| 【発明の名称】 |
記録装置およびその吐出方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】今仲 良行 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【氏名】神田 英彦 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【氏名】三隅 義範 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【氏名】望月 無我 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【氏名】斎藤 一郎 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
【氏名】山口 孝明 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤノン株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】発熱抵抗体へ印加されるパルス電圧のトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とする。
【解決手段】発熱抵抗体へ印加されるパルスのトータルのパルス幅がそのパルス幅が小さくなるにつれてインクの吐出量が減少するような3μs以下であっても、ランク抵抗の抵抗値が低くなるにつれてプレヒートパルス印加時の発熱抵抗体表面の最高到達温度を高くなるように設定し、ランクテーブル上に設定されるプレヒートパルスのパルス幅P1を長くすることによって、トータルのパルス幅が小さくなるにつれて減少するインクの吐出量の減少分を補正し、インクの吐出量が一定となるようなランクテーブルを作成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被記録媒体に記録を行なうために液体に熱エネルギーを与えることにより液体に気泡を発生させて液体を吐出するために、電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換するための発熱抵抗体が形成された半導体基板を有する記録ヘッドと、インクを吐出する際には前記発熱抵抗体に第1のパルス電圧を印加し前記発熱抵抗体の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に前記発熱抵抗体に第2のパルス電圧を印加して前記気泡を発生させて液体を吐出するように前記記録ヘッドを制御し、前記発熱抵抗体の抵抗値に対応するランク抵抗の抵抗値と、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間、前記第2のパルス電圧のパルス幅との関係を示すランクテーブルを参照し、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記第2のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間を設定する制御回路とを備える記録装置において、前記制御回路は、前記ランク抵抗の抵抗値が小さくなるにつれて前記第1のパルス電圧印加時の前記発熱抵抗体表面の最高到達温度が高くなるように前記第1のパルス電圧のパルス幅が設定されているランクテーブルに基づいて、前記第1のパルス電圧のパルス幅を設定することを特徴とする記録装置。 【請求項2】 前記ランクテーブルにおける所定の時間は、前記ランク抵抗の抵抗値に関わらず一定である請求項1記載の記録装置。 【請求項3】 被記録媒体に記録を行なうために液体に熱エネルギーを与えることにより液体に気泡を発生させて液体を吐出するために、電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換するための発熱抵抗体が形成された半導体基板を有する記録ヘッドと、インクを吐出する際には前記発熱抵抗体に第1のパルス電圧を印加し前記発熱抵抗体の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に前記発熱抵抗体に第2のパルス電圧を印加して前記気泡を発生させて液体を吐出するように前記記録ヘッドを制御し、前記発熱抵抗体の抵抗値に対応するランク抵抗の抵抗値と、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間、前記第2のパルス電圧のパルス幅との関係を示すランクテーブルを参照して、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記第2のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間を設定する制御回路とを備える記録装置において、前記制御回路は、前記ランク抵抗の抵抗値が小さくなるにつれて前記所定の時間が長くなるように設定されているランクテーブルを参照して、前記所定の時間を設定することを特徴とする記録装置。 【請求項4】 環境温度を一定に保つ温度制御手段をさらに備えている請求項1から3のいずれか1項記載の記録装置。 【請求項5】 前記記録ヘッドは、液体を吐出する複数の吐出口と、前記吐出口と連通する複数の液流路とを構成する部材とをさらに有する請求項1から4のいずれか1項記載の記録装置。 【請求項6】 前記記録ヘッドを駆動するための駆動信号を前記記録ヘッドに供給する駆動信号供給手段と、前記記録ヘッドにより印字される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段とをさらに有する請求項1から5のいずれか1項記載の記録装置。 【請求項7】 被記録媒体に記録を行なうために液体に熱エネルギーを与えることにより液体に気泡を発生させて液体を吐出するために、電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換するための発熱抵抗体が形成された半導体基板を有する記録ヘッドと、インクを吐出する際には前記発熱抵抗体に第1のパルス電圧を印加し前記発熱抵抗体の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に前記発熱抵抗体に第2のパルス電圧を印加して前記気泡を発生させて液体を吐出するように前記記録ヘッドを制御する制御回路とを備える記録装置において、前記発熱抵抗体の抵抗値に対応するランク抵抗の抵抗値と、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間、前記第2のパルス電圧のパルス幅との関係を示すランクテーブルを参照して、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記第2のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間を設定して、前記記録ヘッドよりインクを吐出する、記録装置の吐出方法において、前記ランク抵抗の抵抗値が小さくなるにつれて前記第1のパルス電圧印加時の前記発熱抵抗体表面の最高到達温度が高くなるように前記第1のパルス電圧のパルス幅が設定されているランクテーブルに基づいて、前記第1のパルス電圧のパルス幅を設定し、設定された前記第1のパルス電圧のパルス幅に基づいて前記記録ヘッドよりインクを吐出する、記録装置の吐出方法。 