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【発明の名称】 グラビア印刷方法及びこの方法により作成された印刷物
【発明者】 【氏名】川島 大幸
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号 東洋インキ製造株式会社内

【氏名】大谷 浩二
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号 東洋インキ製造株式会社内

【要約】 【課題】本発明は、水性グラビアインキを用いて、版かぶり性、ライト部の着肉性(ドットスキップ)、網点形状(ドーナツ現象)が優れ、高い作業効率や経済性を有するグラビア印刷方法を提供する。

【解決手段】ゴム硬度75から90Hsの圧胴、刃先の厚みが50から70μmのセラミックメッキドクターブレード、クロム硬度950から1100Hvの版(グラビアシリンダー)、および水性グラビアインキを用いて印刷物を作成するグラビア印刷方法。水性グラビアインキとして、多くとも黄、紅、藍、墨、赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白の基本8色と透明黄、金、銀、および色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)を含む12色ベースインキを用意し、印刷原稿に応じて必要なベースインキの色の掛け合せで行う、又は該基本8色のベースインキのうち必要なインキを混合して作成した1色以上の特色インキを用いて行うグラビア印刷方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴム硬度75から90Hsの圧胴、刃先の厚みが50から70μmのセラミックメッキドクターブレード、クロム硬度950から1100Hvの版、および水性グラビアインキを用いて印刷物を作成するグラビア印刷方法。
【請求項2】 印刷直前にポリオレフィン系フィルムの印刷面をコロナ処理機またはプラズマ処理機により表面処理したのち行う請求項1記載のグラビア印刷方法。
【請求項3】 水性グラビアインキとして、多くとも黄、紅、藍、墨、赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白の基本8色と透明黄、金、銀、および色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)を含む12色ベースインキを用意し、印刷原稿に応じて必要なベースインキの色の掛け合せで行う、または該基本8色のベースインキのうち必要なインキを混合して作成した1色以上の特色インキを用いて行うグラビア印刷方法。
【請求項4】 請求項1〜3いずれか記載のグラビア印刷方法により作成されたことを特徴とする印刷物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紙やプラスチックフィルム等へ水性グラビアインキを好適に印刷する方法およびこの方法により作成された印刷物に関する。更に詳しくは、水性グラビアインキを用いてグラビア印刷する際に最適な、圧胴、ドクターブレード、版、水性グラビアインキなどを含む印刷システムに関する。
【0002】
【従来の技術】グラビア印刷は、例えば、特開昭52-74403号公報、特公昭55-36512号公報及び特公昭58-48037号に開示されるように、被印刷体に美粧性、機能性を付与させる目的で広く用いられている。近年、例えば、特開2001-1664号公報に開示されるように、印刷インキ業界において有機溶剤による火災発生の危険性の見地からますますグラビアインキの水性化への要望が強まっている。
【0003】図1に概略的に示すように、グラビア印刷は表面に凹状のセル1aが形成された版(グラビアシリンダー)1にグラビアインキ2を供給し、ドクターブレード3により版(グラビアシリンダー)1表面の余分なグラビアインキ2を掻き落とした後、紙やプラスチック等の被印刷体4をゴム表面の圧胴5により版(グラビアシリンダー)1表面に押し付けてセル1a内のインキ2aを被印刷体4表面上に転移させて印刷を行うものである。しかしながら、従来の水性グラビアインキを用いた印刷においては、溶剤型印刷インキと比較してドクターブレード3や版(グラビアシリンダー)1の摩耗が進むと、版(グラビアシリンダー)1表面の余分な印刷インキ2を充分に掻き落とせず、被印刷体である紙やフィルムの印刷インキが本来転移してはならない余白部分(非画線部)に印刷インキが付着してしまう版かぶり性という印刷不良が発生する問題点があった。また、版(グラビアシリンダー)1の摩耗が進むと、グラビアインキ2の転移量が低下し本来の印刷濃度が得られないという印刷不良が発生する問題点もあった。
