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【発明の名称】 インクジェット記録装置用の脱気装置及び脱気方法
【発明者】 【氏名】藤村 秀彦
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号キヤノン株式会社内

【要約】 【課題】インクジェット記録装置用インク中の溶存気体の効率を上げて除去し、インクを安定に吐出可能にする方法を提供する。

【解決手段】気体透過性のある膜を介して、インクと対向する空間を大気圧以下に減圧することによりインク中の溶存気体を除去する方法において、気体透過性のある膜を加熱し脱気効率をあげる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 気体透過性のある膜を介してインクと対向する空間を大気圧以下に減圧することによりインク中の溶存気体を除去可能な脱気装置であって、気体透過性のある膜を加熱できる加熱機構を具備することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気装置。
【請求項2】 請求項1において、前記気体透過性のある膜の温度を制御する機構を具備することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気装置。
【請求項3】 請求項1において、前記気密透過性のある膜を含む脱気エレメントからインクジェットヘッドのインク流路チューブの一部を冷却する冷却機構を具備することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気装置。
【請求項4】 気体透過性のある膜を介してインクと対向する空間を大気圧以下に減圧することによりインク中の溶存気体を除去可能な脱気装置であって、気体透過性のある膜を加熱することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気方法。
【請求項5】 請求項4において、前記気体透過性のある膜の温度を制御することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気方法。
【請求項6】 請求項4において、前記気密透過性のある膜を含む脱気エレメントからインクジェットヘッドのインク流路チューブの一部を冷却することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インク吐出量を高精度に安定に制御するためのインクジェット記録装置用の脱気装置及び脱気方法に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録方法においてインク中に溶存している気体が吐出工程中に気泡に成長することがあり、その気泡が吐出状態の変動要因となることがある。そのため、インクを安定に吐出させるためには、インクジェットヘッドに供給するインク中の溶存気体を除去することが重要である。そこで、インクジェット記録において特に吐出量の変動を抑える必要のあるものに対して、インクジェットヘッドのインク供給経路の途中に脱気装置を組み込みインク中の溶存気体を取り除く構成が考えられている。
【0003】例えば、インクジェット記録用インクの脱気方法として、気体透過性のある膜を介して、インク中の溶存酸素を外部へ透過させ除去する方法が、特開平5−17712号公報に開示されている。これは、圧電素子を用いてインク吐出エネルギーを得るインクジェット記録装置においてインクの脱気を行うものであり、その効果は圧縮室内のインクの急激な圧縮を繰り返し行ってもキャビテーションが発生せず、キャビテーションに起因するインク不吐出などの印字不良が発生することがないということである。その具体的な脱気方法は、インクの脱気装置として、気体透過性のある膜からなるチューブ内をインクを通過させ、チューブ外の空間を真空に減圧することにより、インク中の溶存気体をチューブ外除去することによりインクを脱気するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のインクジェット記録装置の脱気装置においては、脱気後のインクは全て描画に使用されることはほとんど無く、循環したインクは一端リザーバ(インクタンク)に保管される。リザーバの多くは大気に開放されており、ここでインクは再び気体を取り込んでしまう。そのため、吐出を安定に動作させるためには再び脱気工程が必須となる。ヘッドはインク吐出エネルギーをどのような手法で実施させるものでも吐出を行う事によりヘッドの温度が上昇する。ヘッド温度が上昇することにより、ヘッド特性及びインク粘度低下により吐出特性が変化する。また、インクはヘッドを通過させるためヘッド温度を一定温度に保つ役割も持つため、インクの温度を一定に保ち、かつ流量を一定以上にする事によりヘッド温度を一定に保つこともできる。そのため、インク吐出を安定に動作させるためには脱気インクの処理量を増加させることが望まれている。
