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【発明の名称】 孔版印刷機の原版挟持装置
【発明者】 【氏名】中村 智哉
【住所又は居所】和歌山県那賀郡粉河町大字上田井353番地 デュプロ精工株式会社内

【要約】 【課題】より大きな原版挟持力を有する折り返し型原版挟持装置を提供する。

【解決手段】原版50の先端部が可動挟持板30の下面33側で挟持されているとともに、可動挟持板30で挟持された原版50の残りの部分が、可動挟持板30の前面で版胴10の回転方向後方に向けて折り返されている孔版印刷機の原版挟持装置において、原版50を摩擦係止する摩擦係止面60が、可動挟持板30の前面34及び上面35の少なくとも一方に設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 原版(50)の先端部が可動挟持板(30)の下面(33)側で挟持されているとともに、可動挟持板(30)で挟持された原版(50)の残りの部分が、可動挟持板(30)の前面で版胴(10)の回転方向後方に向けて折り返されている孔版印刷機の原版挟持装置において、原版(50)を摩擦係止する摩擦係止面(60)が、可動挟持板(30)の前面(34)及び上面(35)の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする、孔版印刷機の原版挟持装置。
【請求項2】 原版(50)の先端部が可動挟持板(30)の下面(33)側で挟持されているとともに、可動挟持板(30)で挟持された原版(50)の残りの部分が、可動挟持板(30)の前面で版胴(10)の回転方向後方に向けて折り返されている孔版印刷機の原版挟持装置において、原版(50)を摩擦係止する摩擦係止面(60)が、可動挟持板(30)の上面(35)に貼着された弾性シートによって構成されていることを特徴とする、孔版印刷機の原版挟持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、孔版印刷機の原版挟持装置に関する。本発明は、詳細には、その先端部が可動挟持板で挟持された原版が、可動挟持板の前面で折り返されるとともに、版胴の回転方向後方に向けて版胴の外周面上に巻き回される原版挟持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】孔版印刷機では、穿孔製版された原版が、版胴の外周面と可動挟持板との間で着脱自在に挟持されている。例えば、実公平1−26463号公報に記載された原版挟持装置では、原版の先端部が、磁石板の貼着された可動挟持板と版胴の強磁性体からなる挟持台座との間で磁力によって挟持されるとともに、可動挟持板で挟持された原版の残りの部分が、版胴の回転方向後方に向けてストレートに延在している。可動挟持板の下面に貼着された磁石板と原版の先端部との間で働く磁性挟持力によって、原版の先端部が可動挟持板の磁石板と版胴の挟持台座との間で挟持・固定されている。
【0003】また、特開平6−255225公報には、可動挟持板の磁石板取付部に高摩擦部材(弾性部材)を設けることによって原版に対する摩擦挟持力を高めたストレート型原版挟持装置が開示されている。しかしながら、上記構成の原版挟持装置においては、高摩擦部材の介在する状態で原版が可動挟持板で挟持されているので、磁石板取付部と挟持台座との間隔が広がり、原版に働く磁性挟持力が低下してしまう。磁性挟持力に依存した摩擦挟持力も低下するために、結果的には、磁性挟持力及び摩擦挟持力からなる原版挟持力は増強されてはいない。
【0004】これに対して、特開昭63−306043号公報に記載された原版挟持装置では、原版の先端部が可動挟持板の下面に貼着されたゴム磁石板と版胴の台座との間で磁性で挟持されているとともに、可動挟持板で挟持された原版の残りの部分が可動挟持板の前面で回転方向後方に向けて折り返されている。この折り返し型原版挟持装置では、可動挟持板のゴム磁石板による磁性挟持力及び可動挟持板の前面での折り返し係止力の二つの挟持力が働くので、ストレート型原版挟持装置のものより、原版挟持力が増強されている。
