかり、特に、カラー印刷等の多色印刷では、インクが乾燥するまでの間に隣り合った色同士が混色して、画像のぼけや発色不良という不都合が発生する虞があった。 【0005】上記のような問題点を解決するために、“顔料インクの溶媒の紙への浸透性”を向上させることを意図して、浸透剤の添加が試みられている。例えば、グリコールエーテル類やアセチレングリコール系の界面活性剤などを浸透剤として添加して、浸透性を向上させる改善がなされている。 【0006】また、上記のように浸透性の向上を図ると同時に、界面活性剤や高分子分散剤などの分散剤を用いて顔料分子の分散性を向上させた顔料インクや、あるいは、転相乳化法または酸析法によって顔料粒子を高分子化合物で被覆した顔料粒子を用いた顔料インクが提案されており、実用化されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように改善が施された顔料インクを使用しても、例えばインクジェット記録を行う記録紙が普通紙や再生紙の場合では、所望の印字濃度が得られず、発色も良くないという問題を有していた。 【0008】これらの問題を解決するために、インクジェット記録専用の記録紙も、多数のメーカから開発されている。しかしながら、従来の専用の記録紙は、基材(支持体層)の表面に、インクジェット記録用のインク吸収層を積層形成した構成である。そして、このインク吸収層は、印字濃度や発色性などを向上させ、高品質の画像を得るために、インク吸収性や耐水性,カール防止等をコントロールする各種の配合剤を高精度に成分調整した構造であって、例えば基材(支持体層)の表面にコーティングする形式で形成するため、コーティングを必要としない普通紙を製造する場合と比較すると、インク吸収層の形成のための製造工程が増えて生産性の向上が難しいという問題があった。 【0009】本発明は、前述した問題点に鑑み成されたものであって、その目的は、顔料インク、特に、アニオン性顔料インクを用いて印刷した場合に、印字濃度や発色性に優れ、かつ滲み発生の少ないインクジェット記録媒体およびインクジェット記録方法を提供することにあり、しかも、表面にインク吸収層をコーティングする従来のインクジェット専用記録紙と比較して、製造工程を低減して生産性を向上させることのできるインクジェット記録媒体およびインクジェット記録方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェット記録媒体は、請求項1に記載したように、原料パルプとカチオン性基を有する化合物とを主材とした紙料からシート状に形成され、該表面がアニオン性顔料インクを用いたインクジェット記録面となるインクジェット記録媒体であって、前記表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整してなることを特徴とする。そして、この“pH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整したインクジェット記録媒体”に、アニオン性顔料インクを用いたインクジェット記録方法によって印刷することにより、印字濃度および発色性に優れ、かつ滲み発生の少ない特性を有し、高画像品質の印刷が可能となる。 【0011】また、本発明に係るインクジェット記録媒体は、請求項2に記載したように、前記カチオン性基を有する化合物の添加量を調整することで、前記表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整することを特徴とする。このように、カチオン性基を有する化合物の添加量を調整することにより、容易に正電位を具備するように調整することができ、普通紙等と同等の単純な構造で済むため、インク吸収層を形成したインクジェット専用記録紙と比較すると、記録媒体の生産性を向上させることもできる。 【0012】さらに、本発明に係るインクジェット記録媒体は、前記ゼータ電位を0.1〜50mV(請求項3)、より好ましくは5〜15mV(請求項4)の範囲の正電位に調整することで、より高い印字濃度と、優れた発色性と、優れたインクの滲み防止性能とを安定して発揮でき、また、印刷後に記録媒体に大きなカールが生じることも防止することができる。 【0013】一方、本発明に係るインクジェット記録方法は、請求項5に記載したように、前記請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録媒体にアニオン性顔料インクを用いて記録することを特徴とする。