| 【発明の名称】 |
液体吐出ヘッドおよび液体吐出記録装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】北上 浩一 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】液室や液流路途中領域にて残留泡の蓄積・成長・合体を可能な限り抑制して吐出口へのインクのリフィル供給を確実に確保することにより、不吐による「抜け」のないきれいな連続印刷を提供する。
【解決手段】液滴を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、該液流路に液体を供給する液室と、前記液流路内の液体を前記吐出口から吐出させるべくエネルギーを付加する吐出エネルギー発生手段と、該吐出エネルギー発生手段が配置された基板とを具備した液体吐出ヘッドにおいて、液流路経路にて前記吐出エネルギー発生手段位置よりも液室側に穴を設けたバックオリフィスプレートを有することを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 液滴を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、該液流路に液体を供給する液室と、前記液流路内の液体を前記吐出口から吐出させるべくエネルギーを付加する吐出エネルギー発生手段と、該吐出エネルギー発生手段が配置された基板とを具備した液体吐出ヘッドにおいて、液流路経路にて前記吐出エネルギー発生手段位置よりも液室側に、穴を設けたバックオリフィスプレートを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。 【請求項2】 前記バックオリフィスプレートと前記基板とが略平行であることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。 【請求項3】 前記吐出口を含む平面と前記基板を含む平面と前記バックオリフィスプレートが略平行であって、前記バックオリフィスプレートが前記基板を含む平面を挟んで前記吐出口を含む平面とは反対側に設置されていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。 【請求項4】 前記吐出エネルギー発生手段が、前記液体に熱を加えて前記液体に膜沸騰を生じさせることで前記液流路内に前記液体を吐出するのに利用される気泡を生成するものであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の液体吐出ヘッド。 【請求項5】 前記吐出口に連通した液流路の液体中に発生させた気泡の吐出方向先端の移動速度の1次微分値が負である条件で該気泡を大気に連通させて液滴を吐出する方法を用いた請求項4記載の液体吐出ヘッド。 【請求項6】 前記吐出口に連通した液流路の液体中に発生させた気泡と前記液体との気液界面の一部を前記基板に接触するように変形させる工程と、該変形工程の後にまたは、ほぼ同時に前記気泡を外気と連通させる工程とを含む吐出方法を用いた請求項4記載の液体吐出ヘッド。 【請求項7】 前記吐出エネルギー手段に信号を与えるための駆動回路と、前記吐出させた液体を付着させる記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段とを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかの項に記載の液体吐出ヘッドを用いて記録を行なう液体吐出記録装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液滴を吐出させて記録する液体吐出ヘッドおよびこれを搭載した液体吐出記録装置、いわゆるインクジェットプリンターに関する。 【0002】 【従来の技術】従来、インクジェットプリンターとしては、吐出エネルギー発生手段が配置された基板と吐出口部が対向しているサイドシューター型やこれ以外のエッジシューター型と呼ばれるものが製品化されている。また吐出エネルギー発生手段として電気熱変換素子を利用したものや圧電/電歪素子を利用したものがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】いずれの方式においても良好な液滴吐出を阻害する要素に、不要な泡の発生、残存がある。一般に吐出エネルギー発生手段を設置した液流路空間は極めて狭い。一方液室と前述の液流路の接続部を見てみると、インクのリフィル供給を速くしようという意図から急激に空間が広くなっている。この影響でこの接続部ではいわゆる負圧状態形成の機会が吐出動作ごとに生じる。