【0005】原版挟持力が弱い場合には、印刷枚数が多くなるにしたがって、版胴に対する原版の位置ずれが生じやすくなる。これに対して、原版挟持力が大きければ大きいほど、版胴に対する原版の位置ずれが生じにくくなるので、高精度な孔版印刷を安定して行うことができる。したがって、より大きな原版挟持力を有する折り返し型原版挟持装置が要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、より大きな原版挟持力を有する折り返し型原版挟持装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段・作用・効果】上記技術的課題を解決するために、本発明は、原版の先端部が可動挟持板の下面側で挟持されているとともに、可動挟持板で挟持された原版の残りの部分が、可動挟持板の前面で版胴の回転方向後方に向けて折り返されている孔版印刷機の原版挟持装置において、原版を摩擦係止する摩擦係止面が、可動挟持板の前面及び上面の少なくとも一方に設けられていることを特徴としている。
【0008】上記構成によれば、可動挟持板の下面側すなわち版胴対向面側での磁性挟持力と、前面での折り返しによる係止力とによって原版が挟持されていることに加えて、可動挟持板の前面及び上面の少なくとも一方に設けられた摩擦係止面によって、原版が摩擦係止されている。磁性挟持力、折り返し係止力及び摩擦係止力の三者が原版に働いているので、原版挟持力が増強されている。したがって、印刷枚数が多くなっても、版胴に対する原版の位置ずれが生じにくいので、高精度な孔版印刷を安定して行うことができる。
【0009】原版の先端部が可動挟持板の下面側で挟持されているとともに、可動挟持板で挟持された原版の残りの部分が、可動挟持板の前面で版胴の回転方向後方に向けて折り返されている孔版印刷機の原版挟持装置において、原版を摩擦係止する摩擦係止面が、可動挟持板の上面に貼着された弾性シートによって構成されている。
【0010】摩擦係止面は、例えば、可動挟持板それ自身の前面及び上面の少なくとも一方が凹凸を有するように凹凸加工を施したり、予め凹凸加工されて部材を可動挟持板の前面及び上面の少なくとも一方に貼着したりすることによって作り出すことができる。上記構成によれば、弾性シートを可動挟持板の上面に貼着することによって、比較的大面積の摩擦係止面が容易且つ安価に作り出すことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の第1実施形態に係る孔版印刷機の原版挟持装置について、図1〜3に従って、詳細に説明する。
【0012】まず、図1を用いて、孔版印刷機の版胴10について説明する。
【0013】不図示の孔版印刷機に組み込まれる版胴10は、円筒状の多孔性ドラム本体12と、ドラム本体12の両端部に設けられた略リング状の案内周縁部14とを有している。版胴回転軸を中心に矢印Rの向きに回転するドラム本体12の内部には、不図示のインキ供給装置が設けられている。版胴10が回転すると、インキがドラム本体12の外周面から滲み出てくる。ドラム本体12の外周面上には、版胴回転軸方向に延在する挟持台座20が取付けられている。挟持台座20は磁性を有する材料、例えば鋼板等からなる。挟持台座20に対して可動挟持板30が対向配置されている。
【0014】可動挟持板30は、図1及び2に示すように、版胴回転軸方向に延在する長手で板状の挟持板本体32と、挟持板本体32の両端に設けられた軸支部31とを有する。挟持板本体32は軸支部31より版胴回転方向Rの前方側に延在している。したがって、挟持板本体32は軸支部31より前方に突出している。挟持板本体32の版胴回転方向Rの後方側には、版胴回転軸方向に切り欠かれた切欠部36が形成されている。軸支部31は、案内周縁部14の上に設けられた軸支部材16によって、遥動自在に軸支されている。したがって、可動挟持板30は、遥動軸37を中心にして遥動する。