【0004】水性グラビアインキは、溶剤型インキと比較して、版の低版深部(ライト部)において凹状のセルからインキが抜けにくく、網点の欠損(インキの未転移部分)、いわゆるドットスキップが発生しやすいという問題点があった。また、ポリオレフィン系フィルムに印刷する場合、網点が均一に形成されず、中央部分にヌケが生じるいわゆるドーナツ現象が出て印刷物の品質が劣るという問題があった。
【0005】また、プラスチックフィルムへグラビア印刷を行う場合、プラスチックフィルムの熱による伸びを防ぐため、乾燥温度は40から80℃程度であることが一般的である。該乾燥温度は水の沸点以下のため、溶剤型インキを通常使用している一般のグラビア印刷機で水性グラビアインキを十分乾燥させるには印刷速度を低下させなければならず、単位時間当たりの生産量が少なくなる。即ち、トータルコストを溶剤型インキと比較した場合、水性グラビアインキはコストアップになるという問題点があった。
【0006】さらに、従来のグラビア印刷に使用するグラビアインキは、黄、紅、藍、墨の4色のインキを使用してこれらの4色のプロセス印刷により写真部分等を印刷するが、原稿によりコーポレイト・カラー又はデザイナー・カラーとも呼ばれる特に高彩度色を必要とする色の場合は、特練した特色(又は指定色)インキを使用していた。しかし、原稿毎に必要とする特色インキが異なるため、特色インキの数は非常に多くなり、管理及び在庫維持が煩わしかった。このため、特開2001-260516号公報に開示されるように、黄、紅、藍、墨の4色に橙、緑、紫を加えた7色インキを使用をして、特色(又は指定色)インキもこれらの7色の中のインキの組合せ用いてプロセス印刷して印刷することにより、インキの管理及び維持を簡単にすることが提案されている。
【0007】しかし、上記の7色インキの構成では、これらのインキの組合せのプロセス印刷により、高彩度の金や銀の色を印刷することは困難であるという問題点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来技術に基づく既存の水性グラビアインキを用いた印刷方法では解決し得なかった前記の欠点を解決することである。即ち、水性グラビアインキを用いて、版かぶり性、ライト部の着肉性(ドットスキップ)、網点形状(ドーナツ現象)が優れ、高い作業効率や経済性を有するグラビア印刷方法およびこの方法により作成された印刷物を提供することにある。
【0009】また、本発明の目的は、在庫管理が容易なインキの組合せにより、高彩度の金や銀も含む高彩度色の印刷が可能なグラビアインキの組合せを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の如き従来の問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ゴム硬度75から90Hsの圧胴、刃先の厚みが50から70μmのセラミックメッキドクターブレード、クロム硬度950から1100Hvの版(グラビアシリンダー)、および水性グラビアインキを用いて印刷物を作成すると、版かぶり性、ライト部の着肉性(ドットスキップ)、網点形状(ドーナツ現象)が従来より大幅に向上し、更にはインキの使用効率が向上しトータルとしての経済性を大幅に高めることができることを見出し、本発明に至った。
【0011】すなわち、本発明の第1の発明は、ゴム硬度75から90Hsの圧胴、刃先の厚みが50から70μmのセラミックメッキドクターブレード、クロム硬度950から1100Hvの版(グラビアシリンダー)、および水性グラビアインキを用いて印刷物を作成するグラビア印刷方法である。
【0012】第2の発明は、印刷直前にポリオレフィン系フィルムの印刷面をコロナ処理機またはプラズマ処理機により表面処理したのち行う請求項1記載のグラビア印刷方法である。
【0013】第3の発明は、水性グラビアインキとして、多くとも黄、紅、藍、墨、赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白の基本8色と透明黄、金、銀、および色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)を含む12色ベースインキを用意し、印刷原稿に応じて必要なベースインキの色の掛け合せで行う、または該基本8色のベースインキのうち必要なインキを混合して作成した1色以上の特色インキを用いて行うグラビア印刷方法である。
