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【発明の名称】 サーマルヘッド
【発明者】 【氏名】白川 享志
【住所又は居所】東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプス電気株式会社内

【氏名】十文字 雅久
【住所又は居所】東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプス電気株式会社内

【氏名】久保 敏
【住所又は居所】東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプス電気株式会社内

【要約】 【課題】本発明は、材質の異なる複数層の絶縁層を保温層上に形成することにより、リーク不良をなくすると共に、熱拡散による熱効率の低下を防止して省電力で高速印刷に適したサーマルヘッドを提供すること。

【解決手段】Siと複数の遷移金属と酸素との化合物からなる低熱伝導性の導電性多元低酸化物セラミックス層からなる保温層12の上に、少なくともSiと複数の遷移金属と窒素との化合物からなる低熱伝導性の絶縁性多元高窒化物セラミックス層からなり第1の絶縁層13と、この第1の絶縁層13の上に高絶縁性のSiO2層、またはAl2O3層からなる第2の絶縁層14を積層形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の上面に形成した保温層と、この保温層の上面に複数の発熱抵抗体と給電体とにより形成した複数の発熱素子と、少なくとも前記発熱抵抗体および前記給電体の表面を被覆する保護層とを備え、前記保温層は、Siと複数の遷移金属と酸素との化合物からなる低熱伝導性の導電性多元低酸化物セラミックス層からなり、前記保温層の上に、材質の異なる複数層の絶縁層を形成したことを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項2】 前記絶縁層は、少なくともSiと複数の遷移金属と窒素との化合物の低熱伝導性の絶縁性多元高窒化物セラミックス層からなる第1の絶縁層と、この第1の絶縁層の上に高絶縁性のSiO2層、またはAl2O3層からなる第2の絶縁層を積層形成したことを特徴とする請求項1記載のサーマルヘッド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サーマルプリンタに使用されるサーマルヘッドに係わり、特に電流のリーク不良をなくして省電力で高速熱応答性のサーマルヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、サーマルヘッドは、各種情報機器の記録装置に多用されるようになってきている。そして、これらの情報機器の高速化、低価格化、省電力化、小型化等のため、サーマルヘッドにも、省電力で高速熱応答性のものが望まれている。このような高速熱応答性のサーマルヘッドとするためには、保温層材料に熱伝導率の低減したものを用い、保温層の厚みを薄くして熱容量を小さくすれば良いが、従来から用いているグレーズ保温層材料の熱伝導率を低減することは、技術的に難しく、グレーズ保温層を用いる場合は、単純に厚みを薄く形成して、グレーズ保温層の熱容量を低減して蓄熱を小さくしていた。そのために、省電力を犠牲にしながら、所望の熱応答性を得て高速印刷を行うことが一般的に行われていた。
【0003】ところが、近年、省電力を犠牲にすることなく、且つ熱応答性に優れ、省電力を犠牲にしなくても良い新規保温層材料が開示されている。このような新規保温層材料は、低熱伝導性の低酸化物セラミックスを、酸素リアクティブスパッタ蒸着により形成している。
【0004】前述のような新規保温層材料を用いた従来のサーマルヘッドを図3に基づいて説明すると、シリコン等からなる放熱性に優れた基板1の表面には、フォトリソ技術により所定の高さの凸条部1aが形成され、この凸条部1aの上に新規保温層材料からなる保温層2が積層形成されている。前記保温層2は、Siと複数の遷移金属と酸素とからなり、熱伝導率が略0.8w/m.kで、抵抗率が略100Ω−cmの低熱伝導性で導電性を有し、酸素リアクティブスパッタ蒸着により、基板1の上に10〜30μmの厚みに形成されている。
【0005】また、保温層2の上面には、表面に絶縁性と耐エッチング性を付与するために、SiO2、Al2O3等の絶縁性セラミックからなる絶縁層3が、スパッタ蒸着等により略2μmの厚みで、単層に積層形成されている。また、単層の絶縁層3の上面には、Ta−SiO2やTi−SiO2等からなる発熱抵抗体4がスパッタ蒸着等により積層され、フォトリソ技術によって、発熱抵抗体4のパターンが形成されている。