【請求項8】 前記ランクテーブルにおける所定の時間を、前記ランク抵抗の抵抗値に関わらず一定とする、請求項7記載の記録装置の吐出方法。 【請求項9】 被記録媒体に記録を行なうために液体に熱エネルギーを与えることにより液体に気泡を発生させて液体を吐出するために、電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換するための発熱抵抗体が形成された半導体基板を有する記録ヘッドと、インクを吐出する際には前記発熱抵抗体に第1のパルス電圧を印加し前記発熱抵抗体の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に前記発熱抵抗体に第2のパルス電圧を印加して前記気泡を発生させて液体を吐出するように前記記録ヘッドを制御する制御回路とを備える記録装置において、前記発熱抵抗体の抵抗値に対応するランク抵抗の抵抗値と、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間、前記第2のパルス電圧のパルス幅との関係を示すランクテーブルを参照して、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記第2のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間を設定し、前記記録ヘッドよりインクを吐出する、記録装置の吐出方法において、前記ランク抵抗の抵抗値が小さくなるにつれて前記所定の時間が長くなるように設定されているランクテーブルを参照して、前記所定の時間を設定し、設定された前記所定の時間に基づいて前記記録ヘッドよりインクを吐出する、記録装置の吐出方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、被記録媒体に印字を行うために、電気エネルギーを印字エネルギーに変換するためのエネルギー変換素子が形成された記録ヘッドを備えた記録装置に関し、特に、印字エネルギーを発生させるための印字エネルギー発生素子等が形成された半導体基板を有する記録ヘッドを備えた記録装置に関する。 【0002】ここで被記録媒体への印字には、文字を印刷する動作だけでなく記号、図形等の文字以外のものを印刷する動作をも含むものとする。 【0003】 【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えることで、インク等の液体に急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット(登録商標)記録方法が従来知られている。このバブルジェット記録方法を用いる記録装置には、米国特許第4、723、129号明細書等の公報に開示されているように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出するためのエネルギー発生手段としての発熱抵抗体が一般的に配されている。 【0004】この様な記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、この記録方法を行う記録ヘッドではインクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができるため、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができるという多くの優れた点を有している。このため、このバブルジェット記録方法は、近年、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。 【0005】ところで、インクを吐出するためのエネルギーを発生させるための発熱抵抗体は、半導体製造プロセスを用いて作製することができる。そのため、バブルジェット技術を利用した従来の記録ヘッドは、シリコン基板からなる素子基板上に発熱抵抗体を形成し、その上に、インク流路を形成するための溝を形成した、ポリサルフォン等の樹脂やガラス等からなる天板を接合した構成となっている。 【0006】また、素子基板がシリコン基板からなることを利用し、発熱抵抗体を素子基板上に構成するだけでなく、発熱抵抗体を駆動するためのドライバや、発熱抵抗体をヘッドの温度に応じて制御する際に用いられる温度センサおよびその駆動制御部等を素子基板上に構成したものもある(特開平7−52387号公報等)。このようにドライバや温度センサおよびその駆動制御部等を素子基板上に構成したヘッドは実用に供されており、記録ヘッドの信頼性の向上及び装置の小型化に寄与している。 【0007】図6は、素子基板上に形成されたドライバの一例を示すブロック図である。1つの記録ヘッドには128個のノズルとそれらに対応した発熱抵抗体が存在する。発熱抵抗体はseg1〜seg128で示される。Vh端子は128個の発熱抵抗体に共通のコモン電極である。Vhは記録動作時は20〜35Vの電圧が掛けられている。Top(Rnk)端子は、後述するランクテーブルにおける記録ヘッドのランクを判断する端子であり、内部のランク抵抗141の値によって発熱抵抗体駆動パルスの幅や高さまたは駆動タイミングなどを補正し、結果としてどの記録ヘッドから吐出されるインク液滴の体積も同一になるように制御される。GNDH端子は、128の発熱抵抗体駆動回路部の基準電位を与える端子である。また、SUB端子はサブヒータ142用の端子である。サブヒータ142は、記録ヘッドの温度を上げるときに使用される。サブヒータ142は記録ヘッド内の左右に2個配置されている。 【0008】HeatEN−A、HeatEN−Bは、発熱抵抗体駆動のイネーブル信号端子である。HeatEN−AとHeatEN−Bとは独立に制御可能な構成としてある。RESET端子、CLK−AとCLK−B端子、U/D端子はデータをセットするノズルをブロック毎に選択するカウンタ144Aとカウンタ144Bに関する端子である。カウンタ144の次の段にはデコーダ145があり、更に次の段には記録信号との論理積をとるロジック146があり、トランジスタアレイ147を介して各発熱抵抗体に接続される。RESETは、カウンタ144のクリア端子である。CLK−A及びCLK−Bはカウンタ144A及びカウンタ144Bに入るクロック端子である。