【0014】第4の発明は、第1〜第3の発明いずれか記載のグラビア印刷方法により作成されたことを特徴とする印刷物である。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明の水性グラビアインキ印刷方法について詳細に説明する。本発明に用いられる例えば図1に示されるような圧胴5は、ゴム硬度75から90Hsである。ゴム硬度の測定方法は、JISZ2246ショア硬度試験方法に規定されおり、簡易的にはJISスプリング式硬さ試験機A型(JISK6301)を用いて測定され、ショア硬度Hsとして表記される。ゴム硬度が75Hsより小さいとドットスキップなど網点の抜けが発生し、90Hsより大きいと中央部分の圧ヌケがおこり正常に印圧がかかりにくくなる。ゴム硬度が85から90Hsの圧胴5の場合、該圧ヌケを防止するのため、圧胴5は完全な円筒形状ではなく、やや凸状のいわゆるクラウン形状としたほうが好ましい。クラウン形状の程度は、印刷速度や印圧(圧胴にかけられる荷重)などにより適宜決定される。
【0016】圧胴ゴムの材質としては、一般の印刷機に使用されているものでよく、例えばブチルゴムやNBR(ニトリルブタジエンゴム)、EPT(エチレンプロピレン共重合ゴム)、シリコンゴム、天然ゴムなどを挙げることができる。圧胴を版に押し当てる力(印圧)は、圧胴の硬度・材質、印刷速度、被印刷体の種類などにより適宜調整されるが、ドットスキップなど網点の抜けが発生し易い場合、高めに設定することが好ましい。
【0017】また、水性グラビアインキは溶剤型インキと比較しいわゆる圧胴汚れが劣るため、インキが圧胴に付着し難くするため、圧胴の表面を撥水性にしておくと好ましい。例えば、テフロン(登録商標)やフッ素コートなどを表面に施すことができる。
【0018】図2Aに概略的に示されるように、本発明に用いられるセラミックメッキドクター3の刃先3aの厚みは、50から70μmである。刃先3aの厚みが50μmより薄いと耐久性などが劣り、70μmより厚いと版かぶり性などが劣る。該セラミックメッキドクター3は、スチールなどの母材31の上下にセラミック層32を有するものであり、プラズマジェットによる溶射法、プラズマなどによるCVD法などの方法により製造されるが、理論密度80%以上のセラミック33が形成できれば特定するものではない。また、セラミック32と下地金属31の接着性および熱膨張の整合性をとるために、この間に金属や他のセラミックを形成してもよい。母材31およびセラミック層32各々の厚みは特に規定ないが、耐久性から、母材31の厚みが30から60μm、セラミック層32の厚みが5から10μmであることが好ましい。
【0019】セラミック32の材質としては、一般的なセラミックメッキドクターに使用されているものでよく、例えば、Cr23、TiO2、Al23などの酸化物、TiN、Si34、AlNなどの窒化物、CrC、TiC、SiCなどの炭化物などを挙げることができる。母材31の材質としては、一般的に用いられている例えばスチール、炭素鋼、ステンレス鋼などを挙げることができる。セラミック層は、ダイアモンド粒子の研磨紙などを用いて先端部を平滑に仕上げられることが好ましい。このようなセラミックメッキドクターは、富士商興株式会社、日本エスケイ株式会社、東京製作所株式会社などから入手できる。
【0020】セラミックメッキドクターは、刃先が波うたないように限りなく直線になるよう印刷機に装着することが好ましい。また、いわゆるドクター角度は、60度×60度を基準に±10度前後に調整することが好ましい。セラミックドクターの装着は、ドクターホルダーの形状によるが、一般的な背当て板を用いる方法では、図2Bに示すようにドクターホルダー34から背当て板35の出し幅20±5mm、背当て板35からセラミックドクター3の出し幅4±2mmに調整することが好ましい。印刷中に該ドクターを版に押し当てる力(ドクター圧)は、印刷初期において軽めにし、印刷が進むにつれドクター圧を高めていくと、磨耗と版かぶり性の点から有利である。一例として、いわゆるドクター圧1.5kg/cm2で印刷を開始し、その後順次ドクター圧を3.5kg/cm2程度まで挙げていくことが好ましい。また、インキをセットし印刷を行わず版を回転させる状態(いわゆるアイドリング状態)は、ドクター圧を軽めに、例えば1.0kg/cm2以下とするほうが好ましい。
【0021】本発明に用いられる版(グラビアシリンダー)は、表面のクロム硬度が950から1100Hvである。クロム硬度が950Hvより小さいと版の磨耗性や版かぶり性が劣り、1100Hvより大きいものを工業的に製造するのは困難である。クロム硬度は一般的にビッカース硬度Hvで表記され、試験方法としてJISZ2244ビッカース試験方法、試験機としてJISB7725ビッカース試験機に示されている。版(グラビアシリンダー)1の母材11は、例えば図3に示すように一般的にグラビア印刷に用いられているものでよく、例えば鉄やアルミなどを挙げることができる。鉄製の母材11の場合、銅メッキ12された後、印刷画像がエッチングされクロムメッキ13されることにより製造される。クロムメッキ13の厚みは磨耗性の点から厚めのほうが好ましく、例えば9±1μm程度であることが好ましい。
