| 【発明の名称】 |
サーマルインクジェットヘッド及びサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】元 洋一 【住所又は居所】鹿児島県姶良郡隼人町内999番地3 京セラ株式会社鹿児島隼人工場内
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| 【要約】 |
【課題】記録紙に歪みの少ない鮮明な画像を形成することができ、しかも構成を簡素に維持しつつ記録速度の高速化にも供することが可能な高性能のサーマルインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】ベースプレート2の上面に、抵抗薄膜からなる多数の発熱素子3と、該発熱素子に電気的に接続される給電配線4とを被着させてなるヘッド基板1上に、前記発熱素子3に対応する多数のインク吐出孔8を有する天板7を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインク9を充填してなるサーマルインクジェットヘッドにおいて、前記発熱素子3の電気抵抗値は、対応するインク吐出孔8が、該インク吐出孔8の直下に位置する保護膜表面との間の距離が近いものほど大きな値に設定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】ベースプレートの上面に、抵抗薄膜からなる多数の発熱素子と、該発熱素子に電気的に接続される給電配線とを被着させ、これら発熱素子及び給電配線を保護膜で被覆してなるヘッド基板上に、前記発熱素子に対応する多数のインク吐出孔を有する天板を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインクを充填してなるサーマルインクジェットヘッドにおいて、前記発熱素子の電気抵抗値は、対応するインク吐出孔が、該インク吐出孔の直下に位置する保護膜の表面に対して近いものほど大きな値に設定されていることを特徴とするサーマルインクジェットヘッド。 【請求項2】前記発熱素子の電気抵抗値は、パルストリミング法により調整されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルインクジェットヘッド。 【請求項3】ベースプレートの上面に、抵抗薄膜からなる多数の発熱素子と、該発熱素子に電気的に接続される給電配線とを被着させ、これら発熱素子及び給電配線を保護膜で被覆してなるヘッド基板上に、前記発熱素子に対応する多数のインク吐出孔を有する天板を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインクを充填して成るサーマルインクジェットヘッドにおいて、前記発熱素子の電気抵抗値が下記工程1乃至工程3を経て調整されることを特徴とするサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法。 工程1:前記インク吐出孔と、その直下に位置する保護膜表面との間の距離を個々に測定する工程。 工程2:工程1で測定されたインク吐出孔と保護膜表面との間の距離に対応するトリミングパルスを選択する工程。 工程3:工程2で選択したトリミングパルスを対応する発熱素子に印加して発熱素子の電気抵抗値を調整する工程。 【請求項4】前記給電配線の途中で、かつインクの充填領域外に設けられたトリミング用のパッドを介してトリミングパルスが対応する発熱素子に印加されることを特徴とする請求項3に記載のサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像を形成するサーマルインクジェットヘッド及びサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法に関するものである。【0002】 【従来の技術】従来より、記録紙にインク滴を所定パターンに付着させて画像を形成するものとしてインクジェットヘッドが用いられている。 【0003】インクジェットヘッドの記録方式には、インク滴を記録紙に向けて吐出させるのに発熱素子の発する熱エネルギーを利用するものや圧電素子の変形を利用するもの、更には電磁波の照射に伴って発生する熱を利用するもの等があり、これらの中でも発熱素子の熱エネルギーを利用するサーマルインクジェットヘッドタイプのものは、発熱素子のパターニングが容易である上に、小さな面積の発熱素子であっても、比較的大きな熱エネルギーを発生させることが出来ることから、高密度記録に適したものとして注目されている。 