このように、インクジェット記録方法において、“pH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整したインクジェット記録媒体”と“アニオン性顔料インクを用いる”こととを組み合わせることにより、印字濃度および発色性に優れ、かつ滲み発生の少ない、高画像品質の印刷ができる特性を有する。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明するが、それに先立って、本発明について更に詳細に説明する。 【0015】本発明者は、インクジェット記録方法によって、アニオン性顔料インクを用いて普通紙や再生紙に印刷した場合に、これらの紙表面のゼータ電位が印刷濃度および発色性に関与するとの知見を得て、本発明を完成した。詳しくは、特定のpH範囲にあるアニオン性顔料インクで、記録紙表面のゼータ電位を特定の範囲に調節した“セルロースを主成分とする記録紙”に印刷することによって、印字濃度や発色性に優れ、かつ、滲みの少ない高品位の画像を実現できるとの知見を得て、本発明を完成した。すなわち、本発明は、特定のpH範囲にあるアニオン性顔料インクを使用することを前提としたインクジェット記録方法において、表面のゼータ電位を特定の範囲に調節した“セルロースを主成分とする記録媒体”に関するものであって、その技術的構成(発明を特定する事項)としては、前記したとおり、「原料パルプとカチオン性基を有する化合物とを主材とした紙料からシート状に形成され、該表面がアニオン性顔料インクを用いたインクジェット記録面となるインクジェット記録媒体であって、前記表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整してなること」を特徴とする。 【0016】以下、本発明の実施の形態について説明すると、本発明に係るインクジェット記録媒体は、アニオン性インクジェット記録用顔料インク用として好適に用いられる。このアニオン性インクジェット記録用顔料インクはpHが7〜9である。従って、本発明に係るインクジェット記録媒体は、このpH範囲(pH7〜9)でのその表面でのゼータ電位が“正電位”であって、+0.1〜+50mVであることが好ましく、より好ましくは+5〜+15mVである。本発明に係るインクジェット記録媒体の“pH7〜9でのその表面でのゼータ電位”が+0.1mVより小さい場合は、印字濃度が低く、十分な発色性が得られず、一方、+50mVを超えると、記録媒体の弾性力が消失し、印刷後の記録媒体に大きなカールを招くなどの弊害が生じる恐れがあるため好ましくない。 【0017】本発明に係るインクジェット記録媒体は、具体的には、中性抄紙(neutral papermaking)を基準とするものであって、pH7〜9の中性域で製造するものである。中性抄紙(neutral papermaking)は、アルカリ抄紙とも言われ、中性サイズ剤及び定着剤として“カチオン系ポリマー,デンプン等”を使用し、抄紙工程における原料系がpH7以上に調整された抄紙である。 【0018】本発明に係るインクジェット記録媒体に用いる原料パルプとしては、通常の普通紙に用いられる、LBKP,NBKP等の化学パルプ、GP,PGW,RMP,TMP,CTMP,CMP,CGP等の機械パルプ、または、DIP等の古紙パルプ、あるいは、NBSPやLBSPの他、ワラ,木綿,ケナフ等の非木材パルプなどを使用することができる。 【0019】本発明に係るインクジェット記録媒体には、中性サイズ剤が好ましく用いられる。中性サイズ剤としては、中性ロジンが挙げられるが、この中性サイズ剤以外でも、アルキルケテンダイマー,アルケニル無水コハク酸,ロジンエステル系サイズ剤,スチレン系高分子サイズ剤等のサイズ剤を使用することもできる。 【0020】本発明に係るインクジェット記録媒体には、上記サイズ剤の定着を目的とする定着剤や、紙力の強化を目的とする紙力増強剤,歩留まり向上剤が添加される。これらは「カチオン性基を有する化合物」であり、具体的には、カチオン性基を有する変性澱粉、いわゆるカチオン澱粉や、カチオン性高分子が挙げられる。カチオン澱粉としては、とうもろこし,馬鈴薯,タピオカ,小麦などに由来する澱粉の第三級アミン誘導体、もしくは第四級アンモニウム塩が用いられる。また、カチオン性高分子としては、カチオン性ポリアクリルアミド,ポリエチレンイミン,ポリアミドアミン,ポリアミノ−ポリアミド−エピクロルヒドリン,ポリビニルピリジン及びその四級化物、カチオン性ビニルポリマー及びその四級化物、カチオン化セルロース、カチオン性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。 