【0022】このように製造された版(グラビアシリンダー)の表面粗さは細かいほうが好ましいが、一例としてRaは0.03μm以下、Rmaxは0.5μm以下であることが版かぶり性の点から好ましい。また、版の円筒度は3/100mm以下、好ましくは1/100mm以下であることが版かぶり点から好ましい。真円度的には限りなく円に近いほうが版かぶり性などの点から好ましい。
【0023】版(グラビアシリンダー)に形成されている凹状のセルの容積および個数は、水性グラビアインキを印刷する場合インキの転移量を少なくする、すなわち水の転移量を少なくして印刷速度を確保する点、および画像に求められる色濃度のバランスから決定することが好ましい。版(グラビアシリンダー)の代表的作成方式として彫刻版と腐食版が挙げられる。
【0024】彫刻版のセルの容積は、一般的に凹状にセルを彫刻する際のダイモンド刃の角度(スタイラス角度)と線数(単位長さ当りのセルの個数)によって決まる。スタイラス角度が鋭角である程、版深度は深くセル容積は大きくなる。線数は高線数になるほどセル容積は小さくなる。水性グラビアインキ用の彫刻版は、スタイラス角度が120から130度の場合200から250線/inch、140から150度の場合175線/inchであることが好ましい。
【0025】腐食版のセルの容積は、一般的にセルの間口(線数)および深度によって決まる。高線数で深い版深度にするといわゆる土手部分の欠損が生じ印刷不良となるため、線数が200から250線/inchの場合、版深度は14から20μm、線数が250から350線/inchの場合、版深度は10から16μmであることが好ましい。
【0026】本発明に用いられる水性グラビアインキは、着色剤、樹脂、添加剤、水、必要に応じてアルコール類などの有機溶剤を含むものである。
【0027】着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニンが使用されることが着色力の点から好ましい。透明黄インキにはコスト・耐光性の点から、C.I. Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウムなどが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウムが使用されることがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性及び安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感及び濃度の点から適宜選択される。更にアルミニウムは、水との接触による水素ガス発生を防止又は抑制する処理が施されているものを使用するのが好ましい。顔料はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわち水性グラビアインキにおいて1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。
【0028】樹脂としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用される水溶性または水分散性樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を挙げることができ、これらの樹脂を混合したものでもよい。樹脂の例としては、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタンウレア樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、シェラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−アクリル酸共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチラールなどを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。特にポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル酸共重合樹脂が汎用接着性性や顔料分散性の点から好ましい。