【0004】かかる従来のサーマルインクジェットヘッドは、図7に示す如く、単結晶シリコンから成るベースプレート22の上面に、直線状に配列された多数の発熱素子23と、該発熱素子23に電気的に接続される給電配線24とを被着してなるヘッド基板21上に、前記発熱素子23と1対1に対応する多数のインク吐出孔28を有する天板27を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインク29を充填した構造のものが知られており、記録紙を天板27の外表面に沿って搬送しながら、多数の発熱素子23を外部からの画像データに基づいて個々に選択的に発熱させ、発熱素子23上のインク29中に気泡Aを発生させるとともに、該発生した気泡Aの圧力でもって発熱素子23上のインク29をインク吐出孔28側へ押し上げ、これをインク滴iとしてインク吐出孔28より外部に向けて吐出させて記録紙に付着させることにより所定の画像が記録される。 【0005】尚、前記発熱素子23及び給電配線24は、従来周知の薄膜形成技術、具体的にはTaSiO等の抵抗材料とアルミニウム等の金属材料を従来周知のスパッタリングによりベースプレート22の上面に順次被着させることによって抵抗薄膜及び金属薄膜から成る積層体を形成し、これを従来周知のフォトリソグラフィー及びエッチング(フォトエッチング)技術にて所定パターンに微細加工することにより形成されていた。 【0006】また、これら発熱素子23及び給電配線24を被覆する保護膜26は、例えば、従来周知のスパッタリングや真空蒸着法,プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等を採用することにより、発熱素子23や給電配線24等の表面にSiO2(酸化珪素)やSiON,Si3N4(窒化珪素)等の無機質材料を所定厚みに被着させることによって形成されていた。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したサーマルインクジェットヘッドにおいては、発熱素子23や保護膜26,天板27等を形成する際に、成膜条件や製造条件のバラツキ等に起因して抵抗薄膜や保護膜26,天板27の厚みが発熱素子23の配列方向に沿って異なることがある。 【0008】しかしながら、発熱素子23の発熱によってインク中に発生した気泡からの圧力は、保護膜26の表面からインク吐出孔28までの距離が小さいものほど良好に上方まで伝わりやすいことから、対応するインク吐出孔が保護膜表面に対して近いものほど、インク吐出孔28より吐出されるインク滴iの吐出速度が大きくなる。それ故、全ての発熱素子23を同一条件で発熱させると、これらインク滴iの吐出速度が個々にばらついてインク滴iが記録紙に対して異なるタイミングで着弾することとなり、記録紙に対するインク滴iの着弾位置にズレを生じて画像に歪みが形成される恐れがあった。 【0009】そこで上述の欠点を解消するために、各インク吐出孔28と保護膜26の表面との間の距離を測定するとともに該測定した距離に基づいて補正データを作成し、この補正データを用いて発熱素子23への印加電力を調整することにより、着弾するインク滴iのタイミングを均一化することが提案されている。 【0010】しかしながら、各発熱素子23への印加電力を補正データを使って調整する場合、全ての発熱素子23に与える補正データを格納しておくための大きなメモリや複雑な補正回路,電源回路等が別途、必要になり、サーマルインクジェットヘッドやそれが組み込まれるプリンタ本体の構成が大幅に複雑化する上に、このような補正は印画ライン毎に行なわれることから、記録動作に要する時間が長引いて記録速度の低下を招く欠点が誘発される。 