トップ :: B 処理操作 運輸 :: B32 積層体

【発明の名称】 金属調加飾成形品とその製造方法
【発明者】 【氏名】重田 裕康
【住所又は居所】京都府京都市中京区壬生花井町3番地 日本写真印刷株式会社内

【要約】 【課題】表面強度に優れ、長期使用による摩耗でメッキ層が損傷しにくく、着色された金属調の表現を容易にすることができ、メッキによる金属調と文字、図柄等とが組み合わされた多様な意匠表現が可能となる金属調加飾成形品とその製造方法を提供する。

【解決手段】透光性基体シート上に少なくとも1層以上の加飾層が形成された加飾シートと、樹脂成形品の表面にメッキ層が形成された樹脂メッキ品とが、接着剤層を介して一体化されてなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 透光性基体シート上に少なくとも1層以上の加飾層が形成された加飾シートと、樹脂成形品の表面にメッキ層が形成された樹脂メッキ品とが、接着剤層を介して一体化されてなることを特徴とする金属調加飾成形品。
【請求項2】 透光性基体シート上に少なくとも1層以上の加飾層が形成された加飾シートを、樹脂成形品の表面にメッキ層が形成された樹脂メッキ品の外面形状に対応するよう三次元形状に変形させ、加飾シートの凹部内面または樹脂メッキ品の外表面に液体の接着剤を滴下または塗装した後硬化させることにより、接着剤層を介して加飾シートと樹脂メッキ品とを一体化することを特徴とする金属調加飾成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、カメラ用ミラー部材や携帯電話用キー部品などとして用いられる金属調加飾成形品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来は、携帯電話用キー部品などの金属調加飾成形品の製造方法として次のようなものがあった。
【0003】(1)ABS樹脂からなる成形品に銀などのメッキ層を形成し、メッキ層上に2液硬化性樹脂などを用いてオーバーコート層を形成したものがある。着色する場合は、着色インキを用いて印刷法やコーティング法などでメッキ層上に直に形成する。
【0004】(2)アルミニウムなどの金属蒸着層を形成したポリエチレンテレフタレート樹脂からなる基体シートを三次元形状に変形させて得た加飾シートを、射出成形金型内に入れてキャビティにABS樹脂などの成形樹脂を射出して、加飾シートと樹脂成形品とを一体化したものがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】(1)の方法では、オーバーコート層はコーティング法により形成されたものであるため表面強度が不足し、長期使用による摩耗でメッキ層が損傷しやすかった。また、メッキ層には顔料等を用いた着色インキが固着しにくいため、着色された金属調の表現をすることができなかった。
【0006】(2)の方法では、シートに形成された金属蒸着層を三次元形状に変形させる必要があるため、金属蒸着層に打痕やクラックが入りやすく、例えば高さ1.0mm以上の深絞りには対応させにくい。そのような深絞りに対応させようとすると、変形性の高い高価な基体シートに高価な金属を用いた金属蒸着層を組合わせて使用する必要が出てくる。
【0007】
【発明を解決するための手段】この発明の金属調加飾成形品は、透光性基体シート上に少なくとも1層以上の加飾層が形成された加飾シートと、樹脂成形品の表面にメッキ層が形成された樹脂メッキ品とが、接着剤層を介して一体化されてなることを特徴とする。
【0008】また、この発明の金属調加飾成形品の製造方法は、透光性基体シート上に少なくとも1層以上の加飾層が形成された加飾シートを、樹脂成形品の表面にメッキ層が形成された樹脂メッキ品の外面形状に対応するよう三次元形状に変形させ、加飾シートの凹部内面または樹脂メッキ品の外表面に液体の接着剤を滴下または塗装した後硬化させることにより、接着剤層を介して加飾シートと樹脂メッキ品とを一体化することを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】この発明の金属調加飾成形品の製造方法を説明する。
