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【発明の名称】 光記録媒体及びその製造方法
【発明者】 【氏名】大石 卓生
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式会社リコー内

【要約】 【課題】高感度であり、かつ幅広い記録速度に対して対応が可能な光記録媒体とその製造方法を提供する。

【解決手段】透明基板上に少なくとも記録層、反射層、保護層を有する光記録媒体において、記録層が下記熱分解特性を有する有機色素材料を主成分として構成される光記録媒体を最も主要な特徴とする。熱天秤で熱重量を測定したときの、第1の熱分解点における分解開始温度がT1s、分解終了温度がT1eであり、また第2の熱分解点における分解開始温度がT2s、分解終了温度がT2eであるとき、200℃≦T1s≦350℃であり、且つ300℃≧T2s−T1e≧100℃である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明基板上に少なくとも記録層、反射層、保護層を有する光記録媒体において、記録層が下記熱分解特性を有する有機色素材料を主成分として構成されることを特徴とする光記録媒体。
熱分解特性:200℃≦T1s≦350℃、且つ300℃≧T2s−T1e≧100℃(熱天秤で熱重量を測定したときの第1の熱分解点における分解開始温度T1s、分解終了温度T1e、第2の熱分解点における分解開始温度T2s、分解終了温度T2e)
【請求項2】 第1の熱分解点における分解速度D1が0.50%/℃≦D1≦10.0%/℃であることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。(ここでD1=(T1s時の重量−T1e時の重量)/T1s時の重量×100/(T1e−T1s)である。)
【請求項3】 第1の分解終了温度T1eから第2の分解開始温度T2sまでの分解速度D2が0.0%≦D2≦0.20%/℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。(ここでD2=(T1e時の重量−T2s時の重量)/T1e時の重量×100/(T2s−T1e)である。)
【請求項4】 有機色素材料が下記一般式(1)で示されるフタロシアニン系化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光記録媒体。
【化1】

((1)式においてM及びA1〜A8はそれぞれ以下にものを表す。
M;2価の金属原子、置換3価1置換金属原子、4価2置換金属原子またはオキシ金属。
A1とA2;A3とA4;A5とA6;A7とA8;それぞれどちらか一方は独立にアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルチオ基、フェニルチオ基ならびにそれらの置換体を表し、他方はハロゲンまたはニトロ基、CN基または水素原子を表す。)
【請求項5】 表面に情報ピットまたは案内溝が形成されてなる透明基板上に、請求項1〜4のいずれかに記載の前記記録層を塗布成膜手段によって設け、その上に反射層を真空成膜法によって設け、更にその上に塗布成膜法によって保護層を設けることを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はCD−R、DVD−Rなどの光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、光記録媒体の記録容量の増加とともに、X1からX2、X4、X8、X12、X16、X20、X24というように記録速度の向上が著しい。そのために有機色素を記録層とした光記録媒体においては、高感度であるとともに、高速記録時においても、熱分解によるピット形成が記録信号の長さ(CD系では3T〜11Tまで)に影響されることなく、その記録信号長さを忠実に再現できることなど、幅広い速度マージンが要求される。
【0003】一般的に記録特性の改善には、有機色素の熱分解温度を下げ、記録感度を向上させることが知られており、このような観点から光記録媒体の記録、再生特性の改良を試みたものが提案されている。
【0004】例えば特開平4−192131号公報では色素の光吸収率及び発熱量を特定することで、高反射率化の達成とともに、ピット形状を明瞭にし、再生信号エラーを低減させるCD−Rが提案されている。また特開平4−226388号公報では色素の融点と熱分解点に着目しており、融点が150〜250℃、熱分解点が200〜350℃の範囲にあるフタロシアニン化合物を選択することで、記録感度の良好なCD−Rが提案されている。また特開平4−259593号公報では融点と熱分解点の差を100℃以下にすることで、ピット形状が整えられ良好な再生が可能なCD−Rを提案している。特開平11−42858号公報では、熱分解温度と融点の差が50℃以下である色素材料が提案されている。更に本特許出願人においても、特開平10−181204号公報で、熱分解温度の異なる2種類の色素を混合することで、幅広い速度に対応できるCD−Rを提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、低速から高速まで幅広く対応できる光記録媒体に関して検討を行なった。それによると、上記公報に提案されているような光記録媒体では、十分に対応できないことが判明した。すなわち記録スピードが向上すると、隣接トラックや前後ピットによる熱的な影響が異なるため、低速度域から高速度域までピットを忠実に形成することが困難になり、幅広い速度に対して、安定した記録品質確保ができない。
