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【発明の名称】 液体噴射装置
【発明者】 【氏名】小 池 保 則
【住所又は居所】長野県諏訪市大和三丁目3番5号 セイコーエプソン株式会社内

【要約】 【課題】フラッシング動作にて空吐出されたインクがミストとなって周囲を汚してしまうことを防止することができるインクジェット記録装置、広くは液体噴射装置、を提供することを目的とする。

【解決手段】本発明の液体噴射装置は、ノズル開口17を有するヘッド部材4と、ノズル開口17に液体を供給する液体供給路と、ノズル開口17部分の液体を噴射させる液体噴射手段21と、ヘッド部材4を直線方向に移動させる走査機構5と、吐出データに基づいて液体噴射手段21を駆動させる制御本体部11と、を備えている。ヘッド部材4は、液体受け位置WP1、WP2で停止することが可能である。液体拡散防止筒19a、19b、119が、液体受け位置にて停止するヘッド部材4に対して接近移動可能に設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ノズル開口を有するヘッド部材と、ノズル開口に液体を供給する液体供給路と、ノズル開口部分の液体を噴射させる液体噴射手段と、ヘッド部材を直線方向に移動させる走査機構と、吐出データに基づいて液体噴射手段を駆動させる制御本体部と、を備え、ヘッド部材は、走査機構によるヘッド部材の移動領域の両端の各液体受け位置で停止することが可能であり、2つの液体拡散防止筒の各々が、液体受け位置にて停止するヘッド部材に対して接近移動可能に設けられていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】少なくとも一方の液体拡散防止筒は、液体受け位置にて停止するヘッド部材に対して接近移動した時に、ヘッド部材のノズル開口側の面と気密に接触するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】ノズル開口を有するヘッド部材と、ノズル開口に液体を供給する液体供給路と、ノズル開口部分の液体を噴射させる液体噴射手段と、ヘッド部材を直線方向に移動させる走査機構と、吐出データに基づいて液体噴射手段を駆動させる制御本体部と、を備え、液体拡散防止筒は、液体受け位置にて停止するヘッド部材に対して接近移動した時に、ヘッド部材のノズル開口及びヘッド部材の側面の一部を覆うようになっていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項4】ノズル開口に対向する側に液体被噴射媒体を支持可能な支持部材を更に備え、ヘッド部材の移動軌道と支持部材との間の距離は、調整可能となっていることを特徴とする請求項2または3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】少なくとも一方の液体拡散防止筒は、液体受け位置に向かって移動するヘッド部材の運動エネルギを利用して、当該ヘッド部材に接近移動するようになっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項6】少なくとも一方の液体拡散防止筒は、液体受け位置からヘッド部材が離れた時に、当該ヘッド部材の移動軌道から離れるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】液体受け位置にて停止するヘッド部材のノズル開口に対向する位置に、液体吸収材が設けられており、前記ノズル開口から当該液体吸収材に至る液体排出経路の周囲が少なくとも一方の液体拡散防止筒によって囲まれ得ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項8】液体受け位置にて停止するヘッド部材のノズル開口に対向する位置に、液体吸引機構が設けられており、前記ノズル開口から当該液体吸引機構に至る液体排出経路の周囲が少なくとも一方の液体拡散防止筒によって囲まれ得ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液体噴射装置。
【請求項9】少なくとも一方の液体拡散防止筒の内面には、ヘッド部材の移動軌道から遠ざかる方向に斜めに伸びるリブが突設されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノズル開口から液体を噴射させるヘッド部材を備えた液体噴射装置、例えば、ノズル開口からインク滴を吐出させて記録を行う記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット式プリンタやインクジェット式プロッタ等のインクジェット式記録装置は、記録ヘッドを主走査方向に沿って移動させると共に記録紙(液体被噴射媒体の一種)を副走査方向に沿って移動させ、この移動に連動して記録ヘッドのノズル開口からインク滴を吐出させることにより、記録紙上に画像(文字)を記録する。このインク滴の吐出は、例えば、ノズル開口に連通した圧力発生室を膨張・収縮させることで行われる。