【0005】一般に、ある一定以上の脱気処理を行うための脱気装置の能力は限られており単位時間に通過させるインクの量を増加させるためには、脱気装置を並列あるいは直列に接続することが考えられている。あるいは、特開平11−28307号記載の一つの脱気装置内のチャンバー内に2つ以上の脱気エレメントを付けてそれをシリーズに接続する方法も考えられている。しかし、これらの方法は、脱気装置が大きくなってしまったり、複雑になる等の問題を含んでいる。
【0006】本発明は、現状の脱気装置を簡単に脱気能力をあげるインク記録装置用の脱気装置および脱気方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決して、本発明の目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、完成に至ったものである。
【0008】すなわち本発明は、(1)気体透過性のある膜を介してインクと対向する空間を大気圧以下に減圧することによりインク中の溶存気体を除去可能な脱気装置であって、気体透過性のある膜を加熱できる加熱機構を具備することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気装置、(2)上記(1)において、前記気体透過性のある膜の温度を制御する機構を具備することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気装置、(3)上記(1)において、前記気密透過性のある膜を含む脱気エレメントからインクジェットヘッドのインク流路チューブの一部を冷却する冷却機構を具備することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気装置、である。
【0009】(4)気体透過性のある膜を介してインクと対向する空間を大気圧以下に減圧することによりインク中の溶存気体を除去可能な脱気装置であって、気体透過性のある膜を加熱することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気方法、(5)上記(4)において、前記気体透過性のある膜の温度を制御することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気方法、(6)上記(4)において、前記気密透過性のある膜を含む脱気エレメントからインクジェットヘッドのインク流路チューブの一部を冷却することを特徴とするインクジェット記録装置用の脱気方法、である。
【0010】(作用)本発明のインクジェットの脱気装置及び脱気方法によれば、真空に保持された脱気装置を加熱することにより、脱気装置内の気体透過性のある膜の気体透過性を向上することができる。それにより、脱気能力を向上することができるため、単位時間の脱気処理可能なインク量を増加させることができ、インクの吐出を安定に動作することができる。
【0011】(発明の構成)図1は、本実施例に用いたインクジェット記録用の脱気装置である。
【0012】図中、1はインクジェットヘッドであり、2はインク内の溶存気体を除去するための脱気ユニット、3は脱気ユニットを真空に保持するための排気ポンプである。5はインクを貯蔵するためのタンクであり、4はタンク中のインクをインク循環系に送液するための送液ポンプである。
【0013】まず、インクはタンク5に貯蔵され、ポンプ4によって脱気ユニット2に送られる。図2は脱気ユニットの一実施例を示す断面図である。この発明で使用される脱気ユニット2は真空チャンバー11のアダプター12に脱気エレメント10を挿通させることによって構成される。脱気エレメント10は複数の気体透過性のある膜から構成されている。真空チャンバー11には系内を減圧状態にするための真空ポンプ3が連結される排気コネクター13が形成されている。
【0014】ここで、気体透過性チューブとしては例えば非多孔質で気体透過性を有する材質から形成されるものが、液体を透過させにくいため良く使用される。非多孔質のものを用いることにより処理液の組成、濃度等の変化を最小限に抑えながら、処理液中に溶解されている気体を効率よく除去することができる。本実施例では、気体透過性チューブとしてフッ素樹脂(四フッ化エチレン)を採用したが、これに限定されるものではない。
【0015】8は脱気エレメントを加熱するためのヒータである。脱気エレメントの温度は熱電対9でモニターしている。フィードスルー14により脱気装置内の熱電対9と温度コントローラ(不図示)とを接続している。ヒータ8は温度コントローラに接続している。温度コントローラは、熱電対の温度9をある一定温度に制御するように、ヒータを制御している。