【0006】従って、本発明においては、高感度であり、かつ幅広い記録速度に対して対応が可能な光記録媒体とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、有機色素材料の熱分解特性を特定することで対応できることを見出した。すなわち、色素材料の熱分析(TG/熱重量法) を行ない、熱分解による第1の質量変化温度と第2の質量変化温度に関して以下の条件を満たす色素材料であればよいことを見出した。
【0008】請求項1記載の発明では、透明基板上に少なくとも記録層、反射層、保護層を有する光記録媒体において、記録層が下記熱分解特性を有する有機色素材料を主成分として構成される光記録媒体を最も主要な特徴とする。
【0009】ここで、熱分解特性は、熱天秤で熱重量を測定したときの、第1の熱分解点における分解開始温度がT1s、分解終了温度がT1eであり、また第2の熱分解点における分解開始温度がT2s、分解終了温度がT2eであるとき、200℃≦T1s≦350℃であり、且つ300℃≧T2s−T1e≧100℃である。
【0010】請求項2記載の発明では、第2の熱分解点における分解速度D1が0.50%/℃≦D1≦10.0%/℃である請求項1記載の光記録媒体を主要な特徴とする。
【0011】ここでD1=(T1s時の重量−T1s時の重量)/T1s時の重量×100/(T1e−T1s)である。
【0012】請求項3記載の発明では、第1の分解終了温度T1eから第2の分解開始温度T2sまでの分解速度D2が0.0%≦D2≦0.20%/℃である請求項1又は2記載の光記録媒体を主要な特徴とする。
【0013】ここでD2=(T1e時の重量−T2sの重量)/T1e時の重量*100/(T2s−T1e)である。
【0014】請求項4記載の発明では、有機色素材料が下記一般式(1)で示されるフタロシアニン系化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の光記録媒体を主要な特徴とする。
【0015】
【化2】

【0016】((1)式においてM及びA1〜A8はそれぞれ以下にものを表す。
【0017】M;2価の金属原子、置換3価1置換金属原子、4価2置換金属原子またはオキシ金属。
【0018】A1とA2A3とA4A5とA6A7とA8;それぞれどちらか一方は独立にアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、アルキルチオ基、フェニルチオ基ならびにそれらの置換体を表し、他方はハロゲンまたはニトロ基、CN基または水素原子を表す。)
【0019】請求項5に記載の発明では、表面に情報ピットまたは案内溝が形成されてなる透明基板上に、請求項1〜4のいずれかに記載の前記記録層を塗布成膜手段によって設け、その上に反射層を真空成膜法によって設け、更にその上に塗布成膜法によって保護層を設ける光記録媒体の製造方法を主要な特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明者らは、高感度で、かつ幅広い記録速度に対して対応が可能な光記録媒体を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、色素材料の熱分析(TG/熱重量法) を行ない、図1に示す熱分解による第1の質量変化温度(T1s、T1e)と第2の質量変化温度(T2s、T2e)に関して以下の条件を満たす色素材料であればよいことを見出した。図1中、T1sは第1の熱分解点における分解開始温度、T1eは分解終了温度を指す。またT2sは第2の熱分解点における分解開始温度、T2eは分解終了温度を指す。なおTGの昇温条件は10℃/minである。
【0021】<条件1>熱天秤でTG(熱重量法)を測定したとき、200℃≦T1s≦350℃であり、且つ300℃≧T2s−T1e≧100℃である。
【0022】さらに、下記条件を加えることができる。
【0023】<条件2>第1の熱分解点における分解速度D1を0.50%/℃≦D1≦10.0%/℃とする。ここでD1=(T1s時の重量−T1e時の重量)/T1s時の重量×100/(T1e−T1s)である。
【0024】<条件3>第1の分解終了温度T1eから第2の分解開始温度T2sまでの分解速度D2を0.0%≦D2≦0.20%/℃とする。ここでD2=(T1e時の重量−T2s時の重量)/T1e時の重量×100/(T2s−T1e)である。