【0003】ところで、記録ヘッドのノズル開口部分では、インクが空気に曝されているので、インク溶媒(例えば、水)が徐々に蒸発する。このインク溶媒の蒸発によりノズル開口部分のインク粘度が上昇し、記録画像の画質を悪化させる。即ち、当該部分のインク粘度が上昇すると、吐出されたインク滴が正規の方向からずれた方向に飛翔し得る。
【0004】このため、インクジェット式記録装置では、ノズル開口部分のインクの増粘を防止する対策がなされている。この増粘対策として、増粘したインクを記録領域外で強制的に吐出するフラッシング動作がある。インクジェット式記録装置には、一般に、フラッシング動作によって吐出されるインクを吸収するための吸収材が設けられている。
【0005】インクジェット式記録装置における前記吸収材の水平方向の配置位置は、記録ヘッドの主走査方向の移動領域中であって、記録紙に対する印刷可能領域の外側に設定されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】一方、前記吸収材の鉛直方向の配置位置については、特別な考慮がなされていない。一般に、記録ヘッドの主走査方向の移動軌道は、吸収材に対する高さ位置が調整され得る(可変である)ため、前記吸収材は、記録ヘッドの(ノズル開口の)主走査方向の移動軌道から離れた高さ位置に配置されることが多い。
【0007】しかしながら、フラッシング動作によってノズル開口から吐出されるインクは、吸収材に至る前にミストとなって浮遊して、インクジェット式記録装置を汚してしまう可能性がある。
【0008】本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、フラッシング動作にて空吐出されるインクがインクミストとなって周囲を汚染することを防止することができるインクジェット記録装置、広くは液体噴射装置、を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、ノズル開口を有するヘッド部材と、ノズル開口に液体を供給する液体供給路と、ノズル開口部分の液体を噴射させる液体噴射手段と、ヘッド部材を直線方向に移動させる走査機構と、ノズル開口に対向する側に液体被噴射媒体を支持可能な支持部材と、吐出データに基づいて液体噴射手段を駆動させる制御本体部と、を備え、ヘッド部材は、走査機構によるヘッド部材の移動領域の両端の各液体受け位置で停止することが可能であり、2つの液体拡散防止筒の各々が、液体受け位置にて停止するヘッド部材に対して接近移動可能に設けられていることを特徴とする液体噴射装置である。
【0010】本発明によれば、各液体拡散防止筒がヘッド部材に対して接近移動可能であるため、フラッシング動作等によってノズル開口から空吐出される液体がミスト化する可能性がある場合には、各液体拡散防止筒をヘッド部材に対して接近させることにより、液体ミストによる周囲の汚染を効果的に防止することができる。
【0011】好ましくは、液体拡散防止筒は、液体受け位置にて停止するヘッド部材に対して接近移動した時に、ヘッド部材のノズル開口側の面と気密に接触するようになっている。これによれば、ノズル開口から空吐出される液体から発生し得る液体ミストを液体拡散防止筒内に略完全に封じ込めることができる。これにより、液体ミストによる周囲の汚染をより一層効果的に防止することができる。
【0012】あるいは、本発明は、ノズル開口を有するヘッド部材と、ノズル開口に液体を供給する液体供給路と、ノズル開口部分の液体を噴射させる液体噴射手段と、ヘッド部材を直線方向に移動させる走査機構と、吐出データに基づいて液体噴射手段を駆動させる制御本体部と、を備え、液体拡散防止筒は、液体受け位置にて停止するヘッド部材に対して接近移動した時に、ヘッド部材のノズル開口及びヘッド部材の側面の一部を覆うようになっていることを特徴とする液体噴射装置である。
【0013】本発明によれば、ノズル開口から空吐出される液体から発生し得る液体ミストを、液体拡散防止筒内に略完全に封じ込めることができる。これにより、液体ミストによる周囲の汚染をより一層効果的に防止することができる。
【0014】ノズル開口に対向する側には、液体被噴射媒体が支持部材によって支持され得る。そして、ヘッド部材の移動軌道と支持部材との間の距離は、液体被噴射媒体の厚み等に合わせて調整可能となっている場合がある。この場合、液体拡散防止筒の初期位置とノズル開口の移動軌道との間の距離は変化し得る。しかしながら、各液体拡散防止筒が、ヘッド部材のノズル開口側の面と弾性的に気密に接触したり、ヘッド部材のノズル開口側の一部を覆うように移動する場合には、前記距離の変化について特に気にする必要が無い。