吐出エネルギー発生手段として電気熱変換素子を採用したいわゆるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットプリンタでは、吐出動作毎に主泡形成にまつわる付随の微小気泡の発生があり、これらが前述の負圧状態になりやすい液室と液流路との接続部にて蓄積・成長・合体を繰り返す。こういった状況は長時間の連続印刷の場合に極めて顕著となり、液室と液流路の接続部で蓄積・成長・合体を繰り返した残留泡は、吐出口へのインクのリフィル供給を断ってしまう。その結果、印刷中にインク吐出を正常に行なわないノズルが任意の場所で現れ、結果として印刷に「抜け」が生じてしまうという問題があった。 【0004】これまでは、液室と液流路の接続部への残留泡の付着防止対策や、種々の吸引回復手段による液体吐出ヘッドから外部への除去などの対策が講じられている。しかしながらこれらの対策は事後処理であって、「抜け」のある印刷物の事前防止とはなり得ない。また、従来方法にて広く採用されている吸引回復手段の場合にはインクを無駄に吸引しながらの回復実施という欠点がある。特に大きく成長した残留泡を除去する際にはインクの浪費はなお顕著となる。また指定された時間内に回復できない場合には回復動作が長引くばかりでなく、あわせて無駄に吸引排出されるインクの量も増加する。 【0005】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、液室や液流路途中領域にて、残留泡の蓄積・成長・合体を可能な限り抑制して、吐出口へのインクのリフィル供給を確実に確保することにより、「抜け」のないきれいな連続印刷を可能とする液体吐出ヘッド及び液体吐出記録装置を提供することを目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、以下(1)〜(7)の構成を備えるものである。 【0007】(1)液滴を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、該液流路に液体を供給する液室と、前記液流路内の液体を前記吐出口から吐出させるべくエネルギーを付加する吐出エネルギー発生手段と、該吐出エネルギー発生手段が配置された基板とを具備した液体吐出ヘッドにおいて、液流路経路にて前記吐出エネルギー発生手段位置よりも液室側に、穴を設けたバックオリフィスプレートを有することを特徴とする液体吐出ヘッド。 【0008】(2)前記バックオリフィスプレートと前記基板とが略平行であることを特徴とする上記(1)記載の液体吐出ヘッド。 【0009】(3)前記吐出口を含む平面と前記基板を含む平面と前記バックオリフィスプレートが略平行であって、前記バックオリフィスプレートが前記基板を含む平面を挟んで前記吐出口を含む平面とは反対側に設置されていることを特徴とする上記(1)記載の液体吐出ヘッド。 【0010】(4)前記吐出エネルギー発生手段が、前記液体に熱を加えて前記液体に膜沸騰を生じさせることで前記液流路内に前記液体を吐出するのに利用される気泡を生成するものであることを特徴とする上記(1)乃至(3)いずれか記載の液体吐出ヘッド。 【0011】(5)前記吐出口に連通した液流路の液体中に発生させた気泡の吐出方向先端の移動速度の1次微分値が負である条件で該気泡を大気に連通させて液滴を吐出する方法を用いた上記(4)記載の液体吐出ヘッド。 【0012】(6)前記吐出口に連通した液流路の液体中に発生させた気泡と前記液体との気液界面の一部を前記基板に接触するように変形させる工程と、該変形工程の後にまたは、ほぼ同時に前記気泡を外気と連通させる工程とを含む吐出方法を用いた上記(4)記載の液体吐出ヘッド。 【0013】(7)前記吐出エネルギー手段に信号を与えるための駆動回路と、前記吐出させた液体を付着させる記録媒体を搬送する記録媒体搬送手段とを有することを特徴とする上記(1)乃至(6)のいずれかの項に記載の液体吐出ヘッドを用いて記録を行なう液体吐出記録装置。 【0014】 【作用】上記構成によれば、液室と液流路の接続部において吐出動作ごとに形成される負圧レベルおよび負圧領域が改善される。この結果液室や液流路途中領域で残留泡は蓄積・成長・合体しにくく、吐出口へのインクのリフィル供給を確実に確保でき、「抜け」のないきれいな連続印刷を提供できる。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。 【0016】図1から図5は本発明の基本的な形態を示すための説明図であり、図1から図5の各々には本発明に係るインクジェットヘッドの構成とその製作手順の一例が示されている。 【0017】まず本発明においては、たとえば図1に示されるようにシリコン基板S1およびセラミックスC1,バックオリフィスプレートC2を用意する。