【0025】ピットの形成は光記録媒体の基板面から光が入射し、記録層が光を吸収、熱分解することで行なわれる。したがって、記録層における材料の熱分解温度が低ければ、比較的低PWの入射光でも分解が進むこととなる。また本発明者らはさらに、実際X1といった低速度からX24まで記録を行なった際、記録層がどこまで加熱されたのかを調査したところ、全て第1熱分解点を超えており、かつ第1熱分解点から500℃までの範囲で、高速から低速まで序列をなすことを見出した。従って低速から高速記録まで幅広いスピードに対応するには、第1分解点以上の温度で、分解による重量変化がなく、フラットな熱分解特性をもつのが良い。この温度領域が第2分解等により大きな重量変化があると、負荷された熱に対するピット形成が不安定になり、ノイズ分が増加し、記録速度マージンが減少したり、各記録速度内においても記録PWに対するマージンが減少する。
【0026】以下、本発明の具体的な構成について詳細に説明する。
【0027】本発明の光記録媒体は透明基板上に少なくとも記録層、金属反射層、保護層を順次有する。
【0028】透明基板としては、代表的なものとしてポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂などのプラスチックまたはガラスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特にポリカーボネイトが望ましい。また透明基板上にはスパイラル状の案内溝が形成される。
【0029】透明基板上に形成される記録層は本発明において特に、下記条件に示すような熱分解特性を有する有機色素材料を主成分として構成する。またこのような有機色素材料は記録層全体の30wt%以上(100wt%以下)含むことが望ましい。色素材料としては例えば、シアニン系色素、アゾ系色素、フタロシアニン系色素、ピリリウム系色素、アズレニウム系色素、スクワリリウム系色素、インドフェノール系色素、インドアニリン系色素、トリフェニルメタン系色素などが挙げられるが、有機色素材料としては、下記一般式(1)で示されるフタロシアニン系化合物が最も良い。フタロシアニンが光、熱に対する耐久性に優れるためである。
【0030】
【化3】

【0031】記録層の有機色素材料は下記のような熱分解特性の条件を備える。
【0032】<条件1>【0033】図1において、第1の熱分解点における分解開始温度T1sは、200℃≦T1s≦350℃であり、且つ第2の熱分解点における分解開始温度T2sと第1の熱分解点における分解終了温度T1eの差は、300℃≧T2s−T1e≧100℃である。
【0034】さらに、下記条件が加われば最適である。
<条件2>第1の熱分解点における分解速度D1が0.50%/℃≦D1≦10.0%/℃である。ここでD1=(T1s時の重量−T1e時の重量)/T1s時の重量×100/(T1e−T1s)で計算する値である。
【0035】<条件3>第1の熱分解終了温度から第2の熱分解開始温度までの分解速度(D2)が0.0%≦D2≦0.20%/℃とする。ここでD2=(T1e時の重量−T2s時の重量)/T1e時の重量×100/(T2s−T1e)で計算する値である。
【0036】前記フタロシアニンの具体的な構造には次のようなものを挙げることができる。
【0037】中心金属Mは【0038】<2価金属>Cu2+,Zn2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Ru2+,Rh2+,Pd2+,Pt2+,Mn2+,Mg2+,Ti2+,Be2+,Ca2+,Ba2+,Cd2+,Hg2+,Pb2+,Sn2+など。
【0039】<1置換3価金属>Al−Cl,Al−Br,Al−F,Al−I,Ga−Cl,Ga−F,Ga−I,Ga−Br,In−Cl,In−Br,In−I,In−F,Ti−Cl,Ti−Br,Ti−I,Ti−F,Al−C6 5 ,Al−C6 4 (CH3 ),In−C6 5 ,In−C6 4 (CH3 ),In−C107 ,Mn(OH),Mn(OC6 5 ),Mn{OSi(CH3 3 },FeCl,RuClなど。
【0040】<2置換4価金属>CrCl2 ,SiCl2 ,SiBr2 ,SiF2 ,SiI2 ,ZrCl2 ,GeCl2 ,GeBr2 ,GeI2 ,GeF2 ,SnCl2 ,SnBr2 ,SnI2,SnF2 ,TiCl2 ,TiBr2 ,TiF2 ,Si(OH)2 ,Ge(OH)2 ,Zr(OH)2 ,Mn(OH)2 ,Sn(OH)2 ,TiR2 ,CrR2,SiR2 ,SnR2 ,GeR2 (R;アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基、及びその誘導体を表す),Sn(SR−)2 ,Ge(SR−)2 (R- はアルキル基、フェニル基、ナフチル基、およびその誘導体を表す)【0041】<オキシ変換>VO,MnO,TiOなど。
