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【発明の名称】 インクジェット記録用紙
【発明者】 【氏名】立花 喜美江
【住所又は居所】東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会社内

【氏名】野島 隆彦
【住所又は居所】東京都日野市さくら町1番地コニカ株式会社内

【要約】 【課題】インク吸収性、平滑性、被膜の柔軟性に優れ、高濃度、高画質な画像が得られるインクジェット記録用紙を提供すること。

【解決手段】多孔質基材上の少なくとも片面に、合成非晶質シリカ及び該シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有するシリコンエマルジョン樹脂を含む下層と、親水性バインダーと平均粒径3〜200nmの合成非晶質シリカを含む上層とを有するインク受容層を有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多孔質基材上の少なくとも片面に、合成非晶質シリカ及び該シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有するシリコンエマルジョン樹脂を含む下層と、親水性バインダーと平均粒径3〜200nmの合成非晶質シリカを含む上層とを有するインク受容層を有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】 上層が更に合成非晶質シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有するシリコンエマルジョン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】 上層に含まれる合成非晶質シリカが気相法により合成されたシリカであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項4】 上層に含まれる親水性バインダーがポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項5】 上層における合成非晶質シリカの質量がポリビニルアルコールの質量の3〜20倍であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項6】 上層に更に硼酸又はホウ砂を含有することを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項7】 シリコンエマルジョン樹脂が水酸基を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。このとき使用される記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、インクの吸収が早く、印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、インクの吸収容量が大きくインク溢れが起こらないこと等が要求されてきている。
【0003】記録用紙として普通紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙等の多孔質基材を支持体として用いると、支持体中にインクが浸透するため、インク吸収容量としては満足するものもあるが、一方、印字部分でインクの吸収・乾燥に起因するうねり(コックリング)が大きく、また平滑性や光沢が低下したり、染料の支持体への浸透で最高濃度が出にくく鮮明な画像が得にくいという問題点があった。
【0004】従来、インク吸収性や印字部分のコックリング等を解決すべく、特開平1−282399号、同5−51470号、同5−85035号、同8−300806号、特公平5−46317号等による発明が提案されている。また、特開平7−276787号では、末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール系重合体を、分散安定剤として乳化重合したエチレン性不飽和単量体、又はジエン系単量体からなる重合体エマルジョンを、表面サイジング剤または表面塗布用顔料バインダーとして使用してなる記録用紙により、解像度、耐水性改良の提案がなされている。
【0005】特開平11−245506号では、繊維状基体上に耐溶出性を有する白色顔料層とアルミナベーマイトからなるインク受容層を設けることで、質感、画像濃度、彩度、光沢度が得られることが記載されている。また特開2000−33771号では、硫酸バリウムと熱可塑性中空微細ビーズとを含む層を有するベース紙を用いたインクジェット用記録材料の提案がなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者による鋭意検討の結果、上述の従来技術では、充分な画像濃度、光沢性、平滑性が得られないこと、また高空隙率のインク受容層を厚く塗布しようとすると、ひび割れが生じ易いこと等がわかり、またインク吸収容量の観点からインク受容層の薄膜化は、困難である等の問題があることが判明してきた。
【0007】一方、カレンダー処理やキャスト法によってインク受容層を設けるなどして、平滑性や光沢性を改善しようとすると、製造上、塗布スピードが上げ難い、製造工程が複雑になる等の理由により、安価で高濃度、高品質な記録材料を提供するのは難しい状況にある。
【0008】本発明の目的は、インク吸収性、平滑性、被膜の柔軟性に優れ、高濃度、高画質な画像が得られるインクジェット記録用紙を提供することであり、詳しくはインク吸収性を向上させた柔軟性に富むインク受容層を支持体上に設け、安価で、高画質な画像が得られるインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、以下の構成によって達成された。
【0010】1)多孔質基材上の少なくとも片面に、合成非晶質シリカ及び該シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有するシリコンエマルジョン樹脂を含む下層と、親水性バインダーと平均粒径3〜200nmの合成非晶質シリカを含む上層とを有するインク受容層を有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0011】2)上層が更に合成非晶質シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有するシリコンエマルジョン樹脂を含むことを特徴とする前記1)に記載のインクジェット記録用紙。