【0015】可動挟持板30の下面33すなわち版胴対向面には、回転軸方向に延在する磁石シート40が貼着されている。磁石シート40の幅寸法は、原版50をカバーできるように寸法構成されている。磁石シート40は、ラバーマグネットやプラスチックマグネット等から構成される。可動挟持板30の磁石シート40は、磁気引力によって、強磁性体からなる挟持台座20の方に引き付けられる。
【0016】図3に示すように、可動挟持板30の上面35すなわち反版胴対向面には、摩擦係止面60が設けられている。摩擦係止面60の幅寸法は、原版50をカバーできるように原版50の幅寸法より大きい。
【0017】摩擦係止面60は、上面35を基準面とすると、上面35よりわずかに高く突出した凸部62及び/又は上面32よりわずかに深く凹んだ凹部62が点在した凹凸部62を含んでいる。すなわち、凸部及び凹部の少なくとも一方を含む凹凸部62が上面32の所定の領域全体にわたって形成されている。凸部及び凹部は、平面視、例えば、円、方形、扇形、ハート形、T字形、L字形あるいは星形の様々な形状をしている。円や方形等の形状をした凹凸部62は、可動挟持板30の上面35に対して、フライス加工、放電加工、レーザー加工等の機械的加工を単独で用いること又はそれらを組合せることによって、あるいはエッチング等の化学的加工を施すことによって、規則的に又は不規則に形成される。
【0018】原紙は、ポリエステル等の非常に薄い熱可塑性樹脂フィルムと、和紙や不織布等の多孔質の可撓性支持体とを貼着したラミネート構造をしている。また、原紙は、ポリエステル等の非常に薄い熱可塑性樹脂フィルム単体で使用することもできる。このような原紙に対してサーマルヘッド等の発熱素子(不図示)を当接させて発熱素子を発熱させることによって、熱可塑性樹脂フィルムに微小な穿孔が形成される。原紙を穿孔製版することによって、所望の原版50が得られる。
【0019】図2は、原版50の先端の余白部が可動挟持板30で挟持されている状態を示す拡大説明図である。図2において、原版50は一点鎖線で表わされている。版胴10は、回転方向Rの方向(図2においては反時計回り)に回転する。
【0020】版胴10が回転して所定の開位置に至ると、可動挟持板30が遥動軸37を中心に時計回りに回転して、可動挟持板30が開かれる。不図示の給版ローラーによって、図2の左手から挟持台座20と可動挟持板30との間に向けて、原版50が送り出されて、原版50の先端の余白部が挟持台座20と可動挟持板30との間に挿入される。そのあと、可動挟持板30が遥動軸37を中心に反時計回りに回転して、可動挟持板30が閉じられる。可動挟持板30が閉じられたとき、可動挟持板30の磁石シート40と挟持台座20との間には磁気引力が働く。したがって、原版50の下係止部51は、磁性挟持力によって、挟持台座20と可動挟持板30との間で挟持される。
【0021】この状態で版胴10が回転方向Rの方向にさらに回転すると、原版50は、可動挟持板30の前面34において折り返されて反転し、可動挟持板30の上面35及びドラム本体12の外周面に沿って巻き回される。すなわち、原版50の余白部である、下係止部51、前面係止部52、上係止部53及び非接触部54において、下係止部51、前面係止部52、上係止部53は、それぞれ、磁石シート40の下面42、可動挟持板30の前面34、可動挟持板30の上面35に当接する一方で、穿孔の形成された孔版印刷部55がドラム本体12の外周面に当接する。
【0022】原版50は、磁石シート40の下面42と可動挟持板30の前面34との境界である下エッジと、可動挟持板30の前面34と上面35との境界である上エッジとにおいてそれぞれ折り返される。したがって、原版50の前面係止部52において、折り返し係止力が働く。
【0023】可動挟持板30の上面35には、凹凸部62が形成されている。そして、原版50の先端の余白部が係止されているとともに、原版50の上係止部53は後方に引張られているので、上面35の凹凸部62と原版50の上係止部53との間には、摩擦係止力が働いている。したがって、上面35が摩擦係止面60として機能している。