【0011】本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、記録紙に歪みの少ない鮮明な画像を形成することができ、しかも構成を簡素に維持しつつ記録速度の高速化にも供することが可能な高性能のサーマルインクジェットヘッドを提供すること、並びにかかるサーマルインクジェットヘッドが得られるサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明のサーマルインクジェットヘッドは、ベースプレートの上面に、抵抗薄膜からなる多数の発熱素子と、該発熱素子に電気的に接続される給電配線とを被着させ、これら発熱素子及び給電配線を保護膜で被覆してなるヘッド基板上に、前記発熱素子に対応する多数のインク吐出孔を有する天板を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインクを充填してなるサーマルインクジェットヘッドにおいて、前記発熱素子の電気抵抗値は、対応するインク吐出孔が、該インク吐出孔の直下に位置する保護膜の表面に対して近いものほど大きな値に設定されていることを特徴とするものである。 【0013】また本発明のサーマルインクジェットヘッドは、前記発熱素子の電気抵抗値は、パルストリミング法により調整されていることを特徴とするものである。 【0014】更に本発明のサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法は、ベースプレートの上面に、抵抗薄膜からなる多数の発熱素子と、該発熱素子に電気的に接続される給電配線とを被着させ、これら発熱素子及び給電配線を保護膜で被覆してなるヘッド基板上に、前記発熱素子に対応する多数のインク吐出孔を有する天板を間に所定の間隙を形成するように配設するとともに、該間隙にインクを充填して成るサーマルインクジェットヘッドにおいて、前記インク吐出孔と、その直下に位置する保護膜表面との間の距離を個々に測定する工程1と、該工程1で測定されたインク吐出孔と保護膜表面との間の距離に対応するトリミングパルスを選択する工程2と、該工程2で選択したトリミングパルスを対応する発熱素子に印加して発熱素子の電気抵抗値を調整することを特徴とするものである。 【0015】また更に本発明のサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法は、前記給電配線の途中で、かつインクの充填領域外に設けられたトリミング用のパッドを介してトリミングパルスが対応する発熱素子に印加されることを特徴とするものである。 【0016】本発明によれば、発熱素子の電気抵抗値を個々に補正して、発熱素子の発する熱エネルギーをインク吐出孔と、その直下に位置する保護膜の表面との間の距離に応じて調整するようにしたことから、インク吐出孔より吐出される全てのインク滴を記録紙に対して略同じタイミングで着弾させることができ、歪みの少ない鮮明な画像を記録することが可能となる。 【0017】また本発明によれば、発熱素子の電気抵抗値を調整することで全てのインク滴を記録紙に対して略同じタイミングで着弾させるようにしたことから、補正データを用いて印加電力を調整する場合に比し、補正データ格納用のメモリや複雑な補正回路,電源回路等が不要で、サーマルインクジェットヘッドやそれが組み込まれるプリンタ本体の構成を簡素に維持することができる上に、記録動作中の補正処理等も一切不要で、記録速度の高速化にも供することができる高性能のサーマルインクジェットヘッドを得ることが可能となる。 【0018】更に本発明によれば、前記給電配線の途中で、かつインクの充填領域外に設けられたトリミング用のパッドを介して発熱素子にトリミングパルスを印加することにより、サーマルインクジェットヘッドを組み立てた後であっても、トリミングパルスの印加に使用されるプロービング装置の探針(プローブ)を前記パッドに対し確実かつ容易に接触させてトリミングを行うことができるようになり、トリミングの作業性が良好となる利点もある。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態にかかるサーマルインクジェットヘッドの分解斜視図、図2は図1のサーマルインクジェットヘッドの断面図であり、同図に示すサーマルインクジェットヘッドは、大略的にヘッド基板1と天板7とで構成され、両部材間にはインク9が充填されている。 【0020】前記ヘッド基板1は、矩形状をなすように形成されたベースプレート2の上面に、直線状に配列した多数の発熱素子3と、該発熱素子3に電気的に接続される給電配線4とを被着・形成し、これらを保護膜6で被覆した構造を有している。 