【0012】3)上層に含まれる合成非晶質シリカが気相法により合成されたシリカであることを特徴とする前記1)又は2)に記載のインクジェット記録用紙。
【0013】4)上層に含まれる親水性バインダーがポリビニルアルコールであることを特徴とする前記1)〜3)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0014】5)上層における合成非晶質シリカの質量がポリビニルアルコールの質量の3〜20倍であることを特徴とする前記4)に記載のインクジェット記録用紙。
【0015】6)上層に更に硼酸又はホウ砂を含有することを特徴とする前記4)又は5)に記載のインクジェット記録用紙。
【0016】7)シリコンエマルジョン樹脂が水酸基を有することを特徴とする前記1)〜6)のいずれか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0017】本発明を更に詳しく説明する。本発明で用いる多孔質基材としては、例えば一般の紙、合成紙、布、木材等を有するシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れ、且つコスト的にも優れるために最も好ましい。以下に紙支持体について説明する。
【0018】紙支持体の原料としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能であるが、広葉樹パルプを使用するのが好ましい。広葉樹パルプとしては、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、ケミメカニカルパルプ等を単独あるいは数種類併用してもよい。また、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0019】また、白色度の向上の点から、原料であるパルプに過酸化物等による漂白処理が施されるのが好ましい。漂白処理はパルプを蒸解後、塩素処理、アルカリ処理、もしくは抽出あるいは精製、次亜塩素酸塩漂白、二酸化塩素漂白、及びそれらの組み合わせた多段漂白処理、更に必要に応じてハイドロサルファイト、水素化ホウ素ナトリウムなどによる還元漂白の後に、施されるのが好ましい。更に好ましくは、アルカリ性での過酸化物漂白処理は、パルプを蒸解後、従来公知のパルプ漂白処理後に最後のパルプ漂白処理として施されるのがよい。
【0020】紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0021】サイズ剤としては、必要に応じて高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー、ロジン、パラフィンワックス、アルケニルコハク酸、石油樹脂エマルジョン等のサイズ剤を添加することができる。顔料としては炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン、尿素樹脂微粒子等が、紙力増強剤としてはスターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等が、定着剤としては硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階または抄紙後に、スターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理をしたり、各種コート処理をしたり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0023】紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度は、JIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0024】本発明においては、多孔質基材とその上に設ける層との接着強度を大きくする等の目的で、多孔質基材にコロナ放電処理や下引処理、中間層の塗設等を行うことができる。
【0025】多孔質基材の厚さは50〜350μmが好ましく、80〜300μmのものがより好ましく、140〜220μmが特に好ましい。
【0026】本発明に係るインク受容層とは、プリントされた水性インク中の染料が受容される層のみならず、インク中に含まれる水や有機溶媒等の媒質が受容される層も含まれる。本発明のインクジェット記録用紙は、本発明に係るシリコンエマルジョン樹脂を主たるバインダーとして含む下層と、親水性バインダーを主たるバインダーとして含む上層とを有するインク受容層を備えたものである。
【0027】下層は合成非晶質シリカ及び本発明に係るシリコンエマルジョン樹脂を含む層であるが、合成非晶質シリカ同士と相互作用して皮膜を形成する、所謂バインダーのうち、50質量%を越える量が本発明に係るシリコンエマルジョン樹脂であることが好ましく、より好ましくは60〜100質量%、特に70〜100質量%であることが好ましい。
【0028】上層は親水性バインダーと平均粒径3〜200nmの合成非晶質シリカを含む層であるが、合成非晶質シリカを含んで皮膜を形成するためのバインダーのうち、50質量%を越える量が親水性バインダーであることが好ましく、より好ましくは60〜100質量%、特に70〜100質量%であることが好ましい。
【0029】本発明に用いられる、合成非晶質シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有するシリコンエマルジョン樹脂は、シロキサン骨格を有するポリジメチルシロキサンとして知られている、シリコンオイルを水中に安定に分散させたエマルジョン、あるいはジメチルシロキサンモノマーを乳化重合させて得られるものであって、共存する合成非晶質シリカが有するシラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基を有しており、これによって、被膜の強靭性を備え、且つ柔軟性を備えることができる。
【0030】本発明の効果を顕著に奏するという観点において、水酸基を有するシリコンエマルジョン樹脂が好ましい。
【0031】該シリコンエマルジョン樹脂としては、ポリエーテル変性シリコンエマルジョン、アルコール変性シリコンエマルジョン、アミノ変性シリコンエマルジョン、エポキシ変性シリコンエマルジョン、フェノール変性シリコンエマルジョン、及びカルボキシ変性シリコンエマルジョン等が挙げられるが、特にアルコール変性シリコンエマルジョン及びアミノ変性シリコンエマルジョンが好ましい。