【0042】中でも、Zn,Ni,Cu,Pd,VO,TiO,SiR2 から選ばれるのが好ましい。
【0043】一般式(1)の置換基A1〜A8としては、炭素数1〜10の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基、若しくはアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリール基、アリールオキシ基若しくはアリールチオ基、ハロゲン原子、ニトロ基、CN基、又は水素原子が好ましい。炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、3−メチルペンチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、2,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、4−エチルオキシル基、4−エチル−4,5ジメチルヘキシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、1,3,5,7−テトラメチルオクチル基、4−ブチルオクチル基、6,6−ジエチルオクチル基、n−トリデシル基、6−メチル−4−ブチルオクチル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、2−クロロブチル基などが挙げられる。炭素数1〜10のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、1−メチルブチルオキシ基、2−メチルブチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、2−クロロブチルオキシ基などが挙げられる。炭素数1〜10のアルキオチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、1,2,−ジメチルプロピルチオ基、n−ヘキシルチオ基、1−メチル−2−メチルプロピルチオ基、2−エチルブチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、2−メチル−1−iso−プロピルチオ基、n−ヘプチルチオ基、2−メチルヘキシルチオ基、1−エチルペンチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3−メチル−1−iso−プロピルブチルチオ基、n−ノニルチオ基、3−メチル−1−iso−ブチルブチルチオ基、3,5,5−トリメチルヘキシルチオ基、2−クロロブチルチオ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルチオ基などが挙げられる。炭素数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−iso−プロピルフェニル基、4−ブロモフェニル基、2,6,−ジクロロフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、炭素数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、フェニキシ基、2−メチルフェノキシ基、2,4,−ジメチルフェノキシ基、2,4,6,−トリメチルフェノキシ基、2−iso−プロピルフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基、2,6−ジクロロフェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。また炭素数6〜20のアリーチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、2−メチルフェニルチオ基、2,4−ジメチルフェニルチオ基、2,4,6−トリメチルフェニルチオ基、2−iso−プロピルフェニルチオ基、4−ブロモフェニルチオ基、2,6−ジクロロフェニルチオ基、ナフチルチオ基などが挙げられる。またハロゲン原子の具体例としては、F,Cl,Br各原子が挙げられる。
【0044】以上の置換基の中で特に好ましいのは、炭素数4〜10の直鎖又は分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及び炭素数6〜15のアリールオキシ基、アリールチオ基である。これらの基を有する化合物は、溶解性に優れ、塗布成膜が容易である。また、炭素数がこれらより大きくなると、光吸収層の単位膜当たりの吸光度が低下し、適正な光学的な特性(複素屈折率)が得られにくくなるので、好ましくない。
【0045】また、A1〜A8には、記録感度を向上する、光吸収層の吸収波長を調節する、塗布溶媒に対する溶解性を向上する等の理由で他の基を付加してもよく、このような基としては、スルホン酸基、スルホン酸アミン、カルボキシル基、アミド基、イミド基などを挙げることができる。