【0021】前記ベースプレート2は、単結晶シリコン等の半導体材料、或いは、グレーズドアルミナセラミックス等の電気絶縁性材料によって形成されており、その上面で発熱素子3や給電配線4,保護膜6等を支持するための支持母材として機能する。 【0022】このようなベースプレート2は、例えば単結晶シリコンから成る場合、従来周知のチョコラルスキー法(引き上げ法)等を採用することによって単結晶シリコンのインゴット(塊)を形成し、これを所定厚みにスライスした上、外形加工することによって製作される。尚、この場合、ベースプレート2の全面には酸化シリコン(SiO2)等の電気絶縁性材料から成る絶縁膜(図示せず)が例えば1μm〜3μmの厚みに設けられ、このような絶縁膜によってベースプレート2を形成する単結晶シリコンを発熱素子3等から電気的に絶縁している。 【0023】また前記ベースプレート2の上面に設けられている多数の発熱素子3は、例えば600dpi(dot per inch)の密度で主走査方向に直線状に配列されており、その各々がTaNやTaSiO,TaSiNO,TiSiO,TiSiCO,NbSiO等の電気抵抗材料から成る抵抗薄膜(厚み0.01μm〜0.2μm)により形成されている。 【0024】前記発熱素子3は、それ自体が電気抵抗材料から成っているため、給電配線4等を介して電源電力が供給されると、ジュール発熱を起こし、インク9中で気泡Aを発生させるのに必要な所定の熱エネルギーを発生する。 【0025】そして、これらの発熱素子3は後述するパルストリミング法によって抵抗値補正がなされており、その電気抵抗値は対応する後述のインク吐出孔8が、該インク吐出孔8の直下に位置する保護膜6の表面に対して近いものほど大きな値に設定されている。 【0026】更に前記発熱素子3に接続されている給電配線4は、先に述べた発熱素子3に電源電力を印加するためのものであり、その一端は後述するインク9の充填領域外まで導出され、該導出部で図示しないドライバーIC等の端子に接続されている。 【0027】また前記給電配線4は、各々の途中で、且つインク9の充填領域外に、給電配線4の線幅よりも大きな円形状もしくは四角形状のトリミング用パッド5を有しており、これらのパッド5を発熱素子3の配列方向と平行な方向(主走査方向)に一列状に配列させている。 【0028】前記パッド5は、従来周知のパルストリミング法にて発熱素子3の電気抵抗値を調整する際、トリミングパルスを印加するプロービング装置の探針(プローブ)12を接触させるためのもので、サーマルインクジェットヘッドを組み立てた後であってもトリミング作業を簡単に行うことができるように、天板7のエッジよりも外側に位置させてある。 【0029】尚、前記発熱素子3及び給電配線4は、従来周知の薄膜形成技術、例えば、スパッタリング、フォトリソグラフィー、エッチング技術等によって行なわれる。具体的には、まずTaSiO等の抵抗材料とアルミニウム等の金属材料を従来周知のスパッタリングによりベースプレート2の上面に順次被着させることによって抵抗薄膜及び金属薄膜から成る積層体を形成し、これを従来周知のフォトリソグラフィー及びエッチング(フォトエッチング)技術にて微細加工することにより発熱素子3及び給電配線4が所定形状にパターニングされる。サーマルインクジェットヘッドの組み立て工程が完了した後で、各発熱素子3の電気抵抗値を後述の調整方法により調整する。 【0030】また前記給電配線4のパッド5は、給電配線4の所定箇所に従来周知の無電解めっき法等によってニッケルめっきや金めっき等を施すことにより、例えば2μm〜5μmの厚みに被着・形成される。 【0031】そして前記発熱素子3や給電配線4等を被覆する保護膜6は、インク9中に含まれているアルカリイオンや水分等が発熱素子3や給電配線4に接触してこれらを腐食したり、或いは、インク9中に含まれている染料の固まり等が発熱素子3の表面に付着するのを有効に防止するためのものであり、例えばSiO2(酸化珪素)やSiON,Si3N4(窒化珪素)等の無機質材料によって例えば0.2μm〜2.0μmの厚みに形成される。 【0032】この保護膜6は、前記パッド5が露出するように、その端部をパッド5よりも発熱素子3側に位置させてあり、従来周知のスパッタリングや真空蒸着法,プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)等を採用し、発熱素子3や給電配線4等の表面に前述の無機質材料を0.2μm〜20μmの厚みに被着させることによって形成される。