【0032】シラノール基と反応し得る基、又は水素結合し得る基としては、前述の通り水酸基が特に好ましく、最も好ましいシリコンエマルジョン樹脂は、アルコール変性シリコンエマルジョン樹脂である。アルコール変性シリコンエマルジョンとしては、シリコンが有するメチル基の一部が、末端に水酸基を有する基で置換されたエマルジョンが挙げられ、ポリエーテル変性シリコンのポリエーテル鎖末端に水酸基を有するエマルジョン、ポリエーテル基を含まないアルコール変性シリコンのエマルジョン(例えば、ヒドロキシアリール基を有するアルコール変性シリコンエマルジョン)等が挙げられ、具体的には東レ・ダウ・コーニング・シリコーン株式会社製(商品名)SM8706等が挙げられる。
【0033】本発明で用いることのできるポリエーテル変性シリコンエマルジョンとしては、シリコンが両末端あるいは側鎖に有するメチル基の一部の代わりに、ポリエチレンオキシド基やポリプロピレンオキシド基などのポリエーテル基を、シリコンの両末端あるいは側鎖に導入したものであり、ポリエーテル基の末端が水酸基であるものが好ましいが、末端が低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)で置換されているものも挙げられる。具体的には、東レ・ダウ・コーニング・シリコーン株式会社製(商品名)SH3771、SH8400等のシリコンオイルを乳化させたものが挙げられる。
【0034】また、アミノ変性シリコンエマルジョンとしては、ジメチルシリコン骨格の両末端あるいは側鎖にアミノ基を導入したシリコンのエマルジョン等が挙げられ、アミノ基としては、メチル基、エチル基のような低級アルキル基で置換されたものも含み、好ましくは1級アミン及び3級アミンが挙げられる。具体的には、東レ・ダウ・コーニング・シリコーン株式会社製(商品名)SM8702、BY22−812、BY22−816等が挙げられ、SM8702は末端及び側鎖に水酸基を有するためより好ましい。
【0035】また、エポキシ変性シリコンエマルジョンとしては、ジメチルシリコン骨格の両末端あるいは側鎖にエポキシ基を導入したシリコンのエマルジョン等が挙げられ、具体的には東レ・ダウ・コーニング・シリコーン株式会社製(商品名)BY16−855D、SF8411、BY16−839等のシリコンオイルを乳化させたものが挙げられる。
【0036】その他に、東レ・ダウ・コーニング・シリコーン株式会社製(商品名)BY16−752(シリコンオイル)を乳化させたようなフェノール変性シリコンエマルジョンや、同BY22−820(シリコンオイル)を乳化させたようなカルボキシ変性シリコンエマルジョンも、本発明に用いることができる。
【0037】本発明のインク受容層のうち下層は、シリコンエマルジョン樹脂及び合成非晶質シリカを主成分として含んでおり、また本発明のシリコンエマルジョン樹脂以外の親水性バインダー、又は疎水性樹脂を含んでいてもよいが、親水性バインダーであるほうが好ましい。しかしながら、紙支持体等の多孔質基材上に塗工液を塗布、乾燥させる場合、塗工液中の親水性バインダー(例えば、ポリビニルアルコール)が多孔質基材の間隙に浸透し、塗膜、乾燥後には目止め作用が生じて、多孔質基材がインクを吸収するのを阻害する場合が多いので、親水性バインダーを併用する場合であっても、高インク吸収性を得るためには、その量は少量の方が好ましく、合成非晶質シリカ/親水性バインダーの質量比が25以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
【0038】下層に含まれる親水性バインダーとしては、後述する上層に含まれる親水性バインダーで説明するものと同様のものを用いることができる。
【0039】本発明のインク受容層に用いる合成非晶質シリカは、例えばハロゲン化珪素の高温での気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、及びケイ砂とコークスを電気炉でアークにより加熱還元気化し、これを空気酸化する方法(アーク法)により合成された気相法シリカ、珪酸塩の酸分解により活性シリカを生成した後、過度に重合させて凝集・沈殿させる方法により合成された湿式シリカ、及び珪酸ナトリウムの酸等による複分解やイオン交換樹脂層を通過させて得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる、平均粒径5〜100nmコロイダルシリカ等が挙げられるが、本発明において、特に好ましく用いられるのは気相法シリカである。
【0040】気相法シリカとして現在市販されているものとしては、例えば日本アエロジル社の各種のアエロジルが該当する。気相法により合成されたシリカ及びコロイダルシリカは、その表面をカチオン変成されたものであってもよく、またAl、Ca、Mg及びBa等で処理されたものであってもよい。
【0041】本発明のインク受容層のうち下層に用いることができる合成非晶質シリカの平均粒径は、特に限定はないが、3nm〜1μmが好ましく、上層に用いる合成非晶質シリカの平均粒径は3〜200nmである。より表面側に位置する上層に用いる合成非晶質シリカの粒径は、画質に影響を与えるため、このような粒径であることが必要である。下層に用いる合成非晶質シリカも、より好ましくは平均粒径3〜200nmである。
【0042】平均粒径が200nmを越える合成非晶質シリカを上層に使用した場合には、記録用紙の光沢性が低下したり、インクジェット記録時のドットの真円度が低下したり、不要なドットの広がりが生じたり、或いは表面での乱反射による最高濃度の低下が生じたりして、鮮明な画像が得にくくなり、本発明の効果が得られない。
【0043】本発明の効果を顕著に発揮するという観点から、平均粒径は100nm以下がより好ましい。また、該シリカは1次粒子のままでバインダー中に均一に分散された状態で用いられることも、また2次凝集粒子を形成してバインダー中に分散された状態で用いられてもよいが、後者がより好ましい。
【0044】合成非晶質シリカの1次粒子が2次凝集粒子を形成した状態で用いられる場合、その1次粒子の平均粒径は、30nm以下のものを使用することが光沢性の観点からより好ましい。1次粒子の平均粒径の下限は特に限定されないが、粒子の製造上の観点から通常3nm以上、特に6nm以上が好ましい。
【0045】上記において合成非晶質シリカの平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めて、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定したときのその直径で表したものである。