バックオリフィスプレートC2としてはセラミックス等がよい。各シリコン基板S1およびセラミックスC1,バックオリフィスプレートC2には後に液室から吐出口へ通じる液流路を形成するための穴h1,連通流路棚21,液室22がそれぞれ設けてある。これらの穴加工は既知の加工方法のいずれかを用いればよい。たとえばシリコン基板S1の穴加工は異方性エッチング等によってもよい。またセラミックスC1,バックオリフィスプレートC2の穴加工は、打ち抜きやレーザー加工等によって仕上げられる(図1には便宜上、3つの吐出用電気熱変換素子までの範囲を示した)。またこれらシリコン基板S1およびセラミックスC1,バックオリフィスプレートC2は任意の締め付け手段あるいは接着剤を使っての接着などにより、図2に示すように一体化形成しておく。 【0018】その後、図3に示すように、バックオリフィスプレートC2上(表面)に酸化シリコンもしくは窒化シリコン層2を介して電気熱変換素子3が所望の個数配置される。なおこれらの電気熱変換素子3には、これら素子を動作させるための不図示の制御信号入力用電極が接続されている。また、一般にはこれら電気熱変換素子3の耐用性の向上を目的として、保護層等の各種機能層が設けられるが、もちろん本発明においてもこのような機能層を設けることは一向にさしつかえない。 【0019】次に、バックオリフィスプレートC2上へのノズル部の形成工程に入る。ここでは、一例として溶解可能な樹脂層を用いた製造方法で説明する。ここでバックオリフィスプレートC2上面はほぼ平面となっており、スピンコートあるいはロールコート等の塗布手段を用いることができるため、およそ50μm以下の膜厚であれば、任意の膜厚で高精度に成膜できる。 【0020】このようにして、スピンコートあるいはロールコートで溶解可能な樹脂層をバックオリフィスプレートC2上に成膜してパターニングし、液流路パターンを形成する。4はこの液流路パターンを形成する溶解可能な樹脂層である。 【0021】次に図4に示すように被覆樹脂層5を形成する。該樹脂はインクジェットヘッドの構造材料となるため、高い機械的強度、耐熱性、基板に対する密着性およびインク液に対する耐性やインク液を変質せしめない等の特性が要求される。 【0022】前記被覆樹脂層5は光または熱エネルギーの付与により重合・硬化し、基板に対して強く密着するものが好適に用いられる。 【0023】次いで図5に示すように、被覆樹脂層5上にインク吐出口6を形成する。インク吐出口6の形成方法としては、被覆樹脂層5が感光性の場合は、フォトリソ技術によってパターニングしても構わない。更に硬化した樹脂層を加工する場合は、エキシマレーザーによる加工、酸素プラズマによるエッチング等の手法が挙げられる。 【0024】次いで図6に示すように、液流路パターンを形成する溶解可能な樹脂層4を溶出する。このようにして液流路およびインク吐出口6を形成したシリコン基板S1に対して、インク供給のための不図示の部材および電気熱変換素子3を駆動するための不図示の電気的接合を行ってインクジェットヘッドが形成できる。 【0025】 【実施例1】本実施例では、前述の図1〜図6に示す手順に従ってインクジェットヘッドを作成した。 【0026】まず、厚さ450〜500μm程度のシリコン基板S1および厚さ5〜20μm程炭のセラミックスC1,バックオリフィスプレートC2を用意した。シリコン基板S1およびセラミックスC1,バックオリフィスプレートC2には前述したような方法により穴加工が施されている。とくにバックオリフィスプレートC2に設けられた穴h1は、9μm×9μmの角穴とし、該穴h1中心を、図6(b)に示したように、電気熱変換素子3の中心と一致させた。また、図6(a)に示したように、穴h1中心と電気熱変換素子3の中心とを含む断面内において、各寸法L1,L2,L3,L4が次のような関係を取るように該穴h1を設けた。L4は図6(a)にて示されるところの2つの穴の外接幅寸法である。 【0027】L3>L1 かつ L3>L2 かつ L3=L4その他は前述した実施の形態に即した手順によりインクジェットヘッドを作製した。なお、この条件は限定されるものではなく、液流路が確保できる範囲で任意に選択して構わない。 【0028】本ヘッドを用いてA4サイズ用紙への連続ベタ塗り印刷(連続吐出動作)を実施した結果、残留泡に起因する不吐出すなわち印刷の「抜け」は20枚レベルでは発生せず、良好な印刷が得られた。 【0029】本実施例1においてはバックオリフィスプレートC2に設けられた穴h1は角穴としたが、丸穴やその他の多角形穴としてもよく、開口面積についても任意に選択して構わない。 