尚、かかる保護膜6を形成する際、あるいは、上述した発熱素子3を形成する際に、成膜条件を一定に保つことは困難であるため、保護膜6や抵抗薄膜の厚みは発熱素子3の形成箇所毎にばらついている。 【0033】また一方、上述したヘッド基板1上には、間に所定の間隙を形成するようにして天板7が配設される。 【0034】前記天板7は、ヘッド基板1との間隙に充填されるインク9から成るインク流路を塞ぐためのものであり、かかる天板7の外形は副走査方向の寸法がヘッド基板1よりも小型となるように、具体的には、天板7の一端がパッド5の位置よりも発熱素子3側に位置するように配置されている。 【0035】かかる天板7は、発熱素子3と1対1に対応する多数のインク吐出孔8を有しており、インク吐出孔8が対応する発熱素子3の真上に位置するように位置決めされている。 【0036】前記インク吐出孔8は、インクジェットヘッドの記録動作時、インク中に発生した気泡Aからの圧力によってインクをインク滴iとして記録紙に向けて吐出させるためのものであり、上述した如く、保護膜6や抵抗薄膜の厚みが発熱素子3の形成箇所毎にばらついているため、かかるインク吐出孔8と、その直下に位置する保護膜6の表面との間の距離が個々に異なっている。 【0037】一方、上述した如く、発熱素子3の電気抵抗値は、対応するインク吐出孔8が、該インク吐出孔8の直下に位置する保護膜6の表面に対して近いものほど大きな値に設定されているため、インク吐出孔8が保護膜表面に対して近いものほど発熱素子3の発する熱エネルギーが小さくなり、吐出されるインク滴iの吐出速度が遅くなる。従って、記録動作時、インク吐出孔8より吐出されるインク滴iが記録紙に対して略同じタイミングで着弾することとなり、歪みの少ない鮮明な画像を記録することが可能となる。 【0038】しかもこの場合、前記発熱素子3の電気抵抗値を調整することで全てのインク滴iを記録紙に対して略同じタイミングで着弾させるようにしたものであるため、補正データを用いて印加電力を調整する場合に比し、補正データ格納用のメモリや複雑な補正回路,電源回路等が不要で、サーマルインクジェットヘッドやそれが組み込まれるプリンタ本体の構成を簡素に維持することができる上に、記録動作中の補正処理等も一切不要で、記録速度の高速化にも供することができる高性能のサーマルインクジェットヘッドを得ることが可能となる。 【0039】このような天板7は、モリブデン等から成る金属製の板体、アルミナセラミックス等から成るセラミック製の板体、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の樹脂製の板体など種々の材料により形成された板体からなり、例えば、モリブデンから成る場合、モリブデンのインゴット(塊)を従来周知の金属加工法により板状に成形するとともに、該板体の所定箇所に従来周知のレーザ加工やフォトエッチング技術等を採用することによって孔明けを行い、直径10μm〜100μm程度のインク吐出孔8を多数、穿設することによって製作され、得られた天板7をスペーサ等を介してヘッド基板1上に載置させることにより天板7がヘッド基板1上の所定位置に固定される。 【0040】そして前記ヘッド基板1と天板7との間隙に充填されるインク9としては、例えば水性染料インク等が好適に使用され、その粘度は、例えば0.3mPa・s〜3.0mPa・s(25℃)に調整される。 【0041】このようなインク9は、図示しないインクタンクからヘッド基板1−天板7間の間隙に供給されるようになっており、前述した発熱素子3からの熱エネルギーによってインク9中に気泡Aが発生すると、該気泡発生時の圧力によってインク9の一部がインク吐出孔8よりインク滴iとなって外部に吐出され、これらのインク滴iを天板7の外表面に沿って搬送される記録紙の表面に付着させることにより所定の画像が形成される。 【0042】次に上述したサーマルインクジェットヘッドの抵抗値調整方法について図3のフローチャートを用いて説明する。 【0043】(1)まず、従来周知の薄膜形成技術にてパターン形成された発熱素子3等を有するヘッド基板1と、インク吐出孔8を有する天板7とを、間に所定の間隙を形成するようにして対向配置させた上、この間隙にインク9を充填してサーマルインクジェットヘッドを組み立てる。 