【0024】このように、可動挟持板30の下面33側すなわち版胴対向面側での磁性挟持力と、前面34での折り返しによる折り返し係止力とに加えて、可動挟持板30の上面35の上に設けられた摩擦係止面60による摩擦係止力によって、原版50が摩擦係止されている。磁性挟持力、折り返し係止力及び摩擦係止力の三者が原版50に働いているので、原版挟持力が増強されている。したがって、印刷枚数が多くなっても、版胴10に対する原版50の位置ずれが生じにくいので、高精度な孔版印刷を安定して行うことができる。
【0025】次に、本発明の第2実施形態に係る可動挟持板30について、図4を参照しながら説明する。
【0026】可動挟持板30の上面35に形成された摩擦係止面60の幅寸法は、原版50をカバーできるように原版幅寸法より大きく、摩擦係止面60が所定の領域全体にわたって形成されている。
【0027】図3に示した第1実施形態に係る摩擦係止面60と比較して、第2実施形態に係る可動挟持板30では、その上面35に設けられた摩擦係止面60の形態が異なっている。図4に示した摩擦係止面60は、上面35を基準面とすると、摩擦係止面60は、上面35よりわずかに突出した凸部62及び/又は上面32よりわずかに凹んだ凹部62を含む凹溝・凸条部64によって構成されている。凹溝・凸条部64は、版胴10の回転軸方向に延在する凹溝形状、凸条形状をしている。凹溝・凸条部64は、可動挟持板30の上面35に対して、フライス加工、研削加工、放電加工、レーザー加工等の機械的加工を施すことによって、あるいはエッチング等の化学的加工を施すことによって、形成される。
【0028】上述した第1実施形態と同様に、凹溝・凸条部64を有する上面35が摩擦係止面60として機能するので、上面35と原版50の上係止部53との間には、摩擦係止力が働く。したがって、可動挟持板30の下面33側すなわち版胴対向面側での磁性挟持力と、前面34での折り返しによる折り返し係止力とに加えて、可動挟持板30の上面35の上に設けられた摩擦係止面60による摩擦係止力によって、原版50が摩擦係止される。磁性挟持力、折り返し係止力及び摩擦係止力の三者が原版50に働いているので、原版挟持力が増強されている。したがって、印刷枚数が多くなっても、版胴10に対する原版50の位置ずれが生じにくいので、高精度な孔版印刷を安定して行うことができる。
【0029】本発明の第3実施形態に係る可動挟持板30について、図5を参照しながら説明する。
【0030】可動挟持板30の上面35に形成された摩擦係止面60の幅寸法は、原版50をカバーできるように原版50の幅寸法より大きい。
【0031】図4に示した第2実施形態に係る摩擦係止面60と比較して、第3実施形態に係る可動挟持板30では、その上面35に設けられた摩擦係止面60の形態が異なっている。図5に示した摩擦係止面60は、第2実施形態に係る摩擦係止面60と同様に、版胴10の回転軸方向に延在する凹溝形状、凸条形状をした凹溝・凸条部64を含んでいる。摩擦係止面60は、版胴10の回転方向の全体にわたって形成されているのではなく、版胴10の回転方向に部分的に形成された形態をしている。
【0032】上述した第2実施形態と同様に、凹溝・凸条部64を有する上面35が摩擦係止面60として機能するので、上面35と原版50の上係止部53との間には、摩擦係止力が働く。したがって、可動挟持板30の下面33側すなわち版胴対向面側での磁性挟持力と、前面34での折り返しによる折り返し係止力とに加えて、可動挟持板30の上面35の上に設けられた摩擦係止面60による摩擦係止力によって、原版50が摩擦係止される。磁性挟持力、折り返し係止力及び摩擦係止力の三者が原版50に働いているので、原版挟持力が増強されている。したがって、印刷枚数が多くなっても、版胴10に対する原版50の位置ずれが生じにくいので、高精度な孔版印刷を安定して行うことができる。
【0033】本発明の第4実施形態に係る可動挟持板30について、図6を参照しながら説明する。