U/Dは、カウンタ144のアップダウンを選択する端子である。往復記録動作時には、往路ではアップ、復路ではダウンのようにアップとダウンが交互に入れ替わり記録する。 【0009】IDATA端子は、データ入力端子であり、DCLK端子からのデータクロック信号と同期してデータが入力され128ビットのシリアルパラレル変換回路148を介して128ビットのラッチ回路で一時的にデータがラッチされる。RESET端子は、ラッチ回路149のリセット端子でもある。また、LTCLK端子は、ラッチ信号をラッチ回路149に与える端子である。 【0010】VDD端子は、ロジック系の電源電圧入力端子で、この端子より印加される電圧は、5Vである。また、GNDL端子はロジック系の基準電位を与える端子である。DiA端子は、DiK端子との間の2個のシリアル接続されたダイオード150の端子である。2個のダイオード150は記録ヘッドの左右に配置され、記録ヘッドの平均的な温度を測定するのに使用される。 【0011】以上述べたように、記録装置は、記録ヘッドの発熱抵抗体seg1〜seg128の両端にパルス状の電圧であるヒートパルスを印加して発熱抵抗体seg1〜seg128を通電駆動し、発熱抵抗体seg1〜seg128から発生する熱によりその近傍のインクを発泡させて、その発泡圧力によりインクを吐出する。したがって、このような記録装置の記録ヘッドでは、インクの吐出量は主にインクの発泡体積に依存する。ここで、インクの発泡体積は、発熱抵抗体seg1〜seg128近傍のインクの温度によって変化するため、吐出のためのヒートパルス(第2のパルス電圧)を印加する前に、インクが吐出しない程度のエネルギーのパルスすなわちプレヒートパルス(第1のパルス電圧)を印加し、そのパルス幅やタイミングにより発熱抵抗体seg1〜seg128の表面温度を調整することによって、吐出される液適を一定にして印刷品位を維持している。 【0012】図7は、インクが吐出される際の従来の記録装置における発熱抵抗体seg1〜seg128表面の温度の変化の様子と、発熱抵抗体seg1〜seg128に印加されるパルス電圧の波形とを示すグラフである。 【0013】発熱抵抗体seg1〜seg128の表面温度は、プレヒートパルスが発熱抵抗体に入力される時刻t0には、記録ヘッドの温度すなわち環境温度と同じT0となっている。なお、前述のように、インクの吐出量はインクの温度によって変わるため、記録装置は、サブヒータ142や前述の温度センサ等を用いて環境温度T0を一定に保つ制御手段をさらに備えている。 【0014】時刻t0において、プレヒートパルスが発熱抵抗体seg1〜seg128に印加されると、それまで、室温と同じT0であった発熱抵抗体seg1〜seg128表面の温度は上昇する。時刻t1において、プレヒートパルスの印加が終了すると、温度T1に達した発熱抵抗体seg1〜seg128表面の温度は、温度T1から下降し始める。なお、温度T1は、インクの発泡温度である300℃よりも低い温度であるため、この時点までインクの発泡はない。 【0015】時刻t2において、ヒートパルスが発熱抵抗体に印加されると、温度T2にまで下降した発熱抵抗体seg1〜seg128の表面温度は再び上昇する。発熱抵抗体seg1〜seg128の表面温度がT3(=300℃)に達した時刻t3にはインクに気泡が発生する。気泡が発生したことにより、発熱抵抗体seg1〜seg128からインク中へ熱が伝搬しなくなるため、発熱抵抗体seg1〜seg128の表面温度は急激に上昇する。これらの温度は、発熱抵抗体seg1〜seg128へのヒートパルスの印加を停止した時刻t4において頂点を示し、その値はT4となる。発熱抵抗体seg1〜seg128へのヒートパルスの印加が停止された時刻t4後は、発熱抵抗体seg1〜seg128から熱エネルギーが発生しないので、発熱抵抗体seg1〜seg128の表面温度は急激に低下し、もとの環境温度T0にもどる。なお、プレヒートパルスのパルス幅をP1とし、プレヒートパルスの印加が停止してからヒートパルスが印加されるまでの所定の時間であるオフタイムの幅をP2とし、ヒートパルスのパルス幅をP3とする。 【0016】また、インクの吐出量は、プレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2の長さによって大きく変わることが確認されている。図8は、環境温度T0とオフタイムの幅P2とヒートパルスのパルス幅P3とを一定としたときのプレヒートパルスのパルス幅P1とインクの吐出量との関係を示すグラフである。 【0017】図8において、曲線a、b、cは、構造あるいは駆動条件等が異なる記録ヘッドにおけるプレヒートパルスのパルス幅P1とインクの吐出量との関係をそれぞれ示している。V0はP1=0μsのときのインクの吐出量を示す。曲線aに示す記録ヘッドでは、プレヒートパルスのパルス幅P1の増加に応じて、インクの吐出量Vdはパルス幅P1が0からP1LMTまで線形性を有して増加し、パルス幅P1がP1LMTより大きい範囲ではその変化が線形性を失い、パルス幅P1MAXで飽和し最大となる。パルス幅P1の変化に対する吐出量Vdの変化が線形性を示すパルス幅P1LMTまでの範囲は、パルス幅P1を変化させることによる吐出量の制御を容易に行える範囲として有効である。そして、パルス幅がP1MAXより大きい場合、吐出量VdはVMAXより小さくなる。この現象は上記範囲のパルス幅を有するプレヒートパルスが印加されると発熱抵抗体上に微小な発泡(膜沸騰の直前状態)を生じ、この気泡が消泡する前に次のヒートパルスが印加され、上記微小気泡がヒートパルスによる発泡を乱すことによって吐出量が小さくなる。この領域をプレ発泡領域と呼び、この領域では後述するプレヒートパルスを媒介にした吐出量制御は困難なものとなる。図8において、P1=0〜P1LMTμsの範囲の吐出量とパルス幅との関係を示す直線の傾きをプレヒートパルス依存係数と定義すると、プレヒートパルス依存係数KPは以下のとおりになる。 【0018】 【数1】