【0015】また、液体拡散防止筒は、液体受け位置に向かって移動するヘッド部材の運動エネルギを利用して、当該ヘッド部材に接近移動するようになっていることが好ましい。この場合、液体拡散防止筒の移動に関する駆動機構を特別に設ける必要が無くなる一方、液体拡散防止筒の接近移動をヘッド部材の移動に連動させることが容易である。
【0016】また、この場合、液体拡散防止筒は、液体受け位置からヘッド部材が離れた時に、当該ヘッド部材の移動軌道から離れるようになっていることが好ましい。これにより、ヘッド部材と液体拡散防止筒との干渉が効果的に防止され得る。液体拡散防止筒のこのような回避移動は、例えばバネの弾性力等によって実現され得る。
【0017】一般には、液体受け位置にて停止するヘッド部材のノズル開口に対向する位置に、液体吸収材が設けられ得る。この時、前記ノズル開口から当該液体吸収材に至る液体排出経路の周囲が液体拡散防止筒によって囲まれることとなる。
【0018】あるいは、液体受け位置にて停止するヘッド部材のノズル開口に対向する位置に、液体吸引機構が設けられ得る。この時、前記ノズル開口から当該液体吸引機構に至る液体排出経路の周囲が液体拡散防止筒によって囲まれることとなる。この態様によれば、液体ミストを回収することができる。
【0019】更に好ましくは、液体拡散防止筒の内面に、ヘッド部材の移動軌道から遠ざかる方向に向かって斜めに伸びるリブが突設され得る。このような構造体は、液体拡散防止筒内での液体ミストの散乱を防止する効果がある。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0021】図1に示すように、本発明の一実施の形態のインクジェット式記録装置(液体噴射装置の一例)は、インクジェット式プリンタ1であり、インクカートリッジ2を保持可能なカートリッジホルダ部3と記録ヘッド4(ヘッド部材)とを有するキャリッジ5を備えている。キャリッジ5は、ヘッド走査機構によって、主走査方向に沿って往復移動されるようになっている。
【0022】ヘッド走査機構は、ハウジングの左右方向に架設されたガイド部材6と、ハウジングの一方側に設けられたパルスモータ7と、パルスモータ7の回転軸に接続されて回転駆動される駆動プーリー8と、ハウジングの他方側に取付けられた遊転プーリー9と、駆動プーリー8及び遊転プーリー9の間に掛け渡されると共にキャリッジ5に結合されたタイミングベルト10と、パルスモータ7の回転を制御する制御部11(図5参照)と、から構成されている。これにより、パルスモータ7を作動させることによって、キャリッジ5、即ち、記録ヘッド4を、記録紙12の幅方向である主走査方向に往復移動させることができる。
【0023】また、プリンタ1は、記録紙12等の記録用媒体(液体被噴射媒体)を紙送り方向(副走査方向)に送り出す紙送り機構を有する。この紙送り機構は、紙送りモータ13及び紙送りローラ14等から構成される。記録紙12等の記録媒体は、記録動作に連動して、順次送り出される。
【0024】キャリッジ5の移動範囲内であって記録領域よりも外側の端部領域には、ホームポジションと、記録ヘッド4(キャリッジ5)の待機ポジションと、が設定されている。図2に示すように、ホームポジションは、記録ヘッド4が移動し得るヘッド移動範囲の一側(図の右側)端部に設定されている。また、第1の待機ポジションWP1は、ホームポジションに対して記録領域側に略隣接して設定されている。更に、ホームポジションと略隣接する第1の待機ポジションWP1に加えて、ホームポジションとは反対側の端部に第2の待機ポジションWP2が設けられている。
【0025】ホームポジションは、電源オフ時や長時問に亘って記録が行われなかった場合に記録ヘッド4が移動して留まる場所である。記録ヘッド4がホームポジションに位置する時には、図3(e)に示すように、キャッピング機構のキャップ部材15がノズルプレート16(図4参照)に当接してノズル開口17(図4参照)を封止する。キャップ部材15は、ゴム等の弾性部材を上面が開放した略四角形トレー状に成型した部材であり、内部にはフェルト等の保湿吸収材が取り付けられている。記録ヘッド4がキャップ部材15により封止されることで、キャップ内部が高湿度に保たれて、ノズル開口17からのインク溶媒の蒸発が緩和される。
【0026】待機ポジションは、記録ヘッド4を走査する際の起点となる位置である。即ち、記録ヘッド4は、通常、この待機ポジションで待機し、記録動作時に待機ポジションから記録領域側へ走査され、記録動作が終了すると待機ポジションに戻る。