【0010】最初にこの発明の製造方法に用いる加飾シートを説明する。
【0011】加飾シートは、透光性基体シート2上に少なくとも1層以上の加飾層5が形成されたものである(図2参照)。
【0012】透光性基体シート2は、厚みが15μm〜250μmの熱可塑性樹脂シートまたは熱硬化性樹脂シートを用いることが好ましい。厚みが15μm未満の場合、製膜が困難となり取り扱い難くなる場合がある。また、三次元形状に変形するときの伸びに追従できず薄肉部となる箇所で破断する危険性が高くなる。厚みが250μmを超える場合、透光性基体シート2を三次元形状に変形するのに長時間を要し生産効率が悪くなる場合がある。熱可塑性樹脂の材質としては、ポリカーボネイト系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂などがある。また熱硬化性樹脂の材質としては、ウレタン系樹脂などがある。透光性基体シート2は、同じ材質のシートを単一で用いてもよいし、同じ材質または異なる材質のシートを2枚以上用いた積層シートであってもよい。異なる材質の樹脂を共重合させて一枚のシートとすることもできる。透光性基体シート2は、半透明であってもよい。樹脂メッキ成形品の金属調が基体シートを透して見えるようにするためである。
【0013】加飾層5は、樹脂メッキ品7に文字や図形、記号や模様などを形成したり、樹脂メッキ品7に着色された金属調を施したりするために形成するものである。加飾層5は、少なくとも1層以上形成するとよい。こうすると、メッキによる光沢をバックとして黒や赤などの任意の文字、図形などを形成することができる。
【0014】加飾層5は、通常は印刷層として形成することができる。印刷層の材質としては、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いることができる。加飾シート6を三次元形状に変形させる際に、図柄層が良く伸びるようにするために、バインダーとしては2液硬化型ウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂が好ましい。2液硬化型が好ましいのは、樹脂自体の層内凝集力が優れるため、耐熱性および層間密着性を確保できるからである。印刷層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いることができる。印刷層の乾燥膜厚は、1〜30μmとするのが一般的である。樹脂メッキ品7のメッキ層4と加飾シート6の図柄層とが重なって形成される場合は、その重なる部分において、図柄層は、少なくとも透光性着色層及び/もしくは遮光性着色層となるようにすることができる。透光性着色層によれば、メッキによる光沢が着色されたものとなり、遮光性着色層によれば、メッキによる光沢が確実に遮光されるので、これらの組み合わせにより、メッキによる光沢を有する任意の文字、図形などを形成することができる。透光性着色層の材質としては、透光性の染料などを含有した着色インキを用いることができる。遮光性着色層の材質としては、カーボンブラックなどの黒色または黒色に近い顔料を含有した着色インキを用いることができる。また、図柄層は、パターン化された透光性着色層を1層以上有するものでもよい。
【0015】接着剤3を硬化させる際に電離放射線を照射する場合は、加飾シート6として、波長領域250〜400nmにおける光線透過率が50〜99%である部分を有するものを用いることができる。
【0016】波長領域250〜400nmにおける光線透過率を選んだのは、電離放射線硬化性樹脂を硬化させうる電離放射線の波長領域に該当し、この範囲において必要な光線量が透過することで着色材を硬化させることができるからである。
【0017】また、光線透過率が50%未満の場合、電離放射線の透過が十分なされず接着剤3の硬化不足が発生し、加飾シート6と樹脂メッキ品7との密着が不十分となる場合がある。
【0018】以上の加飾シート6を用いて、以下のような工程を経ることにより、金属調加飾成形品を得る。
【0019】まず、上記加飾シート6を、樹脂成形品1の表面にメッキ層4が形成された樹脂メッキ品7の外面形状に対応するよう三次元形状に変形させる(図2参照)。
