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【発明の名称】 インクジェット用記録媒体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】藤本 健次

【氏名】岡田 隆雄

【氏名】柳生 理

【要約】 【課題】記録媒体上でのインクの吸収性に優れ、且つ印刷物の画像の鮮明性、耐水性、保存安定性に優れたインクジェット用記録媒体を提供する。

【解決手段】アルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理されたインクジェット用記録媒体である。このようなインクジェット用記録媒体は、塩化アルミニウム水溶液の存在下でアクリルアミド系重合体の原料モノマーを重合し、得られたアルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理することにより製造することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理されたインクジェット用記録媒体。
【請求項2】 アルミニウム含有アクリルアミド系重合体中のアルミニウム含量がAl2O3として1.5〜10.5質量%である請求項1記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項3】 アクリルアミド系重合体がアクリルアミド−マレイン酸共重合体である請求項1または2記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項4】 アクリルアミド−マレイン酸共重合体の粘度平均分子量が20,000〜800,000である請求項1、2または3記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項5】 アクリルアミド−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位が0.1〜20モル%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用記録媒体。
【請求項6】 塩化アルミニウム水溶液の存在下でアクリルアミド系重合体の原料モノマーを重合し、得られたアルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理することを特徴とするインクジェット用記録媒体の製造方法。
【請求項7】 塩化アルミニウム水溶液が塩基性塩化アルミニウム水溶液である請求項6記載のインクジェット用記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクジェット用記録媒体及びその製造方法に関し、特に記録媒体上でのインクの吸収性に優れ、且つ印刷物の画像の鮮明性、耐水性、保存安定性に優れたインクジェット用記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、インクジェットプリンターが高性能化し、印刷精度600dpi以上の高精細出力が一般化するなかで、高速プリント化に対応したインク吸収能を有する記録用媒体が要求されている。また、短期間の屋外展示用として使用できるような印刷体の耐水性、インクの発色性の保持、更には印刷体の質感、耐光性等記録用媒体に対して高度な機能が要求されている。
【0003】このような新たな要求に対し、各種の検討が従来の技術との組み合わせで提案されている。例えば、特開昭60-257286号公報、特開昭61-16884号公報には、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物を紙の抄紙工程で添加する内添法あるいは抄紙表面にコーティングする後処理方法により紙の耐水性を改善する方法が提案されている。しかし、このような方法によって得られる従来の用紙では、インク中の染料、顔料とアルミニウム化合物との反応によって、インクの発色性に問題を生じることがあった。
【0004】また、特公平4-75140号公報は、アミン系のカチオン性有機物質とアルミニウム塩等の2価以上の水溶性金属塩とを併用することにより、記録用媒体の耐水性と耐光性を改善する方法を開示している。しかし、この方法で使用されるアミン系のカチオン性化合物の使用では、耐光性が未だ十分でなく、また保存安定性が悪いという問題がある。更に、特開平9-314985号公報では、アルミナ水和物、キレート化剤、カチオン性物質等を使用することにより、上記と同様に耐水性等を改善する方法を提案しているが、同様な問題が残されている。
【0005】上記のようなカチオン性物質等の影響を抑制するため、表面サイズ剤として紙シートの半乾燥時あるいは乾燥後に、ポリビニルアルコール、酸化デンプン、アクリルアミド系重合体、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等を表面塗布する方法も提案されている。特開平4-263984号公報は、ポリビニルアルコールとアルミニウム等の金属水溶液塩の使用を開示している。
【0006】また、特開2000-309157号公報は、シリカと水溶性アルミニウム化合物によりインクの吸収性を改良する方法を、特開平11-321088号公報は塩基性水酸化アルミニウムを多孔質インク受容層中に保持させる方法を開示している。しかしながら、このような方法では、印刷後の画質は時間の経過と共に劣化を起こすことがあり、満足できるものではない。