【0027】例えば、図2を参照して、記録ヘッド4は、第1の待機ポジションWP1で待機している状態から第2の待機ポジションWP2側へ走査されて往動時の記録動作を行う。この記録動作が終了すると、第2の待機ポジションWP2で待機する。次に、記録ヘッド4は、第2の待機ポジションWP2で待機している状態から第1の待機ポジションWP1側へ走査されて復動時の記録動作を行う。この記録動作が終了すると、第1の待機ポジションWP1で待機する。以後は、往動時の記録動作と復動時の記録動作とを交互に繰り返し実行する。
【0028】待機ポジションには、フラッシング動作(メンテナンス動作の一種)によって記録ヘッド4が排出するインクを回収するためのインク受け部材(液体受け部材)が設けられる。本実施の形態では、上記のキャップ部材15が、インク受け部材を兼ねている。即ち、キャップ部材15は、図3(a)に示すように、通常は記録ヘッド4の待機ポジションWP1の下方位置(ノズルプレート16の下方に少し離隔した位置)に配置されている。そして、記録ヘッド4のホームポジションヘの移動に伴って、図3(e)に示すように、後述する第1インク拡散防止筒19aと干渉しないように斜上方側(ホームポジション側かつノズルプレート16側)に移動して、ノズル開口17を封止する。
【0029】そして、記録ヘッド4の待機ポジションWP1の下方には、第1インク拡散防止筒19aが設けられている。第1インク拡散防止筒19aは、待機ポジションWP1においてフラッシング動作がなされる時に、図3(b)に示すように、記録ヘッド4をノズル開口17側から取り囲むように、記録ヘッド4に向かって上昇する。この時、ノズル開口17から吐出されるインクから発生し得るインクミストは、第1インク拡散防止筒19a内に略完全に封じ込められる。
【0030】第1インク拡散防止筒19aは、待機ポジションWP1におけるフラッシング動作が終了した時に、当該記録ヘッド4の走査軌道から離れるようになっている。
【0031】一方、第2の待機ポジションWP2にもインク受け部材18が配設されている。このインク受け部材18は、記録ヘッド4との対向面が開放した箱状のフラッシングボックスによって構成されている。インク受け部材18の内部には、インクを吸収する吸収材が設けられている。
【0032】そして、記録ヘッド4の待機ポジションWP2の下方であってインク受け部材18の上方には、第2インク拡散防止筒19bが設けられている。第2インク拡散防止筒19bは、待機ポジションWP2においてフラッシング動作がなされる時に、図3(b)に示すと同様に、記録ヘッド4をノズル開口17側から取り囲むように、記録ヘッド4に向かって上昇する。この時、ノズル開口17から吐出されるインクから発生し得るインクミストは、第2インク拡散防止筒19b内に略完全に封じ込められる。
【0033】第2インク拡散防止筒19bは、待機ポジションWP2におけるフラッシング動作が終了した時に、当該記録ヘッド4の走査軌道から離れるようになっている。
【0034】その他、本実施の形態では、待機ポジションと記録領域との間に、加速領域が設定されている。加速領域は、記録ヘッド4の走査速度を所定速度まで加速させるための領域である。
【0035】次に、記録ヘッド4について説明する。記録ヘッド4は、ブラックインクを吐出可能なブラックヘッドユニットと、シアンインクを吐出可能なシアンヘッドユニットと、マゼンタインクを吐出可能なマゼンタヘッドユニットと、イエローインクを吐出可能なイエローヘッドユニットと、ライトシアンインクを吐出可能なライトシアンヘッドユニットと、ライトマゼンタインクを吐出可能なライトマゼンタヘッドユニットと、を有する。また、各ヘッドユニットの底面には、副走査方向に沿って、複数のノズル開口17が形成されている。各ヘッドユニット毎のノズル開口17は、同数であって、互いに1対1に対応して主走査方向に整列している。
【0036】次に、各ヘッドユニットについて、図4を用いて説明する。各ヘッドユニットは、共通の構造を有しており、図4に示すように、例えばプラスチックからなる箱体状のケース71の収納室72内に、櫛歯状の圧電振動子21が一方の開口から挿入されて櫛歯状先端部21aが他方の開口に臨んでいる。その他方の開口側のケース71の表面(下面)には流路ユニット74が接合され、櫛歯状先端部21aは、それぞれ流路ユニット74の所定部位に当接固定されている。
【0037】圧電振動子21は、圧電体21bを挟んで共通内部電極21cと個別内部電極21dとを交互に積層した板状の振動子板を、ドット形成密度に対応させて櫛歯状に切断して構成してある。そして、共通内部電極21cと個別内部電極21dとの間に電位差を与えることにより、各圧電振動子21は、積層方向と直交する振動子長手方向に伸縮する。
【0038】流路ユニット74は、流路形成板75を間に挟んでノズルプレート16と弾性板77を両側に積層することにより構成されている。