【0044】(2)次に、インク吐出孔8と、該インク吐出孔8の直下に位置する保護膜6の表面との間の距離を測定する。 【0045】前記インク吐出孔8と保護膜表面との間の距離は、例えば、レーザを用いることにより測定される。具体的には、インク吐出孔8の開口部より、その直下の保護膜6に向けてレーザを照射するとともに、該照射されたレーザが保護膜表面で反射したものをフォトセンサーを用いて検出し、しかる後、レーザの照射から検出までに要した時間と、レーザの速度とから前記インク吐出孔8と保護膜表面との間の距離を算出することによって求められ、その精度は例えば±0.1μmに設定される。 【0046】(3)次に、(2)の工程で測定されたインク吐出孔8と保護膜表面との間の距離に対応した目標抵抗値を図4に示す換算テーブルより求める。 【0047】この換算テーブルは、インク吐出孔8と保護膜表面との間の距離を少しずつ異ならせて、実際にインク滴iを吐出させることによって得たデータに基づくものであり、同図によれば、例えばインク吐出孔8と保護膜表面との間の距離が16μmのとき、目標抵抗値は275Ωに、インク吐出孔8と保護膜表面との間の距離が20μmのとき、目標抵抗値は265Ωにそれぞれ設定される。 【0048】(4)次に、発熱素子3の電気抵抗値を、プロービング装置の探針(プローブ)12等を用いて個々に測定するとともに、該測定値と(2)の工程で得た目標抵抗値とのサーマルヘッドに相当する抵抗値補正幅を求め、しかる後、“抵抗値補正幅”と“トリミングパルスのエネルギー”との関係を示す線図(図5)から、個々の発熱素子3に印加すべきトリミングパルスのエネルギーを求め、これに最も近いトリミングパルスを事前に準備された複数種のトリミングパルスの中から一つ選択する。 【0049】尚、測定によって得られた電気抵抗値が目標抵抗値よりも大きい場合は抵抗値を下降させる方向に補正することとなるため、図5(a)の線図が用いられ、また測定によって得られた電気抵抗値が目標抵抗値よりも小さい場合は抵抗値を上昇させる方向に補正することとなるため、図5(b)の線図が用いられる。 【0050】(4)そして最後に、従来周知のパルストリミング法、具体的には、(3)の工程で選択したトリミングパルスを対応する発熱素子3に印加して発熱素子3の電気抵抗値を下降もしくは上昇させることにより発熱素子3の電気抵抗値を調整する。 【0051】発熱素子3に対するトリミングパルスの印加は、先に述べた給電配線4のパッド5を介して行なわれ、かかるパッド5の表面に、図6に示す如くプロービング装置の探針12を接触させ、この状態で、(3)の工程で選択した所定のトリミングパルスをプロービング装置より印加することにより発熱素子3のトリミングが行なわれ、これによって発熱素子3の電気抵抗値が調整される。 【0052】このとき、トリミングパルスの印加に際してプロービング装置の探針12を接触させる給電配線4のパッド5はインク9の充填領域外に設けてあるため、サーマルインクジェットヘッドを組み立てた後であっても、プロービング装置の探針12をパッド5に対し確実に接触させてトリミングを簡単に行うことができ、トリミングの作業性を良好となすことができる利点もある。 【0053】かかるパルストリミング法では、例えば、発熱素子3に対しパルス幅(通電時間)が比較的短く、振幅(電圧値)が比較的大きなトリミングパルスを印加することによって発熱素子3を形成する抵抗材料を結晶化せしめ、この場合、発熱素子3がアニールされて抵抗値の下降現象が起こる。 【0054】また一方、発熱素子3の抵抗値を上昇させる場合は、例えば、酸素を2wt%〜10wt%含有する保護膜6で発熱素子3を被覆したヘッド基板1が用いられ、発熱素子3に対しパルス幅が比較的長く、振幅が比較的小さなトリミングパルスを印加することによって発熱素子3を形成する抵抗材料を保護膜6中の酸素と結合させ、表面に薄い酸化膜を形成することによって抵抗値を上昇させる。 【0055】このとき、発熱素子3をTaSiO系抵抗材料により形成し、且つTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておけば、発熱素子3を形成する抵抗材料の電気抵抗値をパルストリミング法にて調整する際、所定のパルスを印加したときの抵抗値変動量が適度な大きさになり、パルストリミング法によってより細かな抵抗値調整がしやすくなるという利点がある。 