【0020】加飾シート6を三次元形状に変形させるには、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、高圧成形、金型プレス成形の何れかを適宜選択して行うことができる。
【0021】また、樹脂成形品1の表面にメッキ層4が形成された樹脂メッキ品7を用意する(図3参照)。樹脂成形品1の材質としては、ABS系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の透光性または非透光性樹脂がある。メッキ層4の材質としては、クロム、ニッケル、銅、金、亜鉛、スズ、コバルトなどがある。メッキ法としては、電気メッキ法や無電解メッキ法、溶融メッキ法、溶射メッキ法、気相メッキ法などがある。これらの中からメッキ層4の材質に応じて最適なメッキ法を選択するとよい。メッキ層4を形成する部分は、樹脂成形品1の全面でもよいし、天面の一部や側面の一部であってもよい。樹脂成形品1の一部にメッキ層4を形成し、なおかつ、樹脂成形品1として透光性を有するものとすることにより、透光部(窓部)を有する樹脂メッキ成形品を得ることができる。
【0022】つぎに、加飾シート6の凹部内面または樹脂メッキ品7の外表面に液体の接着剤3を滴下または塗装する。図4では加飾シートの凹部内面の1箇所に接着剤3を滴下している。
【0023】液体の接着剤3を用いるのは、この発明では接着剤3を押し伸ばして使用することができるからである。接着剤3としては、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂などの液体のものがある。接着剤3の粘度は、電離放射線硬化性樹脂の場合は、2.5〜3.5Pa・s(パスカル秒)のものがある。熱硬化性樹脂の場合は、0.3〜0.6Pa・s(パスカル秒)のものがある。接着剤3は、ディスペンサー等を用いて滴下したり、スプレーで塗装したりすることができる。接着剤3を滴下または塗装する箇所としては、加飾シート6の凹部内面の底部の1箇所としたり、加飾シート6の凹部内面の角部とすることができる。加飾シート6の凹部内面の数箇所とすることもできる。接着剤3の滴下量または塗布としては、加飾シート6の凹部体積の2〜6%の量とすることができる。
【0024】熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂やアクリル系樹脂などがある。熱硬化性樹脂としては、ウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂などがある。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリルポリオール樹脂などがある。
【0025】なお、この段階で、加飾シート6の凹部内面に樹脂メッキ品7を押し込むことによって、加飾シート6と樹脂メッキ品7との隙間8に接着剤3がムラなく押し伸ばされることになる。樹脂メッキ品7を押し込む速度としては、0.5〜2mm/秒とすることができる。0.5mm/秒未満だと作業効率が低下し、加飾シート6と樹脂メッキ品7との隙間8にエア溜まりを発生させてしまい、接着力が低下する場合がある。2mm/秒を超えると、樹脂メッキ品7の角部で加飾シート6が破断する可能性が出てくる場合がある。
【0026】押し伸ばされた接着剤3の厚みは、0.5〜5μmとすることができる。0.5μm未満だと接着力が不十分となる場合がある。5μmを超えると接着剤3が乾燥不足となったり、電離放射線の放射時間が長くなるなどするため生産効率が低下する場合がある。
【0027】つぎに、前記接着剤3を硬化させて加飾シート6と樹脂メッキ品7とを一体化する(図1、図5参照)。
【0028】接着剤3の硬化は、接着剤3の材質が電離放射線硬化性樹脂の場合は、電離放射線を照射する。電離放射線を照射する場合は、透光性基体シート2側から照射する。樹脂メッキ品7のメッキ層4は電離放射線を透過しないからである。
【0029】接着剤3が硬化することにより、接着剤層30を介して加飾シート6と樹脂成形品1とが接着されて一体化される(図1参照)。
【0030】
【実施例】[実施例1] ランナーで連結されたABS樹脂からなる携帯電話用キーパッドの形状の樹脂成形品の表面全面に、クロムを用いて電気メッキ法によりメッキ層を形成して、鏡面を呈する樹脂メッキ品を得た。