【0019】この係数KPは、温度によらず記録ヘッドのヘッド構造や駆動条件、インク物性等によって定まる。前述したように、図8中の曲線b、cは他の記録ヘッドにおけるプレヒートパルス依存特性を示しており、記録ヘッドが異なるとその吐出特性が変化することが解かる。また、記録ヘッドが異なると、プレヒートパルスのパルス幅P1の上限値P1LMTも異なる。ちなみに、曲線aで示される記録ヘッドおよびインクにおいてはKP=3.209[ng/μsec・dot]であった。 【0020】図9は、環境温度T0とプレヒートパルスのパルス幅P1とヒートパルスのパルス幅P3とを一定としたときのオフタイムの幅P2とインクの吐出量との関係を示すグラフである。図9に示すように、オフタイムの幅P2とインクの吐出量Vdとの関係は、ヘッド構造やインクの物性等で決まる熱伝導によって定まるP2MAX以下では、オフタイムの幅P2が長くなるにつれてインクの吐出量Vdは増加する。これは、オフタイムの幅P2が長くなればなるほど、プレヒートパルス印加時においてインクに与えられたエネルギーがインクに充分拡散するためである。また、オフタイムの幅がP2MAX以上になると、オフタイムの幅P2が増加するにつれてインクの吐出量Vdは減少する。これは、オフタイムの幅P2が長くなりすぎると、プレヒートパルス印加によるインクの吐出量を増大させる効果が失われていくためである。 【0021】一方、上述の発熱抵抗体seg1〜seg128に接触している液体を発泡させるために必要なエネルギーを考えた場合、放熱条件が一定であれば、そのエネルギーは発熱抵抗体seg1〜seg128の単位面積当たりの必要投入エネルギーと発熱抵抗体seg1〜seg128の面積の積とのエネルギーとなる。したがって、インクの吐出量を所望の量としたい場合には、必要な発熱抵抗体seg1〜seg128の面積に加え、発熱抵抗体seg1〜seg128両端に印加される電圧と、発熱抵抗体seg1〜seg128を流れる電流と時間とが所望の量のインクを吐出するために必要なエネルギーを発生する条件に設定されていればよい。 【0022】しかし、素子基板上に発熱抵抗体seg1〜seg128を形成する構成においては、記録ヘッドの製造上、製造される記録ヘッド毎に発熱抵抗体seg1〜seg128の膜厚のばらつきが生じるため、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値も発熱抵抗体の膜厚が設計どおりであるときの抵抗値を標準値とした場合、記録ヘッド毎に約±20%程度のばらつきが生じる。つまり、同型の記録ヘッドを複数製造する場合でも、記録ヘッド毎に発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値のばらつきが生じる。したがって、発熱抵抗体seg1〜seg128に印加される電圧の値についてはプリンタ装置本体の電源によりほぼ一定とすることができるが、発熱抵抗体seg1〜seg128に流れる電流については発熱抵抗体seg1〜seg128の膜厚のばらつきにより、記録ヘッド毎に異なったものとなる。発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が標準値よりも大きくなることにより、電流が小さくなった場合には、投入エネルギーが不足するため、インクの発泡体積が小さくなってしまう。また逆に、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が標準値よりも小さくなり、発熱抵抗体seg1〜seg128を流れる電流が大きくなった場合には、過剰なエネルギー投入となってインクの発泡体積が大きくなってしまう。つまり、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が記録ヘッド毎に異なっている場合には、全ての記録ヘッドに同じ値のパルス電圧を同じ時間与えても、記録ヘッド毎にインクの吐出量の誤差が発生してしまうという問題がある。 【0023】従来、このような問題を解決するため、図8、図9に示すインクの吐出量の特性を利用して、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値に応じてプレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3の設定値を記録ヘッド毎に変更する方法が取られている。 【0024】図6に示すように、素子基板上には、発熱抵抗体seg1〜seg128とは別に、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値を把握するためのランク抵抗141が形成されている。従来、プレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3を調整する際には、ランク抵抗141の抵抗値を測定し、その測定値に基づいて後述するランクテーブルを参照し、その記録ヘッドのプレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3には、そのランク抵抗141の抵抗値のランクに該当するP1、P2、P3が設定される。 【0025】図10は、これらのプレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3を決定する際に用いられるランクテーブルを示す図である。このランクテーブルは、ランク抵抗141の抵抗値の標準値が約1044〜1057Ωでありランク抵抗141の抵抗値に884Ωから1228Ωまでのばらつきがある記録ヘッドについてのテーブルである。このランクテーブルでは、884〜1057Ωのランク抵抗値が24のランクに分割されており、各ランク毎に、プレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3の値が設定されている。図10のランクテーブルに示すように、プレヒートパルス印加時に与えられた熱エネルギーのインク中における拡散状態をすべてのランクで一定とするために、オフタイムの幅P2は、全てのランクにおいて固定となっている。そして、ランク抵抗141の抵抗値が標準値よりも小さければ小さいほど、発熱抵抗体seg1〜seg128に流れる電流は大きくなるため、プレヒートパルスのパルス幅P1、ヒートパルスのパルス幅P3は短くなるように設定されており、ランク抵抗141の抵抗値が標準値よりも大きければ大きいほど、発熱抵抗体seg1〜seg128に流れる電流は小さくなるため、プレヒートパルスのパルス幅P1、ヒートパルスのパルス幅P3は長くなるように設定されている。なお、ランクテーブル上におけるプレヒートパルスのパルス幅P1の値は、それぞれの記録ヘッドについて前述の温度T1に達するようなパルス幅が設定されている。 【0026】近年、上述の記録ヘッドを搭載する記録装置では、記録の高速化を図るために、プレヒートパルスやヒートパルスのトータルのパルス幅を短くする傾向にある。これらのパルスのパルス幅を短くすることは、発熱抵抗体からの放熱量を少なくすることができるという利点を有し、均一にインクの温度が上昇するので吐出状態の安全性が高くなるという利点も有する。従来、プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅は、3.5〜5.5μsであったが、最近では、プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅は、3μs以下となっており、非常に短くなっている。 【0027】図11は、プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅と、インクの吐出量との関係を示すグラフである。プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅が3.5〜5.5μsの範囲では、インクの吐出量は、7.5〜8.3ngとほぼ一定の値であったが、トータルのパルス幅が3μs以下の場合には、パルス幅が小さくなるにつれて、インクの吐出量が急激に落ち込んでいるのが解る。 【0028】図10のランクテーブルに設定されているプレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3の数値は、インクの吐出量がランクテーブル上に設定されているプレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅に依存せずほぼ一定であることを条件として設定されているものであり、プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅によってインクの吐出量が急激に変化するような場合には、このランクテーブルに設定されている数値をそのまま適用しても結果的にインクの吐出量が変化してしまうという問題がある。 【0029】 【発明が解決しようとする課題】以上述べたように、従来の記録装置では、プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅が短くなるにつれてインクの吐出量が急激に減少する。 【0030】しかし、ランク抵抗値から、製造される記録ヘッド毎にプレヒートパルスのパルス幅、オフタイムの幅、ヒートパルスのパルス幅を設定するために参照されるランクテーブルは、インクの吐出量がプレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅に依存せずほぼ一定であることを条件として作成されたものである。したがって、プレヒートパルスのパルス幅とオフタイムの幅とヒートパルスのパルス幅とをランクテーブルに定められた幅に設定しても、プレヒートパルスおよびヒートパルスのトータルのパルス幅が短い場合にはインクの吐出量が急激に減少するため、結果的にインクの吐出量が記録ヘッド毎にまちまちになってしまうという問題があった。 【0031】本発明は、発熱抵抗体へ印加されるパルス電圧のトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とすることができる記録装置およびその吐出方法を提供することを目的とする。 【0032】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の記録装置は、被記録媒体に記録を行なうために液体に熱エネルギーを与えることにより液体に気泡を発生させて液体を吐出するために、電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換するための発熱抵抗体が形成された半導体基板を有する記録ヘッドと、インクを吐出する際には前記発熱抵抗体に第1のパルス電圧を印加し前記発熱抵抗体の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に前記発熱抵抗体に第2のパルス電圧を印加して前記気泡を発生させて液体を吐出するように前記記録ヘッドを制御し、前記発熱抵抗体の抵抗値に対応するランク抵抗の抵抗値と、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間、前記第2のパルス電圧のパルス幅との関係を示すランクテーブルを参照し、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記第2のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間を設定する制御回路とを備える記録装置において、前記制御回路は、前記ランク抵抗の抵抗値が小さくなるにつれて前記第1のパルス電圧印加時の前記発熱抵抗体表面の最高到達温度が高くなるように前記第1のパルス電圧のパルス幅が設定されているランクテーブルに基づいて、前記第1のパルス電圧のパルス幅を設定することを特徴とする。 【0033】本発明の記録装置では、第1のパルス電圧印加時の発熱抵抗体の最高到達温度を発熱抵抗体の抵抗値が小さくなるにつれて高くなるようにランクテーブルを設定することによって、同じ発熱抵抗体の抵抗値を有する従来の記録装置の記録ヘッドにおける第1のパルス電圧のパルス幅よりも、第1のパルス電圧のパルス幅を長くすることができる。そのため、本発明の記録装置では、第1のパルス電圧および第2のパルス電圧のパルス幅の和が小さくなるにつれてインクの吐出量が減少するような状況であっても、第1のパルス電圧が長くなるにつれて増加するインクの吐出量の特性を利用して、第1のパルス電圧のパルス幅を従来よりも長くすることによってインクの吐出量を従来よりも増大させ、インクの吐出量の減少分を補正することができる。したがって、本発明の記録装置では、発熱抵抗体へ印加されるパルス電圧のトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とすることができる。 【0034】また、本発明の記録装置では、好ましくは、前記ランクテーブルにおける所定の時間は、前記ランク抵抗の抵抗値に関わらず一定である。 【0035】また、本発明の他の記録装置は、被記録媒体に記録を行なうために液体に熱エネルギーを与えることにより液体に気泡を発生させて液体を吐出するために、電気エネルギーを前記熱エネルギーに変換するための発熱抵抗体が形成された半導体基板を有する記録ヘッドと、インクを吐出する際には前記発熱抵抗体に第1のパルス電圧を印加し前記発熱抵抗体の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に前記発熱抵抗体に第2のパルス電圧を印加して前記気泡を発生させて液体を吐出するように前記記録ヘッドを制御し、前記発熱抵抗体の抵抗値に対応するランク抵抗の抵抗値と、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間、前記第2のパルス電圧のパルス幅との関係を示すランクテーブルを参照し、前記第1のパルス電圧のパルス幅、前記第2のパルス電圧のパルス幅、前記所定の時間を設定する制御回路とを備える記録装置において、前記制御回路は、前記ランク抵抗の抵抗値が小さくなるにつれて前記第1のパルス電圧印加時の前記発熱抵抗体表面の最高到達温度が高くなるように前記第1のパルス電圧のパルス幅が設定されているランクテーブルに基づいて、前記第1のパルス電圧のパルス幅を設定することを特徴とする。 【0036】本発明の記録装置では、第1のパルス電圧の印加終了後から第2のパルス電圧の印加開始までの所定の時間を発熱抵抗体の抵抗値が小さくなるにつれて長くなるようにランクテーブルを設定する。