【0046】前記フタロシアニン化合物からなる記録層は、化合物を溶媒に溶解し、塗布液として基板上にコートすることにより容易に得られる。更に、中心金属MがFe2+,Co2+,Zn2+,Cd2+,Mn2+である場合は、アミノ化合物を添加することが好ましい。Mがこれらの金属である場合は、アミノ化合物がMに配位しやすく、配位により容媒への溶解性、塗布成膜性が向上するためである。アミノ化合物としては、以下のような化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの中で、フタロシアニン系化合物の会合を防ぐ効果が高く、且つ耐久性(耐熱性、耐光性)に優れているという点から、N原子を複素環に含む化合物が好ましい。更に、光吸収層の熱安定性を維持するという点から、アミノ化合物は、融点が150℃以上のものであることが好ましい。融点が150℃未満の場合には、高温高湿環境下で光吸収層の特性(特に光学特性)が変化しやすいためである。中でも特に好ましいのは、イミダゾール、ベンズイミダゾール及びチアゾール誘導体である。
【0047】具体的な例を以下に挙げると、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、tert−ブチルアミン、ピロール、ピロリジン、ピリジン、ピペリジン、ブリン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、5,6−−ジメチルベンズイミダゾール、2,5,6−トリメチルベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、2−メチルナフトイミダゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、ベンズキノリン、フェナンスリジン、インドリン、カルバゾール、ノルハルモン、チアゾール、ベンズチアゾール、バンズオキサゾール、ベンズトリアゾール、7−アザインドール、テトラヒドロキノリン、トリフェニルイミダゾール、フタルイミド、ベンゾイソキノリン−5−10−ジオン、トリアジン、ペリミジン、5−クロロトリアゾール、エチレンジアミン、アゾベンゼン、トリメチルアミン、N, N−ジメチルホルムアミド、1(2H)フタラジノン、フタルイミダシオ、1,3−ジイミノイソインドリン、オキサゾール、ポリイミダゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリチアゾール等がある。
【0048】記録層はスピンコート、蒸着によってなされるのが望ましいが、これに限るものではない。記録層の膜厚は通常300Å〜5000Å好ましくは700Å〜2000Åとするのが望ましい。
【0049】記録層上に形成される金属反射層はAu、Ag、Cu、Ni、Al、Pt等の金属や合金材料が用いられ、真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法によって形成される。コスト、ディスク特性を併考すればAgが最も望ましい。膜厚は記録する際に十分な強度を保持するために、300Å以上2500Å以下とするのが良い。
【0050】反射層上に形成される保護層は、重合反応によってポリマーとなる有機モノマーとポリマーを架橋反応させることで設けられる。材料としては公知の紫外線硬化樹脂が適用でき、例えば紫外線硬化樹脂材料としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポロプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ樹脂のジ(メタ)アクリレートなどのアクリレート樹脂等があげられる。これらの樹脂に架橋性モノマーを加えても良く、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、1.4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが用いられる。紫外線硬化させるにはラジカル開始剤が必要で、1−ヒドロキシシコロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2.2−ジエトキシアセトフェノン、4−フェノキシ−2.2−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン系、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン系、2−クロロアントラキノン等のアントラキノン系、2.4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系が挙げられる。これらは通常組成比(重量比)にして1%〜10%である。1種類でも2種類以上を混合して使用してもよい。必要に応じて消泡剤やシリカ等の増粘剤を添加してもよい。製膜は公知のスピンコーティング法などの塗布製膜手段を使用すればよく、製膜後、紫外線を露光することで硬化させる。膜厚は1um以上30um以下とするのが良い。