【0046】本発明においては、合成非晶質シリカと少量の有機高分子による複合粒子を用いた場合などでも、実質的には合成非晶質シリカとみなす。この場合も乾燥被膜中に観察される最高次粒子の平均粒子径をもって、その合成非晶質シリカの平均粒径とする。この場合の合成非晶質シリカと少量の有機高分子による複合粒子における有機高分子/合成非晶質シリカの質量比は、概ね1/100〜1/4である。複合粒子の例としては、特開平8−34160号に記載されているような、第4級アンモニウム塩基を有するシランカップリング剤を、無機微粒子の表面にカップリングさせて、表面電荷をカチオン性に変換したシリカ等が挙げられる。
【0047】本発明のインクジェット記録用紙は、合成非晶質シリカと親水性バインダーを主成分とし、これによって空隙構造を形成する上層を有する。
【0048】上層の親水性バインダーの例としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(λ、ι等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの親水性バインダーは2種以上併用することも可能である。中でも、本発明においてポリビニルアルコールが好ましい。
【0049】本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる、通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有する、アニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0050】酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられる。ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0051】カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールが挙げられ、これらはカチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を、ケン化することにより得ることができる。
【0052】カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0053】カチオン変性ポリビニルアルコールにおけるカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0054】アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号および同63−307979号に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0055】また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基を、ビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0056】ポリビニルアルコールは重合度や変性の種類などが違う2種類以上を併用することもできる。
【0057】本発明の上層の親水性バインダーに対する合成非晶質シリカの比率は、高い空隙率と高い皮膜強度を得ることができるという点から、質量比で3倍以上であることが好ましい。3倍以上であれば十分なインク吸収容量が得られる高空隙率が達成でき、またインクジェット記録後の十分な皮膜強度が得られる。この点から、更に好ましくは合成非晶質シリカの親水性バインダーに対する質量比は、6以上である。
【0058】空隙容量は上層の乾燥膜厚から、バインダーや各種の充填剤等の固形分の容量の総量を差し引いた値である。例えば、合成非晶質シリカ(比重2.0)6g/m2と親水性バインダー(比重1.0)1g/m2、カチオン性ポリマー媒染剤(後述)(比重1.0)1g/m2を有する上層が、乾燥膜厚10μmであるとき、その空隙容量は下式の様にして5ml/m2と求められる。
【0059】10−(6/2.0)−(1/1.0)−(1/1.0)=5一方、上層の塗布後の乾燥時に皮膜が収縮する過程で、皮膜の剛性が高すぎるために、支持体表面の微少なうねりや凹凸により、局所的に皮膜に微小なクラックが入ることがあり、本発明のインクジェット記録用紙の上層に含まれる親水性バインダーに対する無機微粒子の比率の上限は、通常20以下であるが、特に8以下であることが好ましい。
【0060】本発明のインク受容層の付量は、一般に皮膜の空隙率や要求される空隙量により決まるが、本発明のインクジェット記録用紙では、乾燥時の固形分塗工量が7〜30g/m2であることが好ましい。インク受容層の乾燥時の固形分塗工量が7〜30g/m2の範囲では、コックリング、光沢性、最高濃度の点で好ましく、また空隙層の塗布後の乾燥時に皮膜が収縮する過程で、発生する皮膜のクラック発生を抑制しやすくなる。また、乾燥負荷が小さく生産性が良好なため、製造コストを抑えることができるというメリットがある。
【0061】本発明のインク受容層には、硬膜剤を用いることもできるが、本発明で用いられる硬膜剤としては、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0062】硬膜剤の具体例としては、例えばエポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5,−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
【0063】ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的にはオルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。硬膜剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また2種以上を混合して使用してもよい。特に好ましいのは、ホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれは比較的希薄水溶液でしか添加することができないが、両者を混合することで濃厚な水溶液にすることができ、塗布液を濃縮化する事ができる。また、添加する水溶液のpHを、比較的自由にコントロールすることができる利点がある。
【0064】上記硬膜剤の添加量は、上記親水性バインダー1g当たり1〜200mgが好ましく、更に好ましくは2〜100mgである。
【0065】本発明の記録用紙のインク受容層の上層中及び/又は下層中に、表面がアニオン性である合成非晶質シリカを使用する場合には、画像の耐水性や耐にじみ性を改良する点から、染料に定着性を有する第1級〜第3級アミノ基又は第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを含有させることが好ましい。