そのため、本発明の記録装置では、第1のパルス電圧および第2のパルス電圧のパルス幅の和が小さくなるにつれてインクの吐出量が減少するような状況であっても、所定の時間が長くなるにつれて増加するインクの吐出量の特性を利用して、所定の時間を従来よりも長くすることにより、インクの吐出量を従来よりも増大させ、インクの吐出量の減少分を補正することができる。したがって、本発明の記録装置では、発熱抵抗体へ印加されるパルス電圧のトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とすることができる。 【0037】また、本発明の記録装置は、好ましくは、環境温度を一定に保つ温度制御手段をさらに備えている。 【0038】また、本発明の記録装置では、記録ヘッドは、液体を吐出する複数の吐出口と、前記吐出口と連通する複数の液流路とを構成する部材とをさらに有する。 【0039】また、本発明の記録装置は、前記記録ヘッドを駆動するための駆動信号を前記記録ヘッドに供給する駆動信号供給手段と、前記記録ヘッドにより印字される被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段とを有する。 【0040】 【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態の記録装置について図面を参照して詳細に説明する。なお、前述のとおり、インクの吐出量はインクの温度等の環境温度にも大きく左右されるものであるため、本実施形態の記録装置では、従来と同様に、サブヒータ142や前述の温度センサ等を用いて環境温度T0を一定に保つ制御手段をさらに備えており、以下の説明は、環境温度T0が一定であるものとして説明する。 【0041】本実施形態の記録装置の記録ヘッドには、従来の記録装置と同様に、図6に示す発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値を測定するためのランク抵抗141が形成されており、本実施形態の記録装置においても、製造された記録ヘッド間でのインクの吐出量の誤差を吸収するために、インクを吐出する際に発熱抵抗体seg1〜seg128にプレヒートパルスを印加し発熱抵抗体seg1〜seg128の近傍の液体を加熱した後、所定の時間経過後に発熱抵抗体seg1〜seg128にヒートパルスを印加して気泡を発生させて液体を吐出するように記録ヘッドを制御する制御回路が、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値に対応するランク抵抗141の抵抗値と、プレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスのパルス幅P3との関係を示すランクテーブルを参照し、プレヒートパルスのパルス幅P1、ヒートパルスのパルス幅P3、オフタイムの幅P2を設定する。 【0042】本実施形態の記録装置では、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が小さくなるにつれて、プレヒートパルスによって加熱されたときの発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度が高くなるようにランクテーブル上のプレヒートパルスのパルス幅P1が設定されている。つまり、本実施形態の記録装置は、ランクテーブルにおけるプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法が従来の記録装置と異なる。 【0043】図1は、本実施形態の記録装置における、インクが吐出される際の従来の記録装置の発熱抵抗体seg1〜seg128表面の温度の変化の様子と、発熱抵抗体seg1〜seg128に入力されるパルス電圧の波形とを示すグラフである。図1に示す曲線aは、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が比較的大きい場合の、プレヒートパルス印加時の発熱抵抗体の表面温度の変化の様子であり、曲線bは、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が比較的小さい場合の、プレヒートパルス印加時の発熱抵抗体の表面温度の変化の様子である。 【0044】図7の従来の記録装置についてのグラフでは、発熱抵抗体の抵抗値に関わらず、プレヒートパルスP1印加時の発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度はT1で一定であったが、本実施形態の記録装置では、曲線bにおけるプレヒートパルスP1印加時の発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度T1’’は、曲線aにおけるプレヒートパルス印加時の発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度T1’よりも高くなっている。 【0045】以上述べたように、本実施形態の記録装置では、プレヒートパルス印加時の発熱抵抗体seg1〜seg128の最高到達温度を発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値、すなわちランク抵抗141の抵抗値が小さくなるにつれて高くなるように設定する。本実施形態の記録装置では、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が小さくなるにつれて最高到達温度が高くなるように設定することによって、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が等しい従来の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅P1よりも、プレヒートパルスのパルス幅P1を長くすることができる。そのため、本実施形態の記録装置では、プレヒートパルスおよびヒートパルスのパルス幅P1、P2の和が小さくなるにつれてインクの吐出量が減少するような状況であっても、図8に示す、プレヒートパルスのパルス幅P1が長くなるにつれて増加するインクの吐出量の特性を利用して、プレヒートパルスのパルス幅P1を従来よりも長くすることによってインクの吐出量を従来よりも増加させ、インクの吐出量の減少分を補正することができる。したがって、本実施形態の記録装置では、発熱抵抗体seg1〜seg128へ印加されるトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とすることができる。 【0046】次に、本実施形態の記録装置におけるランクテーブルのプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法について具体的に説明する。