【0007】また、特公昭54-38209号公報及び特公昭56-43159号公報は、分子中にカルボキシル基及び/又はスルホン基を有する水溶性重合体とポリ塩化アルミニウムとの混合物からなる製紙用添加剤を開示している。しかし、この製紙用添加剤は、紙力増強やパルプの定着を目的とするものである。
【0008】このように、何れの方法によっても印刷インクの吸収性、印刷物の画像の鮮明性、耐水性、保存安定性の全てに於いて満足できるインクジェット用記録媒体は、未だその実現を見ていないのが現状である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述のような課題を解決すべく、インクの吸収性、印刷体の画像の鮮明性、耐水性、保存安定性の全てに於いて優れるインクジェット用記録媒体について鋭意研究を重ねた結果、以下に詳記する本発明を完成したものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、アルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理されたインクジェット用記録媒体に関する。更に本発明は、塩化アルミニウム水溶液の存在下でアクリルアミド系重合体の原料モノマーを重合し、得られたアルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理することを特徴とするインクジェット用記録媒体の製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施形態】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明のアルミニウム含有アクリルアミド系重合体は、アクリルアミド系重合体と塩化アルミニウムとが水溶液中で反応した構造を有するものである。本発明はこのような重合体をインクジェット用の各種記録媒体に被覆したものである。このようなアクリルアミド系重合体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等を構成単量体とする重合体およびこれら単量体とアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等との共重合体等を挙げることができる。このようなアクリルアミド系重合体のうち、アクリルアミド−マレイン酸共重合体の使用が本発明の効果を最も良く発揮する。また、塩化アルミニウムとしては、塩化アルミニウムの正塩及び塩基正塩が挙げられるが、塩基性塩化アルミニウムの使用が本発明の効果を最も良く発揮する。本発明に使用する塩基性塩化アルミニウムとしては、Al2O3濃度6.0〜12.0質量%、塩基度30〜65%のものが望ましい。
【0012】アルミニウム含有アクリルアミド系重合体中のアルミニウム含量は、アルミニウム化合物とアクリルアミド系重合体の合量中、アルミニウムがAl2O3として1.5〜10.5質量%の範囲である。この場合にアルミニウム含量が1.5質量%を下廻ると、アクリルアミド系重合体中のアルミニウム量が少なくなるため、記録媒体の耐水性が劣るだけでなく、インク印刷後の画像、色調の安定性が低下する。また、アルミニウム含量が10.5質量%を上廻ると、アクリルアミド系重合体中のアルミニウム含量が多きに過ぎ、印刷後の画像の鮮明度が低下することから好ましくない。
【0013】アルミニウム含有アクリルアミド系重合体は、粘度平均分子量15,000〜1500,000の範囲のものが好ましい。本発明者らが最も推奨する重合体は、アクリルアミド−マレイン酸共重合体で、粘度平均分子量が20,000〜800,000の範囲、とりわけ30,000〜500,000の範囲のものが好ましい。この分子量が20,000を下廻ると、重合体の鎖長が短かくなるため、親水性が抑制されず、コーティングされた用紙の耐水性が低下する。また、印刷後の画像の鮮明度も低下する。一方、分子量が800,000を上廻ると、水溶液の粘性が高くなることから、用紙への浸透性が低下する。従って、インクの保持性が低下し画像ムラを起こして滲み現象を生じたり、印刷体の鮮明性、保存安定性が低下する。尚、本発明に於ける粘度平均分子量とは、30℃、1N硝酸ナトリウム水溶液中での極限粘度の測定値からポリアクリルアミドの分子量計算式[η]=3.73×10-4×MW0.66 (但し、MWは分子量を示す)を用い、ポリアクリルアミド換算の粘度平均分子量として表したものである。
【0014】アルミニウム含有アクリルアミド系重合体の粘度に関しては、8,000mPas以下が良く、8,000mPasを上廻ると溶液自体の流動性が低下するため、記録媒体への浸透性が低下しインクの保持性が低下すると共に、印刷表面からのインクの剥離も引き起こす。従って、アルミニウム含有アクリルアミド系重合体の粘度は、好ましくは10〜5,000mPasの範囲である。
【0015】アルミニウム含有アクリルアミド系重合体として、アクリルアミド−マレイン酸共重合体を例にとり更に詳細に説明すると、共重合体中のマレイン酸単位は0.1〜20モル%、特に好ましくは2〜15モル%である。この場合に、マレイン酸単位が0.1モル%を下廻ると、共重合体へのアルミニウムの反応量が減少することで、遊離のアルミニウム量が多くなり、インクの精密な発色が困難となる。一方、マレイン酸単位が20モル%を超えると、共重合体と反応するアルミニウム量が過剰となり、液の粘性が増加するため、コーティング時の塗布性が低下するだけでなく耐水性も低下する。ところで、本発明のアルミニウム含有アクリルアミド系重合体の構造については定かではないが、アクリルアミド系重合体にアルミニウム及び/又は水酸化アルミニウムが配位し、本発明のような効果が発現しているものと推定される。