【0016】図1中、6はインク中の溶存酸素量を測定するための溶存酸素計である。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に実施例により、さらに本発明を説明する。但し、この発明は以下の実施例に限定されたものではない。
【0018】(実施例1)本実施例では図1の脱気装置を用い、インク種として純水を使用した。流量を50ml/min.とした。まず、真空チャンバー11を大気圧状態にして、脱気ユニット2において脱気工程をさせない初期の純水の溶存酸素量を測定しておく。その後、図1中の真空チャンバーに接続されているヒータ8及び熱電対9及び温度コントローラにより脱気エレメントを40℃に加熱制御した。40℃に制御した後、真空チャンバー内を真空ポンプで真空状態にし、脱気を行った。真空チャンバーの圧力は圧力計(不図示)で、40torrであった。脱気開始後30min.後の純水中の溶存酸素量を測定した。脱気効率を以下の式で算出した。
【0019】脱気効率(%)=(初期の溶存酸素量−脱気30min.後の溶存酸素量)/初期の溶存酸素量×100(比較例1)脱気装置図4を使用して、インク種及び流量は同一条件で行い、脱気エレメントを室温状態で同様の測定を行い脱気効率を算出した。
【0020】実施例1と比較例1の脱気効率を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】本実施例の脱気効率が向上し、効果は明白である。
【0023】(実施例2)本実施例は、図3に示す脱気装置を用いた。図中15はインクを冷却するための冷却機構である。なお、インクの温度を23℃に設定し、制御した。本実施例では、インク種としてクリアインクを採用した。クリアインクの成分は、純水70wt%/ジエチレングリコール30wt%である(但し、染料無)。流量を30ml/min.に設定。まず、真空チャンバー11を大気圧状態にして、脱気エレメントにおいて脱気工程をさせない初期の純水の溶存酸素量を測定しておく。その後、図1中の真空チャンバーに接続されているヒータ8及び熱電対9及び温度コントローラにより脱気エレメントを40℃に加熱制御した。40℃に制御した後、真空チャンバー内を真空ポンプで真空状態にし、脱気を行った。真空チャンバーの圧力は圧力計(不図示)で、40torrであった。脱気開始後30min.後のクリアインク中の溶存酸素量を測定した。
【0024】なお、本実施例ではヘッド1に熱電対(不図示)を接続し、ヘッド温度をモニターした。ヘッドは、脱気開始30min.後に吐出を開始した。吐出開始前の温度及び吐出開始30min.後のヘッド温度を測定した。また、吐出開始1min.後と吐出開始30min.後の50ドットの平均のインク主滴の速度を測定した。また、吐出開始20min.後の200ドットの吐出速度のバラツキも測定した。一般に、吐出速度と吐出量は相関があり速度が増すと吐出量も増加する。そのため、吐出量変動を吐出速度で間接的に計測できる。
【0025】(比較例2)脱気装置図4を用いて、インク種及び流量は同一条件で行い、測定項目も同様に行った。
【0026】(比較例3)脱気装置図4を使用して、インク種も同一条件で行い、流量を実施例1の脱気後の溶存酸素量と同一になるように少なくした。実際には、流量は21ml/min.となった。測定項目は、実施例2と同様に行った。
【0027】実施例2と比較例2、3の脱気効率及びヘッド温度及び吐出速度を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】同一インク流量では、本実施例の脱気効率が向上し、短期的吐出状態の変動も抑制できることがわかる。また、同一脱気効率では、流量が増やせるため長期変動を抑制できることもわかる。これは、ヘッド温度上昇が抑えることができたことの効果と考えられる。
【0030】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、真空に保持された脱気ユニット内の気体透過性のある膜を加熱することにより、気体透過性のある膜の気体透過性を向上することができる。それにより、脱気能力を向上することができるため、単位時間の脱気処理可能なインク量を増加させることができ、インクの吐出を安定に動作することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
【出願日】 平成14年5月30日(2002.5.30)
【代理人】 【識別番号】100090538
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 恵三 (外1名)
【公開番号】 特開2003−341083(P2003−341083A)
【公開日】 平成15年12月3日(2003.12.3)
【出願番号】 特願2002−157531(P2002−157531)