【0021】本発明においては、pH7〜9での記録媒体表面のゼータ電位が正電位(好ましくは+0.1〜+50mV)となるように、上記「カチオン性基を有する化合物」の添加量を調整することによって、目的とするインクジェット記録媒体を得ることができる。 【0022】本発明に係るインクジェット記録媒体には、更に填料を添加することができる。填料としては、珪酸アルミニウム,珪酸マグネシウム等の珪酸塩、沈降性炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,炭酸バリウム等の炭酸塩、硫酸カルシウム,硫酸アルミニウム,硫酸バリウム等の硫酸塩、二酸化チタン等の酸化物、あるいは、タルク,クレー,カオリン,焼成カオリン、などが挙げられる。これらの填料は、単独でも、あるいは複数種を混合して使用することができる。これらの填料の平均粒子径は、0.1〜5.0μmが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満、あるいは、5.0μmを超える填料を使用すると、十分な不透明性が得られないので、好ましくない。 【0023】本発明に係るインクジェット記録媒体の具体的な製造法の一例を挙げれば、次のとおりである。 ■原紙の作製原料パルプ,炭酸カルシウム,硫酸アルミニウム,中性ロジンサイズ剤,両性澱粉,歩留り向上剤等とから原紙を作製する。 ■サイズプレス用原紙の作製■の原紙のスラリーを抄紙機により所定の坪量かつ水分量の原紙を抄造し、これをサイズプレス用の原紙とする。 ■インクジェット記録媒体の作製カチオン澱粉,カチオン性高分子定着剤,カチオン表面サイズ剤,水等からなるサイズ処理剤でサイズプレスを行って、所定の固形分付着量のインクジェット記録媒体を得る。この際、上記カチオン澱粉,カチオン性高分子定着剤,カチオン表面サイズ剤の各配合量は、pH7〜9での紙表面のゼータ電位が“正電位”となるように調整する。 【0024】本発明において、インクジェット記録媒体の表面のゼータ電位は、流動電位方式によって測定することができる。詳しくは、測定セルに本発明のインクジェット記録媒体をセットして、その測定セルの両端に圧力差をつけて、電解質溶液を流すことによって生じる電荷の偏位から電位差、即ち流動電位を測定し、測定セル両端の圧力差による流動電位の変化率から、インクジェット記録媒体の表面のゼータ電位を求める。なお、流動電位方式によるゼータ電位計としては、アントンパール社からゼータ電位測定装置EKA型が市販されている。 【0025】 【実施例】以下に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例1〜3によって限定されるものではない。 【0026】(実施例1:インクジェット用記録紙Aの作製)NBKPの叩解パルプ100重量部に、平均粒子径1.0μmの沈降性炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP-121)10重量部と、所定量のカチオン性澱粉(王子ナショナル社製;ケイトF)と、アルキルケテンダイマーサイズ剤(日本PMC社製;AS202)0.1重量部とを添加し、さらに水を加えて紙料を調製した。この紙料を、秤量64g/m2となるように手すきによってシートを作製し、乾燥後にカレンダー処理を行って、実施例1のインクジェット用記録紙Aを得た。なお、上記カチオン性澱粉の添加量は、pH7〜9での紙表面のゼータ電位が“+5mV”となるように調製したものである。 【0027】(実施例2:インクジェット用記録紙Bの作製)NBKPの叩解パルプ100重量部に、平均粒子径1.0μmの沈降性炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP-121)10重量部と、所定量のポリエチレンイミン(分子量50000〜60000:関東化学社製)と、アルキルケテンダイマーサイズ剤(荒川化学工業社製;SPK903)0.1重量部とを添加し、さらに水を加えて紙料を調整した。この紙料を、秤量64g/m2となるように手すきによってシートを作製し、乾燥後にカレンダー処理を行って、実施例2のインクジェット用記録紙Bを得た。なお、上記ポリエチレンイミンの添加量は、pH7〜9での記録紙表面のゼータ電位が“+10mV”となるように調整したものである。 【0028】(実施例3:インクジェット用記録紙Cの作製)以下の配合に従って、原紙を作製した。 