【0039】流路形成板75は、ノズルプレート16に複数開設したノズル開口17とそれぞれ連通して圧力発生室隔壁を隔てて列設された複数の圧力発生室22と、各圧力発生室22の少なくとも一端に連通する複数の供給部82と、全供給部82が連通する細長い共通室83と、が形成された板材である。例えば、シリコンウエハーをエッチング加工することにより、細長い共通室83が形成され、共通室83の長手方向に沿って圧力発生室22がノズル開口17のピッチに合わせて形成され、各圧力発生室22と共通室83との間に溝状の供給部82が形成され得る。なお、この場合、圧力発生室22の一端に供給部82が接続し、この供給部82とは反対側の端部近傍でノズル開口17が位置するように配置されている。また、共通室83は、インクカートリッジ2に貯留されたインクを圧力発生室22に供給するための室であり、その長手方向のほぼ中央に供給管84が連通している。
【0040】弾性板77は、ノズルプレート16とは反対側の流路形成板75の面に積層され、ステンレス板87の下面側にPPS等の高分子体フィルムを弾性体膜88としてラミネート加工した二重構造である。そして、圧力発生室22に対応した部分のステンレス板87をエッチング加工して、圧電振動子21を当接固定するためのアイランド部89が形成されている。
【0041】上記の構成を有する各ヘッドユニットでは、圧電振動子21を振動子長手方向に伸長させることにより、アイランド部89がノズルプレート16側に押圧され、アイランド部89周辺の弾性体膜88が変形して圧力発生室22が収縮する。また、圧力発生室22の収縮状態から圧電振動子21を長手方向に収縮させると、弾性体膜88の弾性により圧力発生室22が膨張する。圧力発生室22を一旦膨張させてから収縮させることにより、圧力発生室22内のインクの圧力が高まって、ノズル開口17からインク滴が吐出される。
【0042】すなわち、各ヘッドユニットにおいては、圧電振動子21に対する充放電に伴って、対応する圧力室22の容量が変化する。このような圧力室22の圧力変動を利用して、ノズル開口17からインク滴を吐出させたり、メニスカス(ノズル開口17で露出しているインクの自由表面)を微振動させたりすることができる。
【0043】なお、上記の縦振動振動モードの圧電振動子21に代えて、いわゆるたわみ振動モードの圧電振動子を用いることも可能である。たわみ振動モードの圧電振動子は、充電による変形で圧力室を収縮させ、放電による変形で圧力室を膨張させる圧電振動子である。
【0044】次に、プリンタ1の電気的構成について説明する。図5に示すように、このインクジェット式プリンタ1は、プリンタコントローラ30とプリントエンジン31とを備えている。
【0045】プリンタコントローラ30は、外部インターフェース(外部I/F)32と、各種データを一時的に記憶するRAM33と、制御プログラム等を記憶したROM34と、CPU等を含んで構成された制御部11と、クロック信号を発生する発振回路35と、記録ヘッド4の各ヘッドユニットへ供給するための駆動信号等を発生する駆動信号発生回路36と、駆動信号や、印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン31に送信する内部インターフェース(内部I/F)37と、を備えている。
【0046】外部I/F32は、例えば、キャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しないホストコンピュータ等から受信する。また、ビシー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、外部I/F32を通じて、ホストコンピュータ等に対して出力される。
【0047】RAM33は、受信バッファ、中間バッファ、出力バッファ及びワークメモリ(図示せず)を有している。そして、受信バッファは、外部I/F32を介して受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファは、制御部11により変換された中間コードデータを記憶し、出力バッファは、ドットパターンデータを記憶する。ここで、ドットパターンデータとは、中間コードデータ(例えば、階調データ)をデコード(翻訳)することにより得られる印字データである。
【0048】ROM34には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等が記憶されている。さらにROM34は、メンテナンス情報保持手段として、メンテナンス動作用の設定データをも記憶している。
【0049】制御部11は、ROM34に記憶された制御プログラムに従って各種の制御を行う。例えば、受信バッファ内の印刷データを読み出すと共にこの印刷データを変換して中間コードデータとし、当該中間コードデータを中間バッファに記憶させる。また、制御部11は、中間バッファから読み出した中間コードデータを解析し、ROM34に記憶されているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、ドットパターンデータに展開(デコード)する。そして、制御部11は、必要な装飾処理を施した後に、このドットパターンデータを出力バッファに記憶させる。