【0066】カチオン性ポリマーとしては公知のポリマーを使用することができ、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン、ジアルキルアミンとエピクロロヒドリンの縮合物、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ジアリルジメチルアンモニウム塩の縮合物、ポリアクリル酸エステルの4級化物等が挙げられるが、特に、特開平10−193776号、同10−217601号、同11−20300号に記載されているものが好ましい。
【0067】カチオン性ポリマーとしては、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが好ましい。特に、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体、または他と共重合し得る1または2以上のモノマーとの共重合体が好ましい。
【0068】特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は通常10モル%以上、好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは、単一でも2種類以上であってもよい。第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは、第4級アンモニウム塩基のために水溶性が一般に高いが、共重合する第4級アンモニウム塩基を含まないモノマーの組成や比率によっては、水に充分に溶解しないことがあるが、水混和性有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させることにより、溶解し得るものであれば本発明には使用できる。
【0069】ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0070】カチオン性ポリマーの溶液を、表面アニオン性の微粒子含有分散液に添加する際、凝集物が激しく発生してしまうことがあり得るが、カチオン性ポリマーの重量平均分子量が10万以下の場合にはこのような現象が起こりにくく、従って粗大粒子をあまり含まない、ほぼ均一な分散液が得られ易く好ましい。このような分散液を使用して作製したインクジェット記録用紙には、優れた光沢性が期待できるのである。同様の観点から、上記重量平均分子量は5万以下であると更に好ましい。重量平均分子量の下限は、染料の耐水性の点から通常2000以上である。
【0071】ここで重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリエチレングリコール値に換算した値である。
【0072】上層における合成非晶質シリカとカチオン性ポリマーの比率は、該シリカの種類や平均粒径又はカチオン性ポリマーの種類や重量平均分子量で変わり得る。本発明においては、上記比率は微粒子の表面がカチオン性に置き換わって安定に染料と定着させる為に、1:0.01〜1:1であることが好ましく、更に1:0.01〜1:0.3が好ましく、特に1:0.05〜1:0.2が好ましい。
【0073】上記の範囲であれば、合成非晶質シリカのアニオン成分がカチオン成分によって完全に被覆されるので、微粒子のアニオン部分とカチオン性ポリマーのカチオン部分とがイオン結合して、粗大な粒子を形成するようなおそれも生じない。
【0074】一方、合成非晶質シリカとしては、表面がカチオン性である微粒子を使用することもでき、この場合は無機微粒子自身が染料定着性を有する。表面がカチオン性である無機微粒子としては、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ等を用いることが好ましい。
【0075】本発明のインクジェット記録用紙のインク受容層側の任意の層中には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。
【0076】例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0077】例えば、印字記録後の耐水性、滲み耐性を向上させるために、上述したカチオン性ポリマー、あるいは水溶性の多価金属イオンを添加することもできる。
【0078】水溶性の多価金属イオンとしては、Mg2+やCa2+、Zn2+のような2価の金属イオン、Al3+などの3価の金属イオン、あるいはTi4+など、4価以上の金属イオンが挙げられ、これらの水溶性の多価金属イオンは、亜硫酸塩、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、酢酸塩、炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩といった塩として添加される。また、水溶性の多価金属イオンの塩として、ポリ塩化アルミニウムのような水溶性無機ポリマーを使用してもよい。
【0079】カチオン性の樹脂、あるいは水溶性の多価金属イオンの添加方法としては、塗布液に直接添加して塗布する方法のほか、記録媒体の塗布乾燥後にカチオン性の樹脂や水溶性の多価金属イオンの水溶液を、オーバーコートして乾燥するといった方法でもかまわない。
【0080】本発明のインク受容層の上層は2層以上から構成されてもよく、この場合、これらの層の構成は、例えば合成非晶質シリカの親水性バインダーに対する比率などはお互いに同じであっても異なってもよい。
【0081】本発明の記録用紙のインク受容層を有する側と支持体に対して反対側には、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために、種々の種類のバック層を設けてもよい。
【0082】以上の構成を有する本発明の記録用紙は、例えば以下の方法によって得ることができる。
【0083】まず、前記のインク受容層形成用の材料を適当な溶媒、例えば水、アルコールあるいは各種有機溶媒に添加して塗布液を調製し、これを前記支持体に塗布し、乾燥させてインク受容層とする。
【0084】仕上がりの記録材料としてより好ましいインク吸収性を得るためには、支持体上に本発明の下層と、本発明の上層は同時多層塗布することが最も好ましい。特に、多孔質基材上に、本発明の上層及び下層を含むインク受容層を同時多層塗布する場合には、多孔質基材のインク吸収性を活かせることで、記録材料として高インク吸収性を有する。その結果、インク受容層が薄膜化できるので製造コストが抑えられ、高画質で安価な記録材料が提供できる。