【0030】 【実施例2】本実施例も、前述の図1〜図6に示す手順に従ってインクジェットヘッドを作製した。 【0031】本実施例においては、図7に示すように、電気熱変換素子3中心線を挟んで等距離位置に2つの穴h1,h2が相位置するように、穴h1,h2を設けたバックオリフィスプレートC2を使用した。該穴h1,h2はともに9μm×9μmの角穴である。その他は前述した実施の形態に即した手順によりインクジェットヘッドを作製した。その他の条件は実施例1と同じである。 【0032】本ヘッドを用いてA4サイズ用紙への連続ベタ塗り印刷(連続吐出動作)を実施した結果、残留泡に起因する不吐出すなわち印刷の「抜け」は20枚レベルでは発生せず、良好な印刷が得られた。 【0033】本実施例2においてはバックオリフィスプレートC2に設けられた穴h1,h2は角穴としたが、丸穴やその他の多角形穴としてもよく、開口面積についても任意に選択して構わない。 【0034】 【比較例】比較例のヘッドとして、特開平09−011479に開示されている手順を用いて図8に示す構成のヘッドを作製した。駆動周波数、吐出させるインク液滴の容量等は、実施例1乃至2と同等であるようにした。 【0035】本ヘッドを用いてA4サイズ用紙への連続ベタ塗り印刷(連続吐出動作)を実施した結果、10枚前後で残留泡に起因する不吐出すなわち印刷の「抜け」が時折発生し、吸引回復動作へと移行した。 【0036】20枚のA4サイズ用紙への連続ベタ塗り印刷(連続吐出動作)を実施した直後の実施例1のインクジェットヘッド、同実施例2のインクジェットヘッドおよび印刷の「抜け」が生じた直後の比較例のインクジェットヘッドについて、マイクロスコープによる観察を行なった。観察は、多数の吐出口が形成されているオリフィスプレート5側から詳細に見た。その結果、実施例1および実施例2のヘッドでは、小さな残留泡は見られたが吐出口方向へのインクのリフィルを阻害するような大きさのものはなかった。この差の要因は以下のものと考えられる。すなわち比較例のインクジェットヘッドの構成では吐出動作時(発泡時)において、電気熱変換素子3が設置されている基板面上での液室方向への逆流が大きい開口面積で直接的に容積の大きい液室32へ吹き出している。これに対して実施例1および実施例2においては、小さい開口面積の小穴を設けたバックオリフィスプレートC2を設置しかつ屈曲した流路経路(連通流路棚)21を導入したことで、容積の大きい液室22へ吹き出す勢いが抑制される。この結果、実施例1および実施例2では液室22と液流路の接続部において吐出動作ごとに形成される負圧レベルおよび負圧領域が改善され、その結果液室22や液流路途中領域で残留泡が蓄積・成長・合体しにくくなったためと考えられる。 【0037】また、実施例1および実施例2のヘッドにおいて導入されている連通流路棚21(シリコン基板S1上面とバックオリフィスプレートC2とで形成されている間隙。吐出口並び方向には敷居がないので、ある一部の箇所に泡があってもインクを取り込める他の領域から該連通流路棚21へ入り込んだインクが安定してバックオリフィスプレートC2の穴h1,h2を通じて各吐出口へ供給されていると考えられる。)がインクのリフィル確保に良好に機能していたためとも考えられる。 【0038】以上、サイドシューター型のインクジェットヘッドに対する説明をしたが、図9に示すような構成を取ればエッジシューター型のインクジェットヘッドに対しても同様の効果が得られる。 【0039】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、液室と液流路の接続部において吐出動作ごとに形成される負圧レベルおよび負圧領域が改善される。この結果、液室や液流路途中領域で残留泡は蓄積・成長・合体しにくく、吐出口へのインクのリフィル供給を確実に確保でき、「抜け」のないきれいな連続印刷を提供できる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001007 【氏名又は名称】キヤノン株式会社 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
|
| 【出願日】 |
平成13年11月12日(2001.11.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066061 【弁理士】 【氏名又は名称】丹羽 宏之 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2003−145768(P2003−145768A) |
| 【公開日】 |
平成15年5月21日(2003.5.21) |
| 【出願番号】 |
特願2001−345991(P2001−345991) |
|