【0006】前記発熱抵抗体4の上面には、AlやCu等からなる共通給電体5および個別給電体6が形成され、この共通給電体5と個別給電体6とに挟まれた部分に発熱素子4aが形成されている。これらの上には、サイアロン等のセラミックからなる保護層7が被覆されて、発熱素子4a、および共通給電体5、個別給電体6等の酸化や摩耗を防止するようになっている。
【0007】このような構成の従来のサーマルヘッドは、高熱伝導性のシリコン基板1上に、新規保温層材料からなる低熱伝導性の保温層2を形成しているので、単発駆動の単発パルス通電による発熱素子4aの発熱温度が高く得られ、印刷開始時における基板1の温度が低い行頭での印字カスレを低減することができる。また、電源のピーク電流が低減され、省電力化および電源の小型化を図ることができる。また、連続駆動の連続パルス通電による、放熱性に優れた基板1と断熱性に優れ低熱容量の保温層2との組み合わせであるため、連続通電であっても、蓄熱による基板1の温度上昇が緩やかにでき、省電力で高速印刷に優れたサーマルヘッドとすることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述したような、新規保温層材料を用いた従来のサーマルヘッドは、導電性の保温層2上に単層の絶縁性セラミックスからなる絶縁層3を介して発熱抵抗体4や給電体5、6を積層しても、蒸着特有のピンホール欠陥により、各パターン間に保温層2を介して電流のリーク不良が発生する問題があった。このような電流のリーク不良が発生すると、サーマルヘッドを正常に動作させることができなくなることがある。また、絶縁層3の厚みを略2μmに厚くしても、リーク不良を皆無にはできなかった。また、絶縁層3の膜厚を厚くすると、絶縁層3は保温層2に比べて熱伝導率が大きいため、絶縁層3中の熱の拡散が増大して、熱効率が低下する問題があった。
【0009】また、スパッタ速度の遅いSiO2、Al2O3等の材料を用いて、単層成膜の絶縁層3を略2μmに厚くするには、製造時間が長くなり生産性が低下するという問題があった。また、蒸着特有のピンホール欠陥を解消する手段としては、分割成膜して中間に機械的な洗浄工程を介することが有効であるが、このような洗浄工程を追加することは、工数が増大し生産性が低下するという問題があった。本発明は前述したような問題点に鑑みてなされたもので、材質の異なる複数層の絶縁層を保温層上に形成することにより、リーク不良をなくすると共に、熱拡散による熱効率の低下を防止して省電力で高速印刷に適したサーマルヘッドを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するための第1の解決手段として本発明のサーマルヘッドは、基板の上面に形成した保温層と、この保温層の上面に複数の発熱抵抗体と給電体とにより形成した複数の発熱素子と、少なくとも前記発熱抵抗体および前記給電体の表面を被覆する保護層とを備え、前記保温層は、Siと複数の遷移金属と酸素との化合物からなる低熱伝導性の導電性多元低酸化物セラミックス層からなり、前記保温層の上に、材質の異なる複数層の絶縁層を形成した構成とした。
【0011】また、前記課題を解決するための第2の解決手段として、前記絶縁層は、少なくともSiと複数の遷移金属と窒素との化合物の低熱伝導性の絶縁性多元高窒化物セラミックス層からなる第1の絶縁層と、この第1の絶縁層の上に高絶縁性のSiO2層、またはAl2O3層からなる第2の絶縁層を積層形成した構成とした。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のサーマルヘッドを図面に基づいて説明する。図1は本発明のサーマルヘッドに関する要部断面図であり、図2は本発明と従来のサーマルヘッドの熱応答性を比較したグラフである。
【0013】まず、本発明のサーマルヘッドは、図1に示すように、シリコン等からなる放熱性に優れた基板11の表面に、断面が略台形状の凸条部11aを2〜20μmの高さに滑らかに突出させて形成している。前記基板11の上面には、機械的強度、および断熱性に優れた、メタルを含み導電性を有する黒色で低密度の保温層12を形成している。この保温層12は、熱伝導率が略0.8w/m.kと小さく、複数の遷移金属と酸素からなり、酸素リアクティブスパッタ蒸着により、厚みが10〜30μmに積層形成されている。前記保温層2は、抵抗率が略100Ω−cmの導電性に成膜されている。
