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【発明の名称】 サーマルプリンタの記録制御方法
【発明者】 【氏名】小林 浩
【住所又は居所】東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプス電気株式会社内

【要約】 【課題】ディザマトリクスの手法を用いて高精細な記録結果を得ること。

【解決手段】1画素に対して、所定の階調に対応する印字データのディザマトリクスを構成する複数のブロックを割り当て、1画素を構成する全ブロックに対して、1画素毎の階調データに応じて各ブロックを所定の順序で成長させて、インクの記録媒体に対する転写に必要十分な通電エネルギーを投入する記録通電ブロックとインクの溶融直前の通電エネルギーを投入する予備通電ブロックとに振り分けて決定し、この決定に基づいて、記録通電ブロックおよび予備通電ブロックにそれぞれ所定の通電エネルギーを投入する制御を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1画素に対して、所定の階調に対応する印字データのディザマトリクスを構成する複数のブロックを割り当て、前記1画素を構成する全ブロックに対して、1画素毎の階調データに応じて前記各ブロックを所定の順序で成長させることにより、前記インクの記録媒体に対する転写に必要十分な通電エネルギーを投入するドットから構成される記録通電ブロックと、前記インクの溶融直前の通電エネルギーを投入するドットから構成される予備通電ブロックとに振り分けて決定し、この決定に基づいて、前記記録通電ブロック及び予備通電ブロックにそれぞれ所定の通電エネルギーを投入する制御を行うことを特徴とするサーマルプリンタの記録制御方法。
【請求項2】 前記インクは強靱性インクであることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタの記録制御方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サーマルプリンタを用いて、いわゆるディザマトリクス法により階調表現を行なう記録における記録制御方法であって、特に、高融点高粘度タイプの強靱性を有するインクを用いた記録に最適なサーマルプリンタの記録制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、銀行等で発行するキャッシュカード、流通分野で使用されるクレジットカード、あるいは社員等であることを証明する社員証、店舗等で発行するサービスカード等、各種プラスチックカード(以下、「カード」)が広範囲に利用されている。
【0003】このようなカードはポリエチレン等の樹脂材で形成されており、その表面に施される記録に用いられるインクとしては、カードの頻繁且つ日常的な使用に耐用する強靱性を有した、高融点高粘度タイプのインク(以下、「強靱性インク」)が用いられている。しかし、この強靱性インクには、自身の材料特性から、非常に転写感度が低いという欠点があるのも事実である。
【0004】また、従来より、階調データを記録する階調記録方法として、記録データの1画素を複数のブロック(1ブロック=単一ドット)により構成し、サーマルヘッドの複数の発熱素子に選択的に通電する際に、前記各色の通電パターンに基づいて、1画素中の通電させるドットの数を制御しながら多階調の画像の記録を行なう方法(ディザマトリクス法)が採用されている(以下、「従来法」)。そして、この多階調の画像記録の基本は、あくまでも単一ドットの印刷精度であることは言うまでもない。
【0005】ところが、前記強靱性インクは前記単一ドットの印刷には極めて不適なインクであるといえる。すなわち、強靱性インクは、その高融点高粘度である特性から、単一ドットのような小さなターゲットではインクの切れが悪く、転写が困難であるという問題点があった。
【0006】前記ディザマトリクス法による記録方法を用いてこの強靱性インクにより所望の記録をカードに施す場合においては、前記インクの低い転写感度を補うべく、サーマルヘッドの通電エネルギーを上げる方法(以下、「問題解決法」)を採用することで単一ドットの転写は可能となる。
【0007】しかしながら、単に、通電ドットに高い通電エネルギーを投入させると、転写エネルギー以上の通電エネルギーが投入されることとなり、本来ならば通電されないドットの領域にまでその影響が及んでしまうことがあった。つまり、当該1画素には「潰れ」が発生して、微妙な濃度階調の表現が付加となることがあった。例えば、図3の問題解決法を示すラインに表したように、10分割のブロックから1画素を構成した場合の7ブロック、すなわち7ドット以上に通電させるような、いわゆる高Dutyな記録を行なうときに、前記「潰れ」の問題は顕著になる。よって、前述のようにディザマトリクス法と強靱性インクとの組合せによる記録方法は、高精細フルカラー記録には適さないとされている。