【0085】インク受容層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、ブレードコーター法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,681,294号に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0086】インク受容層の塗布後の乾燥は、いったん冷却して塗布液の粘度を増大させるか、ゲル化させてから温風を吹き付けて乾燥させるのが好ましい。インク受容層の塗布液温度は通常25〜60℃であり、30〜50℃が好ましい。冷却は塗布後の膜面温度が20℃以下、更には5〜15℃になるようにするのが好ましく、その後の乾燥は20〜60℃の風を吹き付けて乾燥するのが均一な膜面を得る点から好ましい。インク受容層を塗布する際の湿潤膜厚は、目的とする乾燥膜厚によって変わるが、概ね50〜300μm、好ましくは70〜250μm、塗布速度は乾燥能力に大きく依存するが、通常20〜200m/分である。乾燥時間は概ね2〜10分である。
【0087】以下に、本発明のインクジェット記録用紙に好ましく用いられる水性インクについて説明する。
【0088】水性インクは、通常は水溶性染料及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。水溶性染料としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料が使用できるが、直接染料、または酸性染料が好ましい。
【0089】水性インクの溶媒は水を主体としてなるが、インク液が乾燥した際に染料が析出して、ノズル先端やインク供給経路での目詰まりを防止するために、通常沸点が約120℃以上で室温で液状の高沸点有機溶媒が使用される。高沸点有機溶媒は水が蒸発した際に、染料などの固形成分が析出して粗大析出物の発生を防止する作用を持つために、水よりはるかに低い蒸気圧を有することが要求される一方、水に対して混和性が高い必要がある。
【0090】そのような目的では高沸点の有機溶媒が通常多く使用されるが、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(平均分子量が約300以下)等のアルコール類が挙げられる。また、上記した以外にも、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等も使用できる。
【0091】これらの多くの高沸点有機溶媒の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0092】水性インクが含有するその他の添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0093】水性インク液は記録用紙に対する濡れ性を良好にするため、及びインクジェットノズルからの吐出を安定化させる目的で、25℃において25〜50×10-5N/cm、好ましくは28〜40×10-5N/cmの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。また、水性インクの粘度は、通常25℃において2〜8×10-3Pa・s、好ましくは2.5〜5×10-3Pa・sである。水性インクのpHは通常4〜10の範囲である。インクノズルから吐出される最小インク液滴としては、1〜30×10-3nlの容量の場合、記録紙上で20〜60μmの直径の最小ドット径が得られるので好ましい。このようなドット径で印字されたカラープリントは、高画質画像を与える。好ましくは、2〜20×10-3nlの容積を有する液滴が最小液滴として吐出される場合である。
【0094】また、水性インクが、少なくともマゼンタおよびシアンについて、各々濃度が2倍以上異なる2種類のインクで記録する方式において、ハイライト部では低濃度のインクが使用されるためにドットの識別がしにくくなるが、本発明はかかる記録方式を採用した場合も適用できる。
【0095】本発明に好ましく用いられるインクジェット記録方法は、従来公知の各種の方式を用いることができ、その詳細は、例えばインクジェット記録技術の動向(中村孝一編、平成7年3月31日、日本科学情報株式会社発行)に記載されている。
【0096】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0097】実施例1《多孔質基材の作製》カナダ標準濾水度が330mlになるまで叩解した広葉樹クラフトパルプ(LBKP)70質量部と、カナダ標準濾水度が280mlになるまで叩解した広葉樹晒亜硫酸パルプ(LBSP)25質量部、カナダ標準濾水度が280mlになるまで叩解した針葉樹クラフトパルプ(NBKP)5質量部を混合し、ダブルディスクリファイナーの回転数を変化させて、質量平均繊維長が1.20mmとなるパルプを得た。叩解パルプそれぞれ100部に対し、カチオン化澱粉を2.0部、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー樹脂を0.4部、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂0.1部、ポリアミドポリアミンエピクロールヒドリン樹脂0.7部を添加し、苛性ソーダでpH7.5に調整した後、長網抄紙機で坪量170g、厚さ160μmの紙支持体からなる多孔質基材を作製した。
【0098】〈シリカ分散液1の調製〉1次粒子の平均粒径が約0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル製;アエロジル200)120kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用い、硝酸でpH3.0に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、UVITE NFW LIQUID(チバスペシャリティーケミカル社製)1.5Lを、撹拌分散しながら添加した後、全量を694Lに純水で仕上げた。
【0099】〈シリカ分散液2−1の調製〉カチオン性ポリマー(P−1)を1.63kg、エタノール2.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する水溶液(pH=3.0)18Lに、シリカ分散液1の69.4Lを攪拌しながら添加し、次いで消泡剤SN381(サンノプコ株式会社製)を1g添加した。