【0050】記録ヘッド4の1回の主走査により記録可能な1行分のドットパターンデータが得られたならば、当該1行分のドットパターンデータが、出力バッファから内部I/F37を通じて順次記録ヘッド4の各インクヘッドユニットの電気駆動系39に出力され、キャリッジ5が走査されて1行分の印刷が行われる。出力バッファから1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータが中間バッファから消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
【0051】さらに、制御部11は、記録ヘッド4による記録動作とは別途に実施されるメンテナンス動作(回復動作)を制御する。
【0052】プリントエンジン31は、紙送り機構としての紙送りモータ13と、ヘッド走査機構としてのパルスモータ7と、記録ヘッド4の電気駆動系39と、を含んで構成してある。
【0053】次に、記録ヘッド4の電気駆動系39について説明する。電気駆動系39は、図5に示すように、順に電気的に接続されたシフトレジスタ回路40、ラッチ回路41、レベルシフタ回路42、スイッチ回路43及び圧電振動子21を備えている。これらのシフトレジスタ回路40、ラッチ回路41、レベルシフタ回路42、スイッチ回路43及び圧電振動子21は、それぞれ、記録ヘッド4の各ヘッドユニットの各ノズル開口17毎に設けられている。
【0054】この電気駆動系39では、スイッチ回路43に加わる選択データが「1」の場合、スイッチ回路43は接続状態となって駆動信号が圧電振動子21に直接印加され、各圧電振動子21は駆動信号の信号波形に応じて変形する。一方、スイッチ回路43に加わる選択データが「0」の場合、スイッチ回路43は非接続状態となって圧電振動子21への駆動信号の供給が遮断される。
【0055】このように、選択データに基づいて、各圧電振動子21に対して駆動信号を選択的に供給できる。このため、与えられる選択データ次第で、ノズル開口17からインク滴を吐出させたり、メニスカスを微振動させたりすることができる。
【0056】次に、プリンタ1のフラッシング動作について、図2及び図3に基づいて説明する。
【0057】電源が投入されると、まず必要な初期化動作が行われる。その後、記録ヘッド4は待機ポジションで待機する(図3(a)の状態)。1行分の印字データがRAM33の出力バッファから出力されると、記録ヘッド4は、記録動作に先だって、メンテナンス動作(回復動作)を実施する。
【0058】このメンテナンス動作は、記録ヘッド4のインク滴の吐出能力を維持するために行われるもので、例えばフラッシング動作と微振動動作とがあり、適宜に選択されて実施される。
【0059】具体的には、フラッシング動作は、記録領域外で、記録ヘッド4からキャップ部材15またはインク受け部材18に向けて強制的にインクを排出させる動作である。フラッシング動作は、待機ポジションWP1、WP2で停止している最中に行われる。
【0060】この時、第1インク拡散防止筒19aまたは第2インク拡散防止筒19bが、待機ポジションWP1またはWP2においてフラッシング動作がなされる時に、図3(b)に示すように、記録ヘッド4のノズル開口17側の少なくとも一部を取り囲むように、記録ヘッド4に向かって上昇する。この時、ノズル開口17から吐出されるインクから発生し得るインクミストは、第1インク拡散防止筒19aまたは第2インク拡散防止筒19b内に略完全に封じ込められる。
【0061】フラッシング動作を行うと、ノズル開口17付近の増粘したインクが記録ヘッド4の外に排出され、良好な状態のインクに置換される。
【0062】以上のように、本実施の形態によれば、フラッシング動作の際に、第1インク拡散防止筒19aまたは第2インク拡散防止筒19bが記録ヘッド4に対して接近するため、インクミストによる周囲の汚染を効果的に防止することができる。
【0063】特に、本実施の形態によれば、第1インク拡散防止筒19a及び第2インク拡散防止筒19bが、記録ヘッド4のノズル開口17側の少なくとも一部を覆うようになっているため。ノズル開口17から空吐出されるインクから発生し得るインクミストを当該第1インク拡散防止筒19a及び第2インク拡散防止筒19b内に略完全に封じ込めることができる。これにより、インクミストによる周囲の汚染をより一層効果的に防止することができる。
【0064】また、本実施の形態によれば、第1インク拡散防止筒19a及び第2インク拡散防止筒19bは、待機ポジション(インク受け位置)におけるフラッシング動作が終了した時に、下降する、すなわち、当該記録ヘッド4の走査軌道から離れるようになっている。このため、記録ヘッド4と第1インク拡散防止筒19a及び第2インク拡散防止筒19bとの干渉が効果的に防止され得る。