【0008】この問題は、前記レジン系の強靱性インクの場合に限らず、一般的に用いられるWAX系のインクであっても生じうる問題である。そして、この「潰れ」の問題は、サーマルヘッドへの通電熱制御(面積・履歴補正)によりコントロールすることで解決するようになされているのが一般的である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この補正制御も万能ではなく、インクの転写感度に対して限界があり、少なくとも前述のようなカードの記録に用いることが望まれる強靱性インクでは補正しきれなかった。
【0010】そこで、本発明は、ディザマトリクスの手法を用いて高精細な多階調記録を得るためのサーマルヘッドの記録制御方法であり、特に、強靱性インクを用いる記録においても、記録品位の良好な記録結果を得ることのできるサーマルプリンタの記録制御方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するため、本発明のサーマルヘッドの記録制御方法は、1画素に対して、所定の階調に対応する印字データのディザマトリクスを構成する複数のブロックを割り当て、前記1画素を構成する全ブロックに対して、1画素毎の階調データに応じて前記各ブロックを所定の順序で成長させることにより、前記インクの記録媒体に対する転写に必要十分な通電エネルギーを投入するドットから構成される記録通電ブロックと、前記インクの溶融直前の通電エネルギーを投入するドットから構成される予備通電ブロックとに振り分けて決定し、この決定に基づいて、前記記録通電ブロック及び予備通電ブロックにそれぞれ所定の通電エネルギーを投入する制御を行うことを特徴とする。
【0012】本発明によれば、インクの転写の有無に拘わらずサーマルヘッドの全体が一定以上に加熱されることにより、使用するインクの溶融・転写・剥離を容易且つ確実なものとすることができる。よって、たとえ単一ドットの転写であっても確実に行なうことが可能となり、記録結果を高精細なものとすることができる。
【0013】そして、前記インクとして強靱性インクを用いる場合であっても、従来では不適とされていた、ディザマトリクス法と強靱性インクとの組合せによる記録方法により、高精細フルカラー記録を得ることが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】本実施形態において用いるサーマルプリンタは、600dpiの記録を可能とするサーマルヘッドを有し、その制御部において、ホストコンピュータやイメージリーダ等から入力された画像情報に基づいてサーマルヘッドのCR方向への走査を制御するとともに、各発熱素子の通電制御を行なうことにより、シアンC、マゼンタM、イエローYおよびブラックK等の各色のインクを用いたカラー画像を重ねて記録するように制御されている。そして、本実施形態においては、前記カラー画像は、ディザマトリクスを用いて多階調記録を行なうように構成されている。
【0015】すなわち、本実施形態においては、1画素1を10のブロックにより構成し、各ブロックを1ドットにより構成する。そして、前記1画素を構成する全ブロックに対して、階調データに応じて前記各ブロックを所定の順序で成長させる。そして、インクの特性に応じて、当該インクの記録媒体に対する転写に必要十分な通電エネルギーを投入させるドットからなるブロック(以下、記録通電ブロック)と、前記インクの転写に必要な通電エネルギー以下で、前記インクを溶融させる直前の通電エネルギーを投入させるドットからなるブロック(以下、予備通電ブロック)とに振り分け決定する。そして、この決定に基づいて、前記記録通電ブロック及び予備通電ブロックにそれぞれ所定の通電エネルギーを投入する制御を行う。
【0016】図1及び図2は、カラー記録の前記マゼンタM、シアンC、イエローYまたはブラックKのいずれか1色の記録に用いられるマトリクスの一例を示すものである。このマトリクスは、3×3ドットの右上側部に1つのドットを追加した10ドットのマトリクスからなり、−14.03°のスクリーン角を有するように構成されている。そして、この10ドットからなるマトリクスにより単位画素1が構成されている。
【0017】また、他のインク色についても、45°、14.03°または0°のスクリーン角を有するいずれかのマトリクスにより単位画素1を構成し、このディザマトリクスに対する通電制御されるものとするが、以下においては、前述の−14.03°のクスリーン角のマトリクスを例に、説明を続ける。
【0018】そして、本発明においては、各画素1毎に前記記録通電ブロックをディザマトリクスの成長順に従って決定するとともに、その他のブロックを前記予備通電ブロックとして決定し、各ブロック毎に通電するパワーの制御を行う。つまり、図1に示すように各ブロックにディザマトリクスにおける階調の成長順を示すナンバーを1〜10で割り当てるとする。本実施形態の場合、いずれのブロックに対しても、インクの転写に十分な熱量を付与する通電を行わない場合、還元すれば、全てのブロックに対して、インクを転写させるに至らない程度の通電を行なう場合を含めて0〜10の11階調(Dutyで0〜100%)の表示が可能となる。