【0034】可動挟持板30の上面35に形成された摩擦係止面60の幅寸法は、原版50をカバーできるように原版50の幅寸法より大きい。
【0035】図3に示した第1実施形態に係る摩擦係止面60と比較して、第4実施形態に係る可動挟持板30では、その上面35に設けられた摩擦係止面60の形態が異なっている。図5に示した摩擦係止面60は、第1実施形態に係る摩擦係止面60と同様に、平面視、例えば、円、方形、扇形、ハート形、T字形、L字形あるいは星形の様々な形状をした凹凸部62を含んでいる。摩擦係止面60は、版胴10の回転方向の全面にわたって形成されているのではなく、版胴10の回転方向に部分的に形成された形態を有している。
【0036】上述した第1実施形態と同様に、摩擦係止面60を含む上面35によって、上面35と原版50の上係止部53との間には、摩擦係止力が働く。したがって、可動挟持板30の下面33側すなわち版胴対向面側での磁性挟持力と、前面34での折り返しによる折り返し係止力とに加えて、可動挟持板30の上面35の上に設けられた摩擦係止面60による摩擦係止力によって、原版50が摩擦係止される。磁性挟持力、折り返し係止力及び摩擦係止力の三者が原版50に働いているので、原版挟持力が増強されている。したがって、印刷枚数が多くなっても、版胴10に対する原版50の位置ずれが生じにくいので、高精度な孔版印刷を安定して行うことができる。
【0037】次に、本発明の第5実施形態に係る可動挟持板30について、図3〜6を参照しながら説明する。
【0038】上述した第1〜第4の実施形態では、いずれも、可動挟持板30それ自身を加工することによって、摩擦係止面60が可動挟持板30の上に形成されている。それに対して、第5実施形態では、摩擦係止面60を有する摩擦係止部材が可動挟持板30の上に貼着されている。
【0039】摩擦係止面60を与える摩擦係止部材としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマーシートやシリコン系ゴムシートやシリコンゲルシート等の弾性シート、軟質塩化ビニル等の熱可塑性樹脂シート、まくれ(バーリング:burring)加工した金属薄板等が使用される。ポリオレフィン系エラストマーシートやシリコン系ゴムシートやシリコンゲルシート等の弾性シートは、そのままの未加工のフラット状態や、表面を凹凸加工した状態で使用することができる。
【0040】可動挟持板30の上面35に形成された摩擦係止面60の幅寸法は、原版50をカバーできるように原版50の幅寸法より大きい。一枚ものの摩擦抵抗部材を、図3及び4のように、版胴10の回転方向の全体にわたって可動挟持板30の上に貼着することもできる。また、図5及び6のように、回転軸方向に延在する短冊状の摩擦抵抗部材を、版胴10の回転方向に沿って、可動挟持板30の上に複数枚貼着することもできる。
【0041】次に、本発明の第6実施形態に係る可動挟持板30について説明する。
【0042】第1の実施形態で説明したように、可動挟持板30の下面33すなわち版胴対向面には、回転軸方向に延在する磁石シート40が貼着されているが、熱収縮チューブによって磁石シート40が可動挟持板30に対して一体的に密着接合される。
【0043】熱収縮チューブは、熱可塑性樹脂をチューブ状に押出成形加工し、軟化温度と融点との間の適切な温度で径方向に延伸加工したあと、その状態で冷却したものであり、延伸加工温度以上に加熱すると元の寸法に戻る性質を有している。熱収縮チューブとしては、ポリ塩化ビニル系、ポリエチレン系、ポリプリピレン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、フッ素樹脂系等の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0044】熱収縮チューブは、チューブ全体を熱収縮させるとき、熱変形によってチューブ表面が滑らかになる。したがって、所望の大きさの凹凸より大きめの凹凸を熱収縮チューブ上に事前に形成しておくことによって、熱収縮後でも所望の大きさの凹凸が残存する。