【0100】この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97Lに仕上げて、シリカ分散液2−1を調製した。
【0101】このシリカ分散液を希釈して透明な支持体上に塗布し、電子顕微鏡で観察した結果、平均粒径が約40nmであった。
【0102】〈シリカ分散液2−2の調製〉シリカ分散液2−1の調製において使用したカチオン性ポリマー(P−1)を、カチオン性ポリマー(P−2)に変更する以外は、シリカ分散液2−1の調製と同じくして、シリカ分散液2−2を調製した。
【0103】
【化1】

【0104】《塗布液1の調製》次いで、上記のようにして得られたシリカ分散液2−1を使用して、下記の塗布液を調製した。
【0105】シリカ分散液2−1の650mLに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0106】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)の 10%水溶液 7mL ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液 230mL ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液 90mL 界面活性剤(S−1)30%溶液 4ml アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製: UVITEX NFW LIQUID9)の10%液 10ml純水で全量を1000mLに仕上げる。塗布液のpHは約4.5であった。
【0107】
【化2】

【0108】《塗布液2の調製》次いで、シリカ分散液2−2を使用して、下記の塗布液を調製した。
【0109】シリカ分散液2−2の650mLに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0110】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)の 10%水溶液 9mL ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液 300mL ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液 100mL 界面活性剤(S−1)30%溶液 4ml アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製: UVITEX NFW LIQUID9)の10%液 10ml純水で全量を1000mLに仕上げる。塗布液のpHは約4.5であった。
【0111】《塗布液2−1の調製》シリカ分散液2−2を使用して、下記の塗布液を調製したシリカ分散液2−2の650mLに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0112】
Em1 20.9g 界面活性剤(S−1)30%溶液 4mL アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:UVITEX NFW LIQUID9)の10%液 10mL純水で全量を1000mLに仕上げ、塗布液2−1を調製した。
【0113】《塗布液2−2、2−3、2−4の調製》塗布液2−1の調製において使用したEm1に代えて、それぞれEm2、Em3、Em4を用いた以外は、塗布液2−1の調製と同じにして塗布液2−2、2−3、2−4を調製した。
【0114】Em1:末端及び側鎖に水酸基を有するアミノ変性エマルジョン商品名 SM8702C(東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製)
Em2:アルコール変性エマルジョン商品名 SM8706(東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製)
Em3:アミノ変性エマルジョン商品名 BY−22−816(東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製)
Em4:ジメチルポリシロキサン商品名 BY−22−839(東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製)
〔記録用紙100の作製〕多孔質基材に、塗布液2を湿潤膜厚が50μm、塗布液1を湿潤膜厚が105μmになるように同時塗布し、約7℃に一度冷却した後に、20〜65℃の風を吹き付けて乾燥し、記録用紙100(比較例)を作製した。このようにして形成される空隙層の乾燥膜厚は38μmであった。
【0115】〔記録用紙101〜104の作製〕記録用紙100の作製において使用した塗布液2を、塗布液2−1、2−2、2−3、2−4に代える以外は、記録用紙100の作製と同じにして、記録用紙101、102、103、104を作製した。このようにして形成される空隙層の乾燥膜厚は38μmであった。
【0116】〔記録用紙105の作製〕シリカ分散液1の調製において使用した気相法シリカ(日本アエロジル製;アエロジル200)に代えて、湿式法シリカ(トクヤマ社製:ファインシールX−37、一次粒子の平均粒径2.7μm)を使用した以外は、シリカ分散液1の調製と同じにしてシリカ分散液1aを調製し、これを用いる以外は、記録用紙101の作製と同じにして記録用紙105を作製した。
【0117】〔記録用紙の評価〕
(1)インク吸収性の評価各記録用紙に、セイコーエプソン社製インクジェットプリンター・PM800Cで緑のベタ印字を行い、印字直後の印字部分を指でこすって画像の乱れを目視評価した。評価は以下の4段階で行った。
【0118】
◎:指でこすってもまったく画像の乱れがない○:指でこするとわずかに画像が乱れる△:やや画像がこすれて汚れるが、実用可能×:画像がこすれて汚れてしまい、実用上許容範囲外(2)最高濃度の評価セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンター・PM800Cを用い、イエロー、マゼンタ及びシアンのベタ印字を行い、反射濃度をそれぞれ青、緑、赤の単色光にて測定した。
【0119】(3)滲み耐性セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンター・PM770Cを用い、K(黒)の細線(線幅=約200μm)をプリントし、40℃、相対湿度80%で5日間保存した。保存前後で細線の滲みを下記基準で判断した。
【0120】