【0051】さらに本発明の光記録媒体の製造方法について説明する。本発明の光記録媒体の製造方法は、表面にウォブルグルーブおよび/またはピットが形成されてなる基板上に、直接前記有機色素を主成分とする光記録層を塗布成膜手段により設け、その上に直接光反射層を真空成膜手段により設け、更にその上に保護層を設けることを特徴とする。即ち、本発明の製造方法は、下記■〜■の工程からなる。
【0052】■ 表面にウォブルグルーブおよび/またはピットが形成されている基板上に、直接前記有機色素を主成分とする光記録層を塗布成膜手段により設ける工程。
【0053】■ 光記録層上に直接金属反射層を真空成膜手段により設ける工程。
【0054】■ 金属反射層上に塗布成膜手段で製膜し、紫外線露光で硬化させることで、保護層を設ける工程。
【0055】[実施例]本発明者らは、本発明の効果を確認するためさまざまな実験を行った。以下に一例を示す。
【0056】スパイラル状の案内溝を有するポリカーボネイト透明基板上に、下記に示すさまざまな熱分解特性を持つフタロシアニン色素をスピンコートによって成膜した。膜厚は1500Å。さらにその上からAg反射膜をスパッタする。Ag反射膜は1400Å。その上に成膜される保護層はDIC製SD318を使用して、スピンコートし膜形成する。膜厚は5umとした。またポリカーボネイト透明基板の案内溝のピッチは1.6umで幅は0.6umとした。サンプル構造は図5(a)、(b)、(c)に示した。
【0057】(a)フタロシアニン色素A(TGは図2参照)
T1s;274℃D1;0.54%/℃D2;0.06%/℃T2s−T1e;150℃【0058】(b)フタロシアニン色素B(図3参照);比較サンプルT1s;290℃D1;0.30%/℃D2;1.99%/℃T2s−T1e;47℃【0059】(c)フタロシアニン色素C(図4参照)
T1s;268℃D1;0.89%/℃D2;0.18%/℃T2s−T1e;164℃【0060】サンプルはCLV4.8m(X4)、19.2m/s(X16)、24.0m/s(X24)の速度で、記録パワーを振って記録する。EFM信号パルスは(n)*231.4nSであり、n=3,4,5,6,7,8,9,10,11。各パワーにおけるJITTER値を測定し、パワーに対するマージンの広さを評価する。なお記録/再生はPULSTEC社製DDU−1000を使用した(NA=0.50,λ=790nm) 。
【0061】
<評価結果> マージン巾 X4 X16 X20(a)フタロシアニン色素A 6.0mW 5.9mW 5.8mW(b)フタロシアニン色素B 5.5 5.3 3.0(c)フタロシアニン色素C 6.0 5.9 5.5マージン巾はJITTER値(PIT)が35nSを越えるところでNG/OKの判定を行った。数字は大きいほど良好である。
【0062】上記結果から、本発明における熱分解特性を持つ有機色素を使用した光記録媒体は低速から高速記録まで比較品に比べ幅広いマージンが確保できている。
【0063】
【発明の効果】請求項1記載の光記録媒体によれば、透明基板上に少なくとも記録層、反射層、保護層を有する光記録媒体において、記録層の熱分解特性が200℃≦T1s≦350℃であり、かつ300℃≧T2s−T1e≧100℃であることにより、記録感度が良く、幅広い記録速度に対応した光記録媒体にできる。
【0064】請求項2記載の光記録媒体によれば、第1の熱分解点における分解速度D1が0.50%/℃≦D1≦10%/℃であり、ここでD1=(T1s時の重量−T1e時の重量)/T1s時の重量×100/(T1e−T1s)であることにより、幅広い記録速度に対応した光記録媒体にできる。
【0065】請求項3記載の光記録媒体によれば、第1の熱分解終了温度から第2の熱分解開始温度までの分解速度D2が0.0%≦D2≦0.20%/℃であり、ここでD2=(T1e時の重量−T2s時の重量)/T1e時の重量×100/(T2s−T1e)であることにより、幅広い記録速度に対応した光記録媒体にできる。
【0066】請求項4記載の光記録媒体によれば、有機色素材料が一般式(1)で示されるフタロシアニン系化合物であることで、光や熱に対する耐久性が良好であり、かつ幅広い記録速度に対応した光記録媒体にできる。
【0067】請求項5記載の光記録媒体の製造方法によれば、通常の製造方法にて高感度であり、かつ幅広い記録速度に対して対応が可能な光記録媒体を容易に製造できる。
【出願人】 【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
【住所又は居所】東京都大田区中馬込1丁目3番6号
【出願日】 平成13年11月14日(2001.11.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−145936(P2003−145936A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−349403(P2001−349403)