【0016】本発明のインクジェット用記録媒体、即ちアルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理されたインクジェット用記録媒体は、以下のような方法により製造することができる。その製造方法を塩基性塩化アルミニウムを例にとり説明すると、撹拌機、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応容器に塩基性塩化アルミニウム水溶液を入れる。塩基性塩化アルミニウムの溶液濃度をAl2O3として6.0〜12.0質量%に調整する。次いで、これを約80℃に昇温し、窒素気流下で重合開始剤の過硫酸アンモニウム水溶液を添加した後、イオン交換水と所望濃度のアクリルアミド水溶液とマレイン酸の混合液を同一速度で滴下して重合を開始させる。尚、重合開始剤は間欠的に添加し反応を行う。このような反応を行うことにより、本発明のアルミニウム含有アクリルアミド系重合体溶液を製造することができる。
【0017】次に、このように製造した本発明重合体で、インクジェット用の記録媒体をコーティング即ち、表面処理する。表面処理方法としては、本発明重合体を水あるいは必要に応じて有機溶媒で希釈する。これを一般に使用されている表面処理剤、顔料、抗菌剤、紫外線吸収剤、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン等の充填材料等と混合した後、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーターあるいはスプレー等によりインクジェット用記録媒体上にコーティングする。本発明で使用できるインクジェット用記録媒体としては、例えば紙、塗工紙、不織布、プラスチックフィルム等を挙げることができる。
【0018】
【実施例】以下に本発明の実施例を掲げ更に説明を行うが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、本発明において%は特に断らない限り全て質量%を示す。
【0019】[実施例1]撹拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた1L容反応容器に塩基性塩化アルミニウム水溶液(Al2O3 10%,塩基度50%,多木化学(株)製PAC250A)700gを加え、80℃に加温した。窒素雰囲気下で、40%アクリルアミド水溶液205gとマレイン酸2.5gの混合液及びイオン交換水38gを同時に滴下しながら重合開始剤として5%過硫酸水素アンモニウム水溶液3.2mlを加えた。これらを各々1.5時間を使用して添加した。尚、重合開始剤については、0.5時間間隔で各2ml、計6mlを添加した。また、重合は80℃で行った。3時間の重合を行うことにより、カルボキシル基含量3.7モル%、Al2O3 7%のアルミニウム含有アクリルアミド系重合体溶液を得た。この溶液の粘度は25℃で190mPasであった。また、生成した共重合体の0.5%水溶液をメタノール中で析出させ、室温で真空乾燥させたものの粘度平均分子量は120,000であった。
【0020】[実施例2]実施例1と同様に、塩基性塩化アルミニウム水溶液(Al2O3 10%,塩基度50%,多木化学(株)製PAC250A)350g、40%アクリルアミド水溶液205gとマレイン酸1gの混合液及びイオン交換水155gを同時に滴下しながら、5%過硫酸水素アンモニウム水溶液を3.2ml加えた。これらを各々1.5時間を使用して添加した。尚、重合開始剤については、0.5時間間隔で各2ml、計6mlを添加した。また、重合は65℃で行った。3時間の重合を行うことにより、カルボキシル基含量1.5モル%、Al2O3 3.5%のアルミニウム含有アクリルアミド系重合体溶液を得た。この溶液の粘度は25℃で950mPasであり、精製後の重合体の粘度平均分子量は600,000であった。
【0021】合成紙 Melinex339(帝人テ゛ュホ゜ンフィルム社製)に、実施例1及び2で得たアルミニウム含有アクリルアミド系重合体溶液を、ブレードコーターによりコーティングした後、これを70℃で7分間通風乾燥を行った。尚、これらの溶液のコーティング量は0.5g/m2であった。この記録媒体にインクジェットプリンター(セイコーエフ゜ソン(株)製,PM770C)でカラー印刷し、印刷体の鮮明性を比較した。また、印刷された記録媒体を25℃の水中に1分間浸漬し、その耐水性を調査した。尚、上記合成紙に重合体溶液をコーティングしない無処理の用紙に同様にカラー印刷を行い(無処理)、同様に印刷体の鮮明性と耐水性を比較した。結果を表1に示した。
【0022】
【表1】

【0023】
【発明の効果】本発明のアルミニウム含有アクリルアミド系重合体で表面処理されたインクジェット用記録媒体は、配位結合と推定されるアルミニウムの作用により優れた耐水性を有すると共に、共重合体の親水性官能基であるカルボキシル基及びアミド基の配位構造によりインク溶媒に対する膨潤性が抑制され、印刷体の鮮明性、保存安定性が向上する。従って、本発明のインクジェット用記録媒体は、インクの吸収性、印刷物の高印刷品質、画像の鮮明性、耐水性、保存安定性、高品質画像の再現性等に於いて優れた効果を発揮する。
【出願人】 【識別番号】000203656
【氏名又は名称】多木化学株式会社
【出願日】 平成14年1月17日(2002.1.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−211823(P2003−211823A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−8461(P2002−8461)