【0031】次に、厚み130μmのポリカーボネート樹脂(旭硝子株式会社製「レキサン」)からなる透光性基体シート上に、青色2液硬化型ウレタンインキからなる着色材を用いて透光性の青色の着色層からなる加飾層を形成して加飾シート6を得た。
【0032】次に、加飾シート6を樹脂メッキ品の外面形状に対応するように金型プレス成形により三次元形状に変形させた。
【0033】加飾シート6の三次元形状に対応した形状を有する受け治具に、三次元形状に変形した加飾シート6を配置し、次いで、アクリルポリオール系樹脂からなる紫外線硬化性樹脂を接着剤として用意し、三次元形状の加飾シートの凹部体積の5%相当量を、三次元形状の加飾シートの各キーパッド1個に相当する凹部内面の最底部の各1箇所に滴下した後、樹脂メッキ品を三次元加飾シートの凹部内面に0.6mm/秒の速度で押し込み、加飾シートと樹脂メッキ品との隙間において前記接着剤を押し伸ばし、押し伸ばされた接着剤の厚みが1μmとなるようにした後、加飾シートと樹脂メッキ品とを受け治具から取り出した。
【0034】次に、加飾シートの透光性基体シート面側から紫外線を照射して、接着剤を硬化させた。接着剤層を介して加飾シートと樹脂メッキ品とが接着して一体化した金属調加飾成形品を得た。この成形品は、鏡面を呈する多数のキーパッドがランナーで連結されたものであった。
【0035】[実施例2] ABS樹脂からなる携帯電話用キーパッドの形状の樹脂成形品の表面全面に、クロムを用いて電気メッキ法によりメッキ層を形成し、鏡面を呈する樹脂メッキ品を得た。
【0036】次に、厚み130μmのポリカーボネート樹脂(旭硝子株式会社製「レキサン」)からなる透光性基体シート上に、青色2液硬化型ウレタンインキからなる着色材とアルミニウム顔料を用いて透光性シルバーメタリック着色層を形成して加飾シートを得た。
【0037】次に、加飾シートを樹脂メッキ品の外面形状に対応するよう高圧成形により三次元形状に変形させた。
【0038】加飾シートの三次元形状に対応した形状を有する受け治具に、三次元形状に変形した加飾シートを配置し、次いで、ウレタン系樹脂よりなる熱硬化性樹脂の接着剤を用意し、加飾シートの凹部体積の6%相当量を、加飾シートの凹部の最低部に滴下した後、樹脂メッキ品を三次元形状の加飾シートの凹部内面に0.8mm/秒の速度で押し込み、加飾シートと樹脂メッキ品との隙間において前記接着剤を押し伸ばし、押し伸ばされた接着剤の厚みが2μmとなるようにした後、加飾シートと樹脂メッキ成形品とを受け治具から取り出し、常温で放置して接着剤を硬化させた。加飾シートと樹脂メッキ品とが接着して一体化した金属調加飾成形品を得た。この成形品は、鏡面を呈する携帯電話用キーパッドであった。
【0039】
【発明の効果】本発明の金属調加飾成形品とその製造方法は、下記のような効果がある【0040】本発明の金属調加飾成形品は、加飾シートの透光性基体シートによりオーバーコートされているので、従来のオーバーコート層に比べ耐摩耗性が優れているため、表面強度に優れ、長期使用による摩耗でメッキ層が損傷しにくい。また、加飾層とメッキ層とは別々に形成され、接着剤により一体化されるので、着色インキとメッキ層との固着のしにくさを問題とする必要がない。そのため、着色された金属調の表現を容易にすることができ、メッキによる金属調と文字、図柄等とが組み合わされた多様な意匠表現が可能となる。
【0041】また、本発明では、三次元形状に変形される加飾シートにはメッキ層は存在しないので、メッキ層に打痕やクラックが入ることはない。したがって、例えば高さ1.0mm以上の深絞りにも容易に対応できる。
【出願人】 【識別番号】000231361
【氏名又は名称】日本写真印刷株式会社
【住所又は居所】京都府京都市中京区壬生花井町3番地
【出願日】 平成13年9月28日(2001.9.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2003−103744(P2003−103744A)
【公開日】 平成15年4月9日(2003.4.9)
【出願番号】 特願2001−304555(P2001−304555)