原紙配合; LBKP(ろ水度;450ml、c.s.f) 100部 炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP-121) 10部 中性ロジンサイズ剤(ハリマ化成社製;NeuSize M-10-45) 0.2部 硫酸アルミニウム 0.05部 両性澱粉(王子ナショナル社製;Cato3210) 8部 歩留り向上剤(ハイモ社製;NR-11LS) 0.02部上記配合の0.3%スラリーを抄幅1300mm,抄紙速度150m/min.で長網抄紙機により坪量62.7g/m2,水分5.0%の原紙を抄造し、これをサイズプレス用の原紙とした。次いで、次の配合でサイズプレスを行い、固形分付着量3.0g/m2のインクジェット記録媒体「実施例3のインクジェット用記録紙C」を得た。 カチオン澱粉(日本NSC社製;CatoSize 270) 所定量 カチオン性高分子定着剤(昭和高分子社製;ポリフィックス 601) 所定量 カチオン表面サイズ剤(BASF社製;バソプラスト 265D) 所定量 水なお、上記カチオン澱粉,カチオン性高分子定着剤,カチオン表面サイズ剤の各配合量は、pH7〜9での紙表面のゼータ電位が“+15mV”となるように調整したものである。 【0029】(比較例:インクジェット用記録紙Dの作製)前記実施例1のインクジェット用記録紙Aの製造工程において、カチオン性澱粉の添加量を、pH7〜9での記録紙表面のゼータ電位が“−5mV”となるように調整した点を除き、実施例1のインクジェット用記録紙Aと同様にして、比較例のインクジェット用記録紙Dを得た。 【0030】前記実施例1〜3および比較例で得られたインクジェット用記録紙A〜Dの「pH7〜9での記録紙表面のゼータ電位」は、ゼータ電位測定装置EKA型(アントンパール社製)を用いて測定した。なお、インクジェット用記録紙A〜Dの表面のpHとゼータ電位との関係を図1に示した。 【0031】<インクジェット用記録紙の評価試験>前記実施例1〜3および比較例で得られたインクジェット用記録紙A〜Dについて、後記する印字濃度,発色性,滲みの各評価試験を行った。 【0032】なお、後記評価試験において、以下に示すアニオン性顔料インクを用いた。着色剤としては、特開平11−43636号公報に記載された方法と同様の方法によって製造した“顔料をポリマーで包含した着色剤”を用いた。以下に、その着色剤の製法を示す。 「アニオン性顔料インクの調製」撹拌機,温度調整器,還流冷却器および滴下漏斗を備えた反応容器に、メチルエチルケトン300重量部を仕込んで、窒素雰囲気下で攪拌しながら75℃まで昇温させた後、予め別の容器で混合しておいたスチレン50重量部、n−ブチルメタクリレート150重量部、ブチルアクリレート70重量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート35重量部、メタクリル酸25重量部、重合開始剤としてのパーチブルO(日本油脂(株)製のtert−ブチルパーオキシオクトエート)6.5重量部の混合液を上記反応容器の滴下漏斗に仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に同温度で15時間反応させて、固形分の酸価が70KOHmg/g,平均分子量が12500(分子量の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる)のカルボキシル基含有ビニル系共重合体のメチルエチルケトン溶液を得た。次に、15重量部のC.I.ピグメントブルー15:3と、上記カルボキシル基含有ビニル系共重合体のメチルエチルケトン溶液15重量部と、ジメチルエタノールアミン0.8重量部と、イオン交換水44.2重量部とを一次混合攪拌後、ビーズミルに投入して分散させた。得られた分散液に水を加えて倍に希釈した後、撹拌機で攪拌しながら、1規定塩酸を加えてpHを3〜5とし、上記カルボキシル基含有ビニル系共重合体を不溶化させ、C.I.ピグメントブルー15:3に固着させることで、カルボキシル基含有ビニル系共重合体で包含されたC.I.ピグメントブルー15:3の分散体を得た。これを吸引濾過した後、水洗して、カルボキシル基含有ビニル系樹脂で包含されたC.I.ピグメントブルー15:3の含水ケーキを得た。この含水ケーキを撹拌機で攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを8.5〜9.5とし、更に1時間攪拌を続けた後、水を加えて、不揮発分が25%となるように調整した後、0.4μmのフィルターで濾過して粗大粒子を除去し、平均粒子径が100nmである着色剤の分散液を得た。 