【0065】なお、本実施の形態において、内部に吸収材が設けられたインク受け部材18の代わりに、インクを吸引する吸引機構が設けられてもよい。例えば、インク受け部材18が設けられる代わりに、図6に示すように、第2インク拡散防止筒19bの底部と吸引ポンプ19pとが、柔軟チューブ19tによって接続されてもよい。この場合、インクミストの回収が容易になされ得る。インクミストの回収を更に効果的にするためには、図6に示すように、第2インク拡散防止筒19bの底部が柔軟チューブ19tに向かって先細状となっていることが好ましい。
【0066】次に、本発明の他の実施の形態について、図7乃至図9を用いて説明する。
【0067】図7及び図8は、インク拡散防止筒119が設けられたインクジェット式記録装置における当該インク拡散防止筒119の近傍部分を示す側面図であり、図9は、インク拡散防止筒119のスライダ(後述する)及び取付フレーム(後述する)を示す概略斜視図である。
【0068】本実施の形態のインク拡散防止筒119は、記録ヘッド4のノズル開口17側の面を封止し得るシール部材119aと、当該シール部材119aを保持するシールホルダ119bを有している。
【0069】シール部材119aは、シールホルダ119bに例えば二色成形法によって一体に設けられており、全体が例えばエラストマーなどの弾性素材からなる平面ほぼ矩形状の箱体によって形成されている。
【0070】一方、シールホルダ119bは、シール部材119aと同様に平面ほぼ矩形状の箱体からなり、全体がシール部材119aの素材(エラストマー)より硬い素材によって形成されている。
【0071】シールホルダ119bは、スライダ昇降機構(スライド機構)を構成するスライダ115上に取り付けられており、圧縮ばね(図示せず)によって記録ヘッド4側に常時付勢されている。そして、キャリッジ5の往復動作に伴うスライダ115の水平・昇降動作によって、上方シール位置及び下方開放位置に動作するようになっている。
【0072】スライダ115は、記録装置内の取付フレームとしての固定フレーム131に引張ばね(図示せず)を介して連結されている。これにより、スライダ115は、印刷領域方向に接近しかつ記録ヘッド4の軌道から離れる方向に、すなわち、図7に示す状態から図8に示す状態となるように、付勢されている。
【0073】そして、図7に示すように、キャリッジ5が下方開放位置にあるインク拡散防止筒119の直上に移動した際、キャリッジ5に設けられた係合体5aがスライダ115に直立するように設けられた係合部115Aに当接して、図8に示すように、引張ばねの弾性力に抗してスライダ115が非印字領域側に移動する。これにより、記録ヘッド4のノズル開口17側の面が、インク拡散防止筒119のシール部材119aで封止される。この時、ノズル開口17はインク吸収材150と対向し、ノズル開口17からインク吸収材150に至る経路の周囲が、インク拡散防止筒119によって取り囲まれることとなる。
【0074】また、キャリッジ5が印字領域側に移動する場合には、係合部115Aに対する係合体5aの当接が解除され、スライダ115が引張ばねの弾性力によって図7に示す状態に戻される。これにより、インク拡散防止筒119が記録ヘッド4の移動軌道から離れる。
【0075】スライダ115の右側部には、図9に示すように、水平・鉛直(前後・上下)方向に所定の間隔をもって並列する二つの突起115a,115cが設けられている。スライダ115の左側部にも、同様に、水平・鉛直方向に所定の間隔をもって並列する二つの突起115b,115dが設けられている。すなわち、スライダ15の印字領域側(両側前方部)には、突起115a,115bが左右対称な位置に配置されており、スライダ115の非印字領域側(両側後方部)には、突起115c,115dが左右対称な位置に配置されている。
【0076】固定フレーム131は、キャリッジ5の往復動作方向に所定の間隔をもって対向する二つのベース146,147間に取り付けられている。この固定フレーム131には、突起115a〜115dを案内するカム孔122〜125が設けられている。そして、カム孔122〜125内に突起115a〜115dが移動自在に挿入されている。これら各カム孔122〜125の両端位置には、それぞれ低所部122a〜125aと高所部122b〜125bが配置されている。これら低所部122a〜125aと高所部122b〜125bとの間には、傾斜部122c〜125cが配置されている。
【0077】印字領域側の低所部122a、123a、高所部122b、123b及び傾斜部122c、123cは、カム孔122、123の内面上方部に配置されている。一方、非印字領域側の低所部124a、125a、高所部124b、125b及び傾斜部124c、125cは、カム孔124、125の内面下方部に配置されている。