【0029】添加剤としては、顔料分散剤、顔料誘導体、中和剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、シランカップリング剤、防錆剤、防腐剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤などをあげることができる。
【0030】必要に応じて使用されるアルコール類などの有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコーモノメチルエーテル、エチレングリコーモノエチルエーテル、エチレングリコーモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコーモノエチルエーテル、ジエチレングリコーモノイソプロピルエーテルなどを使用することができる。これらの有機溶剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0031】上記インキ用原料を、一般に使用される分散機、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いて水性グラビアインキを製造することができる。該水性グラビアインキの色相としては、使用する着色剤の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。各色相のインキは、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0032】本発明の印刷は、例えば図1に概略的に示されるような、一般的なグラビア印刷機を用いて行われる。グラビア印刷機は、例えば、富士機械工業、東芝機械工業、オリエント工業などの機械メーカーから購入できる。水性グラビアインキの乾燥速度は溶剤型グラビアインキより遅いため、グラビア印刷機の乾燥器は、溶剤型グラビアインキに対応した乾燥器の仕様でも可能であるが、水性グラビアインキを実用的な印刷速度で印刷可能とする仕様であることが好ましい。例えば、一般的な熱風乾燥方式の仕様として、熱風の風量、乾燥器の長さが各々約40から約70m3/分、約1から1.5mであるのに対して、水性グラビアインキ用の仕様としては約70から約250m3/分、約1.5から約3mであることが好ましい。更に、熱風を吹き出すノズル形状としては、いわゆるV型ノズルより多孔版方式のほうが乾燥効率の点から好ましい。また、補助乾燥装置として、近・中・遠赤外線加熱方式、マイクロウェーブや高周波誘導加熱方式などを併用することも可能である。また、印刷機は水性グラビアインキによる錆防止などについての処置をインキが接触または付着する部分に施すことが好ましい。
【0033】また、ポリオレフィン系フィルムを水性グラビアインキで被印刷体(図1の4で示される)として印刷する場合、該フィルムが含有する静電防止剤や滑剤が時間とともにフィルム表面へブリードしたり、コロナ処理の効果が時間とともに失効したりして、中間調のガサツキや網点形状などの印刷効果が劣る場合がある。このような場合、該フィルムでの印刷を安定化させるには、1色目のインキを印刷する前に、該フィルムを約60℃程度の熱風にてプレヒートすることが好ましい。更に好ましくは、コロナ処理機またはプラズマ処理機などを印刷ユニットの前部に装着し、該フィルムの表面処理を行うと水性グラビアインキの濡れ性が向上するため安定した印刷が可能となる。インキの濡れ性が向上するため、細線・細文字、抜き文字などはインキの濡れ広がりを考慮した製版を行うことが好ましい。コロナ処理またはプラズマ処理の強度は、印刷速度やポリオレフィン系フィルムのグレードにより調整することが好ましい。処理度の例としては、40から42dyn/cm程度にすることが好ましい。コロナ処理機またはプラズマ処理機は一般的に用いられるものでよく、春日電機株式会社、巴工業株式会社、株式会社マツボーなどから購入できる。
【0034】版(グラビアシリンダー)を印刷機に装着し回転させたときのフレ(軸真のブレ)は2/100mm以下、好ましくは1/100mm以下であることが印刷画像のズレがおこり難く、版かぶり性などの点で有利である。該フレは一般的なダイヤルゲージにて測定できる。