例えば、本実施形態の記録装置では、ランク抵抗141の標準値は、だいたい535Ω〜544Ωであり、ランク抵抗141の抵抗値には435Ωから654Ωまでのばらつきがあると想定されているとする。図2は、本実施形態の記録装置における、各ランク抵抗141の抵抗値でのシングルパルス相当のパルス幅と、プレヒートパルスを印加したときの発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度との関係の一例を示すグラフである。 【0047】図2では、横軸がシングルパルス相当のパルス幅となっており、縦軸がプレヒートパルスを印加したときの発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度となっている。シングルパルス相当のパルス幅とは、その記録ヘッドの発熱抵抗体seg1〜seg128にシングルのパルスを印加した場合に発熱抵抗体seg1〜seg128近傍のインクに気泡が発生する発泡温度に達するパルス幅である。また、このシングルパルス相当のパルス幅は、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値つまりランク抵抗141の抵抗値によって定まるものであり、本実施形態の記録装置では、ランク抵抗の抵抗値141が標準値の535〜544Ωである場合のシングルパルス相当のパルス幅は1.5μsとなっており、ランク抵抗値が435〜444Ωである場合には1.2μsとなっており、ランク抵抗値が645〜654Ωである場合には1.9μsとなっているとする。 【0048】本実施形態の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法では、まず、ランク抵抗141の抵抗値が標準値の535〜544Ωである場合についてのプレヒートパルスのパルス幅P1を決定する。このプレヒートパルスのパルス幅P1は、トータルのパルス幅が3μs以上であった場合のインクの吐出量と同じであるのが望ましい。プレヒートパルスのパルス幅P1が決定されると、自動的に、プレヒートパルス印加時における発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度も決まる。ランク抵抗141の抵抗値が標準値の535〜544Ωである場合、すなわちシングルパルス相当のパルス幅が1.5μsである場合には、図2に示すように、最高到達温度は、205.37℃となった。 【0049】本実施形態の記録装置では、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値が小さくなるにつれてプレヒートパルス印加時の発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度が高くなるように、ランクテーブル上のプレヒートパルスのパルス幅P1が設定されるため、シングルパルス相当のパルス幅とプレヒートパルス印加時における発熱抵抗体seg1〜seg128表面の最高到達温度との関係が右下下がりの直線となる。 【0050】本実施形態の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法では、次に、その直線の傾きを決定する。本実施形態の装置においては、直線の傾きは、シングルパルス相当のパルス幅が1μs増加するにつれて最高到達温度が5%から15%減少するような傾きとなる。この傾きは、記録ヘッドのヘッド構造や駆動条件、インク物性によって決められる。図2においては、シングルパルス相当のパルス幅が1μs増加するにつれて最高到達温度が約10%減少するような傾きに設定されている。 【0051】本実施形態の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法では、図2上に作成した前述の直線に基づいて、ランクテーブルの各ランクの抵抗値における発熱抵抗体表面の最高到達温度を求める。例えば、図2の直線により、ランク抵抗値が435〜444Ωである場合(シングルパルス相当のパルス幅=1.2μs)の最高到達温度は208.98℃となり、ランク抵抗値が645〜654Ω(シングルパルス相当のパルス幅=1.9μs)である場合の最高到達温度は195.8℃となる。そして、ランクテーブルの各ランクには、この直線により求めた最高到達温度に到達するようなプレヒートパルスのパルス幅P1が設定される。 【0052】図3は、本実施形態の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法によって作成されたランクテーブルの一例を示す図である。 【0053】図3に示すように、435〜654Ωの各ランク抵抗値は、22のランクに分割されており、各ランク毎にプレヒートパルスのパルス幅P1、オフタイムの幅P2、ヒートパルスの幅P3の値が設定されている。中でも、各ランクにおけるプレヒートパルスのパルス幅P1は、前述した本実施形態の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅P1の設定方法によって作成された図2の直線に基づき、そのランク抵抗値での発熱抵抗体seg1〜seg128の最高到達温度となるようなプレヒートパルスP1の値が設定される。 【0054】なお、図3に示すように、インクの吐出量は、オフタイムの幅P2にも左右されるため、このランクテーブルにおける各ランクのオフタイムの幅P2は2.375μsに固定されている。また、図3のランクテーブルにおけるヒートパルスのパルス幅P3の設定方法は、従来と同様であるため、説明は省略する。 【0055】本実施形態の記録装置では、インクの吐出量を一定とするために、図8に示すインクの吐出量とプレヒートパルスのパルス幅P1との線形関係を利用して、プレヒートパルスのパルス幅P1を従来の値から変更した。しかし、本発明の記録装置は、これに限定されるものではなく、オフタイムのパルス幅P2を固定とせずに、図9におけるインクの吐出量とオフタイムの幅P2との線形関係を利用して、プレヒートパルスのパルス幅P1とともにオフタイムの幅P2も従来の値から変更してインクの吐出量を一定としてもよいし、プレヒートパルスのパルス幅P1を固定として、オフタイムの幅P2を従来の値から変更してインクの吐出量を一定としてもよい。 【0056】オフタイムの幅P2を可変としてインクの吐出量を一定に保とうとする場合には、発熱抵抗体seg1〜seg128の抵抗値すなわちランク抵抗141の値が小さくなるにつれて、オフタイムの幅P2の値が長くなるようにランクテーブルに設定する。 【0057】本実施形態の記録装置では、プレヒートパルスおよびヒートパルスのパルス幅の和が小さくなるにつれてインクの吐出量が減少するような状況であっても、図8に示すオフタイムの幅P2が長くなるにつれて増加するインクの吐出量の特性を利用して、ランクテーブルに設定するオフタイムの幅P2を従来よりも長くすることによってインクの吐出量を従来よりも増加させ、インクの吐出量の減少分を補正することができる。