【0078】カム孔122〜125のうち、非印字領域側の両カム孔124、125には、非印字領域側(後方)に開口する第一切り欠き24A、25Aが設けられている。カム孔124、125の非印字領域側には、第一切り欠き24A、25Aに連通しかつ上方(記録ヘッド側)に開口する挿入口24A、25Aが設けられている。
【0079】一方、印字領域側のカム孔122、123のうち、左側のカム孔122には、印字領域側(前方)に開口する第二切り欠き122Aが設けられている。
【0080】なお、印字領域側のカム孔123の内面前方部と非印字領域側のカム孔124、125の内面前方部は、スライダ115の印字領域側への移動を規制するストッパとして機能させることが可能である。
【0081】以上のようなインク拡散防止筒119によれば、フラッシング動作の際に、インク拡散防止筒119が記録ヘッド4のノズル開口17側の面を封止するため、ノズル開口17から空吐出されるインクから発生し得るインクミストを当該インク拡散防止筒119内に略完全に封じ込めることができる。これにより、インクミストによる周囲の汚染を極めて効果的に防止することができる。
【0082】また、本実施の形態によれば、インク拡散防止筒119は、記録ヘッド4の待機ポジション(図8参照)への移動の運動エネルギを利用して記録ヘッド4に接近するため、インク拡散防止筒119の接近移動に関する駆動機構を特別に設ける必要が無く、構造が簡易である。また、インク拡散防止筒119の接近移動を、記録ヘッド4の移動に確実に連動させることができる。
【0083】更に、本実施の形態によれば、インク拡散防止筒119は、記録ヘッド4が待機ポジション(図8参照)を離れるように移動する際に、引張ばねによって記録ヘッド4の移動軌道から離れるようになっている。これにより、記録ヘッド4とインク拡散防止筒119との干渉が効果的に防止され得る。
【0084】なお、以上の各実施の形態において、各インク拡散防止筒19a、19b、119の内面には、図10に示すように、記録ヘッド4の移動軌道から遠ざかる方向に向かって斜めに伸びるリブRが突設されることが好ましい。このような構造体は、インク拡散防止筒19a、19b、119内でのインクミストの散乱を防止する効果がある。
【0085】また、以上の各実施の形態において、記録紙12を支持する支持部材である紙送りローラ13の高さと記録ヘッド4の主走査軌道との間隔(距離)が、記録紙12の種類や厚みに対応して可変であってもよい。このように、当該間隔が変化する場合であっても、前記の各実施の形態におけるインク拡散防止筒19a、19b、119は、他部材と干渉すること無く、インクミストの散乱を有効に防止する。
【0086】更に、上記の各実施の形態に関し、上述した本発明の要旨の範囲内で種々の追加、変更等が可能である。
【0087】例えば、圧力室22の容積を変化させる圧力発生素子は、圧電振動子21に限定されるものではない。例えば、磁歪素子を圧力発生素子として用い、この磁歪素子によって圧力室22を膨張・収縮させて圧力変動を生じさせるようにしてもよいし、発熱素子を圧力発生素子として用い、この発熱素子からの熱で膨張・収縮する気泡によって圧力室22に圧力変動を生じさせるように構成してもよい。
【0088】また、以上の説明はインクジェット記録装置についてなされているが、本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものである。液体の例としては、インクの他に、グルー、マニキュア、導電性液体(液体金属)等が用いられ得る。更に、本発明は、液晶等の表示体におけるカラーフィルタの製造用装置にも適用され得る。
【0089】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、液体拡散防止筒がヘッド部材に対して接近移動可能であるため、フラッシング動作等によってノズル開口から空吐出される液体がミスト化する可能性がある場合には、液体拡散防止筒をヘッド部材に対して接近させることにより、液体ミストによる周囲の汚染を効果的に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
【住所又は居所】東京都新宿区西新宿2丁目4番1号
【出願日】 平成14年5月13日(2002.5.13)
【代理人】 【識別番号】100075812
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢次 (外6名)
【公開番号】 特開2003−326742(P2003−326742A)
【公開日】 平成15年11月19日(2003.11.19)
【出願番号】 特願2002−136737(P2002−136737)