【0033】「印字濃度評価試験」インクジェットプリンターEM−900C(セイコーエプソン社製)に前記アニオン性顔料インクを装填し、インクジェット用記録紙A〜Dにベタ印字を行い、この部分の濃度を分光光度計(グレタグマクベス社製,GRETAG SPM−50)を用いて評価し、得られた結果を次の基準により判定した。その結果を表1に示す。 A:好適,インクのOD値が1.4以上である。 C:不適,インクのOD値が1.3未満である。 「発色性評価試験」インクジェットプリンターEM−900C(セイコーエプソン社製)に前記アニオン性顔料インクを装填し、インクジェット用記録紙A〜Dにベタ印字を行った。これを次の基準により判定した。その結果を表1に示す。 A:良好C:不良「滲み評価試験」インクジェットプリンターPM−760C(セイコーエプソン社製)に前記アニオン性顔料インクを装填し、インクジェット用記録紙A〜Dに該インクを付着させて文字(英文字)を印刷した。この文字の滲みの程度を次の基準により判定した。その結果を表1に示す。 A:滲みの発生個数が240個未満である。 C:滲みの発生個数が500個以上である。 【0034】 【表1】
【0035】表1から明らかなように、表面のゼータ電位が正に設定された実施例1〜3のインクジェット用記録紙A〜Cでは、印字濃度,発色性,滲みの何れも良好な結果が確認できた。これに対して、表面のゼータ電位が負に設定された比較例のインクジェット用記録紙Dでは、印字濃度,発色性,滲みの何れも不良となる結果が確認でき、本発明のゼータ電位の設定が極めて有効であることがわかった。 【0036】 【発明の効果】本発明に係るインクジェット記録媒体は、原料パルプとカチオン性基を有する化合物とを主材とした紙料からシート状に形成され、該表面がアニオン性顔料インクを用いたインクジェット記録面となるインクジェット記録媒体であって、前記表面のpH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整してなることを特徴とし(請求項1)、これによって、印字濃度および発色性に優れ、かつ滲み発生の少ない特性を有し、高画像品質の印刷が可能なインクジェット記録媒体を提供することができる。 【0037】また、本発明に係るインクジェット記録媒体は、前記カチオン性基を有する化合物の添加量を調整することで(請求項2)、前記正電位を具備するように容易に調整することができ、普通紙等と同等の単純な構造で済むため、インク吸収層を形成したインクジェット専用記録紙と比較すると、記録媒体の生産性を向上させることもできる。 【0038】また、本発明に係るインクジェット記録媒体は、前記ゼータ電位を“正の範囲(正電位)”にすることで、印字濃度や発色性を向上させることができるが、この電位が大き過ぎると、印刷後に記録媒体にカールを招く原因となる。しかし、この電位を0.1〜50mV(請求項3)、より好ましくは5〜15mV(請求項4)の範囲の正電位に調整することで、より高い印字濃度と、優れた発色性と、優れたインクの滲み防止性能とを安定して発揮でき、また、印刷後に記録媒体に大きなカールが生じることも防止することができる。 【0039】一方、本発明に係るインクジェット記録方法は、前記本発明に係るインクジェット記録媒体にアニオン性顔料インクを用いて記録することを特徴とする。このように、インクジェット記録方法において、“pH7〜9でのゼータ電位を正電位に調整したインクジェット記録媒体”と“アニオン性顔料インクを用いる”こととを組み合わせることにより、印字濃度および発色性に優れ、かつ滲み発生の少なく、高画像品質の印刷ができる特性を有する。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002369 【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿2丁目4番1号
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| 【出願日】 |
平成14年1月25日(2002.1.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100099195 【弁理士】 【氏名又は名称】宮越 典明
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| 【公開番号】 |
特開2003−211833(P2003−211833A) |
| 【公開日】 |
平成15年7月30日(2003.7.30) |
| 【出願番号】 |
特願2002−17004(P2002−17004) |
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