【0014】また、保温層12の上面には、材質の異なる複数層の絶縁層が形成されている。この絶縁層は、下層に、主材料のSiを高絶縁性のSi3N4として、0.2〜1.0μmの厚みの低熱伝導性の絶縁性多元高窒化物セラミックスからなる第1の絶縁層13を形成している。また、上層には、高絶縁性SiO2層、またはAl2O3層からなり、略0.3μmの厚みの第2の絶縁層14が積層されて、複数層の絶縁層が形成されている。即ち、絶縁層は、少なくとも第1と第2の絶縁層13、14を積層形成したものである。
【0015】また、第2の絶縁層14の上には、Ta−SiO2等からなる発熱抵抗体15のパターンが、略0.1μmの厚みに積層されている。前記発熱抵抗体15の上には、AlやCu等からなる共通給電体16および個別給電体17が形成され、共通給電体16と個別給電体17とに挟まれた部分の発熱抵抗体15上に発熱素子15aが形成されている。また、少なくとも発熱抵抗体15や共通給電体16、および個別給電体17の酸化や摩耗を防止するために、これらの上に、サイアロン等のセラミックからなる保護層18が、略5μmの厚みに積層被覆されている。
【0016】このような構成からなる本発明のサーマルヘッドの製造方法は、高放熱性の基板11の表面に、フォトリソ技術により高さが2〜20μmの凸条部11aを突出形成する。次に、基板11の上面に、酸素リアクティブスパッタ蒸着により、黒色の保温層12を形成する。即ち、保温層12は、酸化度を制御して黒色で低密度の低酸化物セラミックス膜にスパッタ成膜され、熱伝導率が非常に小さくなっている。前記保温層12の酸素リアクティブスパッタ蒸着が終わった後、装置内の真空を保持したまま、同じ装置内で酸素ガスを窒素ガスに切り替えて、高窒素雰囲気の窒素リアクティブスパッタ蒸着を行って、低熱伝導性の絶縁性多元高窒化物セラミックスからなる第1の絶縁層13を連続的に形成する。
【0017】この第1の絶縁層13の上に、スパッタ蒸着により高絶縁性SiO2層、またはAl2O3層からなる第2の絶縁層14を積層形成する。この第2の絶縁層14の形成は、第1の絶縁層13を形成後に、第1の絶縁層13の表面のポリッシングにより、表面の突起欠陥を除去してから行っても良い。 このようなポリッシングした第1の絶縁層13の表面の第2の絶縁層14を形成することにより、リーク不良を確実になくすることができる。次に、第2の絶縁層14の上に、スパッタ蒸着により発熱抵抗体15を積層形成し、フォトリソ技術により発熱抵抗体15のパターンを形成する。次に、発熱抵抗体15の上に、スパッタ蒸着により給電体材料を積層し、フォトリソ技術により共通給電体16および個別給電体17を形成する。次に、少なくとも発熱抵抗体15や共通給電体16、および個別給電体17の上に、スパッタ蒸着により保護層18を積層被覆する。
【0018】以上のような本発明のサーマルヘッドは、保温層12の成膜に連続して、第1の絶縁層13を形成しているので、第1の絶縁層13の上にSiO2、またはAl2O3からなる第2の絶縁層14を厚みが略0.3μmに薄く積層形成しても、絶縁性の信頼度を高めることができる。また、本発明のサーマルヘッドは、保温層12に比べて材料の熱伝導率が大きい、第2の絶縁層14を形成し、その膜厚を薄く形成することによって、熱拡散による熱効率の低下を防止することができる。そのために、図2の熱応答性のグラフに示すように、破線で示す従来のサーマルヘッドよりも、実線で示す本発明のサーマルヘッドの方が、単位時間当たりの発熱温度を高くすることができ、省電力で高速印刷に適している。
【0019】
【発明の効果】本発明のサーマルヘッドは、Siと複数の遷移金属と酸素との化合物からなる低熱伝導性の導電性多元低酸化物セラミックス層からなる保温層の上に、材質の異なる複数層の絶縁層を形成したので、蒸着特有のピンホール欠陥をなくすることができ、電流のリーク不良をなくすることができる。
【0020】また、絶縁層は、少なくともSiと複数の遷移金属と窒素との化合物の低熱伝導性の絶縁性多元高窒化物セラミックス層からなる第1の絶縁層と、この第1の絶縁層の上に高絶縁性のSiO2層、またはAl2O3層からなる第2の絶縁層を積層形成したので、電流のリーク不良をなくして、省電力で高速熱応答性に優れたサーマルヘッドを提供できる。
【出願人】 【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
【住所又は居所】東京都大田区雪谷大塚町1番7号
【出願日】 平成13年12月20日(2001.12.20)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−182127(P2003−182127A)
【公開日】 平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願番号】 特願2001−387468(P2001−387468)