【0035】本発明の印刷方法を実施する際、使用される版および水性グラビアインキの個数は少ないほうが当然効率的である。該個数は印刷原稿をスキャナーなどで色分解した際、何色で色を再現できるかに依存している。印刷原稿は、一般的に写真部分とコーポレートカラーやデザイナーなどが色を指定する特色部分からなっている。写真部分は通常黄、紅、藍のプロセス3原色と必要に応じて墨に分色・分版され、3色または4色の掛け合わせにより再現される。特色部分は、黄、紅、藍、墨の4色いずれかの掛け合わせで再現できれば写真部分に使用される版に特色部分を入れ込めば印刷可能となるが、該4色いずれかの掛け合せで色再現できない場合、特色部分に対応する専用の色インキを製造または既存インキを混合するなどにより作成しその専用の版を用いる方法か、またはプロセスガマット外色として赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫の3色、および再現しようとする特色がクリームなどのような薄い色いわゆるチント色の場合は白を追加し、7または8色とし、黄、紅、藍、墨、赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白のうちいずれかの掛け合わせで再現する方法を行うことになる。即ち、写真や特色部分などを含む印刷は、■黄、紅、藍、墨の4色いずれかを掛け合わせる方法、■黄、紅、藍、墨の4色のいずれかを掛け合わせるのと一色以上の特色を用いる方法、■黄、紅、藍、墨および赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白の8色いずれかを掛け合わせる方法などを適宜選択することにより行なわれる。一般的に色の再現範囲は■<■<■、印刷の安定性は■<■<■の順で優れる傾向である。
【0036】特色部分を掛け合わせで色再現する■または■の方法を用いる場合、裏押さえの白ベタ部などを除き、特色を再現する色の掛け合わせ個数は3つ以下とすることが好ましい。4つ以上の色を重ね合わせると網点のズレにより色が変化し易く、印刷の安定性が劣る。更に、■または■の方法を用いる場合、版の線数は高線数、例えば250cm/inch以上にしたほうが網点のズレによる不良が出にくく好ましい。
【0037】■または■の色を掛け合わせる方法か、■の特色インキを使用する方法のいずれかを選択するのは、特色部分を色分解した際、使用される色の網点パーセントが20%以下となる場合、インキの転移性が劣りドットスキップなどが発生し易くなるため、■の方法を選択し網点パーセントを20%以上とするほうが色を再現する際の安定性の点から好ましい。また、特色に対応するインキを混合して作成する場合、黄、紅、藍、墨、赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白の8色のうちいずれかの組合せで作成し、その他の色インキを使用しないほうがインキの在庫を少なくし使用頻度を高めることから好ましい。
【0038】グラビア印刷を行う場合、同系色の色違いなどを含めると一つのインキシリーズで25から35色のベースインキを揃えることがあるが、効率的な水性グラビアインキの色に関するセットとしては、黄、紅、藍、墨、赤(ないしは橙)、草(ないしは緑)、紫、白の8色と、金、銀、アルミ蒸着フィルム(VMフィルム)とのラミネートで金効果に有用な透明黄、および色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)をいれた12色のベースインキを用意し、その中で■、■のような印刷時に色を掛け合わせる方法や■の混合による方法で印刷していくことがインキの在庫(色数)を少なくしインキの使用頻度を高める点から好ましく、トータルコストの低減に繋がる。
【0039】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。評価結果は表1に示した。
【0040】[実施例1]NBR(ニトリルブタジエンゴム)製のゴム硬度80Hsの圧胴、刃先の厚みが60μm(母材の厚み40μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレード、東洋プリプレス株式会社製のクロム硬度1050Hvの電子彫刻版(スタイラス角度120度、色インキ用:250線/inch、白インキ用:200線/inch)、および東洋インキ製造株式会社製軟包装用水性グラビアインキ「アクワエコール」の墨、藍、紅、黄、白インキに水/イソプロピルアルコール=1/1の混合溶剤を加えて離合社製ザーンカップ#3で16秒になるように粘度調整したものを富士機械工業株式会社製グラビア印刷機にセットしドクター圧2kg/cm2、100m/分の回転速度で版を60分間空転した後に、片面コロナ処理OPPフィルム「パイレンP2161(東洋紡績株式会社製)」のコロナ処理面に、印刷速度100m/分で印圧2kg/cm2で印刷、60℃の熱風で乾燥し、印刷物を得た。
【0041】印刷物の版かぶり性、ライト部の着肉性(ドットスキップ)、網点形状(ドーナツ現象)を以下に示すように評価した。