【0056】ここで、発熱素子3内のTa含有率が60原子%よりも大きいと、トリミングパルスを印加したときの発熱素子3の抵抗値変動が大きくなって細かな抵抗値調整が困難になる傾向があり、一方、発熱素子3内のTa含有率が50原子%よりも小さいと、トリミングパルスを印加したときの発熱素子3の抵抗値変動が小さいため、発熱素子3の電気抵抗値を大きく変化させる場合に、抵抗値調整に長時間を要してしまう。従って、発熱素子3内のTa含有率を50原子%〜60原子%に設定しておくことが好ましい。 【0057】そして、上述のトリミング作業を行った後、トリミングを行った発熱素子3の抵抗値を測定し、その測定値が目標抵抗値に対して十分に近づいていない場合は、抵抗値が許容範囲に入るまで上述のトリミング作業を繰り返し行う。 【0058】尚、このようなトリミング作業では、抵抗値調整を、抵抗値の下降もしくは上昇のいずれかのみで行っても良いし、抵抗値の下降、上昇の双方で行うようにしても良く、例えば、抵抗値の下降のみで発熱素子3の抵抗値調整を行う場合は、当初の抵抗値が全て目標抵抗値に対し十分に高く設定されるように抵抗薄膜の材料、膜厚等を選択する。 【0059】本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。 【0060】例えば上述の実施形態において、ヘッド基板1と天板7の間に隣接する発熱素子3を隔てるための隔壁部材を介在させたり、或いは、このような隔壁部材を天板7と一体的に形成するようにしても構わない。 【0061】また上述の実施形態においては、トリミング用のパッド5を主走査方向に一列状に配置させるようにしたが、これに代えて、トリミング用のパッド5を主走査方向に千鳥状に配列させるようにしても良く、この場合、隣接するパッド間のスペースに余裕ができ、隣合う給電配線4、パッド5間の短絡を有効に防止することができる利点もある。 【0062】 【発明の効果】本発明によれば、発熱素子の電気抵抗値を個々に補正して、発熱素子の発する熱エネルギーをインク吐出孔と、その直下に位置する保護膜の表面との間の距離に応じて調整するようにしたことから、インク吐出孔より吐出される全てのインク滴を記録紙に対して略同じタイミングで着弾させることができ、歪みの少ない鮮明な画像を記録することが可能となる。 【0063】また本発明によれば、発熱素子の電気抵抗値を調整することで全てのインク滴を記録紙に対して略同じタイミングで着弾させるようにしたことから、補正データを用いて印加電力を調整する場合に比し、補正データ格納用のメモリや複雑な補正回路,電源回路等が不要で、サーマルインクジェットヘッドやそれが組み込まれるプリンタ本体の構成を簡素に維持することができる上に、記録動作中の補正処理等も一切不要で、記録速度の高速化にも供することができる高性能のサーマルインクジェットヘッドを得ることが可能となる。 【0064】更に本発明によれば、前記給電配線の途中で、かつインクの充填領域外に設けられたトリミング用のパッドを介して発熱素子にトリミングパルスを印加することにより、サーマルインクジェットヘッドを組み立てた後であっても、トリミングパルスの印加に使用されるプロービング装置の探針(プローブ)を前記パッドに対し確実かつ容易に接触させてトリミングを行うことができるようになり、トリミングの作業性が良好となる利点もある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006633 【氏名又は名称】京セラ株式会社 【住所又は居所】京都府京都市伏見区竹田鳥羽殿町6番地
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| 【出願日】 |
平成14年5月30日(2002.5.30) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2003−341066(P2003−341066A) |
| 【公開日】 |
平成15年12月3日(2003.12.3) |
| 【出願番号】 |
特願2002−156731(P2002−156731) |
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