したがって、本実施形態の記録装置では、発熱抵抗体seg1〜seg128へ印加されるトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とすることができる。 【0058】ただし、オフタイムの幅P2をランクテーブルに設定する場合、図9に示すように、ランクテーブルに設定されるオフタイムの幅P2は、オフタイムの幅P2が長くなるにつれてインクの吐出量が増加する0〜P2MAXμsの範囲内で設定されなければならず、さらには、インクの吐出量とオフタイムの幅P2との関係が傾きΔVdp/ΔP2で保たれている範囲α内の値が設定されるのが望ましい。 【0059】図4は、本実施形態の記録装置の記録ヘッドの構造を示す斜視図である。図4に示すように、記録ヘッドには、複数の吐出口400に連通する液路405を形成するための流路405を形成するための流路壁部材401と、インク供給口403を有する天板402とが取り付けられている。ここで、インク供給口403から注入されるインクが内部の共通液室404へ蓄えられて各液路405へ供給される。その状態で液体吐出ヘッド用基板100における発熱抵抗体6が、記録データに応じて通電駆動されることにより、吐出口400からインクが吐出されて記録が行われる。 【0060】なお、上記においては、天板402と流路壁部材401がそれぞれ別の部材により構成されている場合を用いて説明したが、天板402と流路壁部材404が一体成形された1つの部材により構成される場合もある。 【0061】次に、上述した記録ヘッドを搭載する本実施形態の記録装置の概略について説明する。図5は、本実施形態の記録装置の一例であるインクジェット記録装置600の概略斜視図である。 【0062】図5において、インクジェットヘッドカートリッジ601は、上述した記録ヘッドと、その記録ヘッドに供給するインクを保持するインクタンクとが一体となったものである。このインクジェットヘッドカートリッジ601は、駆動モータ602の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア603、604を介して回転するリードスクリュ605の螺旋溝606に対して係合するキャリッジ607上に搭載されており、駆動モータ602の動力によってキャリッジ607とともにガイド608に沿って矢印a、b方向に往復移動される。被記録材Pは、図示しない被記録材搬送手段によってプラテンローラ609上を搬送され、紙押え板610によりキャリッジ607の移動方向にわたってプラテンローラ609に対して押圧される。 【0063】リードスクリュ605の一端の近傍には、フォトカプラ611、612が配設されている。これらはキャリッジ607のレバー607aのこの域での存在を確認して駆動モータ602の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知手段である。 【0064】支持部材613は、上述のインクジェットヘッドカートリッジ601の吐出口のある前面(吐出口面)を覆うキャップ部材614を支持するものである。また、インク吸引手段615は、キャップ部材614の内部にインクジェットヘッドカートリッジ601から空吐出等されて溜まったインクを吸引するものである。このインク吸引手段615によりキャップ内開口部を介してインクジェットヘッドカートリッジ601の吸引回復が行われる。インクジェットヘッドカートリッジ601の吐出口面を払拭するためのクリーニングブレード617は、移動部材618により前後方向(上記キャリッジ607の移動方向に直交する方向)に移動可能に設けられている。これらクリーニングブレード617及び移動部材618は、本体支持体619に支持されている。クリーニングブレード617は、この形態に限らず、他の周知のクリーニングブレードであってもよい。 【0065】記録ヘッドの吸引回復操作にあたって、吸引を開始させるためのレバー620は、キャリッジ607と係合するカム621の移動に伴って移動し、駆動モータ602からの駆動力がクラッチ切り換え等の公知の伝達手段で移動制御される。インクジェットヘッドカートリッジ601の記録ヘッドに設けられた発熱抵抗体に信号を付与したり、前述した各機構の駆動制御を司ったりするインクジェット記録制御部は装置本体側に設けられており、ここには図示しない。 【0066】上述の構成を有するインクジェット記録装置600は、図示しない被記録媒体搬送手段によりプラテンローラ609上を搬送される被記録材Pに対し、インクジェットヘッドカートリッジ601は被記録材Pの全幅にわたって往復移動しながら記録を行う。また、インクジェット記録装置600は、図示されてはいないが、記録ヘッドからインクを吐出させるための駆動信号を記録ヘッドに供給する駆動信号供給手段を有している。 【0067】 【発明の効果】以上述べたように、本発明の記録装置では、プレヒートパルス印加時の発熱抵抗体の最高到達温度を発熱抵抗体の抵抗値が小さくなるにつれて高くなるようにランクテーブルを設定することによって、同じ発熱抵抗体の抵抗値を有する従来の記録装置におけるプレヒートパルスのパルス幅よりも、プレヒートパルスのパルス幅を長くすることができる。そのため、本発明の記録装置では、プレヒートパルスおよびヒートパルスのパルス幅の和が小さくなるにつれてインクの吐出量が減少するような状況であっても、プレヒートパルスが長くなるにつれて増加するインクの吐出量の特性を利用して、プレヒートパルスのパルス幅を従来よりも長くすることによってインクの吐出量を従来よりも増大させ、インクの吐出量の減少分を補正することができる。したがって、本発明の記録装置では、発熱抵抗体へ印加されるパルス電圧のトータルのパルス幅が短くなっても、記録ヘッド毎のインクの吐出量を一定とすることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001007 【氏名又は名称】キヤノン株式会社 【住所又は居所】東京都大田区下丸子3丁目30番2号
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| 【出願日】 |
平成13年11月15日(2001.11.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100088328 【弁理士】 【氏名又は名称】金田 暢之 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2003−145765(P2003−145765A) |
| 【公開日】 |
平成15年5月21日(2003.5.21) |
| 【出願番号】 |
特願2001−350263(P2001−350263) |
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