【0045】あるいは、熱収縮チューブの下面すなわち挟持面を局所的に加熱することによって、熱収縮チューブの上面すなわち摩擦係止面60が熱変形の影響を受けないようにすることもできる。その結果、熱収縮チューブの上面すなわち摩擦係止面60には、もともとの大きさの凹凸が残存する。
【0046】熱収縮チューブ上に形成される凹凸部62としては、平面視、円、方形、扇形、ハート形、T字形、L字形あるいは星形の様々な形状の中から選択された凹凸が規則的又は不規則に点在したものや、回転軸方向に延在する凹溝形状、凸条形状が回転方向に整列配置されたものが使用される。
【0047】熱収縮チューブをそのまま使用した場合、チューブ表面が平滑であるために、摩擦係止力がほとんど働くことはない。これに対して、熱収縮チューブの上面に凹凸部62を形成することによって、熱収縮チューブの上面が摩擦係止面60になり、摩擦係止力が働く。
【0048】
【実施例】本発明に係る可動挟持板30の摩擦係止効果を、以下の方法で定量的に測定した。
【0049】まず、表1に示すように、高摩擦抵抗部材が異なった三種類の可動挟持板30を準備した。すなわち、表1において、実験1〜4は、それぞれ、ゴムシートを貼着していないもの(比較のための従来例)、可動挟持板30の上面35の上に未加工でフラットなゴムシートをそのまま貼着したもの(本発明)、可動挟持板30の上面35の上に凹凸加工したゴムシートを貼着したもの(本発明)、可動挟持板30の上面35の上に凹凸加工したゴムシートを貼着したもの(本発明)である。実験で用いたゴムシートは、ニトリル系ゴムシート(亀戸ゴム工業製、NBR-(M・B)-610)である。このゴムシートは、厚さが0.2mm、硬さ(JIS-A)が60である。
【0050】原版50の余白部を可動挟持板30と挟持台座20との間に挟持させた状態で、原版50を折り返すように反転させ、原版50をドラム本体12の外周面に沿って巻き回した。そのあと、ドラム本体12の外周面及び原版50にまたがるように、回転軸方向に延在する1本線の基準マークを書き記した。原版50の巻き回された版胴10を孔版印刷機に組み込んだあと、通常の孔版印刷と同じようにして、所定枚数の孔版印刷を行った。所定枚数の孔版印刷を行ったあと、ドラム本体12の外周面及び原版50における基準マークの位置ずれ量を測定し、その結果を表1に示した。
【0051】

【0052】表1からわかるように、本発明に係る原版挟持装置の可動挟持板を用いた場合(実験2〜4)、いずれも、印刷枚数が多くなっても、版胴10に対する原版50の位置ずれがほとんど生じていなかった。したがって、高精度な孔版印刷を繰り返し行うことができた。
【0053】なお、上述した実施形態のいずれにおいても、摩擦係止面60は、可動挟持板30の上面35に設けられているが、原版50が直接に接触する前面34及び上面35の少なくとも一方に設けることができる。また、高摩擦抵抗部材は、実施例で用いたニトリルゴムシートに限定されるものではない。高摩擦抵抗部材としては、例えば、天然ゴム、ブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム等の各種ゴムシート、シリコンゲルシート等の弾性シート、あるいは軟質塩化ビニル等の熱可塑性樹脂シート等を用いることができ、特に、耐油性の優れたクロロプレン系ゴム、ニトリル系ゴム、アクリル系ゴム、フッ素系ゴム、フロロシリコン系ゴム、パーフロロ系ゴム等が好ましい。
【出願人】 【識別番号】390002129
【氏名又は名称】デュプロ精工株式会社
【住所又は居所】和歌山県那賀郡粉河町大字上田井353番地
【出願日】 平成14年5月16日(2002.5.16)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外3名)
【公開番号】 特開2003−326821(P2003−326821A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−141249(P2002−141249)