【0019】例えば、階調値を10(Dutyで95〜100%程度)とする記録を行なう場合には、1〜10のナンバーが割り当てられたブロックの全てを前記記録通電ブロックとし、これらの全てのブロックに対し、使用するインクを記録媒体に転写させるに十分な通電エネルギーを付与する。逆に、階調値を0(Dutyで0〜5%程度)とする記録を行なう場合には、1〜10のナンバーが割り当てられたブロックの全てを前記予備通電ブロックとし、これらの全てのブロックに対し、使用するインクを記録媒体に転写させるに至らない通電エネルギーを付与する。
【0020】また、階調値を3(Dutyで25〜35%程度)とする記録をおこなうとき、1〜10のナンバーが割り当てられたブロックのうち、1および2のナンバーが割り当てられたブロックを前記記録通電ブロックとし、それ以外の3〜10のナンバーが割り当てられたブロックを予備通電ブロックと決定して、それぞれのブロックに対する通電を制御することとなる。図2は、11階調の記録における階調値3の記録を行なう場合に、インクの転写に足りるだけの通電エネルギーを投入される1および2のナンバーが割り当てられた記録通電ブロックを黒で示し、それ以外の予備通電ブロックを白で示している。
【0021】このように、インクを記録媒体に転写させる本来のターゲット以外の部分にも、使用するインクの特性に応じた、溶融直前の状態に通電加熱する制御の下で記録をおこなうことにより、本来のターゲットの部分のインクの転写を良好に行うことができるようになった。
【0022】つまり、本実施形態の記録制御方法により、サーマルヘッドは全体的に加熱されて、インクは溶融しやすい状態とされることになる。その状態において、インクを記録媒体に転写させるターゲット部分においてのみインクの転写に足りる通電エネルギーを投入することで、容易にそのターゲット部分のインクを記録媒体に対して転写させることができる。よって、例えば、前述のカード記録の場合のように、強靱性インクを用いた記録が余儀なくされる場合であっても、本実施形態のサーマルプリンタの記録制御方法によれば、単一ドットの記録も良好に行うことができるものとなり、高精細な記録結果を得ることが可能となる。
【0023】そして、本実施形態の記録制御方法によれば、前述した従来の問題解決法で単一ドットに対しインクを転写させるときに要したピーク電力の30%減の電力で同様の品質の記録を行なうことができることが解った。
【0024】さらに、図3において、本実施形態のサーマルプリンタの記録制御方法と前記問題解決法とを比較してみると明らかなように、従来の問題解決法においては50%(Duty)以上で得られなかったリニア性を、本実施形態の記録制御方法においては得ることができた。特に、高濃度印刷を行なう場合に、各ドットは常に通電され、予熱された状態以上とされているので、高精度の記録を得ることが可能となった。また、従来の問題解決法では70%(Duty)以上で発生していた「潰れ」の問題も、このリニア性の確保と併せて解消することができるものとなり、記録の濃度制御が高Duty部分でも高精度に行えるようになった。
【0025】また、図3において、本実施形態のサーマルプリンタの記録制御方法と従来法とを比較してみると明らかなように、本実施形態の記録制御方法によれば、0.1〜1(Dencity)の範囲においては、同一の記録濃度を「従来法におけるDuty値−10」というディーティ値で得ることが可能となった。
【0026】また、本来ならば余白であるべき領域に、インクが転写されない程度で通電することにより、全体としての補正量が縮小されるため、面積補正の処理負担も減少する。
【0027】このように、本実施形態のサーマルプリンタの記録制御方法によれば、主に単一ドットで構成されるハイライトの記録部分であっても、濃度も高く、高Dutyな記録部分であっても、精度のよい記録を行うことができるようになり、600dpiのサーマルヘッドを用いて印刷写真並の175線相当の記録を得ることが可能となった。
【0028】なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。例えば、当該サーマルプリンタの記録制御方法において実施する階調値は前述の実施形態の11階調にかぎるものではない。さらに、通電時間を制御してドット径を変化させることにより、さらに、多階調の記録結果を得ることも可能である。
【0029】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、ディザマトリクスの手法を用い、単一ドットで構成されるハイライトの記録部分であっても、濃度も高く、高Dutyな記録部分であっても、精度のよい記録を行うことができるようになり、特に、レジン系の強靱性インクを用いてカード記録を行うような場合であっても、頑強かつ精細な多階調の記録結果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
【住所又は居所】東京都大田区雪谷大塚町1番7号
【出願日】 平成13年12月18日(2001.12.18)
【代理人】 【識別番号】100081282
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 俊輔 (外3名)
【公開番号】 特開2003−182132(P2003−182132A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−384360(P2001−384360)