【0042】版かぶり性;印刷物を黒色の紙の上に貼り、余白部分(非画線部)に付着したインキの量を以下の基準で目視評価した。
【0043】
5:非画像部にインキの転移が全く認められなかった。
4:非画像部にインキの転移が僅かに認められた。
3:非画像部の小面積にインキの転移が認められた。
2:非画像部の大面積にインキの転移が認められた。
1:非画像部全面にインキの転移が認められた。
【0044】ライト部の着肉性(ドットスキップ);印刷物を白色の紙の上に貼り、網点5パーセント部分における網点の欠損(ドットスキップ)を以下の基準で目視評価した。
【0045】
5:網点の欠損が、全く認められなかった。
4:網点の欠損が、20%未満認められた。
3:網点の欠損が、20%以上40%未満に認められた。
2:網点の欠損が、40%以上60%未満に認められた。
1:網点の欠損が、60%以上に認められた。
【0046】網点形状(ドーナツ現象);印刷物を白色の紙の上に貼り、網点60パーセント部分における網点形状(ドーナツ現象)を以下の基準で目視評価した。
【0047】
5:中央部分にヌケを生じた網点は、全く認められなかった。
4:中央部分にヌケを生じた網点が、単位面積当り20%未満認められた。
3:中央部分にヌケを生じた網点が、単位面積当り20%以上40%未満認められた。
2:中央部分にヌケを生じた網点が、単位面積当り40%以上60%未満認められた。
1:中央部分にヌケを生じた網点が、単位面積当り60%以上認められた。
【0048】[実施例2]ゴム硬度が90Hsの圧胴、クロム硬度950Hvの電子彫刻版を用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0049】[実施例3]刃先の厚みが50μm(母材の厚み34μm、片側セラミック層の厚み8μm)のセラミックメッキドクターブレードを用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0050】[実施例4]刃先の厚みが70μm(母材の厚み50μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレードを用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0051】[実施例5]実施例1の方法で印刷する際、第一ユニットで水性グラビアインキを印刷する直前に、該OPPフィルムのコロナ処理面をコロナ処理機で表面処理した以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0052】(比較例1)ゴム硬度が70Hsの圧胴を用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0053】(比較例2)刃先の厚みが80μm(母材の厚み60μm、片側セラミック層の厚み10μm)のセラミックメッキドクターブレードを用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0054】(比較例3)クロム硬度が900Hvの電子彫刻版を用いた以外、その他の条件は実施例4と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0055】(比較例4)ゴム硬度が95Hsの圧胴を用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0056】(比較例5)刃先の厚みが40μm(母材の厚み24μm、片側セラミック層の厚み8μm)のセラミックメッキドクターブレードを用いた以外、その他の条件は実施例1と同じとして印刷物を作成し、評価した。
【0057】
【表1】

【0058】
【発明の効果】本発明の水性グラビアインキ印刷方法は、従来の印刷方法に比べて版かぶり性、ライト部の着肉性(ドットスキップ)、網点形状(ドーナツ現象)に優れるので高品質の印刷物を提供でき、限られたインキ・版で印刷を行うので高い作業効率や経済性を有するので、その工業的価値は極めて多大である。
【出願人】 【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキ製造株式会社
【住所又は居所】東京都中央区京橋2丁目3番13号
【出願日】 平成14年1月21日(2002.1.21)
【代理人】 【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔 (外9名)
【公開番号】 特開2003−211814(P2003−211814A)
【公開日】 平成15年7月30日(2003.7.30)
【出願番号】 特願2002−11210(P2002−11210)