A:滲みは発生なく、美観を損なわないB:滲みは発生が小さく、美観を損なうことはないC:滲みが発生し、美観を損なう(4)平滑性の評価未印字のシート面を、JIS B 0601に規定される方法で測定し、中心線表面粗さ(いずれも基準長2.5mm、カットオフ値0.8mmで測定した)を求め、下記基準で判定した。品質上問題にならないのはA及びBである。
【0121】A:中心線表面粗さRaが1.0μm未満であり、美観を損なわないB:中心線表面粗さRaが1.0〜1.5μmであり、美観を損なうことはないC:中心線表面粗さRaが1.5μmよりも大きく、美観を損なう。
【0122】
【表1】

【0123】本発明に係るエマルジョンを使用した記録用紙101、102、103は、該エマルジョンを使用しなかった記録用紙100に比べて、画像濃度や平滑性はほぼ同等であるが、インク吸収性及び画像滲みが顕著に良好である。
【0124】また、記録用紙101、102、103は、比較エマルジョンを使用した記録用紙104に比べて、インク吸収性や画像滲みはやや良好であるが、画像濃度は良好であり、特に平滑性が顕著に良好である。
【0125】従って、本発明に係るエマルジョンを使用した記録用紙では、インク吸収性、画像濃度、画像滲み、及び平滑性が全て良好である。
【0126】一方、上側のインク受容層に、平均粒径3〜200nmの合成非晶質シリカを使用した記録用紙101、102、103は、粒径が大きい合成非晶質シリカを使用した記録用紙105に比べて、評価した全ての性能において顕著に優れており、本発明に係るエマルジョンとシリカを使用した場合に、本発明の効果が顕著に表れることが理解できる。
【0127】実施例2《塗布液1−1の調製》実施例1で調製したシリカ分散液2−1を使用して、下記の塗布液を調製した。
【0128】シリカ分散液2−1の650mLに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
【0129】
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液 234mL Em1 5.2g 界面活性剤(S−1)30%溶液 4mL アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ製;
UVITEX NFW LIQUID9)の10%液 10mL純粋で全量を1000mLに仕上げる。
【0130】《塗布液1−2の調製》塗布液1−1の調製において使用したEm1に代えてEm2を用いた以外は、塗布液1−1の調製と同じにして塗布液1−2を調製した。
【0131】〔記録用紙201、202の作製〕多孔質基材に、塗布液2−1を湿潤膜厚が50μm、塗布液1−1を湿潤膜厚が105μmになるように同時塗布し、約7℃に一旦冷却した後に20〜65℃の風を吹き付けて乾燥し、記録用紙201を作製した。このようにして形成される空隙層の乾燥膜厚は38μmであった。
【0132】多孔質基材に、塗布液2−2を湿潤膜厚が50μm、塗布液1−2を湿潤膜厚が105μmになるように同時塗布し、約7℃に一旦冷却した後に20〜65℃の風を吹き付けて乾燥し、記録用紙202を作製した。このようにして形成される空隙層の乾燥膜厚は38μmであった。
【0133】〔記録用紙100、101、201、202の評価〕
(1)平滑性の評価;実施例1における評価と同じ(2)低湿環境下での搬送時ひび割れの評価23℃、相対湿度20%で3日間保存した後、セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンター・PM770Cを用いて印字し、未印字部の記録面の状態について、シートの表面を肉眼により下記基準で判定した。
【0134】A:損傷がないB:記録面に目立たない程度のひびが生ずるC:記録面にひびが生じて、美観を損なう【0135】
【表2】

【0136】本発明に係るエマルジョンを下層に使用し、上層に使用しない記録用紙101に比べて、下層にも上層にも使用した記録用紙201及び202は、平滑性は本発明の記録用紙の内ではやや低めであるものの、低湿時の搬送ひび割れが非常に良好であり好ましい。
【0137】また、本発明に係るエマルジョンをいずれの層にも使用しない記録用紙100に比べ、記録用紙201、202は低湿時の搬送ひび割れが顕著に良好であることがわかる。
【0138】実施例3《塗布液3−1、4−1、5−1、6−1の調製》実施例1で調製した塗布液2−1に代えて、下層におけるポリビニルアルコールの量がシリカの量に対し質量比で表3の値になるように、ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液を加える以外は、塗布液2−1の調製と同じにして、塗布液3−1、4−1、5−1、6−1を調製した。
【0139】〔記録用紙301、401、501及び601の作製〕実施例1で作製した記録用紙101で使用した塗布液2−1に代えて、塗布液3−1、4−1、5−1、6−1を使用する以外は、記録用紙101の作製と同じにして記録用紙301、401、501、601を作製した。
【0140】各記録用紙について、インク吸収性、画像濃度、画像滲み、平滑性及び低湿時の搬送ひび割れについて前述の方法で評価した。
【0141】
【表3】

【0142】下層のバインダーの全てを、本発明に係るエマルジョンを使用した本発明の記録用紙101に比べ、下層にポリビニルアルコールを含有させた本発明の記録用紙301、401、501、601は、その含有量が少ないほうが各評価において良好であり、下層のポリビニルアルコールに対するシリカの含有率が20未満になると、インク吸収性等の評価がやや劣るものの、実用可能な記録用紙ができた。
【0143】特に、下層に本発明に係るエマルジョンを使用しなかった記録用紙100に比べると、各性能とも顕著に良好であることがわかる。
【0144】
【発明の効果】本発明によって、インク吸収性が良く、画像濃度が高く、且つ画像の滲みが少なく、物性的には平滑性が良好で、低温時のひび割れの少ないインクジェット記録用紙を提供することができた。
【出願人】 【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカ株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿1丁目26番2号
【出願日】 平成13年11月16日(2001.11.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−145919(P2003−145919A)
【公開日】 平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願番号】 特願2001−351412(P2001−351412)